2021-03-19 18:20:08 更新

概要

その世界に降る雨が止んだ時…


前書き

新シリーズです!


世界


世界とは、何なんだろう。ずっと、ずっと、そんな疑問を持ち続けてきた。


でも、僕はずっと目を逸らし続けてきた。


楽しい時も、悲しい時も、イライラする時も、嬉しい時も、いつだってそれ以外の感情があった。


それは、違和感。


世界に対する違和感。


どんな違和感かだって?そんなの僕にだって分からない。


ただ思うのは、どんな時だって、それは決められていたかのように感じる。


でも僕は、知らないふりをした。


何故なら、幸せだったから。


大好きな姉妹達と、仲間達と過ごしたこの日々が楽しかったから。


だから僕は、そんな物はないと、そう信じ込ませてきた。


でも…その世界の雨が止む時に、僕はその真実を知るだろう。


心の何処かで、そう思っていた。


それもまるで、決まっていたかの様に…



ーーーーーー



ーーー







EP1 雨が全てを覆う世界


「…がう…」


「こんなのは嘘だ…」


「嘘じゃない…れろ…を」


「僕たちの…は…だった…なんて…」



ーーーーーー






ーーー








夕立「しーぐれ!」


「…」


夕立「しー!ぐー!れー!」


「…」


夕立「はぁ…」


夕立「かくなる上は。」こ


夕立「起きるっっっぽぉぉぉい!」ドスッ


時雨「グハッ!?」


お腹に強烈な衝撃が走り、目が覚める。


時雨「ゆ…夕立!?痛いじゃないか!」


現在は早朝、僕こと時雨は、今最悪の目覚めをしたところだ。


夕立「時雨が起きないのが悪いっぽい」


夕立「むしろ寝坊しそうだった時雨を助けたので、夕立を褒めるっぽい!」ドヤッ


ドヤ顔をしながらそんな事を言うこの子は夕立。


僕の姉妹艦だ。


この子はとにかく純粋でいい子なので、さっきの行動もきっと悪意はないんだろうけど…


痛いよ、痛いよ夕立…寝坊しそうだった僕が悪いけどもっと優しく起こしておくれ…


時雨「そうだね、ありがとう夕立。」


夕立に助けられたのは確かなので、わしゃわしゃと夕立の頭を撫でてやる。


夕立「ぽいっ!」


嬉しそうに笑う夕立、まぁ、朝からこの笑顔が見られたのなら良しとしよう。


夕立「さぁ時雨、朝ご飯食べに行くっぽい!」


時雨「分かった、すぐに行くから食堂に行っておいて。」


夕立「了解っぽい!」


ガチャン


元気よく、扉を閉めて去っていく夕立。


夕立が去り、1人になる。そうなるとさっき見ていた夢のことを考える。


何の夢かは、覚えていない…


ただ何か、大事なことだった気がする…


時雨「…ッ」


夢の事について思い出そうとした瞬間、チクリと頭が痛んだ。


まぁ、良いか。


忘れる様な夢なんだから、きっと大事な夢じゃないんだろう。


時雨「まぁ…無理して思い出す必要もないね。」


そう思った僕は、夢のことは忘れ夕立の元へ向かっていくのだった…



ーーーーーー



ーーーー



ーー



食堂に着くと、すでに皆んな食事をとっていた。


夕立「あ!やっときたっぽい!」


即座に反応する夕立、この子には本当に犬の嗅覚が付いているんじゃないかというくらいの反応速度だ。


村雨「おはよう、時雨。」


続いて、妹である村雨が挨拶をする。


白露「あー!挨拶のいっちばん取られたぁ!!」


この子は白露姉さん、僕達の長女だ。とにかく1番が好きらしい。


春雨「おっおはようございます、時雨姉さん。」


この子は妹の春雨、ちょっと控えめだけど良い子だ。


時雨「おはよう、皆んな。」


因みに、朝はこうやって姉妹で集まるのが習慣だったりする。


僕はこの習慣が実は結構好きだ。


こうやって姉妹で仲良く話すと言うのはとても楽しいし


姉妹という存在は僕にとって大切な物だ。


村雨「にしてもさ、」


ふと、村雨が口を開く。


村雨「珍しいわよね〜時雨が寝坊なんて。」


白露「確かにそうね、時雨はいつも朝早いもの。


白露「まっいっちばーんの早起きは私だけどね!」


ドヤッとした顔でそんな事を言う白露姉さん。


時雨「白露姉さんの場合は、1番早く起きるけどそのあと二度寝するじゃないか。」


夕立「確かにそうっぽいね〜それ本当に1番って言えるっぽい?」


白露「言っ言えるし…!」


村雨「どうかしらね〜春雨はどう思う?。」


白露「はっ春雨…」


助けを求める様に白露姉さんが春雨を見つめる。

最後の望みをかけてる感じだ、しかし…


春雨は苦笑いしながら…


春雨「ノーカンです。」


と、指にバツを作らながら答えるのだった…



ーーーーーー



ーーー



ーー


そうして、僕達は朝食を終える。


毎度の如く、白露姉さんが弄られていたがまぁ楽しかったのでよしとしよう。


この時間を終えるたび、確信する事がある。


それは姉妹が大好きだって事。


姉妹と幸せな時間を過ごしながら、それだけを望みながら生きていく。


戦いは確かに疲れるけれど、姉妹の皆んながいれば頑張れる。


時雨「さて、今日も頑張ろう。」


気合を入れて、僕は本日の任務に向かっていくのだった…



ーーーーーー



ーーー



ーー


夕立「つーかーれーたーっぽい!」


ベットに寝転がりながら夕立がそんなことを言う。


現在は夜、本日の任務も終わり部屋でくつろいでいるところだ。


因みに、部屋は基本2人で一部屋で僕は夕立と一緒だ。


そのせいもあってか、僕は夕立と特に仲がいい。


時雨「夕立、そろそろ寝ようか。」


夕立「そうするっぽい、明日は寝坊しちゃダメっぽいよ。」


時雨「分かってるとも。」


時雨「お休み、夕立。」


夕立「お休み、時雨。」


そうして、僕の意識は落ちていく…


深く…深く…





ーーーーーー





ーーーー





ーー



時雨「ん…」


目を開けると、そこは知らない場所だった。


暗い…とにかく暗い…そして雨が降っている…


雨が、かなり激しい、そのせいで視界は最悪だ。


まるで、雨が全てを覆っているような世界…


時雨「一旦どうなって…」


時雨「…!?」


そこで、僕はある異変に気付く。


こんなにも、こんなにも雨が降っているのに…


僕の体は…


時雨「一切濡れてない…」


困惑していたその瞬間…


「時雨」


背後から聞こえる声に、僕は後ろを振り返る。


時雨「…!?」


振り返った瞬間、僕は目を見開くのだった…










EP2 世界の管理者




正直、僕は驚きが隠せなかった。

だからこそ、僕は驚きながら、目の前の彼女の名前を呼ぶ


時雨「夕立…?」


夕立「…」


夕立は何も話さない…

とにかく状況が掴めない僕は、夕立に話しかけ続ける。


時雨「夕立、どうして黙るんだい?」


時雨「何か知っているのかい…?それともやっぱり君のこの世界にいきなり連れてこられて…」


夕立「それは違うっぽい。」


そこで、ようやく夕立が口を開く。


夕立「どちらかと言うと…知り尽くしてる側かな。」


そこで僕は異変に気付く。

夕立があまりにも落ち着いている…と言うよりも話し方も少し大人びている。


いや待て、そもそも彼女は、かな、なんて語尾に使った事があっただろうか?

いや、無いはずだ。だったらそもそも彼女は…いや、それは本人に確かめよう…


時雨「1つ、聞いて良いかい?」


夕立「何?」


時雨「君は…本当に夕立なのかい…?」


その質問に…彼女は表情を変える事なく答える


夕立「変な事を聞くのね。」


時雨「それだよ…夕立は無邪気で元気溢れる娘、でも君はどうだい?」


時雨「寡黙で、落ち着いて、大人びていて、見た目は夕立なのに別人と話してる気分だよ…」


時雨「唯一あるとすれば時折見せるその夕立特有の語尾だけ…君は本当に夕立なのかい?」


その質問に、夕立はてくてくと僕の周りを歩き出しながら答える。


夕立「まぁ、半分正解…半分不正解…ぽいかな。」


時雨「それは…どう言う意味だい…?」


曖昧すぎる返答に、さらに僕の疑問は深まっていく。


夕立「んー…ここで話しても良いんだけど…」


夕立「雨が降る所でって言うのもあれっぽいし…場所を変えるっぽい。」


その言葉に、思わず僕は首をかしげる。


時雨「場所を変える…?この世界は見た感じ何もない…ただ雨が降り続けてるだけじゃ無いか…」


夕立「まぁ…見てれば分かるっぽい。」


すると、夕立が指をパチンッと鳴らす。

その瞬間、一瞬体が浮く感覚があった。


そして次の瞬間…僕たちがいる場所はどこかわからない部屋になっていた。


時雨「え?」


状況が飲み込まず、あたりを見回す。

部屋はいかにも洋室の部屋、ティータイムで使うセットや、綺麗なソファが置いてある。


まさにティータイムの為の部屋といった感じだ。

夕立が指を鳴らした瞬間、ここに飛ばされた…


ダメだ…全く状況が分からない。取り敢えず分かるのは、この夕立はなんらかの権限をこの世界で持ち合わせている事。

これは確実だろう。それ以上は、聞いてみないと分からないか…


時雨「夕立、ここは一体…」


夕立「見ての通り、お茶を飲む部屋。」


端的に返す夕立。

すると、彼女はソファにポンっと腰掛ける。


そして、さっと向かい側のソファに手を差し出す。


夕立「取り敢えず座って、話はそれから。」


そう言われて、僕はソファに腰掛ける。


夕立「さてと…紅茶、コーヒー、ココア、どれが好き?」


時雨「え?」


いきなりの質問に少し驚く。

と言うよりも、夕立は僕の好みを知っている筈なんだけど…


時雨「好きなのは紅茶だけど…」


夕立「そう、貴方は紅茶なのね。」


貴方は、その言葉に僕は少し引っかかりを覚える。

どう言う事なんだろう…


そんな事を考えていると、夕立がパチンっと指を鳴らす

すると、僕の目の前には紅茶が出てきた。


時雨「その指鳴らしは…何でも出来るのかい…?」


夕立「まぁ別に、これじゃなくても私が願えば良いだけっぽい。ただ一々願うのは面倒からこれで代用してるだけっぽい。」


やっぱり…この世界では彼女はなんらかの権限を持っているらしい…


夕立「さてと、まずは貴方の質問に答えましょうか。」


夕立「確か、私が夕立かどうか?だったわよね。」


大人びた口調で話す夕立に未だに違和感を覚えつつも、僕はコクリと頷く。


夕立「私は、夕立であって夕立じゃない。」


時雨「夕立であって夕立じゃない…?」


夕立「そう、正確に言えば物語通りの夕立では無くなった者かしら。」


その言葉で、更に僕の疑問は深まる。

すると、夕立はそんな僕の様子を見ながら…


夕立「…まだ理解するには早いか…」


夕立「そうね、今貴方が私に対して覚えておく事は…」


パチンッと指を鳴らし、夕立は自分の前に紅茶を出す。

そしてそれを一口含んだ後、言葉を発する。


夕立「私は、この世界の管理者って言った所。」


夕立「だからこんな事が出来るし、この世界のある程度のことは知ってる。」


夕立「時雨がこの世界に連れてこられた理由もね…」


時雨「僕がきた理由…?」


時雨「それは一体…」


すると、夕立は立ち上がり、再び指を鳴らす。

その瞬間、部屋が消え、さっきまでの雨が降り続けている外に戻る。


相変わらず激しい雨で周りは何も見えない。

しかし濡れることは無く、身体をすり抜けていくので、身体には問題がない。


夕立「貴方は、選ばれた。」


隣に居る夕立が、口を開く。


時雨「選ばれた…?」


夕立「そう、選ばれたの。この雨って濡れないでしょ、それはこの雨の目的はこの世界のあるものを隠すためだから。」


時雨「隠す…?それは一体…」


夕立「それを知れるのは、この世界の管理者だけ。」


夕立「そして時雨、貴方はこの世界に選ばれた、次にこの雨が隠しているものを知る人…」


ピッと夕立は僕を指さす


夕立「この世界の管理者として…」


その夕立の言葉に、僕は何が何だか理解できず…ただただ困惑するのだった…






EP3 崩壊の足音


「世界の…管理者?」


困惑が隠さず、僕は問い返す。


「そう、世界の管理者、まぁ私の跡を継ぐと思えば良いわ。」


淡々と、そんな事を夕立は告げる。


「僕が…?分からない…意味が分からない…」


状況が掴めない…何だ?夕立は何を言っている?

世界の管理者…?そんなものになって僕は何をすれば良い?そもそも…ならなくちゃ…いけないのか?


「一つ、質問をいいかい…?」


混乱の末に、僕から出てきた言葉はそれだった。


「私の答えられる範囲なら、答えるわ。」


「僕は、その世界の管理者とやらに…ならなきゃいけないのかい?」


「まぁ、そうなるわね。」


「それは…絶対なのかい…拒否権は?」


「ない」


即座にそう返す夕立…


「嫌だと…言ったら?」


この質問に彼女がどう返すのか…自分が緊張しているのがわかる…


「少し…発言を訂正しましょうか。」


その言葉に、少し驚く…

予想外の答えだ…


「今断っても、結局貴方は了承する事になる。」


「それは…理由を聞いても良いのかな…?」


「単純な事よ。」


先程まで飲んでいた紅茶を机におき、夕立は窓を眺める。

そして、遠い目をしながら夕立は答えた。


「物語はそうなるって…決まってるもの。」


「物語…?」


本当に…本当に…さっきから困惑が深まるばかりだ…


「取り敢えず、一度戻ってみると良いわ。」


「貴方の世界を見れば、きっと貴方は断れない。」


「悪いけど…僕は管理者になるつもりはないよ…」


「そう。」


その言葉とともに、夕立はパチンっと指を鳴らす。

瞬間、世界がぼやけ始める。


「最後に…一つ良いかい?」


「何かしら?」


「君は…夕立であって夕立じゃないって言ってた…」


「つまり君は…」


その言葉を、夕立が遮った。


「貴方の思ってる通り、そっちの夕立とはまるで違うわ。」


「ねぇ…どうして君は…この世界にいるの…?」


「質問は…一つだけじゃなかったかしら?」


「別に、気になっただけだよ。答えなくて良い。」


「この質問は…初めてかしら…」


夕立は、そう言うと僕の元に歩いて来る。

そして、僕の耳元にそっと顔を近づけ、一言、囁いた。


「全ては、観測者の望むままに。」


その言葉を聞き終えた瞬間、世界は崩れる…

観測者…どこか聞き覚えのある言葉だなぁ…、そんな事を思いながら、僕の意識は落ちていくのだった…。




****



光の眩しさを感じ、僕はパッと目を覚ます。


「自分の…部屋か。」


当たりをぐるっと見渡す。

いつもの部屋だ、特に異変は感じない。


あの世界のことは全て覚えている…。夢だったのだろうか?

いや、やはり本当に起こったことなのだろう。そうとしか、思えなかった。


世界の事を考えた瞬間、ハッと隣を向く。

そう言えば、夕立は…


「…Zzz。」


隣のベットには、僕のよく知った可愛い妹が、寝息を立てて寝ていた。

特段変わらないのだろうか…?いや、まだ分からない。


丁度、起床の時間だ、起こしても違和感はないだろう。

そう思った僕は、ユサユサと夕立の体を揺らす。


「夕立、起きて。もう起床だよ。」


「うみゅ?」


可愛らしい声が響く。


「ん〜おはようっぽい。時雨今日はいつも通り早起きっぽい。」


目を擦り、あくびをしながら背伸びをする夕立。

今のところ、いつも通りの夕立と言ったところだろうか。


「ん〜時雨、夕立の顔ずっとみてるっぽい。夕立の顔に何か付いてるっぽい?」


「いや、もしかしたら今日の夕立は変かも知れないと思ってね。」


「むむむ、夕立は夕立っぽい!」


夕立が、頬をぷくっと膨らませる。


「ごめんごめん、ほら朝ご飯食べに行こ?」


「じゃ今のお詫びでおかず一回夕立にあげるっぽい!」


「じゃないと夕立はご立腹っぽい!」


無邪気なお願い、クスッと笑いながら僕は答える。


「仰せの通りに。」


「ぽい!」


機嫌が治ったのか、夕立は嬉しそうに部屋を出て行く。


「今日は朝飯少し豪華っぽい!!」


廊下から聞こえる声にまたもや笑みが溢れる。

どうやら、夕立のままみたいだ。


だったら、あれは本当に…。

あまりにも…情報量が多すぎる…。


少しずつ、整理して行くしかない。

そんな事を思いながら、僕は夕立の後を追うのだった…



****



階段を降りて、下に行くと夕立が通路の前で立ち止まっていた。

ここは、食堂につながる通路のはず…何をしているんだろう?


そう思った僕は夕立の方を叩く。


「夕立?どうしたんだい?」


「しっ時雨…これ…どうなってる…ぽい…。」


そう言う夕立の声は、酷く震えていた…


「一体何が…」


そこで、その光景に、僕は驚愕する…


「っ⁉︎何…これ…」


僕の前に移っていた光景…それは…

食堂を繋ぐ廊下が…跡形もなく消えているところだった…


まるで…元から存在しなかったかのように…


「時雨。」


背後から夕立の声が聞こえる。


「夕立、どうし…⁉︎」


振り返った瞬間、周りが灰色に染まる…そして…そして…

あの世界と…同じ雨が降り始めた…


「言った通りでしょ。」


雨の世界の夕立…一緒でそれを理解する…

夕立は淡々と告げる…


「貴方は、世界の管理者となるしかない。」


「だって…」


耳元で、彼女は僕に囁く…


「物語はそうなるって…決まってるもの。」





EP4 後継者


「一体…」


余りの衝撃に、隠せない動揺を見せながら僕は叫ぶ。


「一体これはなんなだい…!」


「何がどうなってるんだ…!」


がっしりと、夕立の肩を掴みながら僕は問い詰める。

彼女は、相変わらず表情を変えない。


苛立ちのあまり、さらに僕は声を荒げる…


「何とか言ったらどうなんだい!」


それでも答えない彼女に、目一杯声を張り上げる


「答えてよ!夕立!」


すると、夕立は一言はぁっとため息を次、消えた通路の境目にしゃがみ込む。


「これは、予兆。」


淡々と、夕立は告げ始める。


「予兆…だって?」


「そう、崩壊の余地。」


「このままだと、この世界、崩壊するわよ。」


「世界が…崩壊…する?」


突拍子のない言葉に、驚きが隠さなかった。


「はは…そんなまさか…そんな事あるわけ…」


否定するように、拒絶する様に、嘘であると望むかのように…僕はゆっくりと首を振る。

だけど、即座に、夕立に冷酷な現実を突きつけられる。


「これ、その証拠よ。」


「この通路は、存在が消された、この世界からね。」


「存在が…消された?」


「そっ、無かった事になったの。」


「そして、これから先この世界の様々な、人、物、土地、しまいには世界自体が消えていく。」


「世界が…消える?」


「しまいには、この世界自体が無かった事になるわ、貴方の大好きな姉妹も消えるでしょうね。」


「嘘…でしょ…」


がっくしと、力なく膝をつく。

いきなり突きつけられたその絶望は、あまりにも大きい…


絶望で震えながら、何とか声を絞り出す…


「げ…原因は…どうしてこんな事に…」


「管理者の消滅が近いから。」


「消滅…だって?」


「そう、私は時期に消える。」


「世界の管理者とは、その名の通り世界の管理と維持が役目。」


「でも。」


ゆっくりと、夕立は立ち上がり僕の方に向き直る。


「管理者にも、消滅の時はくる。永遠じゃないの。」


「そして、維持と管理を行う者がいなくなった結果、維持と管理が出来なくなり世界は消える。」


「それが、世界の管理者よ。」


「じゃあ…僕がその世界の管理者になれば…」


「まぁ、世界は救われるわね。」


「よし…なら…」


そこで、口が止まる…

僕の頭に、ある言葉がよぎった…


ーー 貴方は世界の管理者になるしかない、物語はそう出来ているから ーー


待て、今僕は何になろうとした…?

世界の…管理者だ…。


「ねぇ…物語って何なんだい…」


「管理者になれば分かるわ。」


「君は…そればっかりだ…」


「後継者の後継を見届けるのが私の役目だからね。」


頭を抱える…突拍子で意味の分からない話…

でもそこには…確実に根拠があって…


世界は、崩壊し始めている。止めるためには…姉妹を守る為には…世界の管理者になるしかない…

怖い…怖い…ただただ恐怖が僕の中を駆け巡る…


もしなった瞬間…僕が僕じゃなくなったら…?今までの思い出を全て忘れてしまったら…

姉妹の事すらも…忘れてしまったら…?


「あぁそれと、世界の管理者になったら、もう姉妹に会う事はできないから。」


「…なん…だって…?」


「管理者は基本あの世界から、他の世界を見る事、必要ならばそこから干渉する事はできるわ。」


「でも、直接その世界に行く事はできない。」


「行く事は出来ても、こんな風に世界の時を完全に止めた状態になる…」


「な…んで…そんな語りたくなるような情報を今言ったんだい…」


相変わらず、表情を変えずに夕立は言う


「引き継ぎには情報を全て渡す事も含まれてる。」 


「デメリットも含めて…ね。」


絶句、それが…僕の状態を表していた。

そんな僕に、夕立は静かに近づいてきて…


「時雨、どうするの。」


「姉妹の決別し世界を保つか、姉妹と共に消滅を選ぶか。」


「あなたは一体、どちらを選ぶの?」


そんな…究極と選択肢に僕は頭を抱えるうずくまる…


「どっちも…嫌だ…」


「今まで通りが…良い…」


次に出てきた言葉は、それだった…


だけど…現実は冷酷で、夕立は容赦なくその言葉を放つ。


「そんなものは無理。」


「…っ…!」


僕が…何も言えずにいると

夕立は顎に手を当て、考える素振りを見せ…


「そうね、一言、言っておきましょうか。」


「貴方は、姉妹をどう思ってるの?」


姉妹…そんなの大切に決まってる…

消えて…欲しくない…幸せで…いて欲しい…自分がどうなろうとも…


その瞬間、こんがらがっていた全てが消し飛んだ気がした。

スッと僕は立ち上がり、上を見上げる。


あぁ、そうだ…それが、答えじゃないか。

だって僕の全ては、それなんだから。


一息、大きな深呼吸をつく。

そして…静かに…でも力強く…夕立を真っ直ぐ見つめて答える。


「決めたよ…いや…もう決まっていたよ…」


「夕立、僕はなるよ。」


そして、僕はその言葉を告げた。


「僕が、世界の管理者になる…!」




後書き

はい皆さん今日は、かぴおさんでございます。第4話如何でしたでしょうか
さてさて皆々様、最後に更新したのは?昨日ですよね!毎日更新!快挙!←まだ2日目やねん

崩壊する世界…難しい事は全て捨て去り、彼女はただ姉妹の為に…決意を固める。

ここまで読んでくださってありがとうございます!
コメント等お待ちしております!してくれると私が泣いて喜びます


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cele28さんから
2021-03-27 01:42:04

TMネオさんから
2021-02-07 23:58:01

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2021-02-07 23:54:28

昌一さんから
2021-01-31 20:40:32

嵐山さんから
2021-01-31 16:03:38

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cele28さんから
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2021-01-31 20:40:36

このSSへのコメント

2件コメントされています

1: cele28 2021-03-27 01:43:22 ID: S:SFN9LV

こっからどうなるのかめっちゃ気になります…

2: たぴおさん 2021-03-27 17:12:39 ID: S:li7gml

コメントありがとうございます!!
楽しみにして頂けて光栄です!


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