トウカイテイオー「ねえ、何かお話ししてよトレーナー」トレーナー「はあ?」
SS書くの久しぶりの為、リハビリで書きました。
ウマ娘SS
時系列は第2話の冒頭前、病院の待ち合い室にて
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トレーナー「なんだよ、いきなり」
トウカイテイオー「だって大したことないのに病院来させられてるのに、さっきからずーっと待たされてるし、レース終わってすぐに来ちゃったからスマホも持ってきてないし、置いてあった雑誌とかマンガは読み終わったから退屈なんだよ~!もう待ってるのやだー!やだやだやだやだやだやだ!」
トレーナー「おい、あんまりデカい声出すなよ!他の患者に迷惑だろ」
トウカイテイオー「ぶー!じゃあ何かお話ししてよ。そしたら静かにしててあげるからさ」
トレーナー「仕方ねーな…んで、どんな話がいいんだ?」
トウカイテイオー「じゃあ僕がびっくりするような話!」
トレーナー「難題だな…んじゃあ、こんな話はどうだ?」
ーーーーー
これは俺がガキの頃にレース好きの叔父さんから聞いた話だ。
トウカイテイオー「トレーナーの子どもの頃?なんか生意気ないたずらっ子なイメージが浮かぶな」
黙って聞いてろ。何十年も前の事だ、長距離トラックの運転手だった叔父さんは久しぶりの休みに中山レース場に行ったんだ。
その頃の中山レース場は、今も残っている旧門が現役でな、朝、入り口が開く前から門の前で血走った眼で新聞見ながら、コーヒー片手に、耳に赤ペン引っかけて煙草咥えたおっさん達がいてな。ピリピリした空気が漂っててたそうだ。
トウカイテイオー「な、なんか危険な雰囲気だね…」
ああ、昔はガラの悪いおっさん・お兄さん連中やら、飲んだくれの酔っぱらいやら、怪しい物を売る奴やら沢山いたんだ。
トウカイテイオー「怪しい物?」
レースを当てた奴ってのは、浮わっついて気分が良くて気前もいいもんだから、その気前良さを狙って何だか解らないような怪しい物を売る奴がいたんだそうだ。
トウカイテイオー「へー」
んで、その日は読みがピシャリと当たって大勝ちした叔父さんが、飲み屋に行こうと思って歩いてたら、やたら早口で塩辛声の薬売りがいたんだとさ。
トウカイテイオー「塩辛声って?」
しわがれた、かすれた声の事だよ。
そしてそいつが…
ーーーー昔、中山レース場
薬売り「さあ、いいかい?取りい出したるこの薬、こいつぁね、万病を治すという薬だ!かさぶたはいいかい、切り傷擦り傷冗談じゃない!痔まで治してしまうという薬だ!」
叔父さん(へー、何にでも効くんだ)
薬売り「あ、眼に注しちゃあ駄目だよ、眼に注しちゃ。それからもう一つ、飲み薬じゃないから飲んじゃあいけない!これだけは守ってくれ!」
薬売り「じゃあこいつの効果を見せてやろう。種も仕掛けもないから、よーく見てるんだよ」
そういうと薬売りは刀を取り出して二の腕をチョンと切って
薬売り「こんなもんはすぐに治っちまうよ!」
っていいながら薬を擦りこむと、たちまち傷が消えちまったんだとさ。
トウカイテイオー「えー!すごーい!」
叔父さんそれを見ながら(おもしれーなー!)なんて思ってたら、それを見てた酔っぱらいが…
酔っぱらい「ぅおぅ、そ、それ、んな、何でも、な、治んのか?」
薬売り「治る!」
酔っぱらい「んんじゃあ、そ、それ、一つくれよ」
って言ってその酔っぱらいは薬を買うと、ふらふら歩いて行って、薬売りはまた続きをやり始めた。
叔父さんは薬売りが見せる居合い斬りの芸を見てたんだけど、暫くしたら後ろから
「おーい、おーい」
って声が聞こえてうしろを振り向いた時、叔父さんは眼を疑う光景を見たんだ。
トウカイテイオー「光景?」
そこにはさっき薬を買った酔っぱらいがふらふらとこちらに近づいてきて、しかも息を吐く度に、口から、ぼわあ~…ぼわあ~…って、何か白い煙みたいなもんが出てて、叔父さんは一瞬『エクトプラズムか?』と思ったそうだ。
トウカイテイオー「な、何それ!?っていうか、エクトプラズムって何?エルコンドルパサーの親戚か何か!?」
エしか共通点がない上にアイツにそんな親戚がいてたまるか!エクトプラズムって言うのは、魂なんかの霊的なもんが物質・視覚化される時に出るって言われている煙みたいなもんだ。まあ、10割嘘だけどな。
トウカイテイオー「それって100%嘘じゃん」
まぁそうだな。それはいいとして、口から煙吐きながらその酔っぱらいは薬売りの前まで行ったんだ。
酔っぱらい「ぅおぅ、親父よおぅ」
薬売り「いいかい?この薬というのはね、ん?何だい?」
酔っぱらい「んこ、これ、覚めねえじゃねえかよ」
薬売り「なに!?」
酔っぱらい「ん、だ、だからよ、飲んでも、よ、酔いが覚めねえじゃねえかよ、これ」
薬売り「ン飲んだのかい!?」
酔っぱらい「おぅ、飲んだ」
薬売り「…」
酔っぱらい「…」
薬売り「さぁ、今日はもう店終い」
って言ってその薬売りはあっという間に帰っちゃったんだとさ。
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トウカイテイオー「えーーーーーー!?」
トレーナー「いやぁ~…飲んじゃいけないってもんを飲んじゃう人間っているんだなーって思った!って叔父さん笑いながら言ってたなー!アハハハハハハ!」
トウカイテイオー「いや、笑い事じゃないよトレーナー!その後その酔っぱらいさんどうなったの!?」
トレーナー「さあな、多分腹下す位はしたんじゃないか?」
トウカイテイオー「そんな無責任な!」
トレーナー「無責任も何も、これは聞いた話だし、叔父さんもさっさと飲み屋行っちまったそうだから、後は知らないとさ」
トウカイテイオー「ええ~…」
看護師「トウカイテイオーさーん!どうぞー!」
トレーナー「お、ちょうどいい時に番が来たな。行くぞテイオー」
トウカイテイオー「はーい」
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テイオー退院後、休日の寮にて
トレーナー「おーい、誰かテイオー見なかったか?」
スペシャルウィーク「どうしたんですか?」
トレーナー「これからのリハビリ計画について、ちょっと話し合いしたいんだけど見当たらなくてな」
スペシャルウィーク「そう言えば、今日は見てないですね」
ゴルシ「テイオーなら、中山行ったぞ」
トレーナー&スペ「「え!?」」
ゴルシ「何か薬がどうとかこうとか言ってたな、そういや」
トレーナー「あ…あんのバカ!」
ダダダダダダダ…
スペシャルウィーク「な、何だったんでしょう…?」
ゴルシ「さあ?知らん」
ーーーその後、後を追いかけたトレーナーが中山レース場で見たのは、松葉杖つきながら、必死の形相で薬売りを探すトウカイテイオーだったという。
中山レース場
トウカイテイオー「薬売りさーん!どこー!」
トレーナー「何やってんだアイツは…ハア」
おしまい
ご覧いただき、ありがとうございます!
さあて、去年から予告ぶっちぎっちゃった艦これSS仕上げないと…(涙)
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