趣味人達の集う鎮守府パート1
この物語は、深海側との戦いに一応の終止符がうたれてから2年。多くの提督や艦娘が平和な世界へと巣立っていく中、海の護り手として残った……はいいが、暇なのをいいことに(仕事はやりつつ)趣味に没頭している提督と艦娘達のハートフルな物語である(笑)
この作品は完結しました、パート2にお進みください。
この作品は初投稿かつ、練習用の作品です。至らない点はご指摘いただけると幸いです。頑張って書いて参りますので、よろしくお願いします。
大本営元帥執務室ーーーー
元帥「本当にいいのか?この昇進を断れば後の出世は望めんぞ?」
提督「元々妖精さんが見えるだけで提督になっただけですし、出世のイロハも力もありません。上の事は士官学校出の方に任せるのがスジかと」
元帥「本音を言わんか、本音を」ハァ…
提督「出世に興味はありませんが、今のところ食いぶちがこれ(提督業)だけなもんで」
元帥「ぶっちゃけすぎだわバカタレ!」
提督「ですが元帥…」
元帥「ですがもデスラーもないわ!少しは自分の立場を理解せんか!!バカもんが!!!」
提督「正直に言っただけなのに…」ショボーン
元帥(……何でこんな奴が戦時中の戦功第1位だったんじゃ?)
元帥「……『あいつら』に遠慮しとるんじゃなかろうな?」
提督「それはありません、誓って」
元帥「ワシとしてはお前とあいつらとでこれからの海軍を作っていって欲しいし、あいつらもお前を上で待っておる。」
提督「お言葉は有りがたく戴きます。しかし、自分の気持ちは変わりません」
元帥「…わかった。お前の希望を通そう。鎮守府の提督として引き続き励むように」
提督「ハッ!ありがとうございます、元帥!」
元帥「では下がって良い」
提督「では、失礼致します!」
ガチャ、バタン
元帥「ふぅ……」
元帥秘書「結局お受けになりませんでしたね、あの方は」オチャデス、ドウゾ
元帥「まぁ、あやつの考えもあながち間違いとは言えんしな」お茶ズズー
秘書「と言いますと?」
元帥「いくらあやつが戦功第1位と言えども所詮組織の中では金もコネも無い少数派、しかも民間からのいわば“叩き上げ"に上に立たれたら士官学校出の奴らが面白く思うはずがなかろう」
秘書「そ、それは……」
元帥「まぁあいつらからは『せめてあいつを海軍から放出しないで欲しい』と頼まれてたし、結果オーライかのぅ」
秘書「よかったですね、元帥」クスクス
四月、窓から部屋へ吹き込んでくる風を受けながら元帥は肩の荷が降りたような気持ちをお茶の渋味と一緒に身体にしみじみと感じていた。
ーーー前略おふくろ様、桜の花も散り、木々の緑も濃くなる今日このごろ、いかがお過ごしでしょうか?私こと提督は元気にやっております。先日はたくさんの肉を送っていただき、ありがとうございました。まさか生きた牛一頭丸々送って来てご丁寧にも「解体はそちらで頼む(笑)」と達筆な文字で書かれた手紙を見た時は驚きや怒りを通り越して(乾いた)笑いが込み上げてきました。今年の夏は(説教しに)帰りますので楽しみにしていて下さい。さて、私は今ーーーーー
朝9時、鎮守府執務室ーーー
提督「よーっし、今日の仕事終わったあああ!」
朝9時だというのに何をアホなことを言ってんだこのクソ提督は?と言いたくなるが、終戦に伴い、鎮守府と艦娘の役割は大幅に縮小され、今や広報活動と演習、よくてたまに出るはぐれイ級の討伐以外は訓練ぐらいしか無く、広報活動もしょっちゅうではないので、やはり仕事は少なく、かつて戦功第1位を獲得したこの鎮守府も、提督が出世を蹴ってしまった為、仕事が回って来ず、結果、全員が暇なのである。
吹雪「お疲れ様です、司令官!」
提督「お疲れさん、吹雪。あっ、お茶にしない?昨日いいもの貰ったんだー!」ルンルン!
吹雪「いいものですか?何でしょうか?」
提督「ふっふっふー、それはな……これだあ!!」バアーーン!
吹雪「これは…どら焼きですか?」
提督「そうだ!しかもただのどら焼きじゃあない。あの名作マンガ「ドラえもん」の作者、藤子・F・不二雄先生がマンガに書くどら焼きのモデルにしたと言う、東京は新宿にある「時屋」のどら焼きだあ!(藤子・F・不二雄先生の元アシスタントの方の著書に載ってる本当の話です)」
吹雪「えーっ!あのどら焼きってモデルがあったんですかあ?」
提督「どら焼きに限らず身近な物や人物をモデルに使うのはよくあるんだよ。まぁそんな事はさておいてさっそくお茶の用意を」
コンコン、ガチャン!
赤城「提督、失礼致します。あら、美味しそうなどら焼きですね(ジュルリ)」
加賀「私達の為に用意してくださるとは気分が高揚します(ジュルリ)」
提督&吹雪(あっ、これ食えないパターンだ)
その後ーー提督と吹雪は赤城と加賀にどら焼きを食い尽くされたそうな。
提督「ど、どら焼きが…」
吹雪「い、一瞬で消えましたね…」
赤城「ご馳走さまでした!」
加賀「ご馳走さまでした。今度はお茶を所望します。」
提督「ハハッ!寝言は寝てから言いなよ!君には水道の水で充分」
ガシッ!(頭掴み)
加賀「今何かおっしゃいましたか?」
ギリギリギリギリギリ!
提督「やめてとめて艦娘の力でアイアンクローだなあああだだだだだだだだだだ痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!」
コンコン、ガチャ
鳳翔「提督、本日の昼食の事で…」
加賀「あっ」
鳳翔「加賀さん……何をしているのかしら(ニッコリ)」
加賀(オワタ)
ーーーー只今鳳翔さんによるGE☆N☆KO☆TUタイムの為、しばらくお待ち下さい。
鳳翔「では、失礼致します。」
提督「あ、ああ、また何かあれば頼むよ(ガクガクブルブル)」
吹雪(ガクガクブルブル)
GE☆N☆KO☆TUにより頭頂部に3段重ねのタンコブを貰った赤城&加賀「「い、痛い…」」
鳳翔「あら、何ならもう一発づつ」
赤城&加賀「「すみませんでしたあ!!」」
提督「ほ、鳳翔さん?二人も反省したからその辺で…」
鳳翔「ふぅ…致し方ありませんね。提督がみんなに甘いのはいつもの事ですけれど、たまには厳しくしなければ調子にのって何をやるかわかりませんよ?」
提督「耳に痛いが事実なので、胆に命じます。」ビシッ!(敬礼)
鳳翔「ご理解いただきなによりです。では、失礼します」
ガチャン、バタン
提督「あー怖かったー!!」
吹雪「普段が優しい分厳しさが際立つのでしょうか?」
提督「たぶんね。まぁ二人も反省した事だし、もういいだろう。ところですっかり忘れてたけど、二人ともどうした?今日は非番のはずだが」
赤城「はい。実は射撃練習場を使わせていただきたいのですが、よろしいでしょうか?」
加賀「使用申請の書類もこちらにあります。」
ショルイ「オイ…ウケトレヨ」
提督「え?射撃?何で?二人とも装備は艦載機だろ?」
赤城「はい、私達の装備はそうなのですが、若干私用で使いたいのです」
提督「そもそも射撃場を私的使用ってなにするつもりだ?ウチの鎮守府の射撃場は海の上に的をならべて海の上で射つタイプの射撃場とは名ばかりの場所だが?」
赤城「提督は私の『趣味』をご存じですか?」
提督「えーっとたしか『食べ歩き』と『釣り』、それも釣りは海釣り専門だったかな?」
赤城「そうです。私が海釣りに行くときに加賀さんに同行してもらっているんです。でも…」
提督「でも?」
赤城「それはあくまで私の『趣味』であって、加賀さんにも自分で楽しめる趣味を見つけて欲しい、そして、それが見つかったその時は今度は私が一緒に行ってあげたいと話したんです」
提督&吹雪(イイハナシダナー!)ウルッ
加賀「そして私は見つけました。私のやりたいことを」
ゴトッ!
提督「おい、なんだそのデカいケースは?机に置いて何を」
加賀がいつもの変わらない表情でケースから取り出したのは、軍属なら目にする機会の多い、黒く光るーーーーーー
加賀「紹介します、私の愛銃『東郷』です」
ーーーーー散弾銃だった
ーーー時はながれて夕方、海に沈み行くオレンジ色の太陽の光と頬を撫でるような潮風、海鳥の鳴き声が提督の思考に疲れた心と身体を優しく包む。
提督には一人になりたいときにやってくる場所がある。鎮守府の工厰にある資材置き場の外に周りから見えないように資材を壁のように積み上げ、その上に雨避けのブルーシートを被せた秘密基地(とはいっても簡単な机とプール等にある簡易チェアーがあるだけだが)だ。
提督「うーーーん……」
提督は簡易チェアーに寝ころび、パイプ煙草を吸いながら午前中の事を思い返していた。
ーーー午前中、執務室にて
吹雪「こ、これって本物の銃ですよね?」
提督「見た限りじゃあな。ちょっと見せてもらっていいか?」
加賀「構いません、どうぞ」
提督「ふーん、上下二連式か。メーカーは“ミロク”か?」
加賀「はい、やはり国産の方が良いイメージがありましたので」
吹雪「あ、あの。ミロクって確か仏教の」
提督「そう、弥勒菩薩のミロクだ。とはいっても創業者の名前が弥勒さんというだけなんだがな。」
吹雪「そういう名前の方もいらっしゃるんですね。」
提督「ああ、そしてこのミロクと豊和工業という会社が我が国の二大銃器メーカー、と言えば聞こえは良いんだが、実際はこの二つしか国内メーカーが存在しないんだ。」
吹雪「他にメーカーは無いんですか?」
提督「それこそ何十年も前なら10~13ぐらいのメーカーはあったそうだけど、それぞれの事情で消えてしまったんだ」
加賀「そう、そして数多のメーカーが消行く中であえて時代の波に立ち向かうその姿勢こそが私が性能以外でミロクを選んだ理由よ」
提督「うんうん、外国と違い銃に関する規制だらけの日本でこれほどの銃を作れるというのはやはりもの作りに対する真摯な姿勢があってこそだなあ(ニッコリ)」
加賀「ご理解いただけて嬉しいわ。では、失礼します」
提督「ん?ちょっと待て、どこ行くつもりだ?」
加賀「どこって、射撃練習ですが?(キョトン)」
提督「あら~首かしげてキョトンとしてらしてとても可愛らしい仕草ですね…っておい!そこの食欲魔人ボーショークン!!」
加賀「人を変なあだ名で呼ぶのは止めて下さい」
提督「ああそうだね!良い子のみんなにゃわかんないネタだよね!!」
加賀「あいにく私にはビムラーは登載されていないわ」
提督「元ネタ知ってんじゃねーかよ!」
赤城「提督、お腹がすきました!」
提督「ああもう!フリーダムだな!!この天然ちゃんは!!!」
吹雪「フリーダムと言えばガンダムって企画段階では『フリーダム・ガンボーイ』ってタイトルだったとか聞きましたけど?」
提督「正確には"ガンボーイ”や"フリーダム"といった言葉を組み合わせていくうちにガンダムになったんだよ!って吹雪…お願いだからお前までボケに回らないでくれ、さばききれないよ(涙声)」
吹雪「す、すみませんでした」
提督「ああ~疲れるわ~」
吹雪「……私だってたまにはハジけてみたいもん(ブツブツ…)」
提督「ハァ…軍施設の私的使用が許される訳がないのは当然としても、なんで鎮守府で?探せば射撃場ぐらいあるだろうに?」
赤城「かがはん、ひゃっぱひへいほふぬはなひはほふがええんじゃなひかひら(羊羮モグモグ)」
提督「食いながら話すな!なにいってるかわかんねーよ!!」…………
時間は戻って夕方ーーーーーー
提督「全くあの天然ボケ1号と2号は…」
??「なんや、辛気くさい顔して。それとパイプ煙草は顔に似合わんで?『君ぃ』」
提督「あっ、龍驤さんチーッス!」
龍驤「なんやねん、その挨拶は…ウチはレディースちゃうねんで。」
提督「え?昔関西スケバン連合の総長だったって聞きましたけど?」
龍驤「ウチは生粋の艦娘や!スケバンなんてやっとらんわ!!っつーか君も大概ボケやからな!!!赤城と加賀やんの事言えへんで!!!!!」
ーーーーーー漫才終了後(笑)
提督「そう言えば龍驤さん今日は他所に演習のゲストで呼ばれてたんでしたっけ?」パイプスパー
龍驤「演習ゆーてもウチは参加はしてへんで。艦載機持っていってへんし」キセルスパー
提督「へ?んじゃあ何しにいったんですか?」
龍驤「演習の反省会で勝ち負け関係無しの”ダメ出し“して、後は演習先に残ってる昔馴染みに挨拶しにいったくらいやで(ニッコリ)」
提督「うわぁ…龍驤さんの“ダメ出し”かあ…演習先の艦娘さん達も可哀想に」
龍驤「何言うてんねん、君にしてたダメ出しよりは遥かにまーるく指導したで。」
提督「本当っすかー?」
龍驤「あんなぁ…君ん時はあまりにもおそ松君すぎてああなっただけやからな!」
提督「うぐっ!ま、まぁ提督になったばっかりで未熟だったのは認めます、認めますけど(ブツブツ…)」
龍驤「まぁ、ウチが“先任”やなかったらかなりヤバかったやろうなあ。全く最初は指揮はメチャクチャやわ、やんちゃはするわ、階級が上の人にほどボケるわ、食いもんの好き嫌いは多いわ…数えて挙げたらキリないで。」
提督「……それでも、龍驤さんは俺を見捨てないでいてくれました。それには感謝してもしきれないッスよ」
提督は頭をポリポリかきながら照れくさそうに言った。
ーーー龍驤は“先任艦娘”である。
戦時中、民間からの徴用で提督になった者には、身の回りの世話をする“初期艦”とは別に、戦略面で提督のサポートをするべく、現場のイロハを身につけたベテラン艦娘が配属された。これを“先任艦娘”と呼び、提督はこの先任艦娘の龍驤に鍛え上げられた。その為提督にとって、普段は部下であり、戦友であるが、二人きりの時は提督は必ず龍驤にさん付けして、上下関係のちょっと緩い先輩と後輩のようになる。
龍驤「な、何やいきなり…こっぱずかしいわ(顔マッカ)」
提督「……すんません、俺も今になって恥ずかしくなってきました(顔マッカ)」
龍驤「ハイハイ、この話しは止め!次いこ次!!」
提督「そ、そっすね。」
龍驤「そういやさっき吹雪にあったけど、赤城と加賀やんから何や面倒事頼まれたんやて?」
提督「そうだ、聞いてくださいよ!」
龍驤「ふーん、つまり話をまとめるとこういう事やね」
①赤城と加賀が銃の免許を取って銃を買った
②練習をしようと射撃場を探したが、場所が遠く、朝早く行っても練習できる時間があまり無い
③それでも我慢して通っていたが、どこから漏れたのか、二人が鎮守府所属の艦娘とバレてしまい、大勢のギャラリーが詰めかけてさらに練習にならないばかりか、他の練習者とギャラリーがトラブルになり、射撃場全体に迷惑がかかる為通えなくなってしまった。
④そこで、鎮守府の射撃練習場を使おうとした。
龍驤「で、結局どないにしたん?」
提督「保留にしました。私的使用は当然ムリですし、かといって二人の事情も解るから何とかしてやりたいし…」
龍驤「あの二人は海軍の広告塔もやっとるから顔も売れとるしな。こら難儀なこっちゃで」
提督「どうしたら良いですかね?」
龍驤「冷たいようやけど、自分で解決しいや。そもそも君があの二人に甘いから余計な苦労を背負うはめになるんやで?」
提督「………」
龍驤「赤城と加賀やんの事だけに限った話やない。他の娘にも甘々や。いくら戦(いくさ)が沈静化して平和になったからゆーて気ィ抜きすぎちゃうか?」
提督「耳に痛いッスね」
龍驤「良薬は口に苦し、諫言は耳に痛しや。最近は君にも控えぎみやったし、たまにはええもんやろ(ニヤリ)」
提督「たまにはですけどね(苦笑)」
龍驤「ま、解決してやるなりバッサリ切り捨てて別の趣味紹介するなり、君の好きにやってみい。なんかあったら、ウチと鳳翔がフォローぐらいはしたるから」
提督「なるべく解決してやる方向でがんばります」
龍驤「そう言うと思ったわ。ま、頑張りや」
提督「ウィッス!」
龍驤「さーて、日も暮れてきたし、夕飯前に風呂行こかなぁ(背伸び)」ウーン!
提督「じゃあ、俺は一度部屋に戻りますね」
龍驤「ほな、また飯時にな」
龍驤の後ろ姿を見送って、提督は解決策を考えながら秘密基地を後にした。
夜8時、食事を終えた艦娘達は多くが談話室や自室で女子トークに花を咲かせ、遊戯室では卓球やカードゲーム、その他室内で遊べるものに興じている。
そんな中、鎮守府内の酒飲みは食堂で鳳翔が女将を務める簡易居酒屋(食後から消灯時間30分前まで営業、駆逐、軽巡、重巡(一部をのぞく)は肴のみ提供可)に今日も酒を求めて集う。自室内での飲酒を禁じているこの鎮守府ではこの簡易居酒屋「酒鳳(しゅほう)」で飲む他はなく、もし、食堂外での飲酒が発覚した場合、厳しい処罰が下される。
今日の酒鳳の客は提督、龍驤、吹雪(初期艦かつ最古参の為飲酒可、ただし、提督の同席を必要とする)、千歳、千代田、隼鷹、そして最近他の鎮守府から転属してきた香取だ。赤城と加賀は外出していた。
食堂の調理場で鳳翔が腕をふるい、その間客は食堂にある鍵付きの棚からキープしてある自分の酒や、コイン式のビールサーバーを使ってビールをつぐ。
提督は右隣に吹雪、左隣に龍驤、そして向かい合わせで香取がいるテーブルにいた。
提督「香取、すまないな。本来ならもっと早くに酒の席を設けたかったんだが、中々都合がつかなくてね」
香取「とんでもありません、このような席を設けていただいて大変光栄ですわ(ウフフ)」
提督「そう言って貰えると気が楽になるよ。ありがとう」
龍驤「香取は優しいなあ~。ホンマにごめんな?全くこのおそ松君ときたらウチがお膳立てしなきゃまだまだ先やったとこやで!」
提督「面目次第もございません(90度のお辞儀)」
香取「いえ、いいんですよ。私もまだ来たばかりで練習計画の作成やその他の雑務が山積みでしたので、良い気分転換になりましたわ(ニッコリ)」
提督「そうか、なら良かった。うちに来てくれて暫くたつが、うちの艦娘達はどうだい?」
香取「着任前に皆さんのデータはいただいておりましたがやはり戦功第1位の鎮守府、駆逐艦すら纏う空気が違いました。訓練も他の鎮守府とほぼ変わらないのに一人一人の訓練に対する“熱”が段違いで、訓練終了後も必ず皆さん質問されるので、私も練習巡洋艦として指導のしがいがあるので大変嬉しく思っておりますわ」
提督「そこまで言っていただけると、私も運営をしてきた甲斐がある(ニッコリ)」
龍驤「………(何やこの、もやもやした思いは?)」
吹雪「………(香取さん、ズルい。あれ?なんでズルいと思ったんだろう?)」
龍驤も吹雪もこの鎮守府では最古参にあたり、提督との付き合いも長い。そしてこの二人の提督に対する感情は、龍驤は「手間のかかるやんちゃな弟分」、吹雪は「頼りないけど本当はいざという時、頼りになるお兄ちゃん」というところだった。しかし、香取に向けられた笑顔は今まで龍驤にも吹雪にも見せた事がなかったリラックスした笑顔だった。
香取「それにしてもここの皆さんは、他の鎮守府と比べてもプライベートでの趣味のバリエーションが多彩なのには驚きましたわ。」
提督「元々私がやってみたいと思っていたものを少しずつ紹介していったら、いつの間にか此方が舌を巻く位の腕になってましてね。いずれ彼女達も艦娘としての役目を終えて普通の人間の世界に歩んで行くときに、闘い以外は何も知らないままじゃあ必ずトラブルになるし、そのまま送り出すのはあまりにも不人情だ。海の守護を務めてくれた英雄に…」
龍驤「何やもう酔いが回ってきたんか君ィ?普段はそんなくさい台詞吐かんクセに(ニヤニヤ)」
吹雪「そうだそうだあー!」
提督「お前ら少し黙ってなさい!っつーか吹雪!何勝手に俺のビール飲んでんだよ!」
吹雪「たまにはいいじゃないれすかあー。あはははははは!」
龍驤「そうにゃなー!ふぶひらってたまにはハジたいわなあー!ニャハハハハハハハ!」
??「ヒャッハー!たーのしそうじゃないかー提督ー!この隼鷹さんもまぜとくれよ!!」
提督「カエレ!」
隼鷹「そんなつれない事言うなよ~!」
提督「つれないも紅もない!お前がまざると必ずろくなことにならない」
隼鷹「なんだよ~せっかくの新人歓迎の席だ、ちゃんと自重するさ」
香取「提督、私からも…」
隼鷹「おっ、話の解る娘は隼鷹さんは大好きだよー!」
提督「全く…なにか問題おこしたらわかってるだろうな(ジロリ)」
隼鷹「大丈夫だって!さ、乾杯といこうぜ!」
提督「何もなきゃいいが…っと」
ポケットからスマホを取り出して着信を確認すると「通信室」と表示されていた。提督は香取に「すぐ戻るからみんなと飲んでてくれ」と言い残して足早に食堂を後にした。
提督「もしもし、俺だ」
??「おくつろぎ中のところを申し訳ありません、提督」
提督「何があった、大淀」
大淀「はい。先ほど夜間哨戒任務中の天龍さんから緊急通信ではぐれ艦隊と遭遇、これを全て撃沈するも、駆逐艦朝潮が敵の魚雷を受けて大破、指示を請うとの事です」
提督「直ちに帰還させろ。朝潮他、傷をおったものは明石に連絡しろ、高速修復剤の使用を許可する。ただし、帰還次第天龍は執務室に来るように伝えてくれ。俺も執務室に直行する」
大淀「そう言うと思い、手配りはすでにすませてあります」
提督「流石だな、大淀」
大淀「恐れ入ります」
提督「では、執務室で合流しよう」
大淀「了解」
会話を終えて歩く提督は胸の中で(今日はよくよく問題に愛される日だな)という思いを「ハア…」というため息と共に吐き出していた。もちろん部下の見ている前ではやらないが。だが、そのため息の後にはいつもの艦娘に指示を下す“強い提督”の顔に戻っていた。
鎮守府執務室
??「提督、入るぞ」
提督「おう」
ガチャッ
??「天龍以下第1夜間哨戒班、帰投したぜ」
提督「ご苦労。その後はどうなっている?」
天龍「朝潮は直ちに高速修復剤を使用、命に別状はないが、まだ意識が戻ってない。龍田には朝潮についていてもらって、一緒にいた大潮、満潮、荒潮はかすり傷1つないんで部屋で待機、後第2哨戒班は引き継ぎ後そのまま哨戒任務に、朝になったら現場検証に俺と龍田が行く予定だ」
提督「わかった、朝イチで頼むぞ。それと、はぐれ艦隊と遭遇したそうだが?」
天龍「ああ、はぐれ艦隊といってもそこまでの連中じゃなかった。いつも通りやってれば問題は無かったんだが…」
提督「というと?」
天龍「…戦闘中に所属不明の船舶が現れて、数隻の駆逐イ級が船舶に雷撃を放ってそれを…それを…」
提督「朝潮が庇って大破、か…」
バァン!!!
天龍「あいつらは船に照明を灯して無かった!こちらの無線にも答えずに全速力で逃げて行きやがった!!俺の見立てが間違ってなけりゃああいつらは…」
ガチャッ
龍田「密漁者、もしくはどこかの国の危ない仕事してる人達ね~」
提督「龍田か。朝潮の具合はどうだ?」
龍田「心配ないわ~。ちゃんと目を覚ましたわよ~。でも今日はもう遅いから他の姉妹とは明日面会させるわ~」
提督&天龍「「そうか。良かった(ハア…)」」
龍田「あら~。ため息をつくと幸せが逃げるわよ~」
提督「皆が生きてて日常が楽しけりゃあ御の字ってやつさ。身に合わない高望みはしないんでね」
天龍「全くこの男は。俺が言うのも何だが、もうちょっとこう、上に行こうという向上心というもんがねーのか?」
龍田「それに関しては私も天龍ちゃんと同意見かな~~(ニコニコ)」
提督「じゃあ逆に聞くが俺が上層部に食い込んで元帥を目指す姿が想像つくか?」
天龍&龍田「「…ねーな(ないわね)~~」」
天龍「周りを巻き込んでロクな事しねーのが目に見えるぜ(アハハハハハ!)」
龍田「ちょ、ちょっと天龍ちゃん、ん、んフフフフフフフフフフそんなこ、事ない、わフフフフフフフフフフ…」
提督「陰で笑わない部下を持ってしあわせもんだぜチキショー!!(ウガー!)」
大淀「提督、失礼します」ガチャッ
提督「おぅ、大淀か。どうだった?」
大淀「各関係機関に問い合わせたところ、本土側から出た船は無いとの事でした」
提督「わかった、ありがとう。引き続き任務を遂行してくれ、何かあったらまた連絡してくれ」
大淀「了解しました。では、失礼します」
ガチャッ、バタン
提督「二人もご苦労だったな、明日は朝イチで現場検証を頼むぞ」
天龍「おうよ!」
龍田「任せてね~」
提督「あっ、そうだすっかり忘れてた。香取の歓迎の酒席やってたんだ。お前ら喉渇いてない?まだラストオーダー前だから一杯ぐらいはいけるだろ?」
天龍「おっ、提督のおごりか?」
龍田「一杯ぐらいは大丈夫よ~」
提督「よーし、んじゃあ今日の任務の妨害による精神的損失の癒しの為に一杯いくか!!」
天龍&龍田「「おーーー!!」」
提督「んで、朝潮たちには明日間宮券をプレゼントして心を癒してもらおう!」
天龍&龍田「「提督~ーー太っ腹!!」」
提督「よっせやい!照れちゃうぜ!!いいから行くぞ!」
天龍&龍田「「酒鳳に突撃ーーー!」」
ーーーーーー酒鳳前
提督「さーってと、ビールビー…」
龍田「どうしたの~?何か気になる事でも~?」
天龍「速く入ろうぜ?」
提督「お前ら、何か気付かないか?」
天龍「ん~~?何だ?」
龍田「もしかして…」
提督「龍田は気がついたか。この違和感に」
天龍「だから何なんだよ!提督」
提督「はあ…さっきから音がしないんだ。いつもは聞こえる話し声や鳳翔の調理中の音が」
天龍「そういやそうだな。もう店じまいか?」
龍田「でも、まだ時間には速いわね~?」
提督「ちょっと中を覗いてみるか?」
天龍&龍田「「賛成~」」
コッソリノゾキ………
三人が見たのは、ぐちゃぐちゃになった食堂に壁にもたれて酔いつぶれた香取と吹雪、そしてさっきはいなかった響含めた残りの客一同が仁王立ちの鳳翔の前で正座している姿を青葉がカメラにおさめてるという中々にカオスな光景であった。
提督「……」
天龍「……」
龍田「……」
提督「あっ、もうラストオーダー終わりの時間だ(棒読み)」
天龍「なんだ終わりかあー、じゃあしょうがないな、うん(棒読み)」
龍田「しかたないもんね~(棒読み)」
3人「「「さっ、部屋へ帰ろう」」」
スタスタスタスタ
ーーーーーー全てを悟った3人は振り返る事なく立ち去った。3人の思いはただひとつだった。
ーーーーーーー巻き込まれなくて良かった
なお、後日提督も鳳翔さんに呼び出しをくらい、監督不行き届きとされて酒鳳の利用を1ヶ月禁止をくらったそうな。
ーーーー翌日、金曜日
朝4時、まだ朝日が昇る前から舟着山(ふなつきやま)鎮守府の朝は始まる。
まだ起床ラッパの鳴る前から食堂では朝食の仕込みが始まり、外では体操服に身を包み、春とはいえまだかすかに息が白む中を提督考案の「ラジオ体操(改)」をそれぞれの力量に合わせて行う艦娘達がいた。
ーーーここで提督考案のラジオ体操(改)について軽く説明しておこう。
ラジオ体操自体は我々が知るものと変わりはないのだが、かける時間が違って、いわゆる太極拳のようにゆっくりと長い時間をかけて軽く汗ばむまで行うのがこの鎮守府流である。
そして甲・乙・丙とランクがあり、
丙は身体ひとつで何セットも繰り返し
乙はゴムチューブを足で踏み、半分より軽い力で引っ張られるぐらいで下げた両手に届くぐらいで手に持って行い
甲はダンベルを持って行う
というかなりハードな準備体操になっている。
提督曰く「ラジオ体操を作った人は天才と言っても過言ではない。この準備体操に必要な“動的ストレッチ”のほぼ全てを盛り込んだこのラジオ体操は世界に通用する(実際に2020年の東京オリンピックで広めよう!という動きがあるとの事です)」
と言われ、実際何回も繰り返したり、負荷をかけることによりその効果を知った艦娘達は朝夕のトレーニング前には必ずやっている。
尚余談ではあるが、卯月に「甲が出来たら戦艦になれる!」と吹き込まれた清霜がダンベルを担いでやろうとして腰を痛めたのは艦娘の間では有名な話である。
さて、ラジオ体操(改)については効果についてはともかく、艦娘達にはある疑問があった、それはーーーーーーーー
清霜「ねぇー、何でウチの鎮守府では海軍体操やんないの?」
提督「……えっ?」
周りにいた艦娘一同(や、やりやがったーーーーーーーーー!さすがキヨシー!!みんなが聞きたくても昨日までつるっパゲだった人が今日突然ロンゲになったのを、「すみません、今日はズラですか?」って聞くのに近い疑問だったからスッキリしたけどーーーーーーー!!!)
提督「………えっ?そんなのあるの?」
艦娘一同(知らんかったんかーーーーい!!)
提督「えーと…他の皆も…知ってたの?」
艦娘達は目をあわせないように全員で頷いた。
提督「そ、そっかーそんな体操があったんだー
(棒読み)」
清霜「うん?提督は知らなかったの?」
提督「あーごめんごめん。僕民間出身だから知らなかったんだ(震え声)」
艦娘一同(ヤバイ!!超ド級の地雷だったかーー!?)
清霜「なーんだ、そうだったの。じゃあしかたないよね」
提督「ああ、うん、そうだね(ちょっと涙声)」
艦娘一同(はい!地雷確定ーー!!)
提督「あっ!いけない、カルビ(提督の実家から送られてきてそのまま鎮守府に居着いた雄牛。ヒドイ名前である)の餌やり忘れてた!ちょっと行ってくるよ(全力ダッシュ!!)」
清霜「はーい!気を付けてねー!」
艦娘一同(ちょ、おい、まて、気を付けてねー!じゃないよキヨシー!!)
清霜「あれ?どうしたのみんなして疲れた顔して?」
艦娘一同「「だ、誰のせいだと…」」
怒りたかったが、いいにくかった事を言ってもらえてスッキリしたところもあったので、何も言えない艦娘一同であった。
ーーーーーー提督の実家から送られてきた雄の牛、カルビの住まいは鎮守府の外れに位置し、元々は物置小屋になっていた場所を改造して作られていた。
最初は何処かの牧場に引き取ってもらおうか?という案が出たが、提督の「食べるという事、そして生きる為に命を貰うという事を真剣に考えてもらいたい」という提督の“食育”発言により、2歳のカルビは後1年間、提督を含めた鎮守府の皆が代わる代わる世話をして、頃合いを見て「さよならカルビ…命、いただきます!大焼肉大会」の為に解体(マジ)される予定である。
ーーーーさて、傷心の提督はというと
カルビ『モオーーーッ(訳…ヘーイ!早くエサくれよブラザー)』
提督「はいはい、今日もたーんとおあがりよ…(ドヨーン…)」
カルビ『ブモッ!ブモモッ!(訳…サンキュー!ブラザー!愛してるぜ!)』
ーーーカルビに餌を与えていた。餌やりを忘れたのはマジだった。
提督「はあ…」掃き掃除中
「ブモッ!ブモフォッ!(訳…ヘーイ!朝っぱらからため息はNO!なんだからね!ブラザー!)」
どっかの戦艦みたいな喋り口だが、あくまでカルビは牛である。よって、提督が言葉の意味を解るはずもなく、ただ無心に作業をしていく提督の背中はどこか哀愁が漂っていた。
ーーーーブラッシング中
提督「カッルビ~、カッルビ~、カッルカルビ~♪」(少し気を取り直した)
カルビ「モオー!(イエーイ!)」
提督「おっやつ~はカルビ~かっぱえ~○せ~ん♪」
カルビ「モオー!(ヘーイ!)」
提督「きょ~おはカッルビ~のおっさんぽ日~
♪」
カルビ「モオー!(オーイエー!)」
提督「そっのうちおっ肉にさ~れるけど~♪」
カルビ「ブモッ!(えっ!)」
提督「カッルビ~はいっつも忘れちゃう~♪」
カルビ「ブモモッ!ブモッ!ブモッ!?(おいまてテメー!今なんつった!肉が何だって!?)」
提督「ほーらカルビー、塩だよー!」
カルビ「モオーッ!(わーい♪いただきまーす!)」
ペロペロペロペロ…
余談ではあるが、15年前の英国獣医学研究所の発表によれば、牛は社会性のない、内にこもる性格があるが、感情の繊細さや、一部の知能はゴリラやチンパンジーに匹敵し、人語を理解し、仕込めば芸もするし、喰われると知れば脱走もする賢い生き物だと発表されてそれを聞いた白人が、「それじゃあ我々は何を食べたらいいんだ!?」と問題になった事がある。
ーーーーーーその点で言えば、カルビは(知能的に)残念な子だった。
ーーーー朝5:00
提督「さてと……そろそろ準備するかな」
提督はカルビの鼻輪にロープを結んでそれを引っ張って小屋の外に連れ出すと、小屋の外に置かれた幌(ほろ)付きの木製の馬車(この場合は牛車か?)に誘導する。
引っ張らせる為の金具と、途中で糞をしても道に落とさない為の受け皿を取り付け、位置の調整を終えると、提督はカルビ横のに並び立ち「行くぞ」とやさしく頭をなでてから歩きだす。
カルビ「ウンモオー!(ヘーイブラザー!おさわりはもっとたくさんしなヨー!)」
ーーーーしつこいようだが、カルビは牛である。オス♂の。
提督「ふんふふ~~ん♪(提督は鼻唄を歌った!精神が癒された!こうかはばつぐんだ!)」
提督がカルビを伴い鎮守府の施設内を歩きだす。
驚く事にこの鎮守府では朝は6時までに起床する事以外は朝食迄に何をするかは各個の判断に委ねられており、遊び(特にテレビゲームは論外)以外は訓練するなり、勉強するなり身だしなみを整えるなり好きにして良いという集団行動を旨とする軍としてはかなり異質である。
何故か?提督曰く、「やるべき事をやれていればよい。ただし、いざ事あれば必ず動けるようにする事。動けないという言い訳は、俺も敵も聞いてやらないからそのつもりで」
という厳しいんだか優しいんだかわからない鎮守府の基本方針の為である。
なお、初期艦の吹雪より後、2ヶ月ほど経ってから着任した龍驤に朝の起床状態を知られた時、提督は「死んだばーさんが綺麗な川の向こうで呼んでた」と証言するぐらいド突きまわされた。当たり前である。
しかし、月に3度ランダムで“対深海悽艦迎撃訓練”が組まれており、この時は、朝から『全員全開』で行動し、非番の者も行動しっぱなしの為、その日非番だった者には後で間宮券、もしくは提督に無理のない程度の『おねだり』が許されている。そしてその『おねだり』が、提督がカルビをつれて歩いている理由の1つでもある。
ーーーー鎮守府正面入口
ワイワイガヤガヤ……
球磨「では確認するクマ、我が妹、木曾よ」
木曾「お、おぅ」
球磨「今日は提督がカルビの散歩の日だクマ、その意味は解っているクマ?」
木曾「ふ、普段話せない新人との交流の為、それと『おねだり』の受け付けの為、です」
球磨「うむ、その通りクマ、そして今日は前回の迎撃訓練で非番だった球磨がおねだりをできる日。それも解っているクマね」
木曾「は、はい!」
球磨「ならば木曾、お前にミッションを与えるクマ!」
木曾「は、はい!」
球磨「今日、木曾は球磨のかわりに朝の散歩に参加、その時に外出許可及び提督の同行を要求するクマ!」
木曾「え、お、あ、あう…////(モジモジ)」
多摩「駄目ニャ…完~全にアガってるニャ(汗)」
球磨「ンモー!そんな事でどうするクマ!(プンプン!)」
木曾「だ、だってその…なんというか…は、恥ずかしいというか……////(モジモジ)」
球磨「そんな事じゃいつまでたっても提督の隣は手に入らないクマ!いいのかクマ?」
木曾「うっ…」
球磨「それに提督にお熱なのは新人と姉妹スキーを除けば戦時中からの古参組はほぼ全員だクマ!競争率はかーなーり!高い!!クマ」
多摩「特に初期艦娘の吹雪と先任の龍驤はまだ自覚無しの状態でラブに近い感情ニャ。あの二人が完全なラブ勢に目覚めたら手におえなくなるニャ、まだ二人が目覚めてない今こそがチャンス、なんだニャ」
木曾「そ……そう言う姉貴たちはどうなんだよ?そ、その……あ、アイツの事…」
球磨「球磨は提督が構ってくれれば文句ないクマ!」
多摩「同じくニャ」
木曾(ん?それはライクなのか?ラブなのか?)
球磨&多摩(………ま、いざとなれば提督を姉妹で共有すればいいクマ(ニャ))
ーーーなかなかにエグい事を考えてはいるが、(いろんな意味での)“提督との始めて”だけは、今まで苦労を重ねてきた木曾に譲ってあげようと思うあたりはまだ分別はあるようだ。この野獣姉妹にいつまであるかは知らないが。
ーーーー一方カルビを連れた提督は見廻りも兼ねて鎮守府の施設内を廻っていた。
艦娘寮、工厰、食堂、体育館、本施設と巡り、散歩のメイン、外出に向かう。
先程球磨が言っていた通り、提督がカルビを散歩させる日は新人艦娘との交流と『おねだり』の受け付け、また日頃運動不足になりがちな提督の体力保持の為でもある。
カルビが引く馬車は元々観光用の馬車だったが、提督がカルビを育てると決めた直後に持ち主と交渉し、譲り受けた。散歩させている間、提督と艦娘は1対1で話をして悩みやおねだりを聞き、、馬車の中では新人や古参組が会話してお互いに交流を深めてもらう為だ。
提督(提督は歌を唄った!提督のメンタルは完全に回復した!)「ま~○をた~てては日本一に♪、ゆ~めはお~おきな少年チン○♪、お~やはい~ないが立派な(性的)せがれ♪、よ~わいお~○こに味方する♪」
カルビ「モオ~(オ~!)」
提督「がんば~れ!♪た~のむぞ!♪ぼ~くらの仲間!♪ま~○~ど~う珍之助♪」
ーーーーーかなり卑猥な歌であるが、この歌は、かのギャグ漫画の大家、赤塚不二夫氏が酔っ払った時に唄ったという由緒正しき替え歌である(赤塚不二夫氏の元担当編集者の著書より抜粋)
なお、メロディが知りたい場合は"赤胴鈴之助”にて検索を請うものである。
さて、話を戻して鎮守府の正面についた提督(当たり前だがあの替え歌は歌っていない)は正面入口で待っていた球磨、多摩、木曾、それと新人の神風型、秋月型、まるゆを見つけた。
提督「おはよう、みんな!」
艦娘達「お早うございます(クマ&ニャ)!!」
提督「朝早くからすまないな、さっそくいく…」
球磨「提督、ちょっといいクマか?」
提督「おぅ、どうした、球磨?」
球磨「実は今日の『おねだり』は木曾の頼みを聞いてあげて欲しいクマ」
提督「ん?そりゃあいいけど…どうした?」
球磨「実は昨日、体調を崩して行くはずだった哨戒任務を木曾に代わってもらったから、お礼に球磨の『おねだり権』をあげる事にしたんだクマ。」
提督「そうか。身体は大丈夫なのか?」
球磨「昨日よりは遥かに回復したクマ。心配ないクマ(ニッコリ)」
提督「ん、わかった。じゃあ今日のおねだりは木曾と…多摩か」
多摩「多摩は木曾の付き添いだニャ、間宮券でいいニャ。後、新人の娘と話してみたくなったニャ」
提督「……今日は雪でも降るのか?あの面倒くさがりの多摩がそんな殊勝な事を言うなんて…」
多摩「失礼ニャ。多摩だって駆逐艦の教官やってるニャ。新人の話を聞いてあげるのも役目ニャ」
提督「あはははははははッ!冗談冗談!いつも球磨と多摩にはたすけてもらってるしな。じゃあ車の中は球磨と多摩にお願いしていいか?」
多摩「任せるニャ(ニッコリ)」
球磨「提督、悪いけど球磨は他に用事があるから多摩、あとは任せるクマ(ニヤリ)」
木曾(…球磨ねぇも多摩ねぇも、ああ見えて教官としてはかなり優秀なんだよなあ。こういう時もチャンスと捉えて新人とのコミュニケーションの場にしちまうんだから。でも今日は多摩ねぇは俺がちゃんと誘えるか?の監視役も兼ねてんだろうなあ…)
提督「ん?どうした?木曾?」
木曾「い、いや、べ、べべっ、別に?な、何もないぞ?」
提督「そうか、ならそろそろ行くか!時間も惜しいしな」
木曾「お、おぅ、行こうぜ!」ギクシャク!ギクシャク!
球磨&多摩(…………超心配だクマ(ニャ))
ーーーーこうしてカルビの散歩は始まった。順番は秋月型、まるゆ、木曾、神風型となり、秋月型とは普段の生活、特に食事関係で提督から注意がとんだ。
提督「お前ら三姉妹は食べる事に別な意味で気を使いすぎだ。節約はいいんだが、その為に体を壊しちゃ世話がない。先日も鳳翔さんから「一杯のラーメンを3人で分けて食べていた」なんて聞いた時には涙がでそうになったわ!」
秋月「違います司令、あれは一人で食べきれなくて…」
提督「だまらっしゃい!この欠食長女!!赤城スペシャル(食堂のどのメニューにも使われている特盛以上の盛りを頼む時の呼称)ならまだしも並盛で分け合うんじゃない!!!それ見てた鳳翔さんと一緒にいた間宮さんが眼に涙を溜めながら俺に訴えてきたんだぞ!!!!」
秋月「も、申し訳ありません…」
提督「長女の君が食べなきゃ妹達だって食べづらいだろう?それにいざ肝心な時に腹ペコじゃあ事を仕損じる恐れもある。『ウルトラ5つの誓い』の最初も"腹ペコのまま学校に行かない事”とある。これからはきちんと食べる事、いいな?」
秋月「で、でもお金が…」
提督「ん?お金?給料はあるだろう?」
秋月「でも税金の支払いが…」
提督「ん?税金の支払い?」
秋月「えっと…前の鎮守府から"艦娘税"の支払いが残っているから振り込んでくれと……」
提督(ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…)
秋月(ビクッ!)
提督はスマホを取り出した!
プルルルルルルルルル!プルルルルルルルルル!
大淀「はい、大淀です」
提督「朝早くからすまない、ちょっと調べて欲しい事があるんだが…」
大淀「はい、何でしょう?」
提督「実は…(ボソボソゴニョゴニョ)」
大淀「……わかりました、今日中に調べておきます」
提督「頼むぞ、相手がゴネたら俺の名前を使って構わん、徹底的にヤれ(ニヤリ)」
大淀「了解(ニッコリ)」
提督「じゃあ頼むぞ」ピッ!
提督「いやあ、会話の途中でごめんな。今日中にはお前らの給料の事にはケリがつくから心配するな」
秋月「あの…」
提督「よし、今日はお前ら3人にも俺のおやつタイムに付き合ってもらおう。うん、それがいい!」
秋月「し、司令…」
提督「秋月…この話はここまで、イイネ?」
秋月「アッ、ハイ」
提督「ボソボソ(ブラック死すべし、慈悲はない)」
ーーーーー次の日、秋月型3姉妹の預金通帳にかなりの額のお金が振り込んであった。しばらく後にそれを見た秋月は提督に訪ねたが、「ん?振り込み忘れがあったんじゃないの?」と言われて秋月はいつの間にか引かれなくなった艦娘税の事とともに忘れる事にした。
ーーーまるゆの場合(照月、初月は姉とほぼ同じ内容の為省略)
提督「まるゆ、ちょっと聞きたいんだが」
まるゆ「は、はい、何でしょうか?」
提督「その小豆色のジャージはどこで手に入れたんだ?サイズがでかいから巻雲みたいに袖が余ってるし、膝下までいってるから端から見たらそれ1枚しか着てないようにしか見えないぞ?」
まるゆ「さ、3月に退役していったあきつ丸さんからもらったんです」
提督「ええっ!?全くもうあいつは…あげるならサイズが合う奴をやればいいのに」
まるゆ「い、いえ、その……あきつ丸さんが退役する時にまるゆが欲しいと頼んだんです!」
提督「ん?そうだったのか」
まるゆ「はい。あきつ丸さんはまるゆがここに来てからいろいろ教えてくれましたから…」
ここのあきつ丸は去年、陸軍の高級将校とお見合いをして、結婚する事になり、「これからは
家を守り、夫という船を迎える港となるであります!」と言って3月にいわゆる『寿退役』をした。
なお、提督は結婚の挨拶の定番のセリフである「君にお父さんと言われる筋合いはない!」「俺の娘はやらん!」はちゃんとやったそうな。提督いわく、「1度言って見たかった」と笑っていた。将校もノリが良い人物で「お義父さん、娘さんを僕にください!」はちゃんとやった。
提督「……来月はいよいよアイツの結婚式だ。
まるゆもあいつが不安にならないように立派な姿を見せてあげような!」
まるゆ「……隊長。まるゆは、まるゆは、不安なんです。」
提督「どうして?」
まるゆ「まるゆはあまり強くありません。潜水も上手くないし、武装も貧弱だし…」
提督「まるゆ…」
まるゆ「同じ陸軍の艦のあきつ丸さんがいなくなって陸軍の艦はまるゆだけになっちゃいました。」
そう言うとまるゆは俯いた。
提督「まるゆ」
まるゆ「ふえっ?」
提督「ウチのあきつ丸はかなりの実力者だった。それを鍛えあげて一人前にしたのは誰だと思う?」
まるゆ「え?う~んと~~龍驤さんかな?それとも赤城さんや加賀さんかな?」
提督「実はここにいた先代のまるゆなんだぜ」
まるゆ&新人たち「「えーーーっ!そ、そうなんですか!?」」
提督「嘘じゃないよ。多摩も木曾も知ってるよ。なぁ、木曾?」
木曾「ああ、そうだ。お前らが来るずっと前にウチにいた先代のまるゆがあきつ丸に戦(いくさ)のイロハを文字通り“叩き込んだ”んだ。アイツはスゴい奴だった」
多摩「先代は木曾が先代を指導したきっかけで多摩達“球磨型軽巡”とよく訓練してたニャ。最初は軽い訓練にも耐えられずにダウンしてたけど、先代は『絶対に強くなる』って言って決して諦めなかったニャ。誰がなんと言おうともニャ」
木曾「奴は“努力の天才”だった。目標を決めてその為のメニューを俺達と一緒に作り、決めたら決して妥協しなかった。」
提督「決して効率が良いわけでもない、カッコ悪い、泥臭い、普通だったら途中で辞めてもおかしくない訓練を延々とこなしていたんだ。アイツのスゴい所は最初から最後まで意志がブレなかった事だ。」
まるゆ「そ、そんなにスゴい人だったんですか…」
提督「ああ。むしろアイツがいなきゃウチの鎮守府が戦功1位を取る事はなかったろうな。アイツの姿を見て触発された古参組の連中が『負けてられない!』と訓練メニューを追加したり、妖精さん達も『艦娘が頑張ってるなら自分達も!』と奮起してくれた、いわば“起爆剤”だった。ウチの初雪や望月が他所の鎮守府が『本物か?』って疑うくらいに強いのはアイツのおかげだよ」
まるゆ「スゴい…」
提督「今アイツはニュージーランドのウェリントン基地にいてな。南極の氷の下にあると言われる深海棲艦の最後の巣の監視をする艦隊の一員なんだぞ。」
多摩「しかもその基地の司令官はウチの提督の後輩の元提督で、今は対深海棲艦の国際機関の司令官を勤めている人が直々に『ウチに欲しい!』とスカウトに来たニャ」
木曾「ウチの歴戦の強者を差し置いて真っ先にまるゆを口説き始めたから、最初はみんな『危ない趣味に目覚めたのか?』と疑ったもんだがな」
提督「あの時は木曾が問答無用で後輩をぶん殴ったからなあ~。いやあ、今じゃいい思い出だよ(アハハハハハハハ!)」
まるゆ「……も、まるゆも、な、なれるでしょうか?そんな、スゴい人に」
提督「アイツもお前も同じ“まるゆ”だ。出来ないという道理はない。」
多摩「どうせなるならそれ以上を目指すニャ。」
木曾「俺達も訓練に付き合ったり、アドバイスはしてやるから、まずは一歩踏み出してみろ」
まるゆ「木曾さん…わ、解りました。まるゆは、まるゆは、強くなりたい、いえ、なります!そして、あきつ丸さんが安心して暮らせるように、海を…まみょりましゅ!!」
提督&艦娘一同((最後の最後で噛んだーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!))
ーーーーその後、まるゆは球磨型軽巡達のアドバイスと訓練、先代の残した『訓練ノート』を手本に特訓をかさね、まるゆとしては破格の性能を手に入れ、後々入ってきた潜水艦娘達の先輩として慕われ、舟着山鎮守府の潜水艦娘のトップをはるまでになったという。
ーーーー車内
多摩「木曾、もうすぐニャ。準備はいいニャ?」
木曾「っと、ととと、とうぜ、んだ!(アセアセ!)」
多摩「…駄目ニャこりゃ。まだ駄目そうだニャ(汗)」
多摩「こうなったら少し時間かせぎニャ、先に神風型に行って貰うニャ(ハア…)」
神風「どうかしましたか?多摩教官?」
多摩「悪いけど、先に行ってくれるかニャ?木曾がまだ決めかねてて…」
神風「そうですか。解りました、では、私達から先に行かせていただきます。みんな、後に続いてね!」
多摩「……木曾、もし本当に無理なら別の日に改めて」
木曾「…いや、駄目だ。今まで散々チャンスを自分から捨ててるんだ。今日決めなきゃ、今日じゃなきゃ嫌なんだ!」
多摩「なら、多摩からもう言うことはないニャ。艦娘は度胸!やってみるニャ!!」
木曾「…ありがとうな、多摩ねえ。こんな俺につき合ってくれて」
多摩「多摩はお前のねーちゃんだニャ。ふだん球磨や多摩が好き勝手やってる分、せめて可愛い妹の恋路ぐらいは手助けしてやるニャ(ニッコリ)」
ーーー神風の場合
神風「司令官」
提督「あれ?次は木曾じゃなかったっけ?」
神風「木曾さんがまだ決めかねてるから、お先にどうぞって」
提督「木曾にしては珍しいな。普段はランチの選択すら即断即決のあいつが」
神風「女の子は色々あるんですよ(ウフフフ)」
提督「そういうものか?まあいいや。ところで神風は何か悩み事や俺に相談したい事はあるか?」
神風「相談というより悩みなんだけど…輸送作戦の時に魚雷を外してるとやっぱり不安になるわ。もちろん、いざ事あれば覚悟は決めてるけど…」
提督「まあ不安になるのは解る。だが、輸送作戦は味方を無事に送り届けるのが本分、戦闘は出来る限り最小限、もしくは無しがベストであり勝利なんだ。」
神風「で、でも…」
提督「神風、この場合において逃げる事は決して恥じゃない。味方が無事に着けばそれが勝利なんだ」
神風「ウフフフ。勝利勝利って…まるで足柄さんみたい(ニッコリ)」
提督「あははは。そうだ、足柄といえば前に神風がとん汁作ってくれたときに食べ終わった後にカツカレー持ってきた時、あの時はどうなるかと思ったよ。旨かったけど」
神風「あら?美味しかったのは足柄さんのカツカレー?それとも私のとん汁?」
提督「もちろんとん汁さ。ありゃあ旨かった!足柄のカツカレーもタイミングがよけりゃあなぁ」
神風「お褒め戴いて光栄だわ(ウフフフ)」
提督「あれ隠し味にゴマ油いれたろ?ウチの鎮守府で作るとん汁には入ってないからすぐわかったよ」
神風「やったぁ!解ってくれてたんだ。美味しそうに食べてくれてたからもしかして?と思っていたの。嬉しい♪」
提督「あんな旨いご飯が作れるんだ。いつ嫁に行っても大丈夫だな。俺が欲しいぐらいだ(アハハハハ)」
神風「よ!よよよよよ嫁!?(ボフン!?)」
木曾「……」メキメキ!
多摩「木曾~。柱を握りつぶすんじゃねーニャ」
提督「神風。男なんてもんはな、まず胃袋と舌を掴んじまえば、後は余程馬鹿しない限りはお前から離れられなくなる。いい男を捕まえろ、神風ならきっといい男が見つかるからさ(ニッコリ)」
神風「ブツブツ…(し、司令官が、嫁って、嫁って。私達会ってまだ日がないし、司令官の事まだ知らない事も沢山ある。で、でも……)」
木曾「……(ギリギリギリギリ)」
多摩「木曾~~後ろ姿の神風を睨むんじゃねーニャ、歯ぎしりすんなニャ。恨むならさっさといかなかった自分を恨むニャ」
提督「神風?お~~い、神風~~?」
ーーーその後自分の世界から帰還しない神風は鎮守府に着くまで提督との将来設計に想いを馳せていた。
神風「それで子供は3人ぐらいで……(ブツブツ)」
カルビ「ブムォ↓↓~~~(やれやれ、ブラザーは罪な奴デース)」
一方木曾は……
木曾(クソッ!戦ならすぐに覚悟決められるのに…何で!何で体が、心が動かないんだ!)
多摩「さて次は…」
木曾(…弱い。弱すぎる。俺の心は)
松風「木曾さん」
木曾「な、何だ松風」
松風「ちょっとお耳を拝借。ボソボソ(木曾さん、このままの速さだとすぐに鎮守府に着いてしまう、僕たちの時間は気にしなくていいから次に行ってください!)」
木曾「松風…」
松風「後は…解りますよね(ニコッ!)」
木曾「………………(フッ)当然だ!」
戻ってきた神風と入れ替わりに木曾は車を降りて、提督の元へ走った。その後ろ姿は先程までの焦りや不安は微塵も感じさせない、海の上そのままの、凛々しくも美しい背中だった。
松風「フゥ。一時はどうなるかと思ったけど、やっぱり木曾さんはああでなくちゃ」
多摩「助かったニャ、松風。ウチの末っ子は普段が手間要らずなだけにこういう時にヘタレるニャ。ま、そういうところが可愛いんだけどニャ」
松風「さっちんじゃないけど、普段凛々しい人が照れると可愛いですよね(ウフフフ)」
朝風「それはともかく松風!次私だったのに何でこのタイミング!?私だって司令と朝の素晴らしさをじっくりと…」
松風「姉貴が普段話始めたら中々終わらないからだろ?僕たちはともかく木曾さんに迷惑がかからないようにしただけさ(ニヤリ)」
朝風「何よ!姉とやる気?!上等じゃない!!!」
春風「朝風姉様も松風さんも、落ち着いて…」
朝風「大体松風は昔から姉に対する態度ってものが…」
ワーワーギャーギャー!
神風「それで海の近くに小さくていいから家を建てて狭くても楽しい家庭に…(ブツブツ)」
多摩「収拾がつかねーニャ(白目)」
木曾の場合(別名、木曾のデートお誘い作戦!)
提督「おっ、木曾か。決まったのか?」
木曾「ああ、ようやく(覚悟が)な」
提督「お前にしては珍しく時間がかかったな。あんまりデカイおねだりは勘弁してくれよ(アハハハ)」
木曾「心配するな、お前の懐具合なら承知済みだ。無茶な事は望まないさ(フッ)」
提督「そいつはありがたいな。何せ出費がかさむもんでな」
木曾「お前の事を考えたら当然の結果だ、別に騒ぐ程の事じゃない」
提督「さすがウチの古参組の一人、こういう時は姉より頼れるな」
木曾「べ、別に普段から頼ってくれたって、い、いいんだぞ!俺とお前の仲なんだからな!!」
提督「……有難うな、木曾。毎度お前には助けられてるよ。『春の基地祭』の時もお前がいなかったらどうなってたか」
木曾「ああ……あれか。あれはもう2度とやりたくないな(ハァ…)」
ーーーー基地祭は毎年桜の咲く時期に開催されている『艦娘と民間人との交流』を目的としたイベントである。
今現在の元帥の「艦娘に対する理解を民間の人々に深めてもらうべし」との想いからスタートしたこのイベントは毎年どの鎮守府も賑わい、特に戦功一位を獲得したこの船着山鎮守府は艦娘の中でも一級の実力派ぞろいに会えると、僻地にも関わらず沢山の人が訪れる。
そして今年は艦娘達(特に天龍)から『演劇をやりたい!』と要望を受けて、提督が陣頭指揮をとり、オリジナルの演劇をやることになったのだが、(当たり前だが)何せ素人集団の為、トラブル続出で、何より一番のトラブルは、本来主役をやるはずだった天龍が事情により出られなくなり、急遽代役として木曾に白羽の矢がたてられた事だろう。
結果だけ言えば、公演は成功したが、その裏ではかなりのドタバタ劇が繰り広げられていた。
しかも、主役をつとめた木曾の演技を見た女性の観客達がすっかり木曾のファンになってしまい、まるで某女性だけの劇団の男役のような扱いをされて、木曾は「俺も女なのに…」とヘコみ、出られなくなった天龍は天龍で「オレが主役をやるはずだったのに…」とヘコみ、提督と龍田は必死にフォローするはめになった。
ーーー
提督「あれはさすがに参った。本来出演するはずじゃなかった俺まで駆り出されたからな」
木曾「ああ~~、その~、実はお前が出演する事を条件に俺が代役を引き受けたんだ。そ、その…すまない(汗)」
提督「マジかよ!そういえばお前を説得してたの秋雲だったな。あの時か!?」
木曾「そ、そうだ…」
提督「だから秋雲の奴、俺にも練習の時に代役させて、公演の前日に俺に出演を頼みに来やがったのか…」
木曾「あ、秋雲も悪気はなかった…と…思うんだ、許してやってくれ(ア,アハハハ…)」
提督「悪気があったらなお悪いわ!ったく。まぁ、もう過ぎた事だからいいけど」
ちなみに総監督を提督が、原作・脚本を秋雲が、演出とダンス指導を舞風が担当した舞台『海賊騎士・隻眼のウィリー』の映像は鎮守府で内部の希望者と外部への配布用として極少数DVD化され、鎮守府マニアの間では「幻のお宝DVD」として高値で取り引きされているとの事である。
木曾「ああ、有難う。でも、しばらくの間町に出るとき変装しないとあちこちから声をかけられてサインやら写真やら求められて大変だったなぁ(遠い目)」
提督「まぁ、もう落ち着いてる頃だろうから、そろそろ普通に出掛けられるだろうさ」
木曾「そうだな。だから…今度これに一緒に行かないか?」
木曾がチケットを取り出し、勝負を仕掛けたーーー
ーーー車の中
多摩「おっ、いよいよニャ。ほら、そこの二人、今いいところニャ!静かにするニャ!(シャーッ!)」
朝&松風「「す、すみません…」」
多摩(フッフッフッ…木曾に持たせたのは映画のチケット、しかもキャッチフレーズが『糖度200%の恋愛映画』ニャ!映画の中の恋人のようにイチャイチャすると良いニャ!)
提督「ん?これは…」
木曾「た、多摩ねえが、お前となら、楽しめるだろうって…」
提督「ーーー日本刀剣博覧会?」
木曾「?」
多摩「ニャ!ニャにいーーー!!!?」
多摩(ど、どういう事ニャ?多摩は確かに恋愛映画のチケットを渡したはずニャ!?な、なんでイチャイチャから最もかけ離れた刀の博覧会なんかに…)
提督「刀剣か…前から興味あったから丁度いいな、うん!」
木曾「おっ、この博覧会、会場近くで刀剣のオークションもやるみたいだぞ!」
提督「へぇーーっ、オークションかあ。参加しなくても見物ぐらいはできるかな?」
木曾「どうやら公開式のオークションらしい!見物も…有りだな!!!」
多摩(有りだな!じゃねーニャ!何テンション爆アゲしてんだニャ!!)
提督「ありゃ、これ明後日の日曜迄だ。」
木曾「そうか…都合はどうだ?」
提督「明後日なら都合はつくし、天気がよけりゃあ大和の車(往年の名車、トヨタ2000GTのレプリカ、2000GT・RHV)借りてドライブがてら行くか!」
木曾「いいねえ!テンションあがるなあ!!」
提督「おっ、この会場からちょっと離れたところに旨いイタリアンの店があるぞ!昼はピザとパスタはどうだ?」
木曾「ピザは久し振りだから楽しみだな!!」
提督「よーし、後で大和に車借りられるか聞いてこよ!いやー、まじで楽しみだなあ(ルンルン♪)」
多摩(もう何も言うまいニャ…(ハァ))
その後、二人は鎮守府につくまでテンション爆アゲのままだった。
そして、恋愛映画のチケットは多摩の私室に置いてあり、それを見て、「渡し間違えた」と気づいた多摩だった。
ーーーー清霜の場合(アニメのグルメ編)
朝0845
提督はとにかく腹がへっていた。
カルビを小屋に戻してから清掃や昨日酔いつぶれた香取や吹雪を見舞い、午前中休みを与える事を伝えていたら食事の時間を過ぎていた。
特に普段は秘書艦として頼りになる吹雪が、たまに二人きりの時だけ普段は言わないワガママを言い出し、さっきまで「頭が痛いから撫でて下さい」と言われ、たまのワガママだからと撫でていたら食事の時間を過ぎてしまったのだ。
これから執務室で作業をしなければならないが、腹の虫を鳴らしながらの作業は正直つらい
提督「まいったな…」
自室にある軽いお菓子でも食べてから行こうか?と考えていると、提督は食堂の前に来ていた。
食堂の「準備中」の札が今日はいつになく怨めしい。
提督「仕方ない、ここは自販機でミルクティーを買って自室にある乾パンでも食べてから行くかな」
〇雲「あれっ?」
提督「えっ?」
秋雲「おっはよーン!秋雲さんだよ!こんな時間に食堂に用事?」
提督「さっきまでうちのお姫さまの頼みを聞いていたら遅くなってね、執務開始まで時間もないから自販機でミルクティでも買って行こうかと…」
秋雲「ほほーう、つまりは腹がペコちゃんな訳ですな!ラッキー♪」
提督「ン?話が見えないんだが?」
秋雲「ちょうどいいや、ここはこの超絶美少女艦娘秋雲さんにまっかせなさーい!(ニヒヒ!)」
ーーー食堂内
秋雲に手を引かれて食堂内に入ると、秋雲の他にも何人かいて、テーブルについていた。
提督「雪風に時津風、巻雲に清霜、それに初雪、深雪、文月、望月と…見事に駆逐艦だらけだな」
一同「「お早うございます!!」」
提督「はい、お早う。んで、これは何の集まりだ?食堂掃除の手伝いの相談…なわきゃないか」
深雪「ひっでーな司令官!そんなにあたしらは手伝いするように見えないかい?」
提督「うん、文月と巻雲と雪風以外はな(バッサリ)」
初雪「ひ、ひどい…バッサリと切り捨てた…」
望月「きーずつーくぞー!」
時津風「ひどいよしれえ!」
清霜「清霜だってたまにはやるもん!」
提督「ならそう言われんように普段からしっかりしなきゃな。お前らの姉達にしっかり指導してもらうように言っておこう(アハハハハハ)」
秋雲「あちゃー、やぶ蛇だったかー(トホホ)」
提督「ところで真面目な話これは何の集まりだ?一応何かするときは俺に報告するようにしてあるはずだけど」
秋雲「あれ?誰も言ってなかった?」
一同「「あっ」」
提督「全く…こりゃあ姉達の他に『妙高の指導』も必要だな」
一同「「えーーっ!!」」
提督「えーじゃないよ!お前らだけじゃなくて俺だって『普段からの監督不行き届き』って事で妙高に怒られるの確定してるんだぞ!」
秋雲「お願い♪シンデレラ♪じゃない、提督!聞いてた事にしてくんない?今なら秋雲さんのたわわなお山を」
鳳翔「たわわなお山が…なんですか?(ニッコリ)」
秋雲「はわわわ…(ガクブル)」
鳳翔「あら、電ちゃんのマネかしら(ウフフフ)」
提督&一同((オワタ))
ーーー鳳翔さんお説教中(提督は昨日の分も含めて2割増し)
秋雲(タンコブ3段重ね)「い、痛い…(グスン)」
提督(タンコブ5段重ね)「な、何で俺まで…(ズキズキ)」
鳳翔「えっちなのはいけないと思います!(プンプン!)」
ーーーー鳳翔はエッチなものに厳しい。
どのくらい厳しいかというと、提督が思春期男子のようにエロ本を隠し持っていようものならたちまち見つけて提督の自室の机に置いて説教の後焼却される位である。
最初は泣き寝入りしていた提督は何回も鳳翔と機密文書の奪い合いの如くあの手この手で鎮守府にエロ本を持ち込もうとしている内に提督の中で『スパイ大作戦』でもやってるかのような楽しさを発見し、今では提督の密かな楽しみになっている事を鳳翔は知らない。
鳳翔「さあ、お説教はここまでにしてご飯にしましょうか」
提督「あれ?まだみんな食べてなかったのか?」
鳳翔「ええ、何でも…」
秋雲「おおっとお!そこから先はこの秋雲さんが説明しましょう!」
提督「秋雲が?」
秋雲「実はここにいるメンバーは『アニ飯同好会』のメンバーなのだー!」
提督「アニ飯同好会?」
秋雲「そう♪『アニメやマンガに出てきた食べ物を自分たちで作って食べよう!』をコンセプトにこの秋雲さんが中心になって結成したんだ♪!ちなみに~今日はこれだけしかいないけど、本当はもっといるよ~ん!」
鳳翔「皆がお料理を覚える良いきっかけになればいいなと思って私も手伝いを申し出たんですよ♪」
提督「すみません…皆食うばっかりで(汗)」
秋雲「んでー、今日はその第1回目で朝ごはんをテーマにしたものを作ろう!ってことで作ったはいいんだけど…(タハハ)」
提督「その様子じゃあ失敗したか作りすぎたな?(ヤレヤレ)」
秋雲「あったりー!実は作りすぎちゃってさー。ご飯まだなんでしょ?たっぷりあるから食べていってよ!お願い!」
提督「そりゃあありがたい。ありがたいが、何を作ったんだ?」
秋雲「アタシも含めて皆お料理はした事ない娘ばっかりだから簡単なやつにしたんだ。これだよ!」
提督「こ、これは…」
テーブルに置かれていたのは焼かれたベーコン2きれに玉子が6個載せられた皿と、円筒状の大きなパンとコーヒーだった。
それが1人一皿でなければマトモに見えるのだが。
パート1終わり、パート2に続く
まずはご覧いただきありがとうございます。なにぶん始めてなもので、すべて手探りで書いてますので、進行スピードの遅い(書く側になって始めて書く事の困難さを知りました)、駄文とは重々承知しておりますが、よろしければ、ご意見、ご感想をお待ちしております。
追記…作品要素にシリアスを追加しました。純生のコメディにするはずが…どうしてこうなった?
追記…一部を若干修正しています。後から見直すと細かいとこで気になってしかたない(涙)
期待!!!
金属製の餅さん、ご覧いただきありがとうございます。精進して参りますのでよろしくお願いします。
本当に初めて書くんですか?凄く読みやすいですよ!
自分も参考にさせてもらいますね!
どら焼きの話しは全く知りませんでした
どら焼き一つでもモデルがあるとはやはり凄い方だったんですね。でも、ブラックだったとは聞きますが・・
ポテ神提督さん、ご覧いただきありがとうございます。
この作品が初です。書き込んではプレビューで確認していますので時間はかかりますが、誤字、脱字の削除も兼ねて書いてます。
藤子先生のブラック話としては原稿を取りに来る編集者は会社のグレードによって出てくるお茶やお菓子のグレードが違ったそうです(苦笑)
これからも精進していきます。お互い頑張りましょう!
散弾銃というのは、猪と鹿とか獣害狩りで食い物を得る為か?w
まずはご覧いただきありがとうございます。基本的には加賀さんが所持している銃はクレー射撃に適した銃であり、狩りにも使えない事はないのですが、他の狩り用の銃と比べて2発(その他は3発までと規定で定められています)しか撃てないので、リアルで使うとしても罠にかかった獲物に止めをさすぐらいでしょう。ただし、加賀さんの事なので、仕留めることもあるかもです(笑)
面白く読まさせて頂いています!
一つツッコミを(あえて解りやすくしていたらごめんなさい)
ラジオ体操の他に、海軍体操や自衛隊体操って言うのもありますよ~
検証とか面倒ですが、ネタにもなると思いますよ~(棚上げ発言)
?????さん、御覧いただき有難うございます。
…正直に言います、その他の体操があるとは知らんかったとです(汗)ご指摘有り難うございました。これからも精進しますので、また何かありましたら宜しくお願いします!
?????さん、さっそくネタにさせていただきました!有り難うございます!
こちらこそ有り難う御座います!
ムフロンさんにツッコミ→自作品の大ポカ(泣)→修正加筆中に…→ツッコミのネタが面白くなって帰ってきてた!
こちらも精進しますので、有り難う御座います!
提督のノリで吹いたwwwwwwwwww
実際に歌いながら作りました(笑)
イメージはオリジナルの訳のわからない歌を歌う子どもです(笑)
カルビ不憫な子・・・
ハラミのステーキとランプ肉のシチュー美味しいですよね
ご覧いただき有り難うございます。
ステーキとシチュー…食べたい(ジュルリ!)
カルビはいい牛だったよ....(遠い目)
すごく読み応えがあると思います。これから頑張って下さい。
ご覧いただき有り難うございます。これからも精進していきますので、お互い頑張りましょう!
このレベルで初心者?恐ろしい子!
ご覧いただき有り難うございます!中々更新スピードがあがりませんが、頑張っていきます!
先代のまるゆって、まるゆさんじゃないか!?
19様、ご覧いただき、ありがとうございます
連投でもうしわけありません。先代さんについてはノーコメントとさせていただきます(笑)ただ先代さんは紛れもなく、奴です(笑)