再開、そして秘密兵器?(第15話)
先週、ニートになりましたが今週から職を得ました。以上です。
(これまでのあらすじ)
心身ともにボロボロになってしまった優香たちを別の施設に送り、茜たちは元優斗の鎮守府に移動して行動を行う事にした。
優斗は、例のドクターに治療してもらい完全復活とまでは言わないが、動けるようになった。
一方、朱里は艦娘の艤装の信号を優斗の鎮守府から出ているのを確認し、優斗の鎮守府へと向かい始める。
優斗「にしても、秘密兵器ねぇ…」
数分前に例のドクターに話された秘密兵器の事を考えながら、優斗は片付けを行っていた。
白露「どんなのなんだろうね、秘密兵器って」
優斗「さぁ? 深海棲艦を一撃で倒せるヤベーのとか?」
白露「ゆーくん、発想が子供っぽい…」
優斗「るせー!」
あのバケモノが襲ってくる前までは、こんな会話はここではただの日常的な談話だった。
けれども、今はそんな事は軽々と言える状況なんかではなかった。
夕暮「おーい、こっちも手伝ってよ…」
優斗「分かってらー」
白露「あ、私も手伝うー」
鎮守府の外にある荷物をまとめながら、優斗たちは秘密兵器の事について話し続けた。
夕暮「そもそも、秘密兵器って名ばかりでそんなに大したものじゃないのかもよ?」
優斗「いや、秘密兵器って呼んでるんだから絶対にヤベーやつだな」
白露「まーた、言ってる…」
夕暮「昔からそんな感じだったの? あの人」
白露「まぁ、うん…。変なこだわりでもあるのかな」
優斗「変とはなんだ。変とは」
夕暮「いや、十分変だと思う」
優斗「るせー! 男はこういう言葉が好きなんだよ!! 秘密兵器って言葉聞くと、ダメだと思ってもワクワクしちまうんだよ!!」
夕暮「えぇ…」
白露「えぇ…」
夕暮「やっぱり変な性格だよね」
白露「まぁ、そんなところを含めて私は好きなんだけれどもね」
夕暮「コラ、いちゃつくなっ!」
白露「ごめん、ごめんって…。叩くの止めてってば…」
夕暮「こちとらずっと海にいたんだぞー! 恋できなかった私の前でいちゃつくなー!」
白露「ごめん、本当にごめん」
優斗「あの…。話すのはいいんですけれども…。荷物こっちに全部押し付けるの止めてくれません? 重すぎて腰が痛いんですけれども」
夕暮「知るか!」
優斗の持つ荷物の上に、夕暮が持っていた荷物を更に乗っける。
優斗「ふぐぅ!?」
白露「ちょ、これ以上は…」
夕暮と白露は今は身体の半分が深海棲艦化している状態なので、重い荷物でも特に苦もせずに持ち上げられている。
ただ、優斗は普通の人間である。しかも、怪我明けでもある。
優斗「あがっ…。腰、こひがぁ…」
白露「ゆーくん!? まだ腰をやるには早いよ!?」
優斗「な、何気に…。酷い事言うな…。茜…」
白露「と、とりあえず、この辺のベンチに寝転がせておくから。荷物は私たちが運ぶよ」
優斗「頼むわ…。マジでヤベェ」
夕暮「ギックリ腰?」
優斗「かもな…。どうしてこうなるんだ…」
夕暮「さぁ?」
白露「いや、夕暮ちゃんのせいでしょ…」
2人が優斗の持つ荷物を分けて持ち、運んでいった。
優斗は海の方を向いた状態で横になっていた。2人が荷物を運んでいってから少し経つと、何かが近づいてきているのが目に入った。
優斗「なんだ、アレ…? もしかして、敵か!?」
身体を起こそうとする。だが、ギックリ腰になったのを忘れていた。
優斗「いでぇぇぇ!!」
あまりの痛さに我慢できずに身体を動かしてしまった。
そのままベンチから落ちてしまう。
優斗「アァァァァァ!!!」
腰を強打した。激痛というレベルではない痛みが優斗の全身を襲った。
そんな中、2人は荷物を運んでいた。
夕暮「それにしてもココの鎮守府、本当に広いよね…」
白露「元は別の施設だったらしいんだけれどもね。改造して鎮守府にしちゃったんだってさ」
夕暮「軍も何気にとんでもない事やってるわね…」
白露「まぁ、私たちがまだ生まれる前の事だから」
たわいもない話をしながら荷物を運んでいると、2人の目に海上を移動する何かが見えた。
夕暮「何、アレ…」
白露「私たちの味方…。ではないみたいだね」
味方なら、鎮守府付近であんなにスピードを出してこっちに向かって突っこんで来る訳ない。
前元帥とドクター、レ級とヲ級は今は別件で行動中だ。なので、動けるのは自分たち2人だ。
白露「行こうか。夕暮ちゃん」
夕暮「うん」
荷物を目的の部屋に置いて、海上へと向かう。
白露「強いヤツじゃなきゃいいんだけれどもね」
夕暮「そうだといいんだけれどもね…」
見た感じだと、あのバケモノではない。
けれども、どんな敵かも分からないので油断できない。
夕暮「…着いた!」
白露「行くよ!!」
海の上を走っていく。少しずつ、こっちに向かって接近してくる敵が大きく見えてくる。
白露「…あり?」
夕暮「…?」
しかし、近づくにつれておかしな事に気づく。
敵なら、こっちに向かって何かしら攻撃してくるハズだ。けれども、何もしてこない。
気になり、更に接近していく。
白露「…アレ? お姉ちゃん?」
朱里「あ、あか…」
朱里は茜を見て、何か言おうとした。
しかし、横にいた夕暮を見て、言いかけた言葉が口から消えた。
朱里「ゆ、ゆく…? 夕暮、なの…?」
夕暮「え、あ、えっと…」
朱里「ほ、本当に夕暮…。なの?」
夕暮「…うん」
その言葉を聞いた瞬間、朱里は倒れてしまった。
白露「ちょ、お姉ちゃん!?」
夕暮「…私が運ぶよ。茜ちゃんは周りを見てて」
白露「う、うん」
夕暮が朱里を背負う。身体の半分が深海棲艦化しているおかげで簡単に背負えたが、少しだけそれが嫌だった。
深海棲艦化した部分では、人間の暖かさを感じられない。
せっかくの再開、なのに辛い再開になってしまった。でも、少しだけ嬉しかった。
姉も、そもそも自分がこんな形になって生きていたと思ってはいなかっただろう。
けれども、なぜか一瞬で自分と分かった。
それだけ。たったそれだけでも、自分にとっては嬉しい事だった。
鎮守府に戻ると、朱里をベッドの上に横にした。
艤装を外すのは少し前まで艤装をつけて戦っていた茜に任せた。艤装を外し終えると、ベッドの横に座った。
夕暮「お姉ちゃん…」
白露「まさか、お姉ちゃんがここまで来るなんて、ね…」
夕暮「でも、お姉ちゃんはこんな目に合わなくて良かった…」
白露「まぁ、そうだよね…」
部屋の中で、3人は静かに過ごしていた。
1時間弱程経つと、朱里が目を覚ました。
朱里「…アレ。ここ…」
白露「あ、目覚めた?」
朱里「うん…」
目を覚ました朱里は、誰かを探しているようだった。
白露「夕暮ちゃん探してるの?」
朱里「ホントに…。あれは夕暮だったの?」
白露「うん。お姉ちゃんが見たのは、正真正銘の夕暮ちゃんだよ」
朱里「でも、なんでココにいないの? 私が気を失った時はいたのに…」
夕暮「…いるよ。ココに」
部屋の中に夕暮が入ってくる。
朱里「夕暮…」
夕暮「お姉、ちゃん…」
朱里「まさか、もう、会えなくなってると思ってたのに、ね…」
夕暮「ホントに…。ホントだよ」
朱里「とりあえず…。お帰り。夕暮」
夕暮「…うん。ただいま、お姉ちゃん」
涙ぐむ夕暮を、朱里がそっと優しく抱きしめた。
白露「…良かったね。お姉ちゃんも、夕暮ちゃんも」
朱里、夕暮が泣きながら抱き合っているのを見ながら、茜も涙を流していた。
それと同時刻、別室では例の秘密兵器の事について話していた。
医者「これだけ資料が揃えば、完成させられますね」
前元帥「ようやく、だな」
ドクター「あの研究室から父がこの資料を持ち出してくれたおかげですよ。この資料がなければ、私はずっと人間を兵器化する研究の事について何も知る事は出来なかったんですから」
前元帥「さて、過去に深海棲艦のようにされた娘たちを救おうか」
医者「はい。そして、あのバケモノを…。いや、この深海棲艦との戦いに終止符を打ってみせます」
前元帥「始めようか」
医者「了解です」
パソコンに、これまで入っていたデータに追加する形で新たにデータを入力していく。
前元帥「上手く完成してくれればいいんだけれどもな」
医者「前に作ってもらったモノは、まだ完全に完成していなかったですからね…」
前元帥「必要なデータは全て手に入れているんだけれどもなぁ…」
医者「こればかりは神に祈るしかないですよ」
そう言ったそばから、機械がエラーを吐く。
前元帥「…大丈夫か? これ」
医者「何事も挑戦が必要ですよ。…多分」
前元帥「多分、て…」
医者「ま、まぁ、次いきましょう。今度は…大丈夫なハズですから!」
次も、エラーを吐いた。
前元帥「おい」
医者「今度こそどうにかしてみせます!」
前元帥「頼むぞ…?」
前元帥らは、機械の目の前でひたすらに格闘を続けるのであった…。
ーーどこかーー
優斗「…俺、忘れられてない?」
腰が痛くて動けない。しかも、ベンチから落っこちてそのままだよ?
転がって移動しようにも痛くてそれどころじゃないよ? というか、転がっていった方が痛いよ?
てか、誰か助けてくれない?
(次回に続く)
優斗「ちょ、オイ!? 俺このままで次回に続くの!?」
次回、「最初で最後の全力決戦」に続きます。
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