雨の日は流石にいないと思うじゃん?いるんだよなぁ、グレートな奴がよお ♯2
2話
鬼塚は、音ノ木坂に着くと早速理事長室へと足を運んだ。
「ういーーす。」
突然見知らぬ男が入ってきた南理事長は「わっ!」と声を上げ、動けないでいた。
「だ、誰ですか!学園に堂々と侵入して!」
「いやいやいや!桜井理事長に今日から1ヶ月ここに行けって言われて来たんすけど!」
南理事長の言葉に全力で対抗する鬼塚。しばらくの沈黙の後南理事長が口を開いた。
「へっ?...じゃああなたが桜井理事長の言ってた...」
「うっす、鬼塚英吉です。よろしくおねがいします」
教師とは思えぬ風貌に履歴書を4度見する南理事長。南理事長は、心で呟いた。「あー、履歴書見忘れてた」と。
「と、とりあえず今日からよろしくおねがいします。鬼塚先生には、1ヶ月間、2年生の担任を持っていただきます。それと...」
「それと?」
何かを言いかけた途端、南理事長は口を閉ざした。それに反応する鬼塚。鬼塚は、今までの経験から何かを察した。
「ま、教室行けばわかるでしょ?理事長案内おねがいしまっす。」
「え?ええ。」
ノリが軽い鬼塚に翻弄されながらも、理事長は鬼塚を教室へと案内した。
突然見慣れない男が入ってきた様子を見て、生徒たちはザワつきだす。
「えー、今日から1ヶ月の間ですがこのクラスの担任をしてもらうことになりました。おに...」
理事長が鬼塚を紹介しようとした途端、鬼塚はいきなりサングラスをかけだし足音をわざとらしく立てチョークを手に持ち黒板に文字を書き出す。
『GTO』
「今日からおめえらの担任になるGTO!グレートティーチャー鬼塚だ!!」
いきなりのドスの効いた自己紹介に沈黙を隠せない生徒と理事長。
「あ、あり?なんだよおめえら、もっとこう...若さ全快でもりあげてくれよお、まったくこれだから最近の若い奴は...」
「そ、そんなヤクザみたいな自己紹介がありますか!」
「なんでっすか!?決まってるでしょ!グレートティーチャー鬼塚!」
鬼塚と理事長の漫才のようなやりとりをしばらくした後、鬼塚はふと教室で気になるものを発見した。
「あ?なんであの席だけ空いてんだ?」
鬼塚がそれを言い出した途端、生徒たちの空気が変わった。まるで触れてはいけないものに触れたような感覚だった。しかし、鬼塚は、気にせず続けた。
「えーと、あの席は...高坂穂乃果か...ってなんだ?こいつ1ヶ月も学校来てねえじゃねえか?なんか病気でもしたのか?」
鬼塚の問いかけに誰も答えない生徒たち、理事長も戸惑った顔をしていた。
「なんだ?どいつもこいつも黙りやがって...あ?」
高坂の席をよく見ると日光の反射で最初はよく見えなかったが何か気になるものを見つけた鬼塚。ズカズカと高坂の席に近づく。
高坂の机には数々の暴言が書かれていた。机だけでなく椅子にも所狭しと暴言が書かれていた。鬼塚はこれを見た途端このクラスで何が起きてるのか、自分がなぜ急にこの学校に呼ばれたのか理解した。
「なるほどな...おい、これやったの誰だ?」
鬼塚は、息苦しさを感じる空気を振り払うように生徒たちに問いかけた。すると1人の生徒が口を開いた。
「高坂さんは特に何もありませんよ。ここしばらく体調を崩されて欠席しているだけです。」
若干紫ががった長髪の生徒、園田海未だった。鬼塚は、ポケットに入れていた名簿を確認した。
「園田海未か...確かえーとユーズだったか?高坂と同じアイドルやってたんだよな?なんだか冷てえじゃねえか、仲間が体調崩してるってのに。」
「別に仲間というわけではありません、昔の話です。それとユーズじゃなくμ's(ミューズ)です。」
生徒たちは鬼塚を馬鹿にしたようなクスクスとした笑い声を出していた。しかし、鬼塚は気にせず名簿を確認した。
「お!いたいた。お前が南ことりか。そのなんとかってグループのメンバーで理事長の娘なんだってな。」
いつもは愛嬌のある南ことり、しかしこの時だけ鬼塚への態度が違った。
「あの、高坂さんの話はやめてもらえますか?クラスのみんなが不快になるので。」
ことりの言葉に一瞬血が上りそうになった鬼塚だが、なんとか落ち着かせた。
「どうなってんだよ...」
鬼塚の戸惑いながらも理事長とともに教室を後にした。
「ごめんなさい、鬼塚先生。私も最初に説明しようとは思ったんですが...」
「いや、まあ何となく状況はわかったんすけど...最初から教えてくれませんか?」
鬼塚は、状況を整理しようと理事長の説明に耳を傾けた。高坂穂乃果は、元々園田海未と南ことりの親友であり、音ノ木坂の廃校を阻止するべくμ'sを立ち上げ、そしてリーダーとしてグループをまとめ上げた。しかし、ある日を境にクラスでのいじめから始まり、μ'sの解散、親友からの拒絶。どれもこれも突然のことであり、理事長も状況を完璧には把握できていなかった。
「私も突然のことすぎて何がなんだか...教師として本当に不甲斐ない...」
「まあ、でも何となく状況は掴めたんで。放課後行ってきますわ。」
理事長の言葉をフォローしながらまた突然意味深なことを言った鬼塚。
「え?行くってどこへ?」
理事長の問いに鬼塚は答えた。
「決まってるでしょ、高坂ん家ですよ。」
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