雨の日は流石にいないと思うじゃん?いるんだよなぁ、グレートな奴がよお ♯10
10話
「おい南!待て!」
鬼塚は、涙を流しながら走ることりを追いかけ、なんとか追いつき手を掴む。
「離して!」
「これ以上どっか行かねえならはなしてやる。」
鬼塚がそういうとことりは、抵抗をやめて大人しくなる。鬼塚は、それに気づくと手を離した。
「どうして私なんですか?なんで私が高坂さんみたいにならなきゃいけないの?!」
ことりはそう叫んだ。まさかいじめの標的が穂乃果からことりに変わったことを信じることができなかった。それは、鬼塚も同じだった。
「俺にもわからねえ、でも逃げても何にも変わらねえだろ。」
鬼塚は、ことりを連れて学校へ帰ろうとするもことりはそれを拒否した。
「いいです...どうせ行ったって高坂さんみたいに辛い目にあうだけだから。それに私には、信頼できる人がいるから。」
ことりの言葉に鬼塚は、すぐ康太のことだと気づいた。鬼塚は、穂乃果や海未が康太関連で何が起こったのかを話した。
「そんな嘘に私は騙されませんよ。」
「嘘なんかじゃねえ、高坂や俺を信用できないなら園田に聞いてみろよ。」
「どうせ海未ちゃんと口裏合わせてるに決まってます!康太さんはそんなことしません!」
鬼塚の言葉を一切信じないことり。ことりの中でそれほど康太の存在が大きいということだろう。
「今日は、早退します。お母さんにもそう伝えて下さい。」
ことりは、そう言うとうつむきながら自宅へと向かった。鬼塚は、そんなことりにかける言葉が見つからなかった。
鬼塚は、学校に戻り理事長にことりのことを伝えた。
「そうですか...ことり...」
ことりを心配する理事長に鬼塚は言った。
「必ず南を説得してみせます。」
鬼塚は、すぐさま理事長室を出ようとする。理事長は、そんな鬼塚に問いかけた。
「鬼塚先生、どうしてあなたはそこまで生徒達のために頑張るのですか?いくら担任とはいえ、たった1ヶ月だけの関係なのに...」
そう言う理事長に鬼塚は答えた。
「時間じゃねえんすよ。1度でも俺の生徒になったらもう俺の大事なダチですから。」
鬼塚は理事長室を飛び出した。そして、携帯で二宮に連絡した。
「お前の言うことだからあの男については引き続き若えのに探らせてるよ。心配すんな。」
二宮は、海未の時に続いて康太について調べていた。わかったことは、ことりとは直接会ってはいないものの携帯で連絡をとりあい、何かしらの指示を康太から受けていたこと。そして、1度だけ音ノ木坂の生徒に接触し、金銭を渡していたということ。
「つまり、そいつは自分で直接手を加えずに南を貶めてるってわけか。その生徒達の写真とかあるか?」
二宮は、そんな鬼塚の言葉をまるでこれから言うことをわかってたように写真を鬼塚の携帯に送った。
「こいつら...俺のクラスの奴じゃねえか。」
鬼塚は、驚愕した。康太から金銭を受けていたのは、クラスの穂乃果いじめが収まってきた中で未だに続け、次にことりいじめを始めた麻耶、黒羽、美紅だった。写真の康太と思わしき人物は、フードを深く被り、顔を隠していた。
「わりいな、顔までは撮れなかった。もしかしたら整形してるかもしれねぇ。一応、俺の族にいた頃の写真探しておく。」
「わりいな、二宮。」
鬼塚は、その日は教師としての仕事をしながら今後の動きを考えた。そして、康太から金銭を受けていた生徒を放課後に呼び出すことにした。
「で、先生が一体何の用ですか?」
放課後に呼び出した生徒は3人。いずれも、穂乃果いじめを積極的に行っていた人物であると鬼塚は海未から事前に聞いていた。
「ダチからこの写真もらってよ、わかるよな?」
鬼塚は、二宮からもらった写真を3人に突きつけた。しかし、3人は態度を変えなかった。
「先生、教師が盗撮とかあり得ないんだけど。」
美紅の反抗的な態度に鬼塚は動じず続けた。
「んなこたぁ今はどうでもいい。謝れってんなら話が終わったらいくらでも謝ってやる。この男から何言われた?」
「答える義務ありますか?」
黒羽達の鬼塚への反抗的な態度は、変わらずむしろ悪化していた。
「高坂の次は南をいじめて...クラスの仲間いじめてどうすんだよ。」
「別に私達だけじゃないじゃん。というか同じクラスなだけで仲間とかドラマですか?」
鬼塚の言葉をあざ笑う3人。しかし、鬼塚は怒るどころか冷静に話を続けた。
「じゃあ話変えるわ。なんでいじめんだ?」
鬼塚の言葉に3人は答えた。
「楽しいからに決まってんじゃん。」
「てかスクールアイドルやってる頃から気に食わなかったんだよね。たかが部活動の癖になに芸能人ぶってんのって。」
「しかも高坂さんより私は南さんが1番気にくわないんだよね。ぶりっ子キャラだし、理事長の娘だからって調子こきすぎ。」
3人は悪びれもせず笑いながら鬼塚に話していた。すると、鬼塚は表情を一切変えず、拳を握りしめて壁を殴りつけた。壁には人間が殴ったとは思えないほどの大きさの穴があいた。それを見た3人は、さすがに鬼塚に恐怖を感じた。
「な、なに?教師が脅し?暴力?や、やってみなよ...そしたらあんた1ヶ月どころか即刻クビだよ!」
麻耶のそんなセリフは鬼塚は今まで飽きるほど聞いていた。吉祥寺、湘南と数々の友人達と出会ってきた鬼塚にとっては何も感じさせなかった。鬼塚は、急に笑顔になり話した。
「よーし、わかった。そこまでお前らの口がハマグリみてえに固えならこじ開けてやるよ。」
すると鬼塚は、3人の後ろに回り込み、襟元を掴んで引きずり始めた。
「きゃあ!?ちょっとなにすんのよ!?」
「なぁに、ハマグリって固えけどあっためたらすぐ口開くだろお?ちょっとあっためるだけだよ。」
鬼塚は、そう言うと3人を屋上へと連れ出した。そして、どこからか取り出したロープで3人を縛り上げた。
「ま、まさかつき落とそうってこと?残念ね!フェンスがあるんだからできっこないわ!」
「んな単純なことしねえよ、ばーか。」
鬼塚は、タバコに火をつけそのタバコを生徒に近づけ、3人を煽り始めた。
「ほーらアチいだろ?もっと近づけたら口開くかあ?」
「きゃあ?!こ、こんなの体罰どころじゃないわ!!教育委員会、いや警察に訴えてやる!」
「そ、そうよ!そうしたらクビどころじゃないわ!刑務所よ!教師どころかどこにも就職できなくなるわ!!」
美紅と黒羽は鬼塚を脅し続けるが鬼塚はビクともしない。むしろ、さらに煽り続けた。
「あぁん?こちとら頭の血管破けて生死さまよってんだ、今更警察も教育委員会も怖かねえんだよ。ほらほら、いい加減話さないと火傷しちゃいまちゅよ〜。」
「ひいい?!煙が目に!!あっつい!やめて?!」
タバコはまだ生徒に触れてはないが間近のところまで来ていた。すると、麻耶が話し始めた。
「み、南さんをイジメればお金くれるって言うからそうしたのよ!言われてそうしたの!!」
「ち、ちょっと!なに話してんのよ!」
「そうよ!バレないようにやれって言われたじゃない!」
「怪我させられるよりマシでしょ!?」
3人は言い争いをはじめたが、鬼塚はタバコを吸い終わると携帯を取り出し言った。
「録音完了。じゃあ誰か来るの待ってろよー。」
「ちょっと!縄ほどいてよ!ねえ!」
鬼塚は、生徒を縄で縛ったままその場を去った。
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