雨の日は流石にいないと思うじゃん?いるんだよなぁ、グレートな奴がよお ♯14
14話
翌日の放課後、凛を除いたμ'sメンバーは、鬼塚と共にNAGISAでお茶会をしていた。
「しかし、凛ちゃんどうやってμ'sに戻ってきてもらうん?」
「流石に厳しいと思うわよ?陸上部ではもうエース的な存在になってるらしいし。」
希と真姫は、凛のことを気にしていたが、現在陸上部で活躍している様子からして、μ's復帰は難しい状況だった。
「そうだ!凛ちゃんは猫が好きだからいつもみたいに先生に猫のコスプレしてもらおうよ!アレルギーもでないし一石二鳥だよ!」
「お、いいなそれ!」
穂乃果と鬼塚はいつものように漫才を繰り広げていた。しかし、1年と3年はこう思っていた。「いつもコスプレしてるの?!」と。そんな中、1人来客があった。前日にいざこざがあった麻耶だった。
「こ、こんにちわ...」
「あ!麻耶ちゃん!」
穂乃果は麻耶を歓迎した。以前は自分をいじめていたが昨日のことから和解し、連絡を取り合う仲になっていた。
「すげえな、穂乃果ちゃんって。」
「これも穂乃果の良いところです。」
龍二は穂乃果に関心し、海未もそんな穂乃果を尊敬していた。
すっかり麻耶は、μ'sにとけ込んでいた。今では、凛がμ'sに復帰する取り組みに協力していた。
「そういや、麻耶。学校では大丈夫なのか?」
鬼塚は、黒羽と美紅のグループから抜けた麻耶を心配したが、麻耶は笑顔で答えた。
「うん、高坂さんや鬼塚先生もいるし...今のところ大丈夫だよ。」
その言葉を聞いた鬼塚は、安心し涙を流した。
「くうぅ...これぞ教師冥利につきるってやつだぁ...そこでだ、麻耶、俺にちょっとお小遣いめぐんでくれねえか?」
「アホかてめえは!」
鬼塚の調子に乗った姿を見た龍二は、鬼塚の溝を思い切り殴りつけた。
そんな中、麻耶は黒羽と美紅のことを話し始めた。
「あの2人...実はちょっと心配なんだ。今日鬼塚先生に話そうと思ってたんだけど。」
麻耶は、2人の素性を話した。複雑だが、2人は現在一緒に暮らしており、2人とも片親ずつで親同士で交際関係にあり、美紅と黒羽が中学3年の時から同居しているということだった。
「ふ、複雑ね...非常に...」
にこも片親だが、2人の家族関係には敵わないと感服していた。
「うん、でも...2人の親って結構...異性遊びが激しいらしくて、まともに育てられてないっていうか、愛されてないっていうか...よく愚痴を聞いてたの。」
「確かに...いつも学校では暇そうにしてましたね。」
麻耶の言葉に海未は納得した。それが本当なら、毎日楽しそうに学校生活を送っていた穂乃果に嫉妬し、康太との一件でことりや海未とすれ違いはじめたのをきっかけにいじめを始めたのも納得できた。
「家庭環境ね...」
鬼塚がそう呟くと花陽が心配そうに声をかけた。
「せ、先生...また何か企んでますか?」
「いんや、なにも。」
鬼塚の返答に、その場にいた全員が「絶対嘘だ」と心で叫んだ。
翌日、ホームルームの際に鬼塚は黒羽と美紅を呼び出した。当然、2人は目を合わせず、偉そうな態度をとっていた。
「よお、お前ら...随分と偉そうだな。」
「別に、普通だから。」
「さっさと要件すませてくれる?」
そんな2人の態度に表情1つ変えず鬼塚は、2人に向かって言った。
「今日は、課外授業だ。ついてこい。」
鬼塚はそう言うと2人の手を引っ張り外に連れ出した。
「はっ?!課外授業?!」
「ちょっとなに考えてんの?!あんたこれから授業でしょ?!」
慌てる2人に鬼塚は言った。
「たまには先生が授業サボったって良いだろうよ!」
鬼塚は、2人を様々なところに連れ回した。映画、ゲームセンター、焼肉、カラオケ、鬼塚のそんな突拍子のない行動に最初は戸惑っていた2人はいつのまにか慣れたのか笑顔が見え始めた。そして、日も暮れ、3人はNAGISAで夕飯をとっていた。
「あーなんかウソ見たい。」
「まさか先生が学校サボって生徒と遊んでるなんてね。ちょっとしたスキャンダルだよ。」
2人がいじめの時以外に見せる笑顔は全く違うものだった。鬼塚は、それを見れただけでも満足だった。
「だろお?遊びたい時はいつでも声かけろよ、流石に毎日は無理だけどよ。」
そんな鬼塚に、美紅は口を開いた。
「それで...目的はなに?」
鬼塚はキョトンとしていた。
「え?もしかして何も考えずに楽しむためだけ?」
「なんか私達から聞き出そうとしたわけじゃないの?」
鬼塚は変わらずキョトンとしながら口を開く。
「なんだそれ?」
鬼塚のそんな言葉を聞いた瞬間、2人は呆れているのか関心しているのかわからないため息をついた。
「本当にあんた教師?よくクビにならないね。」
「ダチを大切にするのは俺のポリシーだからよ。」
「またダチって...ただ同じクラスってだけじゃん。」
3人はそんなやりとりをしていると美紅がつぶやいた。
「そうだよ...同じクラスってだけだよ。同じ家にいても家族じゃないのと同じ。」
美紅の言葉に鬼塚は、反応した。
「なんだそれ?同じ家にいるんだから家族だろ。」
美紅はそれを聞いてテーブルを叩いて立ち上がった。
「綺麗事言わないでよ!」
「ちょっと美紅!」
頭に血が上った美紅を落ち着かせる黒羽。しかし、美紅はおさまらなかった。
「今日は楽しかった...でも、私とあんたはダチなんかじゃないから!先に帰る。」
そう言うと美紅は店を出て行った。黒羽は、追いかけようとしたが鬼塚が呼び止めた。その代わり、龍二が鬼塚とアイコンタクトをとり、美紅を追いかける。
黒羽は、椅子に腰掛け、無言だった。しばらくすると黒羽は口を開いた。
「私達の両親のこと...麻耶から聞いてる?」
「あー、片親同士で一緒に住んでんだろ?詳しくは知らねえけど。」
鬼塚は、黒羽にそう言うと黒羽は、自分の親のことを話し始めた。
「私は父親がいるんだけどさ、小さい頃から暴力受けて...ひどい時は遊んでる女も一緒に叩いたりしてたの。」
黒羽は、うつむきながら話を続けた。
「つい最近...美紅が叩かれてるの見て、何とか止めようとして私も一緒に叩かれて...その時美紅の母親何してたと思う?別室で他の男とやってたんだよ?」
鬼塚は、その話を聞いて飲んでいた飲み物を吹き出した。さすがの鬼塚もそこまでひどい親を聞いたことがなかった。
「その逆もあったの...美紅の母親から2人で暴力受けて、父親は別室で...ほんと狂ってるよね。」
そう話す黒羽の顔は嘘をついているものではなかった。鬼塚は、2人が積極的に仲間を増やしてまで穂乃果いじめを続けていたのかわかった。鬼塚は、「そうか...」としか言えなかった。
一方、龍二も美紅から同じ話を聞いていた。龍二も鬼塚と同じく2人の親に対して驚愕していた。
「とんだクソ親なんだな。」
龍二は、そう美紅に言った。美紅は、それ以上何も言わなかった。そんな中、龍二が口を開いた。
「でも、良いに越したことはねえけど...親なんかどうだっていいんだよ。美紅ちゃんは美紅ちゃんだろ。」
龍二は、自分の思ったことを話した。
「だからさ、今日みたいに誰かと映画見て、遊んで、ご飯食べて...普通の生活がしていたかった。」
美紅は、龍二に本心を話していた。その後、龍二は、気にかけながらも美紅を家に届け、鬼塚も黒羽を家に届けた。
その夜、美紅と黒羽の家から怒号が響いた。
「てめえ!いまなんつった?!」
怒号は、黒羽の父親だった。黒羽の父は、黒羽の頰を平手打ちした。それに負けじと黒羽は父親を罵倒する。
「父親らしいことしろって言ってんのよ!毎晩女連れ込んで迷惑なのよ!!」
黒羽は、いつも父親に口答えはしなかった。黙っていれば被害は最小限に抑えられる。しかし、今日の鬼塚の行動が原因なのか、父親の行動を批判した。
「珍しく生意気じゃねえか、その口開けねえようにしてやるからよ!」
そう言い、黒羽の父親は再び黒羽を叩こうとした。すると、美紅がそれを庇った。
「美紅!?」
「あんた黒羽の父親でしょ!家族なんでしょ?!叩く以外に教育できないわけ?!」
美紅の言葉によって完全に血が上った黒羽の父親は、美紅を殴りつけた。
「こんな望んでもいねえ娘を持ってるこっちの身にもなれや!!あの女勝手にこんな女産んでその上自分は死んじまうんだからな!てめえなんかさっさと死んでしまえ穀潰しが!」
そんな怒号の中、美紅の母親が部屋に入ってきた。
「あーほんとうるっさいわね、あんたら。こっちはもう少しでいい男落とせそうなんだから邪魔しないでくれる?こちとら金持ちの男先に死んで邪魔な娘残されて迷惑してんだから。」
黒羽の父親といい、美紅の母親といい、親と呼べる人間ではなかった。
そんな2人に美紅は反論した。
「仮にも産んだんだから親でしょ...いい加減遊んでないでまともに暮らせないわけ!?」
美紅の母親は答えた。
「勝手に生まれてきたんでしょ、あんたらなんかさっさと流れれば良かったのに。」
その言葉を聞いた美紅と黒羽は、咄嗟に家を飛び出した。
「ちくしょう...ちくしょう!!」
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