雨の日は流石にいないと思うじゃん?いるんだよなぁ、グレートな奴がよお ♯13
オリキャラだしてもいいだろ?グレートに書くからよお
13話
穂乃果は、今日という日を待ちわびていた。穂乃果は今、海未とことりと3人で登校している。
「こ、これだよ!これこそ私の学校生活!おかえり!私の日常!!」
穂乃果は嬉しさのあまり飛び跳ねて喜んだ。
「こら、穂乃果。はしゃいだら周りの人に迷惑ですよ?」
「でも穂乃果ちゃんらしい!」
海未とことりからの言葉は、当たり前でとても懐かしい感覚だった。一時、関係を壊されたが鬼塚によって以前よりも強くその関係を治すことができた。
「これも鬼塚先生のおかげだよ!早く学校行ってお礼しなきゃ!」
海未とことりは、急ぐ穂乃果を慌てて追いかけた。教室に足を踏み入れた3人、クラスメイトはまだ全員ではないが徐々に3人のことを以前と変わらない様子で接していた。
穂乃果は、鬼塚が教室に来るのを今か今かと待ち望んでいた。そして、ついにホームルームのチャイムが鳴り、鬼塚が教室に入ってきた。しかし、鬼塚の顔はいつもの無邪気なものではなく、白く、絶望に満ちた表情だった。
「あ、あれ?」
穂乃果は本当に鬼塚かと思った。しかし、それは間違いなく鬼塚本人だった。鬼塚は、咄嗟に段ボールで作った貯金箱のようなものを教卓へ叩きつけた。
「おはようございます。音ノ木坂学院の美少女達。諸君には私への愛の募金活動にご協力していただきたいのです。一口1000円からよろしくお願いします。」
「いつもの先生じゃない!?しかも、地味に高いよ!」
鬼塚のセリフについ突っ込んだ穂乃果。すると、鬼塚は口を開いた。
「えぇ、私は家賃、光熱費、水道、ガス、携帯、バイクのローン、園田さんと理事長への御奉仕代諸々合わせて約100万円程必要なのです。」
「誤解を招く言い方はやめてください!」
鬼塚のセリフにことりと海未は同時に突っ込んだ。そんなやりとりにクラス全体が笑いに包まれた。しかし、そんな中、全く笑わない3人組がいた。積極的に穂乃果やことりへのいじめを行なっていた生徒の麻耶、美紅、黒羽だった。
「あいつら、今に見てろよ。」
麻耶は、そう呟くと携帯で美紅と黒羽に連絡をした。必ず鬼塚を学園から追い出すと。放課後、鬼塚は部室に向かっていた。
「さぁて、星空が戻ってくればμ's完全復活だなぁ。どうすっかな...」
そんな独り言を言っていると麻耶が鬼塚に話しかけた。
「先生!」
「おお、麻耶か。どした?」
不意に予想していなかった人物に呼び止められた鬼塚。麻耶は鬼塚に話した。
「今日さ、一緒に帰ろ?」
「あ?何言ってんだよ、俺はこれから部活あるから...」
「私ね、ほんとは高坂さん達に謝りたいの。でも、どうすればいいかわからなくて。お願い!話聞いて!」
麻耶は鬼塚に相談を持ちかけてきた。いくらいじめっ子だとしても麻耶は大事な生徒、鬼塚は放ってはおけなかった。鬼塚は、麻耶を家まで送った。
「ったく、謝りたいなら素直に面と面向かってごめんって言えばいいんだよ。簡単だろ?」
「私は先生みたいに単純じゃないの。」
地味に鬼塚を貶す麻耶だが、その表情は本当に悩みを持っている人間のものだった。そんな話をしていると麻耶の自宅に到着した。
「ほら、ここだろ?俺は学校戻るぜ。」
鬼塚が帰ろうとした途端、麻耶は鬼塚の手を握りはじめた。
「まって、先生...もうちょっとだけ側にいて?今日、親いないんだ。」
「ま、麻耶くん?お、俺は先生だ...こんなとこ見られると...その...」
麻耶の誘いに満更でもない鬼塚、どこかで似たような経験をしたことはあるがそんなことは頭から離れて麻耶の自宅にに上がってしまった。麻耶は、鬼塚にべったりくっつき話し始める。
「私ね、美紅と黒羽にひどい扱いされてて...ほんとはグループ抜けたいの。でも、そうしたら何されるかわからないから怖くて...」
そんなことを話す麻耶は涙目になっていた。鬼塚は、そんな麻耶を励まそうとした瞬間、急に柄の悪い男達が押し入ってきた。
「なんだおまえら?」
すると麻耶はいきなり男達の方へ行き、口を開いた。
「この男、教師のくせに生徒の私に手出そうしてきたから。ボコボコにしといて。」
麻耶がそう言うと男達は鬼塚にジリジリと近づいていく。鬼塚は口を開いた。
「麻耶...俺を騙したのか?」
「騙される方が悪いんでしょ?」
麻耶は悪びれる様子はなかった。しかし、鬼塚は麻耶の表情を見逃さなかった。
「悩み...あれも嘘だったのか?」
「おい、てめえ無視すんじゃ...」
男が鬼塚に詰め寄るが鬼塚は、男の顔面に思い切り拳をめり込ませて気絶させた。
「ちょっ...」
麻耶は、まさか一発でやられるとは思っていなかった。男達はそんな鬼塚に怯え始める。鬼塚は、のびた男を他の男に抱えさせ追い払った。
「さぁて、麻耶。どういうことか説明してもらおうか。」
「な、なによ...また縄で縛って脅す気?や、やってみなさいよ!!」
麻耶は鬼塚に強気を見せるが実際は、足を震わせていた。そんな麻耶を見た鬼塚は、呆れたようにため息をつき、ソファに腰掛ける。
「悪いけど、怯えてる女に手出すほど落ちぶれちゃあいねえんだよ。」
そう言いながらタバコに火をつける鬼塚。そんな鬼塚の様子を見た麻耶は、一気に力が抜け、座り込む。
「あんたの...あんたのせいよ!あんたが高坂さんを庇ったりするから!このままじゃ...このままじゃ私...」
今度は鬼塚ではない、別の何かに怯え始める麻耶。そんな様子を見た鬼塚は、摩耶に言った。
「お前あの2人にいじめられてたろ。」
鬼塚の言葉に一瞬反論しようとした摩耶だがすぐに何も言えなくなった。麻耶は、いつの日かのことを思い出していた。
「あんたさぁ、私たちと一緒に高坂いじめやってよ。断ったらどうなるかわかってるよね?」
「よかったじゃん、標的が変われば楽しい学校生活が待ってんだから。」
美紅と黒羽に言われた過去の発言を麻耶は鮮明に思い出せた。その2人とともに穂乃果いじめを行えば、いじめの矛先は自分ではなくなる、それに味をしめた麻耶は3人グループとなり穂乃果いじめを積極的に行っていたのだ。
「やっぱりな...ったく、そりゃあいじめられるよな。」
鬼塚のその台詞は、摩耶にとっては聞き捨てならなかった。麻耶は、鬼塚に叫んだ。
「なによそれ...あんた教師でしょ?いじめ容認する気なの?!」
「しねえよ。どんな理由にしろいじめていい理由にはならねえよ。でもな、いじめられる原因ってのはまた別なんだよ。ましてや、自分は何もせず逃げるなんて...だせえんだよ。」
鬼塚は、タバコの火を消し、摩耶を睨みつけて言った。
「何言ってんのよ...私は!私は自分へのいじめを無くすために必死考えた!考えたの!!必死に今の自分の状況変えたくて...やっと出せた答えなのよ!」
麻耶の反論を聞いた瞬間、鬼塚は急に立ち上がり座っていたソファをけりとばした。
「状況変わってもてめえは何も変わってねえだろうが。」
鬼塚の言葉に身体が固まってしまった麻耶。
「自分の苦しみを他人になすりつけて平気な顔してるような奴が被害者ぶってんじゃねえよ。」
鬼塚はそう言うと麻耶の家から出て行った。麻耶は、しばらくその場で座り込み呆然としていた。なんとか部屋を片付け、親に今回のことがバレないように誤魔化すことはできたが、麻耶は自室のベッドで横になりながら鬼塚の言葉を思い出していた。
「状況変わってもてめえは何も変わってねえだろうが。」
「自分の苦しみを他人になすりつけて平気な顔してるような奴が被害者ぶってんじゃねえよ。」
鬼塚のそんな言葉を何度振り払っても思い出す麻耶。誰かに胸のモヤモヤを解消したい。だが、美紅と黒羽に話すことなど到底できるはずもなく、翌日を迎えた。麻耶は、美紅と黒羽に呼び出された。
「はっ?しくじったの!?」
「なによぉ、楽しみにしてたのに。」
美紅と黒羽は大層麻耶に失望していた。麻耶は焦ったが何を言えばいいのかわからなかった。そして、黒羽は麻耶に迫った。
「あんたさ、私達が仲良くしてやってんのに足引っ張る気?」
黒羽に怯える麻耶。そして美紅が言った。
「まあ、私達優しいからさ、最後にチャンスあげる。高坂を階段から突き落としな。」
美紅の言葉に麻耶は咄嗟に反論した。
「で、でもそんなことしたら流石に死んじゃうんじゃ...」
「できないの?ならどうなるかわかってるよね?」
麻耶にそう言う黒羽。麻耶は、渋々了承した。
麻耶は、穂乃果の様子を伺った。襲うチャンスをまだかまだかの狙っていたがなかなかそれは訪れなかった。
麻耶の中で自分がいじめられることへの恐怖、人の命を奪ってしまうかもしれない不安、やめた方がいいのではと言う抑制、様々な感情が葛藤していた。今までは黒羽達と3人で行っていたことを今度は1人でやらなくてはならなくなり、一気に負の感情に飲み込まれてしまった。
「どうしよう、どうしよう...」
そんな風に考えているとストレスからか急に目眩を起こし、麻耶は意識を失った。
目を覚ました麻耶はいつのまにか保健室のベッドで横になっていた。状況の整理を何とかしようとしていると急に視界に穂乃果が現れた。
「あ!起きたぁ!」
急に自分の標的が現れ動揺する麻耶。そんな麻耶に穂乃果は言った。
「急に後ろで倒れたからびっくりしたよ!慌てて保健室連れてきたんだけど、具合大丈夫?」
穂乃果は、麻耶が倒れたことに気づきわざわざ保健室まで連れてきたのだ。
「ち、ちょっとなんで...なんで高坂さんが私にそんなことを?」
麻耶の言葉を理解できない穂乃果。そして、穂乃果は言った。
「なんでって...具合悪そうな人を心配するなんて当たり前だよ。」
麻耶は、穂乃果の言葉を理解できなかった。「なんで?自分を散々いじめた相手を助ける?はっ?イミワカンナイ!」と考えていると穂乃果が口を開いた。
「あー、そっか...麻耶ちゃん、私に色々...しちゃったもんね?私、不思議なんだ。鬼塚先生と出会ってなかったら多分麻耶ちゃんのこと助けなかったと思う。あの時は、勝手に身体が動いたんだ、相手に何をされたか関係ない、助けなきゃって。」
穂乃果のお人好しに一瞬呆れる麻耶。しかし、自分は、こんな人間を神経をすり減らしてまで襲おうとしていたのかと急に恥ずかしくなっていた。
「お、お人好しすぎだよ!でも...その...」
麻耶が最後に何かを言おうとするとチャイムが鳴った。
「うわ!もうこんな時間!?ごめんね麻耶ちゃん、ゆっくり休んでて!」
穂乃果は慌てて教室に戻ってしまった。麻耶は、言いたいことを最後まで言えない不満を抱えながら布団に潜り込んだ。
数時間後、麻耶の体に強い衝撃がはしり、麻耶は飛び起きた。目の前には黒羽と美紅がいた。
「なに呑気に寝てんの?」
美紅の言葉に固まる麻耶。麻耶は黒羽に手を強く引かれ、どこかへ連れて行かれる。
「ど、どこ行くのよ!」
「黙って来い!」
麻耶を無視し、2人は麻耶を屋上へと連れて行った。そこには穂乃果がいた。
「ま、麻耶ちゃん!?」
2人に強引に連れてこられた麻耶を見た穂乃果は驚きを隠せなかった。そして、美紅は穂乃果のことを強く突き飛ばし、尻もちをつかせた。
「いたっ!なにするのさ!」
そういう穂乃果の前に麻耶を立たせ、黒羽は麻耶にデッキブラシを差し出す。
「まじでこれで最後だから。普段私達にくっつくことしかできないんだから少しは役に立ってよ。」
「これで高坂さんを立てなくなるまで叩きな。」
黒羽と美紅にデッキブラシを強引につかまされた麻耶。穂乃果はそれを見て2人に言った。
「どうしてここまでするの!?麻耶ちゃんにも無理矢理やらせて...ひどすぎるよ!」
「ぶってんじゃねえよ!あんたみたいにいつも笑って楽しそうにしてる奴見てるとイライラするんだよ!麻耶!今やんないと明日からわかってる?!」
穂乃果に強く言い返し、黒羽は麻耶に暴行を支持する。麻耶は、涙目になりながら手を震わせていた。
「ご、ごめん...ごめん...高坂さん...」
麻耶は、デッキブラシを振り上げる。しかし、その時脳内に鬼塚と自分を助けてくれた穂乃果のことを思い出した。
「なんでって...具合悪そうな人を心配するなんて当たり前だよ。」
「状況変わってもてめえは何も変わってねえだろうが。」
麻耶は2人の言葉を思い出し、振り上げたデッキブラシを静かに下ろした。
「ま、麻耶ちゃん...」
穂乃果は静かに麻耶の名前をつぶやいた。そして、麻耶は大きな声で叫んだ。
「い、嫌だ...私はもう高坂さんを傷つけたくない!!」
麻耶の叫びを聞いた美紅は、舌打ちをし麻耶の持つデッキブラシを取り上げた。そして、麻耶を突き飛ばし、座りこませた。
「こんの...役立たずが!!」
美紅はそう言うとデッキブラシを麻耶に向かって振り下ろした。その時、振り下ろされるデッキブラシが強引に誰かに掴まれた。
「お、鬼塚先生!」
穂乃果の目の前には、静かにデッキブラシを握りしめる鬼塚がいた。鬼塚は、美紅の手から強引にデッキブラシを取り上げて足でへし折った。
「せ、先生...」
麻耶は鬼塚が来たことに驚いた。鬼塚は、無言で麻耶に近づき手を伸ばす。麻耶は、また穂乃果を襲おうとしたことで今まで以上に無茶苦茶なことをされると思い、目をぎゅっと閉じた。しかし、鬼塚は、麻耶の頭に手を優しく置いただけだった。麻耶は、なにもされないことに驚き、目を開け鬼塚を見た。
「やっと変われたな...麻耶。」
鬼塚は、微笑みながらそう言った。そして、鬼塚は黒羽と美紅を睨みつけた。
「な、なによ...また体罰でもする!?」
美紅の脅しにもならない言葉に表情を変える鬼塚。
「いーや、しねえ。これからお前らにやるのは...お仕置きだ。」
鬼塚がそう言うとサングラスにマスク、帽子を被った8人の謎の人物達が現れた。しかし、見慣れた服着ていたため思いっきりμ'sのメンバーであることはわかっていた。
「ここからは、鬼塚先生特性の地獄のお仕置き1時間耐久コースです!」
鬼塚の言葉を合図に8人は、美紅と黒羽を一斉に取り押さえ、足の裏や脇をくすぐり始めた。当然、2人は涙を流しながら笑い始める。
「うわぁ...これを1時間は地獄だなぁ...ていうかこの人達μ'sのメンバーじゃん!」
「おうよ、この日のために仕込んでおいて正解だぜ。」
鬼塚は、穂乃果にそういうと麻耶の方を向き話した。
「どうだ、生まれ変わった感想は?」
「え、えっと...」
麻耶は、頰を赤らめながら戸惑っていると穂乃果が話しかけた。
「麻耶ちゃん、ありがとう。」
穂乃果の言葉で、ようやく心のモヤモヤが晴れていくのがわかった麻耶。溢れてきた涙を拭き、鬼塚に言った。
「先生、生まれ変わるって...最高だね!」
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