半オリジナル艦これ二次創作-闇爍(あんしゃく)-
ある日、とある悲劇が起きた。
それをきっかけに主人公、一仁は軍人を目指すことになる。
だが、これから起こることはそれを上回る最悪。それを糧に、深海棲艦へと暗転する。
(まだ序章なのでその概要で)
不束なんでアドバイスや修正点等指摘していただけると喜びます、荒らしもいいですが理由と
ともに荒らし下さい。
序章終わらない病気ですがご了承下さい(
2015.07.03更新
―そこは、光の世界だった。今思えば、夢のような世界だった。―
「ちょっと出かけてくるわー」
「ご飯が出来る前までに帰ってきなさいよー」
「わかってるー」
母との会話を済ませて家を出る。
今日の天気は快晴だ。季節は夏。太陽の光が少しうんざりするほど明るい。おまけに肌にうっすら汗がでるほどに暑かった。
辺りを見渡す。右には木造建築が並ぶ。奥には自然、森が茂る。左には白の砂浜と輝く海がある。
右、少し下を見る。妹がいる。腰からひざくらいまでかかる黒く長い髪。恰好は見てて暑い赤の着物。年齢は14歳で中学二年。そのわりには少し童顔で、おまけに身長は150cm程度で、おまけにあの性格だ。
「おにいちゃん、今日はどこに行くの?」
こいつからは俺はおにいちゃんと呼ばれている。ちなみに俺は17歳だ。
ちょうどよい、妹が話してきた。少しいじってみるか。
「少し砂浜に降りて海を見ようと思ってね。なんせずっと家にいたせいで疲れててさ」
「おにいちゃんはずっと勉強してるもんね~、えらいな~。私なんて勉強って文字を見るだけでもうんざりするからさ~」
「それって俺のこと見てうんざりしてるって言いたいのか?」
「いやいやいやいやいや、そんなことないよ!ただ尊敬するな~っていっただけだよ!」
慌てている顔の前で手を横に一生懸命振っている妹がいる。いっそのことこいつは幼女キャラっていう立ち位置でもよいのではないか?と思ってしまう。なぜこういう性格になってしまったのか見当がつかない。
なんて話していたらすでに砂浜についていた。
「おにいちゃ~ん、水つめたいよ!はや~く~!」
少し遠くから声がした。見ると、すでに妹は素足を海の中に入れている。
「ったく…ん?」
黒い豆粒のような物体が空に見えた。距離はあるものの、こちらに近づいているのが見える。
「おい!!早くこっちにこい!!!!」
俺は、嫌な予感がした瞬間、叫んでいた。
すると、妹はこちらに走ってきた。履き物はちゃんともってきている。
「どうしたの、おにいちゃん」
「あれを見てみ」
空を指さす。豆粒の横に棒がでている。
「あれって…敵のプロペラ機…?」
「そうだ、急いで家に帰るぞ」
俺は海を背にして、帰路へと
「待って!!!」
大きな妹の声で、俺は静止した。その後、妹の方を見た。
「なぜだ?」
家には父と母がいる。
「今帰ったら、私たちも巻き込まれる…かもしれない」
「…だけどよ」
「私は!私はおにいちゃんがいれば…それでいいもん」
「っ!お前って!こんな時にそんなこと、子供じゃねぇんだからよ!」
幼いころから、妹は俺になぜかなついていた。14歳になってこれだと将来的に困る。
「別に子供だっていい!私はおにいちゃんが大好きなんだもん!」
「いやだからこんな時に!家族がっ」
「家族、家族って!そんなに家族が心配ならまず私のことをきにかけてよ!」
もっともだ。しかし、俺は父と母のことがきになった。海の方向の空を見るとはっきり肉眼で捉えることが可能なくらい、敵のプロペラ機が見えた。
「一回家に帰ったらその返事をしてやる。戻ってくるからそれまでここで待ってろ」
「…わかった、絶対に帰ってきてね」
「おうよ」
走って家へと向かう途中。
「ドゴォォン!ドォゴォオン!」と、耳が張り裂けるような音が鳴った。上には敵のプロペラ機が通っていた。
「ハッ、ハッ…これは、ひどいな…」
走りながら辺りを見ると、燃えている家や森が目立つ。
幸いに風向きは陸側で走り続ける事ができた。体力がぎりぎりの時、家へ着いた。家はまだ、何の攻撃も受けていなかった。
「父さん、母さん!!!」
玄関の扉を開けると同時に叫ぶ。だが、返事はなかった。だが、まだ家の中にいないと決まった訳ではないので家の中を探すことにした。
ダンダンダン、と床が鳴りながら走り、一番可能性が高いリビングへと向かう。
「父さん、母さん!!!」
襖を開けると同時に叫ぶ。返事はない。辺りを見渡す。すると、部屋の隅に踞っている父と母を見つけた。父が母を庇っている格好だ。手で耳を塞いでおり、このせいで返事ができていなかったようだ。
震えている体を軽く叩く。すると二人がこちらを見た。
「あ…あぁ…」
パニックのせいか、言葉がほとんど発する事ができていない。
「家の中は危険だ!早く外に出るぞ!!」
返事はないが二人は頷き、立ち上がった。
二人の安全確認を済ませたので、急いで妹の所へ行くことにした。
「俺は妹の所へ向かうから、父さんと母さんは早く防空壕へ!」
二人は頷いた。理由を説明する時間はなかったが、二人は近くの防空壕へと向かう準備をしていた。それを確認しながら玄関を出て、妹のもとへと向かおうと走り始めた。
しかし
「ドゴオォォン」
と、音と衝撃がきた。
場所は、家らへんからだった。考えるより先に、体が動いた。気がついたらかつて家があった場所の前に立っていたからだ。
場所を認識したと同時に、現状を把握した。家族の思い出の場所が跡形もなくほぼ破壊され、そこには木破片が散らかっていた。
そして散らばる破片の丁度真ん中、さらに衝撃で出来たと思われるクレーターの中心に爆発していない爆弾がこちらをじっと見ていた。
いつ爆発するか、という不安はあるが両親安否を確認するのは最優先だ。
「父さん、母さん!!!」
しかし、叫びが届く事はなかった。
「クソ……クソ野郎が!!!」
ただの憎しみが言葉へとでる。
両親が死んだことを確認したあと、俺は妹のもとへと走りながら向かっていた。
「あと…あともう少しだ!もう少しで…!!」
もう、大切な家族は失いたくはない。
どうやって妹に説明をすればいいのか。俺はその事だけを考えていた。
それによって、現実は唐突に物語る。
「嘘…だろう?」
人生初めて告白をされた思い出の場所は、なくなっていた。
それからどのくらい時間がたったのだろう。いつしかこの惨劇は終わり、「東京大空襲」と呼ばれていた。
そして、俺は保護されて海沿いの中学校で仮生活をおくることとなった。かつて、妹が通っていた中学校だ。
時間は夕方くらいか、空は赤く、あの炎を思い出してしまう。
「自分の足で歩けよ…聞こえてるのか?」
「聞こえてないだろ、黙ってこいつを運んで帰ろうぜ」
俺は、両腕を持ち上げられ両足を引きずられていた。
どうでもいいが、聞こえてはいるが応答する気力がなく、しかもする意味が見当たらなかったからだ。
ドスッ、っと自分の体が体育館の玄関に投げらた。正直頭を打ち痛かったが痛む気力がない。
「あーあ、疲れた。さて、帰るか」
横目で銃をもった緑色の軍服をきているのを見て、はじめて軍人と知った。
その後ろ、校門らへんには銃を持った軍人が数人立っていた。何故こんな避難所にいるかは謎である。
「そのー、大丈夫ですか?」
後ろから声がした。声は少し高くこの行動から中学生くらいの女性だろう。
俺はそれが自分に向けて発せられていると思わず、地面に寝そべり続けていた。
「あのー、そのー」
目の前に人物が現れた。といっても見えるのはスラリと伸びた足だけだが。その足は膝まである水色のスカートから出ていてすらりと細く、綺麗な白色だった。
「よいしょっと、大丈夫ですか?」
某人物が足を揃えながらしゃがむ。と、上半身が紺色の制服と水玉の下着と共に初めて顔が分かった。
茶髪のおかっぱが印象的な童顔の少女だった。後ろ髪は肩につくかつかないかと言った長さで、タレ目で、優等生みたいな。
「パンツみえてるぞ」
堪能…じゃない、行儀がなっていないので注意する。
と、少女は顔を紅くして立ち上がり、俺に向かって手を差し出した。
「こんなところで寝そべって、だらしないですよ」
「お前に言われたくないな」
「私はあなたのためにあんな格好してあげたんですよ!」
…絶対嘘だな、と思いながら気がつくと話をしていた。同時に、心が孤独を嫌がっていたことにも気がついた。
と同時に、手を握って同時に立ち上がる。
伸長はそこまで低くなく、多分160cmくらいだろう。鼻らへんにそいつの頭がある。
「…ふふっ、やっと笑ってくれましたね」
「どこかのだれかのせいでな」
「身をていしたかいがありました、これくらいしか私にできることは…」
少女が暗い顔した。こいつも辛い経験をしたのか、と考えながら話を変える。
「あまり記憶がなくて聞きたい事がいくつかあるんだがいいか?」
「構いませんが」
不思議そうな顔をかたむがらそう言っていた。
「あの空襲からどのくらいたった?」
「3日…くらいですかね」
「ふむ…では次。なんで外に軍隊が、ここはただの避難場所だろ?」
「ただの避難場所何ですが、ちょっと問題がありまして」
なにやら言おうか言わないか迷っている。なんかそわそわしている。
「いやまぁ、偶然聞いてしまった話なんですが、ここらへんの海域の正体不明の何かが目撃されたそうです」
「正体不明の…何か?」
「その言葉通りです。なので、このような状況に」
「成る程なー、んで、お前の名前は?」
「あ、自己紹介がまだでしたね。私は芽生(めい)って言います。あなたは?」
同時に右手を差し出した。今度は握手をしろといっているような。
「一仁(いちじん)だ。じんとでも呼んでくれ」
「ふふっ、よろしくお願いします」
そして握手をした。
状況がそれなだけに、新たな友達は大切に思えた。
「それと1ついいか」
「はい、なんでしょう」
「食事と風呂が」
「ですね、それではこちらの避難所をご案内いたします」
芽生と一緒におにぎりとお茶を食し、その後の事。風呂代わりの体を拭くためのおしぼりを持ちながら教室のベランダへ移動した。
視界の左下に体育館があり、空を見上げてみると前まで綺麗に光っていた星は見えなかった。きっとあの空爆のせいだろう。
「よいしょっと」
ベランダに座る。きっと妹がここにいたら「きたないよー」とか言ってそうだな。
だが、俺にはもう妹はいないはずだ。詳しくは行方不明なのだが、状況から見てもう…。
「まぁ、これからどうするか考えるか」
芽生もいることだし、ポジティブに考えるしかない。
そして、体をふき始める。
「いや、まず状況の整理から入ろう」
状況が状況なんでまずこれをしないと今後の策は良いのがでないような気がした。
「3日前の悲劇が起こる前のことについて一旦考えようか…な」
ちなみに体はもうほとんど拭き終っている。
少し前すぎる整理かな、とは思いつつも時間はある。ゆっくりと考えるしかない。
「まず、俺の周りの状況から。4人の家族でそれは父・母・妹そして俺。妹がブラコンという以外には特に気にする点は無し、と。」
正直なところ、俺も妹から迫られる部分はあまり嫌いではなかった。
というより、女との経験が妹以外ほぼ皆無な俺には、興味がないとは言い切れない。
それに、妹みたいな性格はあまり嫌いでは…この話はやめにしよう。
ちなみにもう体は拭き終っていて、服ももう着ている。
「近所付き合いにもトラブルは何もない、平和な家庭…だったな」
忘れようとも忘れることはできない。いや、忘れてはいけないことだろうと認識をした。
「そしてあの悲劇か。詳しい被害はわからないがここの状況から見ても甚大だろうな」
ここの状況、というのはここの避難所に来てから今までの間のことである。
避難所にいるのは40人ほどで、各々雑談などを交わしていたりするからだ。
「そしてこの避難所にいる、と」
ここに運ばれた理由はただ単に近かったからだろう。
「ここでの生活は今のところまだ困ることはない、か」
まだ1日目であるが、食料や場所や清潔感はちゃんと過ごせることをもう身をもって確認している。
「一番のポイントは芽生との出会いだな…」
何故見ず知らず俺に話しかけて救ってくれたのか。
正体不明の何かについて偶然聞いてしまった、とは言ってはいたがそれは本当なのか、通常であれば軍の近くへは近寄れないはずだ。
「確認するにしてもそこはプライバシーだからな。疑問は忘れずに持って解決したときにそれを忘れよう」
との結果になった。
これで芽生との接し方は良しとして、避難所の生活についてだ。
ここの生活をいつまで続けるか、ここの生活はこのまま続けるべきか、というこなんだが。
「そうだな、将来働けるくらいの能力はもっておかないとな」
と、そこで気がついた、というか思い出した。俺はなんの仕事に就こう。
勉強していたと言っても学校で習ったこと身に付いてなかったからで、明確な将来のために勉強している訳ではなかった。
「うーん…」
何かやりたい、という強い意思はなかったので困るな。
少し考えると、あの芽生の顔を思い出した。とても、悲しい顔だった。
同時に、「私にできることは…」という言葉も思い出した。
「あんな顔はもう見たくない、な」
そのためだったら身を捨てる覚悟はあるか、そこは家族を失った時の事を思い出すと自然に大丈夫な気がした。
「決して復讐のためでなく、守るために戦わなくちゃいけないな」
憎いと言えば憎いと言うことは当たり前のことであるがそれをしてしまうとあの思いを一人でも多くの人に感じさせてしまう可能性がある。
敵を攻めるのは他にやらせればいい、そうすれば良いではないか。
「これで一通り答えはでたな」
「何をしているんですか?」
「ん?」
声に反応して後ろを向く。それは声質から想像できたがやっぱり芽生だった。
「あぁ、いや。独り言をね」
「ふむ、なるほど。仁さん、そろそろ就寝時間なんで体育館に移動しますよ」
「わかった、ちょっとまってな」
床に置いてあるおしぼりを持つ。
「まーさて、がんばるか」
「…?何か言いましたか?」
「いや、なんでもない」
「そうですか、それと仁さんに一つ伝えておきたいことが」
「おう、なんだ」
芽生は一拍置いてこちらを見て言った。
「ねぇ、仁さん…」
「…な、なんだよ」
この雰囲気…もしかして告白…。
ってないか。会ってから1日しかたっていないんだぞ。
「ふふっ、顔赤くして可愛いですね。さて…あなたがここに初めて来た時に私があなたに話しかけた理由を聞きたいですか?」
ここに初めて来た、それは一番最初の芽生との出会いの場面だ。
…ここについてはさっき状況を整理した時の疑問の1つと一致していた。
それの答えは解決したら忘れる。それが忘れることができる内容かどうかは別として。
「聞きたくないと言えば嘘になるが、お前が話したくないなら話さなくていいと思うぞ」
「やっぱ優しいのですね、あの子の言った通りですね」
「あの子…?」
「そう、轉波(うたは)です。あなたの妹さんで間違いはないですね」
轉波。珍しすぎるこの名前は妹しか記憶がない。
「なるほどな。轉波からいつも俺の話を聞かされていた、ってところか」
「その通りです。あの子は私の友達ですからね、いつもあなたのことを喋っているので自然と覚えてしまって」
「…想像つくな。妹がいつも迷惑かけてすまなかったな」
「あなたの責任…ではないですよ。気にしなくていいですよ」
芽生は気が付いているだろうな。妹が行方不明なことを。
一応、言っておく必要はあるな。
「轉波についてなんだが…」
「わかりますよ。それ以上言わなくても」
「…助かる」
俺にご執心の妹が俺のそばにいない。つまり妹は死んだが行方不明ということは想像がつくからだ。
それに家の近くの避難所、ここにいないことでそれは確定する。
「すみませんね、空気をこんなに重くしてしまって」
「いや、大丈夫だ。それと最後に一つ聞いていいか」
「はい、なんでしょう」
「お前はいつからそこにいた?」
「さーて、いつからでしょうね」
まぁ、芽生はそれをばれて良いように話を展開していたので意地悪をすることはないだろうが。
「まぁ、いいか。体育館戻るぞ」
「はい、ではご一緒して」
そう言って芽生は俺の隣に移動し、一緒に体育館に向かった。
「轉波…あなたのライバルになるのも悪くないかもしれませんね…」
「…何か言ったか?」
「いえ、あなたと共に軍人になりたいな、と」
芽生は変わろうとしていた。
「悪くないと思うぞ。なら、明日から一緒に勉強でもするか?」
「はい!」
俺はあの時、芽生の想いに気がついていれば。と後悔することになる。
それはまた、未来の話。
それから約3年後。
行き場のない俺は芽生の家に泊めさせてもらい、コツコツと軍に入る勉強をしていた。
「そろそろですね、仁」
「そうだな、ついに明日か」
それは、軍入るための試験だった。
軍やそこらの内側の事については詳しくは解らないのだが、1年前から突然とこの試験が始められた。
俺たちは、3年前芽生が少しだけ耳にした正体不明の何か、が原因ではないかと目星をつけている。そうしたところで特に意味はないのだが。
「試験ってどんな感じなのかな」
勉強に少し飽きて雑談を交える。
「さぁ、受けてからのお楽しみですよ」
「だよなー…」
畳の部屋に少し疲れたので寝転ぶと、視界に時計が見えた。時刻は12時を回ろうとしていた。
「そろそろ寝るかー」
既に寝る準備は整っていた。
「そうですね、では私は自分の部屋に。明日は7時にちゃんと起きて下さいね」
「分かってる」
そういって芽生は筆記用具を持ち部屋を出ていった。
俺は不安と期待を胸に抱き敷き布団の中で目閉じた。
そして、試験当日。
芽生に言われた通り7時に起きて、朝ご飯などの準備をし、試験の会場へと向かった。
「ここが…試験試験会場か…」
「概要の用紙に書いてありましたが、やはりそうでしたね」
目の前は母校への入口だった。
目の前に開けられているいかにも頑丈そうな鉄の門の奥には、戦車の1、2台は並走できそうな広い一本道があり、その脇には人が住むであろう建物や、船や装備の製造、修理などを行う工廠が目についた。
全体的に建物は塗料で覆われている。おそらく鉄であろう。地面は砂利である。
「なんか、その、とても大きいですね」
「ま、まぁ当然だろうな」
しかし疑問なのは、今日が試験日ではないのかという程人がいない、ということだ。
「きょ、今日であっているよな、芽生」
「ま、間違いはないと…」
不安になり、あたりをきょろきょろ見渡す。と
「あ、こんなところに張り紙が」
見つけたのは芽生だった。そこには
「「鎮守府の提督室にて待つ!!」」
の文字が書いてあった。
意外と丁寧に張り紙が貼られていて、迷わずに鎮守府を見つけることができた。
と、玄関で待っていたのは提督の補佐をしているであろう女性だった。ボードを右手と胸で抑えている。
髪はオレンジ色で、腰くらいまであるロングヘア。顔は凛々しく整っていて、身長も俺と同じくらいはありそうだ。大人の女性という言葉が似合っているだろう。服は白色で、体の柔らかさがわかるいい制服だ。ただ、いかにも退屈そうな顔をしているのが欠点だった。
「あの人に話しかけるのですかね?」
「ボード持ってるし多分そうだろ」
芽生の問いかけに答えは合っているかどうかは不安だが返事をする。
「とりあえず行こうか」
苦笑いしながらその女性へと近づく。
「あのー、すみません」
俺はその人に話しかける。
「あ、はい!どういたしましたか!?」
「「」」
俺と芽生はあまりの馬鹿馬鹿しさに言葉を失う。
まさかこの人は試験関係人ではないか?と思ったが、
「あ、すみません!受験者の方でしたか!」
「あ、はい…」
大丈夫か?この人…
「では、提督のところへとご案内いたしますのでついてきてください!」
…ん?一つ疑問に思ったので質問してみる。
念のため芽生もそう思っているか横目で見たところ、顔を傾けていて同じ意見だったようだ。
「あのー、提督のところ、って言いましたか?」
「はい、そうですよ」
試験なのであれば普通筆記試験後面接と考えていた俺と芽生は衝撃だった。
それに、いきなり提督、というのはセキュリティ上問題があるのではないか?
「まぁ、双方安全は保障されていますので」
「…え?」
「はい、つきましたよ、ここが提督のいる部屋ですので」
司令室と札に書かれた文字でわかる。
「さて、本日の試験内容を説明させていただきます」
「はい、よろしくお願いします」
「是非。筆記試験は無しの面接のみが簡単な試験内容です。提督室の中には護衛がいますがあなた方が何もしない限り特に何もしないのでご安心してください」
何もしないのに何かされたらそれはおかしいけどな、と内心つっこむ。
「そうですね、先に女の方からお願いします」
「はい、了解致しました」
そう言うと自己紹介がまだなので名前をしらないがつまり女性が扉の正面の壁に背中をつけた。
俺は自身が動揺が隠せているか不明だったが、芽生は落ち着いているようだった。
その様子からあいつなら大丈夫か、と思いながら芽生が司令室へと入っていく姿を横から見守っていた。
大体10分くらいたってからだろうか、芽生は出てきた。
「失礼しました」
「さて、次は男の方の番ですよ」
「了解です」
すれ違いざまに芽生は「頑張って」と呟き、元俺がいた位置で止まってこっちを向いて笑顔を向けてくれた。
その表情を見てクスッ、と笑ってしまう、気持ちが楽になった。
コンコンコン
「どうぞ」
「失礼します」
扉を開け中に入る。
そして扉の音をたてないように閉めた。
「まず、ここまで来てくれたこと、ご苦労だった」
「恐縮です」
提督だろうか。その男は白い服を着ていて頭に帽子がある。
机に肘をおき口にあたる部分に組んだ手を置いている。
「まあ、そこに座りたまえ」
「はい」
そこ、というのはその机の前におかれた椅子の事だった。
指示をした際に手を椅子に向けたので顔を確認できた。
その男は20、30歳くらいだろうか。太りすぎず細すぎもせず。鼻はそんなに高くはない。いかにも日本人といったところか。髪は黒く襟にかかっていない。目は帽子を深く被っているのであまり見えなかった。
「先の女性はお前の彼女か?」
「いえ、彼女ではありません、でも家には住まわせて頂いてます」
「ほう、なんとうらやましいこと」
「えぇ…」
なんだこの人…と思ったがこれも試されているのかもしれないと思うと気が抜けなかった。
「まぁ、雑談は置いといて。何故お前はこの試験を受けようとした?」
「はい、かつての空襲のせいです」
「と、いうと家族を失ったか、というところか」
「はい、その通りです」
芽生の家に住んでいる、さらに芽生が彼女かどうかを聞き身内でない事を確認していたか。
「あの空襲のせいか。今の軍は人が少なくてね」
「だから今回もこんなに少ないんですか」
「そうだ、そして上から正式に試験をするなと命令が来てこうなっている」
「幸か不幸か、といったところですね」
「まぁ、そんなとこだ」
少し口を挟み過ぎているか?と思ったが話しやすそうな提督なのでこのままでいいか、と思う。
「本題に入るぞ。軍に求められているのは「何故か」純粋な戦力ではなく知力だ」
「…普通逆ですよね」
何故か、を強調したのが少しひっかかる。
「近頃の正体不明の「何か」については知っているな」
「…はい」
「正直でよろしい。だが今はな」
「失礼しました」
「気にするな。おっと、話が逸れていた。今回の試験で試すのは「発想力」だ」
「はい」
この提督は雑談が好きなんだな、と思う。
と同時に、世間には公開されていない情報もまたあるのか、と思う
「そこで質問をする、いいな」
「もちろんです」
「ある日、お前は大切な物や存在を失ったとする」
あの日の事を思い出してしまうが今は置いておく。
「ある日、外を歩いていると天使か悪魔か、突如として会った。その時そいつは「大切な物や何かを失ったのか」といった」
夢にありそうな話だな。軍は何をしているんだろうか…。
「そして続けて「今お前が一番大切にしている物や何かと交換してやる」といったとする。お前はなんて答える?」
「はい…「ではお前を交換する」と言います」
提督は少しうなずいた。
「理由は?」
「奥の希望はあっても目の前の希望がなくては話が成り立たないからです」
「難しい言い方をするな…まぁ、大体分かった」
「はい」
理由はこうだ。その悪魔か天使がいなければ「大切な物や存在を手に入れる」ことはできないから。
もちろん、交換の手順などは考えていない。が、これがその時に一番重要なことだと考える。
「いい考え方だな」
「ありがとうございます」
提督は机の上の紙に何かをかいた。
「では下がっていいぞ」
「はい、失礼しました」
そして立ち上がり無礼のないように扉の外へと出た。
「お疲れさまです」
「「そちらこそお疲れ間です」」
俺と芽生が同時に言う。
「いいですね、若者は…二人とも帰り道は分かりますか?」
「大丈夫ですよ、私にお任せください!」
俺に自信はないぞ、芽生よ。
「ではここで解散といきましょうか、母港内は軍の施設ということをお忘れなく」
「はい、では失礼します」
鎮守府の外へと出る。
「芽生、道は分かるんだろうな」
「大丈夫ですよー、そんな心配しなくても。でーすーが」
「やっぱりな…」
「はい、見つからないように内部探索といきましょうか」
「本当に見つかるなよ…」
芽生は知らないことがあると知ろうとする性格なのだ。
「では行きましょうか…ふふっ」
嫌な予感しかしない、と思った。
「提督、大丈夫なのですか?」
「もちろん、明日から軍に入るやつらだからな。まずは見たほうがいいだろう」
「それもそうですがー」
「それに、知れることを知らないのは個人的にどうかと思うしな」
「はぁ…」
「ふっ、幼女を見たときのあいつらの顔、楽しみだ…いくぞ」
「幼女って…艦娘っていう名前があるのを忘れてはいないですよね?」
「もちろんだ、いくぞ」
「はい…」
俺と芽生はこそこそ歩きながら話している。
「わくわくしますね、こういうの」
「お前は慣れているだろう」
「ばれていましたかー」
「あぁ、初めて会ったときから怪しいと思ってたからな」
「ふふっ、まぁそんなことはどうでもいいです。そんなことより提督から聞きました?」
「んー、そそのかされたくらいだけど」
「なら話は早いです…ここが怪しいですね」
芽生の向く先には使い道のない学校のようなものがあった。
「雷はね、今日の遠征で大量の資材かっぱらってきてやったのよ!」
「それはもう報告済みなのです…」
「というか、私たちの成果なのだが…」
「子供の世話をするのはレディーの役目でしょ?響」←「子供じゃないわよ!」
「そ、そうなのか…」
視界の右側から大量の資材…だろうか、を持って学校のようなところへ向かう小学生達だろうか?が歩いていた。
「あれは…小学生でしょうか?」
「さぁ…けど、こんなところで小学生っていうのもおかしいような…」
「そうなのですが…これがここの提督の言っていたことなのでしょうか…」
「十分あり得るよな…」
脳裏にあの提督がにやけている姿がよぎる。
「こら、芽生と一仁。それは任務外ではないか?」
「「…提督!!」」
振り向きざまに声で想像ができた人物の名前を呼ぶ。
一応後ろに受付の人がいた。役職は詳しくは聞いていないことに今気が付いた。
「す、すみません! ななな、何か用ですか!?」
「芽生、ばればれなのはわかってるよな」
「仁…そうですね、すみません提督。見ての通りです」
下を向き目を閉じている芽生。俺も下を向く。
「いや、大丈夫だ。もともとこの状況をつくるようにそそのかしたのは俺だしな」
芽生がこちらを片目で見る。俺も同じ動作をしてうっすら笑みを浮かべる。と、芽生が「ふぅ」と息をついた。どうやら安心したようだ。
「けれど俺たちがやったのは軍の機密事項を探りました。これは十分に犯罪であり」
「だから、おれが「任務外」と言ったのを聞いていなかったのか?」
「ということはそういう解釈でいいんですか?」
「あぁ、もちろんだ」
つまり俺達は試験に受かっていて、鎮守府から出るくらいから軍人として認定された、ということだろう。
よって、これを探っているのは単なる仕事の一環。と解釈してもよさそうだった。
「まぁ、説明が面倒でこうさせてもらったんだが…詳しいことは後日説明をする。今日はもう帰っていいぞ」
「「はい、失礼いたします」」
俺と芽生は出口の方向へと一緒に歩きだした。
ーそしてその日の夜ー
「いやー、お疲れ様ですよー」
「そちらこそなー」
帰ってきて飯を食べて風呂を出た後。居間でくつろいでいると雑談が起こる。
「しかし、その日の内に試験が受かると決定したのには驚いたよ」
「その割には落ち着いていたような気がしましたが?」
「まぁ、提督の言葉があったからな」
「あぁー、なるほど」
ズー、とお茶を一口。
「そういえば説明は後日ーっていったけど何の説明をするんだろうなー、あの小学生?達いがいに」
「さぁー、通常任務とかそこらへんじゃないですかー」
「あぁー、当たり前か…小学生連中のせいで頭に空きが…」
「しょうがないですよ、まぁ明日を楽しみにしましょうか」
気が付けばお茶がなくなっていた。
「お茶淹れますか?」
「いや、明日に向けて寝るとするよ」
「はいー、一緒に寝ますか?」
「冗談はいいよ、そんじゃあな。」
「はいー、おやすみなさい」
食器を片付けている芽生を横目に俺の部屋へと向かう。
居候させてもらっている身なのだが、芽生がこれで良いというのである、不思議な奴だ。
一仁が部屋についたころだろうか。芽生は一人ぼっちの居間で独り言を漏らしていた。
「あの空襲のせいで家族がばらばらになった私にとって、仁は大切な人なんだけどなー…」
そして食器を洗いながら一言。
「冗談じゃ、無いんだけどなー」
そして芽生も自分の部屋に戻った。
「さて、芽生と一仁!今日からお前達にここの管理を任せた!!」
「わー、ぱちぱちー」
母港に入り配られた制服を着て提督の部屋に入った瞬間にこれである。
「「…え??」」
口が開いている…だろう。
「いや、一仁が提督で芽生がそのアシストであろうがな…アーッハッハッハ」
いやそうじゃねぇよ、と芽生も思っていることだろう。
「し、しかし何故突然」
それを先に聞いたのは芽生だった。
「詳しくはそこの資料を見たまえ。まぁ、言うと別の母港に配属されたのだ…」
机に置かれた紙の束と手を顔にかぶせて笑う準備をしている提督を見る。
「もう笑わなくていいです、提督…」
「そうか…すまんすまん」
そんな感じで俺と芽生の仕事がスタートしたのである。
一仁(いちじん)→主人公。
芽生(めい)→避難所の重要人物。主人公に会って恋をした。
轉波(うたは)→主人公の妹。ブラコン。
もっと詳細な事かいてほしい場合はコメント下さい
こんばんはぁ、銃士・十一式というものです。
艦これのssがまた増えてうれしい限りです。
更新頑張って下さい!!
主人公の死亡フラグぇ
銃士さん>とりあえず一万字かんばりますー
名無し(2番)さん>主人公は…(略
更新乙デース…銃士です。
絶望の中に、僅かな平和の一面……良いねぇ、痺れるねぇ!
更新頑張って下さい!
銃士さん>コメントありがとうございます
こちらとしてはそれを応用して落とせる描写は落としたいものです…
精進を続けますので期待と共に暖かく見守って下さると光栄ですぅー
どもども、銃士デース
おぉ、3日もたっていたとは…
主人公さんの名前は何なのだろう楽しみです!
これからも、更新頑張って下さい
銃士さん>いつもありがとですー
名前考えなきゃ←
どうもぉ〜銃士です
更新お疲れ様です!
毎度楽しみにしております!
これからも頑張って下さい!
期待
銃士さん>いつもありがとうございます。
がんばるー!
梅酒さん>初コメありがとうございます。
少々急な展開ですがどんどん進めて行こうと思います、ご期待くださいな!
更新お疲れ様です。銃士ですー
主人公達が見つかるの速かったっすねw
これからも、頑張って下さい!
銃さん>コメントありでーす
妥当…くらいかな?w実はずっと後ろにいたり
ありがとですー