とある鎮守府のバレンタインデー
あれ、…これってR18…だよな。
村雨はR18です。…それ以外はぎりセーフ。
バレンタインは飾りです!
…どうしたこうなった。
「うーん…そろそろバレンタインデーか…」
とある書類の締切の日にち、2月14日。その日にちを見てその日が脳の裏から表へ出てくるように、口にその独り言が漏れる。
その書類は…遠征の要請及び許可票か…作戦予定日は16日か艦娘確認、作戦内容…よし。判子っと。
「そういえば…バレンタインデーか…」
頭を両手で包むように抱える。書類のせいではない。頭が痛いのではない。嫌な記憶が呼び起される。
それは初めてのバレンタインデイかもしれない。
なんせ、中学の時はオタク全開で女子と関わりなかったし…高校なんて男子グループと女子グループに分かれてて絶望的。
そう、バレンタインデーとはバレンタインデーではなかったのである。
今までは、な。
「なぁ、べっぷ」
「なんだい?」
「俺ってここに就いたのってたしか去年の3月何日だっけ」
「ふむ…たしか15日では?」
「あ、そうか。ありがとう」
「大丈夫だ」
そう、ここに来てからのバレンタインデーは初めてなのだ。
鎮守府なのにチョコ?そう疑問を持つ人々は多いのかもしれない。なんせ、この娘達は一般には知られていないからな。
「艦娘」。世界で戦争が勃発していたころ、日本で活躍したいわば「エリート」を再現し、現在の敵と戦っている娘達。
その名前から想像はできないだろが、艤装をしなければ普通の「女性達」なのである。いやまぁ、少女もいるがな。
例えばこのべっぷ。本名はロシア名「Верный」、意訳不死鳥。そして本当の名前は「響」。
白く、腰あたりまで伸びる綺麗な、髪。中心の黒点を囲む白の目。その白が特徴的な見た目12歳前後。実際の年は不明。
帽子も白だが、現在は机に置いている。セーラー服は白と黒で、体系はやはりロリ。ニーソックスをアクセントとする華奢な足、まぁ色々と可愛いのである。
さてまあ、長くなってしまったがつまりは
ここにいる艦娘からチョコを貰う可能性がある
ということである。
いやまぁ、もらえなくてもそれはそれでしょうがないし?そもそも職場で恋愛なんて責任が?
…正直待ち遠しい。
女性、ないし少女からチョコを貰った時の感覚はどのようなものであろう。それを味わってみたい。
「なぁ、べっぷ…」
「なんだい?」
「緊急でキッチンを用意しよう。これを艦娘に公開する。」
「何故だ?」
「いや…その…な」
バレンタインデーでチョコが欲しいからな。艦娘が料理できる環境はそういえばない。
まぁ、正直に言えるわけではなく
「もし艦娘が料理するときになって、できないなんて恥ずかしいだろう?それに夜食を姉妹艦のために作りたい艦娘だっているかもしれない」
「なるほど、バレンタインデーにチョコが欲しいんだな」
「そうそう、そういうこと…ってばれていたか」
「当たり前だ。私を誰だと思っている」
「はは、まぁ、たしかに付き合いは最初からだしな」
「ふふ、懐かしいな」
「さて、書類整理しますかー。べっぷ、よろしく」
「了解した。ではいってくる」
さて、本日2月6日。14日に何個チョコがもらえる…かなー…。
※三人称に変わります※
2月12日。二人の艦娘は廊下を歩きながら話をしていた。
「ねぇ、時雨?」
「なんだい、夕立」
夕立。
前方から見て右、ピンク色の髪、紅の瞳。かつて第三次ソロモン海戦で駆逐艦の隠密性を利用し「相手に最も甚大な損害を与えた」艦。その激戦の活躍ぶりそしてその狂気ぶりをもかもしだす容姿である。
時雨。
前方から見て左、黒色の髪、三つ編みの髪。夕立と反対の雰囲気をもった少女である。
「奇跡の艦」。かつて自分以外の艦隊が全滅という修羅場を二度も生きた艦である。
いずれとも恰好は黒色を全体、白がぼちぼちとしたセーラー服である。年齢一見高校生だがスタイルは恵まれている。
「そろそろバレンタインデーっぽい?」
「そうだね。夕立は提督にチョコを贈るのかい?」
「っぽい!けど提督さん喜んでくれるかな~?」
「夕立は料理上手だし、綺麗だし。喜んでくれると思うな」
「夕立照れるっぽ~い♪」パシッ
「いてっ」
「あ、ごめん」
「大丈夫だよ」
「時雨はチョコあげるっぽい?」
「うん…日頃の感謝とこの気持ちを伝えるために考えてはいるんだけど…料理が…やはり手作りはダメなのかな…」
「うーん、けどやっぱり手作りの方がいいっぽい?」
「だよね…困ったな…」
「なら、一緒に来るっぽい!」ガシッ
「えっ?ちょ!夕立!」タッタッタッ
~~~
場所は大広間、キッチン用品一式が10個ほど2×5の配置で並べられた部屋だ。
「…ここは?」
「提督さんがバレンタインデーだ!っていって作ったっぽい」
「なるほど…」
「とりあえずチョコ作ってみるっぽい!ね、時雨!」
「…そうだね、頑張るよ」
~
「何故か冷蔵庫に食材がいっぱいあったね」
「っぽい…うーん…」
「どうしたんだい?夕立」
「いや…ちょっとアーモンドパウダー買ってくるっぽい!」
「う、うん」
「…アーモンドパウダー?」
~~
「お、お待たせっぽい」
「お疲れ、夕立。夕立は何を作るんだい?」
「うん、マカロン・ショコラを作るっぽい」
「マカロン…難しくない?」
「大丈夫!この日のために練習したんだから!」
「そ、そうだったんだ」
「うん!」
「さて、作りますか!」
「そうだね、よろしく、夕立」
「っぽい!」
「ならまず下準備からするっぽい!」
「うん、了解。ボクは何をすればいい?」
「えっと、アーモンドパウダー…これと、砂糖と薄力粉をそれぞれ合わせてふるっぽい!私はブラックの方作るっぽい!」
「うん、分かった。アーモンドパウダーは夕立がさっき買ってきたこれと…砂糖はこれかな?薄力粉…あ、これか」
「ちょ!時雨!何やってるっぽい!?」
「ん、どうしたんだい?」
「砂糖…それ塩っぽーい…」
「あ…ごめん…」
「分量は?」
「えっと、アーモンドパウダー40g、砂糖60g、薄力粉5gでいいっぽい」
「うん、了解…うわっ!」
「ちょ、時雨、何やってるぽい!」
「ケホッ、ちょっと薄力粉が…」
「うー…ん、料理終わったら制服洗濯っぽい…分量は計っておくからふるうっぽい」
「了解、ごめんね」
「っぽーい」
「エプロンつけるっぽい?」
「…そうだね…」
「次からは気を付けるっぽい」
「ごめんね、夕立。えっと、これを混ぜてっと…」
「ちょ、ふるい使うっぽい!」
「あ、ごめんごめん」
「ねぇ、夕立?」
「ん?何っぽい?」
「アーモンドパウダーがなかなか…」
「うん、上から手で押すといいっぽい」
「なるほど、ありがとう…うん、できるね」
「ふふっ、時雨嬉しいっぽい?」
「な、そんなことないって…」
「えっと、次は卵白を泡立てるっぽい…時雨は見てるっぽい」
「うん、了解」
「まずは卵白をいれて…塩を少しだけっと…」
「夕立、塩はなんで入れるんだい?」
「詳しいことは分からないけど泡立ちが早くなるからっぽい?」
「なるほど…ありがとう」
「っぽい」
「泡だて器…っぽい」カチャ…ギュイーン
「…夕立、なかなか泡が立たないんだけど?」
「卵白作るのも10分くらいかかるっぽい」
「そ、そうなんだ…料理も大変だね…」
「ぽい…えっと、砂糖を入れて…」ギュイーン
「ねぇ、夕立…」
「っぽい?」
「ボクも…やっていいかな?」
「うん、どうぞ♪」
「電源ボタンは…うわっ!」
「ちょ!」
「ごめん夕立…ボク、駄目かも…」
「諦めちゃダメっぽい!はい、キッチンぺーパー」
「あ、ありがとう…」
「えっと、最初は低速でやるっぽい」
「なるほど…ありがとう」
~~
「なんとかできたー…」
「お疲れっぽい」
「さて、次やりますか…ふんっ…」
「っぽい…次はそれにさっき混ぜたのを半分だけいれるっぽい」
「こうかい…?」サラサラ
「うん、大丈夫っぽい。次はそれをゴムべらで合わせるっぽい」
「あ…合わせる?」
「混ぜるっぽい」
「ああ、ごめん」
「っと、夕立、なかなか混ざってくれないんだけど…」
「うん…底から返すようにして、後は回数っぽい」
「うん…了解」
「大丈夫っぽい?」
「うん、粉が見えなくなったよ」
「んじゃ、後はもう半分いれてまた混ぜるっぽい!」
「そ、そんなー…」
「頑張るっぽい」
~~
さて、出来栄えはいかに。当日までお待ちください。
同じく2月12日。部屋の中でとある艦娘が一人悩んでいた。
彼女の名は風雲。目立った戦果こそないものの、数多の作戦を熟した縁の下の力持ち。
緑の腰あたりまで伸びるポニーテール、薄い緑目。恰好はタイをつけた一見中学生程度でその印象通りに体はあまり成長していない。
「そろそろバレンタインね…どうしよっかなー…」
少女は頭に手をあててベッドに腰を下ろす。
「手作り…?いや…けど…市販はなんか嫌だし…」
と、少女は顔を上げて決心をした。
「まぁ、やらないと上達はしないものよね!今こそ提督に「うまい」って言わせちゃうんだから!」
そう言い残して彼女は間宮の所に基本的なチョコの扱い方を聞いて、キッチンへと向かった。
~~~
2×5に並べられたキッチン用品一式。一つ使った形跡があり、あたりには甘いお菓子のにおいがする。
「他の娘も提督にチョコ渡したりするのかしら…ま、まぁいいわ。さて…何を作ろうかしら…」
顎に手をあてて彼女は考える。
「あまり背伸びしない方がいいわよね…かと言って溶かして固めただけじゃ違うし…そうわね…」
「チョコのケーキ…とかどうかしら…いいわね、それにしましょう!」
「えっと…とりあえずチョコを刻もうかしら…チョコは冷蔵庫にあるかしら…?」
冷蔵庫へと小走りして開ける。そこには苦いチョコから甘いチョコまで、様々な種類のそれがあった。
「な、何がいいかしら…ちょっと食べてみようかしら…」ポリッ
「ふむふん…苦っ!こっちは…ふんふん…んん、甘さも丁度いいわね、これにしましょう」
「えっと、とりあえず刻もうかしら…えっと包丁は…あった。…いやな気がするわね…絆創膏を用意しておきましょう」
ポケットから絆創膏を取出す。
「チョコをまな板の上に置いてっと…さて、刻もうかしら。刻み方はいつも通り猫の手でいいかしら…」トン、トン
「…あ、手にチョコが…もっとスピード出さなくちゃダメね…ちょっとペースを上げてみようかしら」トントントン
と、包丁は狂う。中指の第一関節にめがけて落ちて行った。
「…いぎゃ!またやっちゃったか…洗って絆創膏を貼ってっと…うん、上手く貼れた」
「…やっぱり曲がりづらいわね…猫の手はやめましょう」
と、その後は何事もなく、大きさは歪だが刻む作業は終了した。
「さて、次はチョコね…そうだわ、生クリームを混ぜて…あれ、名前なんだったかしら…まぁいいわ、作りましょう」
「まずは生クリームを沸騰させて、チョコと混ぜるのよね。生クリームもたしか冷蔵庫にあったわね」
と、冷蔵庫に向かって生クリームの入ったパックを持って帰ってくる。
「鍋…これでいいわ…さて、沸騰するまで待ちますか…よいしょっと」
近くにあった席に座る。
「ふふ、提督が喜んだ姿を想像したらなんか面白くなってきた!…ふふん…ふふっ!」
「そうね…まずは渡し方よね…」
何を考えたのか。
「提督にばれないように市販のパッケージにいれて買ったものだわ、って渡しましょう…そうすれば提督の感想も素直に聞けるしいいわね…」
「そして提督がパッケージを開けて驚くの!俺の為にありがとう、って!そしてチョコのケーキを口に入れて…おいしい、って!ふふっ!きゃー!」
「…はっ!いやいや、そうじゃなくって…それ実は私が作ったの、っていって今こそ提督を驚かすの!…よし、これだわ!」
生クリームは既に沸騰していた。
「そういえば提督ってお菓子も作れるのかな…?いつも料理おいしいし…たしか昔料理を習ってたって…ちょっと難敵だわ…」
「まぁいいわ!私が頑張ればいい話だし!あ、そろそろ沸騰する頃かしら…うん、大丈夫そうね」カチッ
「あれ、こんな量少なかったかしら…?まぁ気のせいよね。次はチョコと混ぜるのよね。器にチョコいれて…」
「そこにこの生クリームをいれて…混ぜる、っと…」
だが、想像していたつやがあり、なめらかな液状ではなく、分離してしまいぼそぼそとなってしまった失敗例がそこにあった。
「間宮さんが言ってたのってこんなのだっけ?…まぁ、作り方はあっていたしこれでいいわよね。これを型にいれて…」
…全然良くはない。まだまだ精進は必要なのだが…。さて、結果はいかに。当日までお待ちください。
~~~
部屋の中に一人、ベッドに腰かけている艦娘が一見苛々していそうな、しかし何か嬉しそうな雰囲気を醸し出しながら一人呟いていた。
「たく…あいつ…あんなキッチン用意して…ったく…」
ベッドに滝のように流れる白い髪、少し日焼けした小麦色の肌、そして何よりもむちむちの黒ストボディが魅力的な艦娘、叢雲である。
叢雲。
駆逐艦の祖であり、最も人想いな艦である。(多分、詳しくは調べて下さい
「…つまり私からのチョコが欲しいってことわよね…ったく…いや、けど提督が私に…いやいや…」
…たしかに海外では男性がチョコを贈るとは聞いたことはあるがここは日本である。
「…しょうがないわね…さて、何を作ろうかしら…あまり凝ったものは得意ではないのだけれど…」
叢雲は自ら料理をあまりしない。一時間説教後に作ってくれる昼食も簡単なものである。味は決して悪くはないが、素材の味を出しているといった感じである。
「そうわね…簡単に何かにチョコをコーティングした簡単なものでいいかしら…」
シンプルオブザベスト…である。
「ま、あの提督なら万々歳…ってか何様のつもりなの!?あいつは!!」
「…だけど…万が一他の艦娘が作っていたら…?私の見劣りして…んー……」
と、叢雲は何かを考え付いたような仕草をした。が、彼女の顔は朱くなってなんだが恥ずかしそうである。
「…他の艦娘にない…バレンタイン…か…」
~~
当日までお待ちをーくだしあ。チョコのコーティングとかチョコ溶かしてコーティングするだけなんで…叢雲なら大丈夫そう。ってか時間g
~~
「ついに…来てしまったか」
もちろん、バレンタインデーの事である。
数多のリア充が酔いしれる<甘さの奔流>、またの名をマイルドトレント…なんちって。
「うん、べっぷには今日はそばに居なくても良いぞ、と言っておこう。作戦も今日はみんなここに入れるようにしたし…たまには作戦がなくても良いだろう」
いつも働いてばっかだからな。こういうイベント当日は休みでも別にいいだろう…。まぁもしかしたら艦娘からチョコ渡されるかもしれないし?
「んっ…っと。さて、いくつのチョコが…ふははっ!」
ニヤケが止まらない。…だってあの特設キッチンが使われていたんだからな!!!
コンコンコン、とノックされる。ん…もう朝か。
「どうぞ」
「失礼するっぽい」
「うん、夕立か」
と、ドアが開かれる。
そこには先程の口調で分かりきった夕立と、そばに下を俯いたままの時雨がそこに現れた。
「おはよう、夕立、時雨」
「おはようっぽい!」
「おはよう…いい朝だね」
「うーん、…若干曇ってるけど悪くはないよね」
「あ、うん…」
夕立が右手に透明の小さな袋にマカロンか。が入っている袋を持っている。くれるのかな?
対して時雨は両手を後ろに回して、先程会話(?)したせいかもじもじとそっぽを向いたままである。
まぁ、さっそく要件を問うか。
「そしてお二人方、要件は?」
「あ、うん!これ!提督にあげるっぽい!夕立、結構頑張ったっぽい!」
と、夕立はこちらに近づいて手に持っていたマカロンをこちらにぶらさげる。
右手をそっと前に出すとそれを置くように渡した。
「そうか!ありがとう。食べてもいいか?」
「んー、提督堪え性ないっぽいー」
「ははは、ごめんな」
「っぽい、食べるのは時雨のを受け取るからにするっぽい」
「と、なると時雨もくれるのか?」
時雨は何も言わずにこちらにのろのろと近寄ってきた。
「い、一応、これ。ボクからも渡しておくよ…///…その、邪魔、だったかな?」
と、時雨は両手に小さな透明の袋に入れられたマカロンをこちらに差し出した。それを先っぽをつかむようにそっと取る。
…そうやって時雨は頬が紅くなりながら尋ねてくる。まぁ、答えは一択だろう。
「いや、そんなわけないよ、すっごく嬉しい。ありがとう、時雨、夕立」
「うん…良かった」
「っぽい!早速食べるっぽい!」
「おう、ありがとう。二人とも!いただきます!」
夕立のくれた袋の、留め具となっている金具かな?あの形状記憶がある紙のような…しかし紙ともいいずらい要は留め具を外す。
そして時雨のも外した。
まずは夕立のから頂こう。夕立のマカロンは白色であり、きれいな丸型である。
「いただきます…」パクッ
うん、手作り感があるな。
しっとりとした上と下の土台に、ふんわりと中にあるクリーム。
咀嚼をするとチョコと生クリームの味が口に広がるようにして味を強まる。この甘くがやはり癖になる。
また、チョコと生クリームの相性も味が強いチョコをうまく生クリームが習性してマイルドとなっており良い。
「うん、上手いな。クリームか?」
「当たりっぽい!」
そして口の中に完全に味が混ざりきったマカロンを飲み込む。
「提督、どうだったっぽい!?」
「うん、焼き加減も丁度良いし、味も良かった。そして形が整えられてて、結構頑張ったんだな」
「んふふ~♪っぽい!撫でてくれてもいいっぽい?」
と、夕立が冗談交じりに言う。…机からそろそろ立とう。
「ああ、いい子だ、夕立」
「んひひ~♪っぽい~♪」
意外と可愛いな、夕立。
「さて、次は時雨のを頂こうかな」
「うん、どうぞ」
袋から黒色のマカロンを取り出す。
形は少々楕円のような形で、丸型ではない。
抓むと少し柔らかく、ちょっと焼きが足りなさそうだが、問題は無さそうかな。
「んじゃ、いただきます」パクッ
うん、これはさっきよりもちょっと苦いチョコの味かな。
焼きが足りないせいか生地は全体的にしっとり、としている。
が、味にはなんら問題はないな。
夕立と違いブラックのチョコと…これはココアか。ココアがチョコの味とマッチしていて丁度良いな。
苦すぎず、甘すぎず。得意ではないけど一生懸命作ったんだな。
「その…どうだった?」
「うん、形と焼きが少し甘いかな…」
「そ、そう…」
「ま、味はすごく良い味が出ていたよ。苦手なりに相当気を使っただろう。ありがとう、時雨」
「…そ、そうかい」
と、時雨はそっぽを向いた。そのまま時雨は動かない。
「どうした、時雨?」
「…ボクにも…///」
「あ、そういうことか。ごめんごめん、いい子だ、ありがとう」
時雨の頭を撫でる。
「…ふふ///」
さて、袋の中に入っているこの二つずつのマカロンは後でおいしく頂こうかな。
「んじゃ、後はゆっくりコーヒーを啜りながら食べるとするよ、ありがとうね、二人とも」
「うん、気にしないで」
「どういたしましてっぽい!」
と、時雨と夕立は部屋から出て行った。
マカロンの味が口から無くなった頃だろうか。コンコンコン、とドアが鳴る。
「どうぞー」
「し、失礼するわ!」
「あ、うん」
ドアが開くと、緑色の髪と瞳が特徴的な少女がいた。そう、風雲である。
「おはよう、風雲」
「…もう昼過ぎです、提督」
「あ、うん…そうだね。そして何用?」
ちょっと急かしてしまうが単刀直入に。
「あ、その…えっと…その…」
「うん?どうした?」
風雲は急にもじもじしだした。
ちょっとおちょくってみるか。
「もしかして…チョコくれるとか?」
「なっ!?」
「あ…いやー、そんなわけない?」
「い、いえ…そのまさかです…けど…はい、これ!」
「うおぉ!」
と、風雲はこっちに走って来ていきなり黄色の星が目立つ白色のパッケージに包まれ、ピンク色のリボンに彩られた四角い箱が机に置かれた。
「ちょ、風雲」
「ん、何?」
「いや、ちょっと手見せて?」
「え?いや…そんな…ね?」
「いいから…よっと」
椅子から立ち上がり、風雲に歩む。
「え?ちょ?提督…きゃ!」
後ろに回していた腕をつかみ、手を見る。
「…ったく、絆創膏…もしかしてこれに?」
例の四角い箱に目を向ける。
「その…うん…」
嬉しいが、俺のせいで怪我をしてしまった風雲を思うとなんだがしのびない気分である。
「まってろ、今救急箱を…」
「え?そんな!救急箱なんて大げさな…!」
「…どうせ消毒とかしなかったんだろ?」
「うん…料理中だったし…」
「なら今からするから、そこ座ってろ?」
「あ、うん…すみません…」
机の前にある、机を真ん中に向かい合わせにある人が2,3人座れる黒い本革のソファに座るよう促す。
風雲が向かったのを確認するとそのソファの後ろにある棚の、上から2段目にある救急箱を取る。
そして風雲の横に座る。
「ちょ、提督、近い…///」
「近づかないと手当でないだろ…はがすぞ?」
「あ、うん…っ!」
「んじゃ、次消毒するぞ。我慢しろー」
「っ…うぎゃ!」
机の端に置かれたティッシュを3枚ほど取り、傷がある指の下に置いて消毒液をかけた。
「あ、提督?」
「なんだ?」
「さっき嘘ついたんだけど…あのチョコ市販のだから。勘違いしないでよね?」
「はいはい…」
ま、物を見れば一発であろうが。
「よし、消毒完了。んじゃ、さっそく開けていいか?」
「あ、どうぞ」
「ありがとー」
右にある俺の机から四角い箱を取り、先程の所、風雲のすぐ隣へと戻る。
「ちょ、提督?なんで戻って…」
「いや、なんとなくだけど…ダメか?」
「べ、別にダメじゃないけど…///その…//」
「んじゃ、別にいいやん?」
「そ、そうね?…?」
早速リボンを外し、星がデザインされた紙をはがす。
と、その中から白色の少し硬い紙の箱がでてきた。
その箱の横のひっかけを破らないように気をつけながら外して箱を開ける。
と、その中にはハート形のチョコのケーキだろうか。がでてきた。
「よっと…うまそうだな」
「そ、そう?」
「うん、いいセンスだ」
「あ、ありがとう…//」
市販で買ったのに「うまそうだな」、と言って「そう?」と返す風雲を少し可愛く思えてしまう。
箱の横に添えられていたプレスチックのフォークを取り、チョコのケーキを取り出す。
表面のチョコには光沢がなく、ブルーム(白い模様)が出来てしまっている。
「んじゃ、頂きます」
「どうぞ」
ふむ、ふむふむ…。
ブルームがあることで予想して通り味に深みはない。スポンジはぼそぼそである。
風味はないがまぁしっかりとしたチョコである。
「ど、どう?」
「んー、市販としてはいまいちだな」
「そ、そう…」
風雲は下を向いてしょんぼりとしてしまった。
「ま、つくった人の愛情はすごく感じられるな。すごく頑張ったんだな、って食べてて分かる」
理由はスポンジまで手作りというところか。チョコも隅々までしっかりと塗られている。
「そ、そうなんだ…やるねー、それ作った人」
「そうだな、こうやって料理があまり得意じゃなくても、一生懸命作ってくれたものを食べると…もぐっ」
「食べると?」
「とても、…幸せだな。それでいて色々な意味でおなかが一杯になるな」
「そ、そうなんだ…////」
風雲はこちらを向いて「ほえー」と言いそうな顔でこちらを茫然と見つめている。
「ほえー…///」
「ほ、ほえ?どうした?風雲?」
「い、いや!な、なんでもないわ!」
「そ、そう。な、風雲」
「な、何?」
「これつくったの…お前だろ?」
「え?ちょ!?な、そ、そんなわけ…」
「んじゃ、これどこで買った?」
「え?えーあの…間宮さんのところ?」
「あそこは売店じゃないだろ…」
「い、いや、特別に…その…あの…」
「嘘つけ、正直になれー」
「うん、うん…実は私が…作ったの」
と、風雲はもじもじしながら恥ずかしそうに答えた。
「やっぱり」
「わ、わかってたの!?」
「そりゃ、ね?」
「そ、そう…///」
「な、風雲」
「何?」
「今度、一緒に料理しないか?」
「え?一緒に?」
「ああ。少しは料理のことについて教えることはできると思うからな。まぁ、次作るときになったら呼んでくれよ」
「あ、う、うん…」
「それに、また怪我したら見てられないからな。じゃ、ありがとな、風雲」
「う、うん…」
「また宜しくな?」
「…まったく、しょうがないわね…」
~~
コンコンコン、とドアがなる。
「どぞー」
「失礼するわ!」
「あ、はい」
と、扉が少し勢いよく開かれる。
そこには、黒ストの叢雲がいた。
「今日もぱっとしない顔ね…司令官?」
「んまー…そういうなって」
「あっそ…」
今日は少し悪態が過ぎないか?と思うのだが…話を進めよう。
「んで、ぱっとしない俺に何用?」
「んっ…///」
と、叢雲がごもる。
「んー?もしかしてバレンタイン…っ!」
「はっぁ!?なんで私があんたに贈り物しなきゃなんないのよ!!?」
「っ!す、すみません…」
どうやら違うようだ。…ならなんの用だ?
「あ、飯でも食いにきたのか?」
「…ち、違う…わよ///」
「はい、何用でしょうか?」
「…これ//」
と、叢雲がこちらから見て左側を見ながら右手を差し出した。
そこには、水玉の小さな袋が乗っかっていた。
「ん?これって…///」
「うっさい!贈り物じゃないわよ!?ただのプレゼントなんだからっ!//」
「…あ、ありがとうございます…」
立ち上がり、叢雲の所へと歩む。
「んっ…///」
「な、なんだよ…ありがとうっ」
「…ふんっ!///」
贈り物とプレゼント…どちらかというとプレゼントの方がかわいらしくて嬉しいのだが…ここでそう言うのはやめておこう。
「まま、とりあえず座れよ?」
「そ、そうわね…」
叢雲が向い合せに置いてあるソファに座る。俺はその向い合せの所に座った。まぁ、こうすれば肘で殴られることもなかろう。
「早速開けてもいいか?」
「…堪え性のない司令官ね。勝手にすれば?」
「んじゃ、お言葉に甘えて」
留め具を外し、中をのぞく。
そこには、串が見えて、その先には栗やらドライフルーツがチョコに彩られたいわゆるコーティングチョコがそこにあった。
「おう、上手そうだな。いっただきまーす」
「…///」
叢雲は相変わらずそっぽを向いている。まぁ、頬が朱くなっているのが微笑ましい。
うん、チョコと栗の相性ばっちりだな。互いの甘さをうまく混合させている。
ドライフルーツもちょっとの酸味をチョコがうまくカバーして、甘酸っぱさを演出する。
「うん、チョコと素材の味がすごくマッチしていておいしいよ」
「あっそ…///」
さて、そろそろお返しとか言われそうだな…どうするか…
「その、司令官」
「ん、なんだ?お返しなら…」
「お、お返しじゃないわ…////その…//」
「ん?」
叢雲がこちらを見ながらもじもじとする。なんかいつもの雰囲気と違う。
「ど、どうした?トイレ行きたいのか?」
「そ、そうじゃないわよ!?ばっかじゃないの!?」
「す、すみません…」
どうやら違うらしい。ならなんだ?
「っと…」
「!!?ちょ、なんで靴脱いでストッキング…!」
叢雲が爪先をこちらに向けて机の上に足を置く。
遠近法のせいかすごく強調される爪先はまるで挑発的でありかつ魅力的である。
そこの上にはストッキングに飾られた美しい曲線を描く太もも、その先の真ん中には…黒色がさらに濃くなっている。
「ありがとうございますっ!」
「ちょ!?何いって…」
と、叢雲は一瞬考え…そして
なんと、足を折り、爪先にチョコをかけ出した。
「…舐めなさい////」
…。
「は、早く舐めないとチョコが垂れるでしょ!」
「は、はい!」
机を踏み台にして足!爪先…!
一瞬のチョコの甘い味、感触。そして、ストッキングのすべすべの舌触り。
甘く、甘い。妖しく、魅力的で、とても、癖になる。
「んっ…///はぁ…////」
甘く、甘い。舌、耳、頭、すべてが虜になる。
「も、もういいわよね!?」
良くない。チョコの味が残る。
舌を這わせよう。下からうえ、爪先を舌先で弄る。
「…い、いい加減にしなさい!!///」
「は、はいぃ!ありがとうございます!」
「…ふん///」
叢雲とチョコの味。最強で最高だ。
「こ、これくらいお願いされ…ら…////」
「え、今なんて…?」
「五月蠅い!!帰る!////」
と、叢雲は靴を履いて出て行った。
さっき舐めたまま靴を履いてくれるのか。…これはご褒美以外の何物でもないですありがとう。
ドアの外から声がする。
「マイクチェック、ワン、ツー。ワンツーサンシッ!」
「どうぞー!」
「は、はいっ!?」
と、勢いよくドアが開かれる。
そこには一見巫女服のような、けど色々違う服装に金色のメガネをかけたおっちょこちょいお姉さんの霧島がそこに表れた。
「し、司令?いつから聞いてました?」
「…いつから霧島はドアが防音だと?」
「で、ですよね…」
ま、おっちょこちょいなのは前々から承知している。準備体操がてら放置ボイスを言ってしまったのだろう。多分
「して、何用?」
「あ、はい。こちら、日ごろからお世話になっているお礼です。義理ですが」
と、手の上には長方形の手の平にちょこっとだけはみ出る、デパートでみたことのあるチョコのセットがそこにあった。
「お、サンキュー!」
「いえ。これくらい当然です」
「これ、あそこのデパートで?」
「はい、頑張ってつくりま…選びました!おいしかったですよ!」
「ん、味見したのか。楽しみにしておくよ」 「あ、味見ではなく…」
「ん、今なんか言った?」
「いえ、なんでもないですよ」
ふむ、あそこのチョコは食べたことなかったからな。少し気になる。
「では、私はまだ仕事があるのでこれで」
「あ、俺も手伝うよ?いつも作戦の指揮とか任せているし…」
「いえ、大丈夫ですよ。この霧島にお任せください!」
「え、でも…」
「なら司令に任務です!そのチョコの感想を後で報告してください!」
「ん?…わ、わかった」
と、霧島は言い残し、机にチョコを置き小走りに去っていった。
「早かったな。さて、開けるか」
チョコが置かれた机の横のソファに座る。
「さて、開け…ん?」
おかしい。パッケージのリボンを外し、紙を外そうとすると、そこには両面テープが張られていた。
「と、とりあえず中を見てみるか…ん、いい形のチョコが6個。…どれから食べようかな…」
左の上の四角のチョコを手に取り、口にいれる。
「ん、お酒が入っているチョコか。…ふむ、日本酒かな。ん、チョコと日本酒の相性もいいな。なかなか食わないから気が付かなかったけど」
中に入っているお酒が気になってチョコの明細をみる。
「えっと…あれ?」
その明細には日本酒の名前どころかバーボンの文字自体がなかった。
「…さっきの両面テープ…そういうことね」
手が込んだ渡し方である。しかもこの手作りと思いはしないような整えられたチョコの形、ここはおっちょこちょいじゃないんだな。
「まじかー…負けたな。後でお礼言わないと」
それと後でこの日本酒の名前聞こうっと。
~
その後。作戦を立てる部屋にて。
「いやー、すごいな、霧島!チョコの明細見るまで分からなかったよ!」
「もう食べたんですか!?」
「うん、上手くて我慢が聞かなかったよ」
「あ、気が付いたんですね」
「両面テープがあるし明細が違ったからね。それと一つ質問していいか?」
「はい、なんでもどうぞ」
「あの…チョコに入っていた日本酒の名前聞きたいんだけど…」
「あ、あれですね。あれは…」
と、霧島がこちらに歩む。
そして
霧島の唇の柔らかく、温かい感触が、俺の唇に当たる。
「んっ…!」
「あらー、司令?朱くなってますよー?///」
「お前もな…」
突然の、霧島が普段しないような行為に、すきを突かれる。(隙と好きを突かれる)
「司令?私の味はどうでしたか?」
「え、キスのことか…?味は…コーヒーの味だったが…」
地図の横に置かれたマグカップがその証拠になるが…あっ!
「あ、なるほど。最高だったよ。今度月見酒でも一緒にどうだ?」
「はい、喜んで!」
今度はチョコなしで、ありのままの霧島を味わってみよう。ふ、深い意味はないからな!?
「Guten Tag!!提督!」
「うおっ!ぐーてんたーく、ビスマルク」
突然扉が開かれながら挨拶された。
そこには腰までかかる髪、肌が美しい日焼けの少ない肌色で、被る帽子が特徴的な艦娘、ビスマルクがそこにいた。
まぁ、恰好はもっとすごいけど。
ん、手に紙袋持っている。
「提督!私からの贈り物よ!ありがたく受け取りなさい!」
「うおっ!あ、ありがとう!」
ビスマルクがこちらに早足に歩み、手にぶら下げていた茶色の紙袋をこちらにおいた。
「ふふーっ、もっとお礼いってもいいのよ?」
「さて、早速頂きますか」
「こ、こらー!聞きなさい!」
「うん、いい子いい子してやろうか?」
ま、こうすると当然拒否るわけなのでさっそくいただきますk
「た、たまにはいいわね…//」
帽子を取るビスマルク。えっ
「ほ、ほら///早く撫でなさいよ///」
「お、おう…ありがとう、ビス」
「…もぅ///」
髪が柔らかく、すべすべで、それを撫でていると癖になる。
それに照れながらも笑顔を浮かべるビスはなかなか見れなくて、思わず見とれてしまう。
「ほ、ほらっ!//早く感想聞かせて頂戴!」
「お、おう!…ってことは手作り?」
いつも料理はこちらに任せるもんだから作れないかと思ったが…そうではないらしい。
「んじゃ、まずこれを食べてもらいましょうか」
「ん、これは…開けるぞ」
「いいわよ」
そこには、ハート型にくりぬかれたチョコが2、3個ほどあった。
「とりあえず食べてみるよ」
「ええ…ふふっ」
ビスが若干笑ったのに気になりながら口へと運ぶ。
それは…なんというか…生臭い…塩っけのある…チョコに包まれた…?なんだこれ…正直まずい。
「ふふ、はははは!提督!その顔…!ふふふふ!!」
吐くのも嫌だな。ちょっと無理やり飲み込もう。
「ビス!こら!何いれた!?」
「ふふふ!ザワークラ…じゃなかった!お漬物を…ふふ!」
「おまっ…」
チョコと漬物が合うわけないじゃないの…
「ま、食べるけどさ…」
「えっ?捨てないの?」
「…せっかくビスがつくってくれたし、食べれるんだからな。んじゃ、…うっ」
「ふふふふふ!提督!はははは!」
よし、食い終った。
「まさか…これだけ…とか言わないよな?」
「ふふふ!え、えぇ。まだあるわよ…ふふ!」
「そろそろ落ち着け―」
「え、ええ…ふふ。さて、こっちが本命よ」
と、ビスマルクは赤のスパークリングワインと…黒いサーターアンダーギー?のようなものがそこにあった。
「スパークリングワインと…これは?」
「ええ、これはドイツのお菓子、Schneeball(シュネーバル)よ。せっかくだし故郷の味でいいと思ってね」
「お、いいね。ビスっぽい感じがする」
「でしょ?とりあえず…ん?」
「どうした?ビス?」
「いえ、夕日が綺麗わね…」
「そうだな…な、ビス?」
「どうしたの?提督」
「ちょっとこれもって外に行かないか?」
棚のグラスとワイン、あとお菓子を袋に入れて場所を移動する。
~
ビスを連れて、夕日が反射して幻想的な道を描く海が良く見える、丘の上にきた。
地面には芝で、座るのにも抵抗はないだろう。
「…いいわね」
夕日を眺めるビスマルクは、未来を見据えているような、そんな感じがした。
「いいね。ほら、座ろうか、ビス」
「ええ…」
「なんなら俺の膝の上に来てもいいんだぞ?」
「なっ///」
「はは、冗談…」
「たまにはいいわね…」
と、ビスが胡坐をかいていた俺の脚の上…いや、股間の上に座る。
…我慢しろー、俺。
「風が…ここち良いわね。これくらいならグラスも倒れないでしょう//」
「そ、そだね…」
「どうしたの?提督?////」
「いや、なんでもない」
太ももと股間部に広がる柔らかく、温かいビスの感触。
そして、こちらを覗くように見るビスの顔は、予想以上に近くて、吐息があたりそうである。
「と、とりあえず頂こうか」
「ええ、どうぞ」
例のシュネーバルを手にとる。
ん、黒いのはチョコか。
「いただきまーす…んっ」
うん、きしめんのような生地に…ん、これはビターのチョコか。
「ほら、提督ってコーヒーを飲んでいるから…ほろ苦いチョコがいいかな、と思ったのだけど//」
「うん、甘いのも好きだけど、こっちの方がもっと好きだな。ありがとう」
「うん!その…提督?」
ビスが帽子を脱ぐ。
「んあー、いい子いい子」
「んふっ///」
…癖になってやがる。
「次はワインを頂こうかな」
「ん、今注ぐから食べていて結構よ」
「おう、ありがとう」
…体重移動するビスの尻にどうも夢中になってしまい、シュネーバルを食べることを忘れてしまう。
「はい、どうぞ」
「ああ、ありがとう。いただきます」
「ええ」
そのスパークリングワインの炭酸は少し強めで、喉を刺激する。
と、その後に広がる渋みのある葡萄の味わい…たまらない。
「…いい顔するわね。提督///」
「ああ、これもビスのおかげだな。ほら、ビスも食べなよ?」
「ええ、そうするわ//あーん」
ビスが口をめい一杯開ける。…今日のビスは積極的だな。これが海外ののりってやつか?
「ほれっ」
「むぐっ!//れいろふっ!」
「はは、ごめんごめん」
「ごくっ…もう//」
と、ビスがグラスを見る。
「ん、ほれ」
「んっ…//」
ビスの口にワインを注ぐ。
「んー!最高だわっ!」
「なっ!」
「ね、提督?」
「なんだ?」
ビスの、きらきらとした瞳がこちらに向けられる。
「ホワイトデーは…その…提督の…ホワイト…を///」
「ん?ホワイトデーのお返しか?」
「そ、そうわよ///」
「俺のホワイト…そうだな、大根のお漬物か?」
「……」
「ど、どうした?ビス?」
「し、知らない!私帰る!//」
「あ、あぁ…」
と、ビスは立ち上がって去って行った。
「俺のホワイトか…」
ワインを、ビスが口つけた所に合わせて飲む。
ワインの味が広がる。だが、なんとなくだが甘い感じがした。
「…次のホワイトデーまでにケッコンカッコカリをしておくか…」
忙しくなりそうだな、と内心苦笑した。
~
コンコンコン、とドアから音がする。
「どぞー」
「失礼しまぁ~す♪」
と、ドアが開かれる。
そこには、駆逐艦なのにスタイルはしっかりとした、まるでおっとり系のお嬢様というかお姉さまというか。そんな雰囲気が漂う駆逐艦、村雨が見える。
膝まで届かないコートの先まで伸びるツインテールは思わず目でおいかけてしまう。
「提督ぅ~♪」
「ん、どうした」
だが、いつもより変だな。なんか声が妖しい。
…というか、なんでコート?
「なんでコートなんて来ているだ?ここは部屋んなかだぞ?」
「そのことなんだけど~提督?」
「ん、なんだ」
「今日何の日か分かってる~?」
「あぁ、バレンタインだろ?」
「うん♪」
その言葉を皮切りに、村雨がコートをはだけた。
「じゃじゃ~ん!」
「っ!」
「どうしたの~?提督ぅ?いい感じ?」
「あ、ああ、いいと思うぞ」
「ありがとう~♪」
そのコートの中には、恥部以外は肌色で、その恥部を隠しているのはピンク色のリボンと来た。
まぁ、水着をリボンに置き換えて貰えれば想像は難くないはずだ。
「ふふ~ん♪//」
「ちょ、何近づいて!」
「だって~♪ねぇ?///」
と、村雨は机に手をついた。
まぁ、それにつられて胸が重力の影響を受けてぷるん、となるわけで、ピンク色のリボンに同化した乳首g
「提督のエッチ~///」
「お前のせいだ」
「あっは~ん、朱くなってか・わ・い・い」
「うるせぇ」
直視してはいけない。目を逸らす。が、目は自然と胸へと向かう。
「そうやってちらちらみないでぇ~♪」
「うおっ!?」
「じっ、とみて、いいのよ///」
「…はい」
村雨が、両手で頬を挟む。
すべすべで、温かく、指はまるで目の横を這うようで、なんか、そう、意識してしまう。
それに、目はもう胸から離れることはできなかった。
「んで、俺にどうしろと?」
「そうね~、私を食べてほしい、な?///」
「おまっ」
「実は私…まだ誰にも食べられて//…ないんだ?」
「…そういう話じゃ」
…嬉しいけど。
「まぁ、提督に食べられるのは悪くないけど~、流石に提督もきっかけがないとねぇ~?//」
「いやまぁ、そうだな」
十分にあるが。
「それに~、私もバレンタインでチョコもなしだとこれはこれでいやだしー」
「あ、そうですか」
「うん//」
ま、甘い蜜と解釈すれば…いかんいかん。
と、村雨が手を頬から離す。ちょっと名残惜しい。
「それで…じゃじゃ~ん♪」
「ん…それは…チョコ?」
村雨はどこから取り出したか、手には黒い容器が握られていた。
「村雨特製生チョコレート♪ちゃんと液状よ?」
「そ、そうですか」
…叢雲よ…でじゃぶを感じる。
「というわけで…準備はいい?//」
村雨もこちらが気が付いているのを気が付いているのか、チョコを
「ほら…マシュマロに…チョコ…食べたいでしょ?///」
「…是非」
胸にかけた。左から右へとチョコはかけられ、胸の上にたらされたチョコは横や、中央に流れる。
「んっ///提督、はやく//」
「…あぁ」
椅子から立ち上がり、村雨の前へと立つ。
…なんだか勇気が
「提督ったら//えいっ!」
「むぐっ!」
瞬間、顔全体に柔らかくすべすべとした感触、そして暖かさ、そしてチョコと、また別の甘い香りが漂う。
舌を伸ばすと、チョコの味がした。
「んんっ///ていとくっ…//んあぁっ!」
胸の谷間とはこんな、幸せな世界が広がっていたのか。
「んんっ…////ていとくっ//はげしっ///んんっ///」
「んはっ!」
と、胸から離される。
顔にさらされる冷気、それがあの世界から離されたことを諭す。
まだしていたかったという性欲・執着。
「提督…///」
村雨が胸のリボンを外した。
リボンと同じ桃色の乳輪と、乳首。豊かな胸から少しだけ存在を主張したがるそれは、とても可愛らしく、愛しい。
「いちごチョコ…食べたくない?//提督ぅ?///」
「…」
突然、胸に冷気が漂った。
ここでこんなことをして提督としてどうなんだ?
だが、答えはすぐに熱気に当てられた。
いましなければ、次は来るのか?
ここでやめるのは、村雨にも恥をかかせてしまうだろう。だから、我慢なんてしなくても良い。
「たのむっ」
「ふふ~///」
と、村雨が胸の上から乳首の間にチョコをたっぷりとかける。
曲線に広がりながらチョコは降りる。そして、ピンク色のそれらは、やがて黒へと変わった。
「おいでっ//提督///」
村雨、そして胸、めがけるは、中央、左、少し下。
「んっ//あああぁん//は、げ//しい!んっ!//」
村雨の、温かな、掴みやすい脇腹を掴む。
乳輪であった場所に唇を置き、唇の先ででっぱりを弄ぶ。
舌でそれをひっかけると、それは元の場所へと戻る。ただ、それを繰り返すだけだ。
この甘いのは、チョコの味。だけど思いは、蜜の味。
「ああぁぁぁん///てい//とくっ!////んんっ//」
と、村雨は手を俺の腰へと回し、抱き着く。
「もっとぉ///んんんっ//」
舌をより早く動かす。それと比例し、村雨の喘ぎはまし、腰の動きも増していた。
「んんんん////あっ!んんん!!///ああぁぁぁん!////」
「っ!」
脇腹を掴んでいた手に体重が一気にかかる。それに耐えきれなく、村雨は床に尻から落ちた。そう、村雨は座り込もうとしたからだ。
「はぁ/////んんっ//」
村雨は、左手で、下半身のリボンの中央を、なぞるように弄り始めた。
リボンに、愛液が、広がる。
「んんんっ////」
指で縦になぞると、リボンには縦に線が現れる。
その線の上のでっぱりを、村雨は人差し指で弄んだ。先程の舌を思い出す。
「あああっ////んんんっ///んっ!///」
やがて、村雨はリボンをずらし、恥部をさらけ出す。
蓋を失った容器から、液漏れ出す。そして床に落ち、溜まりをつくる。
この淫らな行為は、俺の我慢を徐々に外していく。
「んんっ///ああぁぁん!」
そして、指をその容器の中へと入れる。
「んんんんっ///!!あああぁぁんん!//」
もう片方の指で、その上のでっぱりを弄る。
……。
「きゃっ!/////」
気が付けば、村雨を押し倒していた。
触れたい、交わりたい、汚したい。
「ていとくっ…////その…///夜戦…しよ?////」
脳天にまるで甘く広がる、彼女の声。
右手でベルトを外し
ガチャ
「…!」
左から音がする。これは…ドアの音?
「司令官、そろそろ夕食を…!」
「べ、べっぷちゃん!?」
「べ、べっぷ!」
「…その、あの…」
まずいまずいまずいまずい。これがみんなに知られたらまずいって!
だが、手は村雨から離すことはできなかった。
「違うんだ!べっぷ!」
「…いいんだ、司令官。私は部屋に行っている」
と、べっぷはドアを閉じた。
「ちょ、提督…ま、また今度ね!///」
と、村雨は部屋からでていった。
…どうしよ。
~
レシピ引用→ガーナさんのサイト
URL:http://www.lotte.co.jp/products/brand/ghana/top.html
一応注文の受付は終了しました。…が、どうしても見てみたい、って思ったらコメント下さい。…←
1、Верный
2、手作り
3、本命
4、やっぱり純愛。日頃の感謝と気持ちを恥ずかしながら…ぐへ(
もちろんゆうしぐですね
手作りがいいなー
もちろん本命です
渡し方は部屋に行って渡させるのがいい
ま、自分もらったことがない人です
もらえるかな?
オレ>了解!頑張る!
…なんだこのひとり芝居
matuさん>毎度おおきに!ゆうしぐ了解です!っていうか投稿から早すぎ!ありしゃす!
手作り了解です。
となると提督室に二人でお邪魔させる感じですかね。
それはー……艦これログインしてれば…多分…(
おぉ、これは期待して待ってます
1.風雲
2.手作りを市販のパッケージに入れて
3.本命
4.伝えたいけど恥ずかしい…でもハート型で思いを伝えようってな感じで
料理の苦手な風雲が、何気ない顔で義理チョコ風に渡すけど、指の絆創膏で全てがバレる
みたいなのでおねがいします‼︎
みっけさん>頑張ります!ご丁寧に注文ありがとうございます!
艦娘了解!…ってか誰だ…
手作りパッケージ!凝ってますね!
ふむ…ご褒美じゃないですかー←
この設定を生かせるように頑張ります!
1、叢雲
2、手作り
3、もち本命
4、ツンデレな感じの流れなら何でもおけです!
毎度毎度たくさんのリクエストに応えていてすごいです!
応援しております( ´ ▽ ` )ノ
アテナさん>こんちわっす!注文さんくすっす!
艦娘了解、チョコ頑張ってそうですな
ツンデレ…若干エロ要素いれてもいいですk(殴
消化できるように頑張ります!ありがとっす!
1、霧島
2、手作り(提督には買ったものといっている)
3、本命(提督には義理といっている)
4、いつもお世話になっている感じ(好きだけど、それを押さえている感じ)
霧島さん、大好きだから、どんなチョコでもおいしく食べる!
9番さん>にちわっす!了解っす!
素直になれないんですね…
霧島さん料理できそうなイメージ
1、Bismark
2、手作り(提督の好みの味)
3、本命
4、お任せでお願いします。
11番さん>コメントありがとうございますー
びすまるちゃん了解です!…俺の歴史が悲鳴をあげる(R18で一回書いてましたので
お任せktkr…了解っす!びすこちゃんらしい渡し方目指してがんばります!
1.村雨
2.手作り
3.本命
4.提督を夜戦(意味深)に誘うように。
とても面白いです。今後も頑張ってください。
13番さん>コメントありがとうございます!
夜戦キタコレwwwがんばりやす!
鳳翔さんが手作りチョコを作る(本命)→なかなか渡すタイミングがない感じ(最終的に大淀や工学部コンビなどの後押しで渡す)でオナシャス!
15番さん>なかなか勇気がでない子いますよね(妄想
がんばりやす!
よっこー氏
-_-b
イベントでえぐられた心が一気に癒されました‼︎
みっけさん>い、イベントお疲れっすw
(艦これを卒業しているおれは関係ないがな!←)
さて、家帰ったら続きかな…
よっこーさん、霧島の話とても良かったです。
かなりテンションが上がりました!
19番さん>たまにはこういうどきっ、てできそうなシチュもいいかな、と書かせていただきました!
楽しんで頂いて何よりです!っ【霧島】
ザワークラウトとチョコはww
でもやっぱビス子最高です!
21番さん>ちょっと行きすぎましたかね?wなんかR18で崩れてそんままいっちゃいましたwすみませn
びすこちゃんいいですよね…(コミケで抱き枕衝動買いした人)
よっこーさん、びすこが嫁だから
めちゃくちゃ良かったです!
23番さん>コメントさんくすっす!ありがとっす!
びすこ…べっぷ…ヲ級…選べないとか言えない