一幕
暇でしたので。
「」が主人公で『』がヒロインです。
「かっ、香澄さん!」
『はい?』
「その……えと……」
『何しょうか?』
「…ぼっ、僕と!付き合ってくだしゃい!」
……やらかしたー!
『ふふっ』
「えっ?」
『良いのでしょうか?このような私で』
「もちろんです!香澄さんが良いんです!」
『……では今からよろしくお願い致します。私の恋人さん♡』
「……良いんですか?」
『ふふっ♪ではまた明日お会いしましょうね!』
「はい!また明日!」
こうして僕は人生初の彼女ができたのだ。
翌日
「おはようございます」
「おっ、おう……」
あれ?なんかみんな元気ないな?
「どうかした?」
「五条さんに彼氏ができたらしいんだよ」
「そ、そっか……」
僕のことだー。まぁ隠す必要もないしな。
「それで今日はその話題持ちきりだよ」
「そんなに!?」
「うん。だって昨日あんなことあったんだもん」
たしかにそうだけどさ……。
「誰かは分からないの?」
「それはまだだな」
「……僕って言ったら怒る?」
「……まじ?」
「うん」
「お前なら良かったよ!みんなお似合いだって言ってるからな!あとでみんなにも言っとくぜ!」
「ありがとう」
でもほんとにこれでいいのか? 教室に行くとクラスの人達が騒いでいた。
「おはようございま〜す」
とりあえず挨拶して席に着いた。五条さんはまだいないのかな? ガラガラッ! 来たみたいだ。
『おはようございます』
みんなの視線が集まる中、彼女は堂々としていた。
そしていつも通り授業が始まった。
最初は緊張していたが、時間が経つにつれて慣れてきた。
隣の女の子をチラ見すると、目が合った。
「……」
香澄さんはかわいいなぁ。
『ふふっ♡』
僕にほほえんだよね?嬉しいな。こっそり手を振ってみると、振り返してくれた。
幸せだなぁ。
昼休みになり、弁当を食べようとカバンを開けると何もなかった。
「……しまった」
そういや今日は作ってなかったんだった。とはいえ何も食べないのもなぁ……。
『どうかされましたか?』
「香澄さん。実は今日弁当忘れちゃったんですよ」
『そうなんですね。では私が買ってくるので待っていてくださいね』
「いえいえ!そこまでしてもらうわけにはいかないですよ!」
『大丈夫ですから』
そう言うと彼女は購買に向かっていった。
数分後、彼女は戻ってきた。
『すいません……もうほとんど売っていませんでした』
「いえいえ!悪いのは僕ですから気にしないで下さい!」
『そうですか……あの……よろしければ一緒に食べてくれますか?』
「もちろんです!というよりこちらからお願いしたいくらいです!」
『良かったです!では向かいましょうか』
彼女の後について行くとそこは屋上だった。
『パン1つでは足りませんよね……』
「気にしないでください!自分のせいですから!」
『ダメです!ちゃんと食べないといけません!』
「じゃあ半分こにしましょう!」
『わかりました!ではいただきましょうか』
2人で食べることにした。
「美味しいですね」
『はい♪とても楽しいです♡』
幸せだなぁ。こんな毎日が続くといいんだけどなぁ。
放課後になった。今日はバイトがあるので彼女と別れて帰ることに。
『ではまた明日お会いしましょうね』
「はい」
翌日。学校に行くと、やはり噂になっていた。
「おはようございます」
「聞いたぜ!五条さんと付き合い始めたんだって?なぁどこまで進んだんだ?」
「おはよう。付き合うって言ってもまだ数日だからなぁ……」
「そうなのか?」
「うん」
「そっか……」
どうしたんだろう?落ち込んでるような気がするけど……気のせいかな? 授業が終わり、帰り支度をしていると彼女に話しかけられた。
『今日はどちらに行かれるのでしょうか?』
「今日はコンビニに行こうと思っています」
『毎日のように働いていませんか?』
「親に縁を切られたので自分で学費を払わないといけないんですよ」
『そうなのですか……もし宜しければ私の家に来られませんか?もちろん無理にとは言いませんが……』
「……行きたいです」
『では参りましょうか』
「はい」
こうして僕は彼女と共に家に向かった。あれ?これっていわゆる「ご両親とのあいさつ」になるのではないだろうか……?
……嫌な予感しかしないなぁ。
そして僕の不安は的中してしまったのだ。
『ただいま戻りました』
「おかえりなさい」
「お邪魔します……」
『あら?その子は?』
リビングに通されるとそこには香澄さんのお母さんがいた。
『こんにちは』
「初めまして。佐藤優人と言います」
『まぁ礼儀正しい子ねぇ〜。あなたも隅に置けないわね〜』
「……何のことでしょうか?」
『ふっふっふ♪隠さなくても良いのよ』
「……」
なんだこの人……怖いぞ。
「それでその……あなたの娘さんとお付きあいをさせていただいております」
『良いのよぉそんなにかしこまらなくて。私のことはママって呼んでちょうだいね』
「……ママ?」
『うーん……ちょっと違うわね。まぁ今はそれでもいいでしょう。香澄をよろしくね』
「はい!」
『ありがとうお母さん!』
「じゃあそろそろ帰ります」
『……この雨で?』
えっ。外を見ると確かに大雨だった。
「そういえば天気予報では夕方から降るって言ってたような……」
『でも傘は持ってきてないんでしょう?泊まっていきなさいな』
「いえ流石にそれは……」
『お父さんには許可を取ってあるわ』
『そうですよ?濡れて帰って風邪でもひかれたら大変ですからね!』
『それに夕食も食べていってほしいのよね。香澄だけだと心配だし』
「わかりました。お世話になります」
『ふっふっふ♪じゃあ早速準備しなきゃね〜。香澄は着替えてきなさい』
『はーい』
初日からいいのかなぁ……。
『ご飯ができましたよ』
食卓にはたくさんの料理が並んでいた。
「凄く美味しそうです」
『たくさんありますから遠慮なく食べてくださいね』
「はい!いただきます」
本当にどれもこれも絶品だった。
『どう?』
「はい!とてもおいしいです」
『よかったぁ~!』
『喜びすぎだよー』
幸せな時間だなぁ。このままずっと続けばいいのに……
夜11時、僕達は寝る支度をしていた。といっても2階の部屋を貸してもらっただけなのだけれど。
『では電気消しますね』
「はい。おやすみなさい」
と言っているが流石に別室だ。まあ恥ずかしいってのもあるけど。
寝るか。
翌日。
「おはようございます」
『昨日はよく眠れましたか?』
「おかげさまでぐっすりと」
『良かったです』
『今日はバイトが無いんですよね?』
「はい」
『じゃあお出かけしましょう!』
「どこにですか?」
『遊園地に行きませんか?』
「遊園地!?」
『ダメ……でしょうか?』
「行きたいです!」
『では決まりですね♪』
こうして僕は彼女とデートすることになった。電車に乗り、やってきたのは遊園地だ。平日ということもありあまり人は多くないようだ。
『まずは何に乗るんですか?』
「そうですね……あれなんてどうでしょうか?」
『うーん……あっ!メリーゴーランドがありますよ』
「乗りませんか?」
『はい♡』
その後、コーヒーカップに乗ったりジェットコースターに乗って楽しんだ。
「次はこれにしませんか?」
『これは……お化け屋敷ですか?』
「はい」
『これはちょっと……』
「じゃあやめときましょうか」
『い……いえ。せっかくですし入りましょうか』
「え?大丈夫なんですか?」
『はい。怖くても一緒に居てくれれば安心ですから』
「わかりました」
『行きましょうか』
「はい」
中に入ると雰囲気が出ていた。
『結構本格的みたいですね……』
「そうですね」
『手を繋いでもらってもいいでしょうか……』
「はい」
手を繋ぐと彼女の体温を感じた。温もりを感じると同時に恐怖心が消えていった。
『行きましょう』
「はい」
「うわぁぁ!!」
「きゃあああ!」
叫び声をあげながらなんとかゴールまでたどり着いた。
『もう無理ぃ……』
「出ますよ」
『はい……』
外に出ると空は赤く染まっていた。
『……ちょっと来るの遅かったですかね』
「そうかもしれませんね」
「最後に観覧車に乗りませんか?」
『はい!乗りたいです』
二人で観覧車の中に入る。ゆっくりと上がっていくにつれて景色が見えてきた。
『綺麗……』
「あの……香澄さん」
『どうしました?』
「これからもずっと僕のそばにいて下さい」
『もちろんです!私からもお願いしますね』
彼女は微笑みを浮かべた。その笑顔は夕日に照らされてより一層輝いていた。
****
「同居、ですか?」
『私の家の方が学校から近いのよぉ〜』
『なに勝手に決めてるのお母さん!?』
『あら?嫌だったかしら?』
『そういうわけじゃないけど……』
『ならいいじゃな~い』
「でも……ご迷惑じゃないですか?」
『ふっふっふ♪二人とも仲良くね〜!』
こうして僕は香澄さんと同居することになったのだ。
「香澄さーん!起きてくださーい」
『ふぇ?朝?』
「そうですよ」
『おはよ〜ございます……』
「早く降りてきてください」
『は〜い……』
「今日の朝食はトーストでいいですか?」
『はい……』
なんだかいつもと違う気がする。
「どうかしたんですか?」
『なんか変な夢見たんだよねぇ……』
「どんな夢です?」
「えっと……」
思い出せない。何か大切な事を忘れているような……。でも多分気のせいだろう。
「忘れちゃいました」
『そっかぁ』
「それよりご飯にしましょう!」
『はーい!』
2人で食べる食事はとても美味しかった。
「今日もバイトがあるので行ってきますね」
『うん!頑張ってね』
「ありがとうございます」
『いってらっしゃーい』
「いってきます」
『ふぅ……疲れたぁ』
私は今お風呂に入っている。あんなに働かなくていいのかな……?まあ優人さんも優しいし楽しいから全然問題ないんだけど。
「ただいま帰りました」
『おかえりなさい!』
「今日はハンバーグを作ってみたのですが……いかがでしょう?」
『とってもおいしいです!』
『毎日こんなに幸せだと少し不安になりますね……』
「どうしてですか?」
『だってずっとこのままの生活が続いたらいいなぁって思うし……』
「じゃあその夢叶えましょうよ」
『え?』
「だから僕と結婚してください」
「はい!」
『やったー!!』
「これでようやく言えた……」
『嬉しい!大好きだよ♡』
「僕もです」
こうして二人の生活が始まった。この先何があろうと僕は彼女を愛し続ける。それが僕の誓いだ。
〜fin〜
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