2016-10-17 05:53:53 更新

概要

「離島の鎮守府と、変な提督」第二話です。

扶桑さんの隠された女子力が炸裂する!伏線はまだ少しだけ。曙が曙らしくなる。漣が良い子。山城にちょっと変化が?
そして、鎮守府の特殊な施設と、陸奥の特務の良く分からない単語がいくつか。


[第二話 新鎮守府の夜 ]



-執務室


提督「あああ!落ち着かない!広すぎて落ち着かないっての!なんでバーとナイトラウンジだったところを執務室にしちゃうわけ?バカなの?上層部は。頼むから誰か私を押入れに閉じ込めてくれぇ!」


叢雲「・・・重症ね。アンタが広いところが苦手だなんて知らなかったわ」


漣「じゃあご主人様、狭い密室で漣と叢雲さんと仲良く執務しますか?」


叢雲「わっ、私は別にどこでも」


提督「まあ冗談はともかくだよ?この鎮守府の各施設、ここにしかないものが多いから、これをみんなに説明して回るのと、各施設に担当を付けるべきかどうか、結構悩んでいるんだよ」


叢雲「近々、丸一日休みにして、今この鎮守府に居る全員で施設をまわって説明しながら、希望者を募って管理していく方式はどうかしら?」


漣「あ、漣もそれに賛成です」


提督「・・・やっぱりそれが一番だよなぁ。決まりだね。それがいい。近海遠征部隊はいつ頃帰ってくるっけ?」


叢雲「夕方よ」


提督「明日の遠征予定海域の予想獲得資源は?」


漣「予想バランスシートはこれですヨ、ご主人様」パラッ


提督「ん、決まり!明日は遠征をお預けして一日、ここについてみんなと理解しあって役割分担する日にしよう。今夜を臨時の食事会にして、みんなに周知しようか」


叢雲「そろそろここでも、作戦海域に出始めるのね」


提督「そういうこと。資源を集めて、仲間を集め、とにかく練度を上げていく。一応、日割りで資材は届いてくるようだけど、とても足りないからね。まだ何もできないさ。少なくとも、今日までは」


漣「素敵な鎮守府だから、毎日戦いの中でも、ずっと笑っていられたらいいな。七駆揃ったし」


叢雲「そうする為に全力を尽くすわ。じゃあ、食事会の準備をするわね」


-夜、食堂


山城「姉さまと肉じゃがを作って、一緒に食べるつもりだったのに。・・・不幸だわ」


扶桑「山城、提督から何か大切なお話があるそうよ?私は、ここで山城や皆さんとお食事するの、とても好きよ?・・・あら、ちょうど提督が来られたわね」


提督「まず、近海の警備をしてくれた三人、お疲れ様!漂流資源の回収ありがとう」


潮「あ、ありがとうございます・・・」


朧「大丈夫」


曙「ふん、これくらいどうってことないわよ(小声)」


提督「さてと、じゃあみんなお疲れ様。鎮守府として戦闘・遠征を行う前に、私の着任以降解放された施設がいくつかあるので、明日、既存の各施設と合わせてそれらの施設の確認と説明をしつつ、今いるメンバーの中からそれぞれ責任者または担当者も決めていきたいと思います」


加古「提督ー、解放された施設っていうのはどれー?」


提督「まず、あまり関係はない三か所の港湾防衛施設の工事現場と、港の浮きドックに係留されている特殊輸送船『にしのじま』。次に、火器精度計測所と射撃場のセット。それから、この前、私と大淀さんが乗ってきた水上飛行艇に、地下の大貯蔵所と、あれ(指さし)、港にくっついたやたらでかい箱モノがあるでしょ?特殊演習場って言うらしいんだけど、あれはすごいよー!」


古鷹「提督、質問いいですか?」


提督「古鷹、くん(国会口調)」


山城「げほっ!」


古鷹「港湾防衛施設って、何ですか?」


提督「正しく言うと、海岸砲の現代版を実験するらしい。深海勢力はなぜか通常のレーダー等で検出できず、人間の通常兵器も効かない。感知して攻撃できるのは君ら艦娘だけって状態なんだけど、ここの海岸砲は艦娘の艤装の技術を応用して、防衛兵器として有効性があるかどうか?を試すんだそうだ」


扶桑「鎮守府としては、実際に使用するのですか?」


提督「完成後に、可能であればまず海上の通常目標に射撃して命中精度のデータを取ったり、できれば深海勢力の装甲に対しての与ダメージのデータが欲しいそうだよ。もし成功したら世界初のデータらしいけどね」


青葉「でも、倒すと消えちゃうんですよね」


提督「そう、それ。生きたまま連れてくるって事になるけど、あまり考えたくないね。まあ命中精度のデータ取りくらいはやるよ。あとは成り行き次第」


加古「提督―、あたしもいい?あの輸送船はどこが特殊なの?」


提督「良い質問ですねぇ(某口調)」


山城「うっ!こほっ!」


提督「あの輸送船、うちの鎮守府だけ作戦海域からやたら遠いので、作戦海域の近くまではあの船で休息しつつ移動出来るんだけど、どうも特殊な、対深海勢力ステルスとでも言える機能がついているんだよ。ただし、これも試験段階だけどね。操船は自動操船のすごいのがついてて、最初に作戦海域を指定すれば、勝手に移動してくれる。これもデータ取りが任務に組み込まれているよ。ちなみに、休憩も入渠も、装備の換装も一通り可能なんだ」


加古「えー、じゃあ作戦ギリギリまで寝ていられるって事?」


提督「・・・なるほど、そういう切り口の理解の仕方もあるね」


古鷹「だめだよ加古ったら」


提督「いや、士気さえ下げず、轟沈しないで帰ってくるなら、自分のスタイルをある程度大事にするのは全然構わない。むしろ、自分のスタイルは大事にしてくれていい」


加古「ありがと提督!あたし、頑張るからねぇ!」


提督「おう!頼むよ!」


朧「提督、わたしも質問いい、かな?」


提督「どうぞ」


朧「特殊演習場がすごいっていうのは、どう凄いの?」


提督「ごめん、こればっかりは明日実際に見てもらった方が良いと思うから、楽しみにしてて。練度を上げて怪我を減らしていく上で、最も大切な施設だと思うからね」


朧「わかった」


潮「あの、私も質問、いいでしょうか?」


提督「いいよ。あ、この前は失礼な事を言ってごめんね」


潮「あ・・・もう大丈夫です。この鎮守府、素敵なお風呂が沢山あるんですけど、自分たちで掃除して使うなら、好きに使っても大丈夫なんでしょうか?」


提督「いいよ。ここはリゾート施設だったから、無駄に設備が豪華だからね。せっかくだし、風呂その他好きに楽しんで。のちのち、各浴場を自分たちで役割分担して管理してもらう予定だしね」


潮「あっ、ありがとうございます」


青葉「私も質問、いいですかー?」


提督「ハイ青葉さんどうぞ―(教師口調)」


山城「ぐっ?ふっ」ケホケホ


青葉「提督はお風呂と寝室はどうしているんですか?」


提督「え?それ答えないとダメ?」


青葉「嫌だったら別にいいですけど」


陸奥「私も知りたいわね。以前のお詫びもかねて一緒に飲みたかったのに、どこにも居ないんだもの。扶桑と山城と一緒にしばらく探して、諦めて寝るって流れを二度も繰り返しちゃったわ」


提督「ちょっと待って、それいつごろの話?」


山城「一昨日が三時ごろで、その前が二時半くらいかしら。結局見つからなくて不幸だわ」


提督(えぇ?その時間から飲むの?)


扶桑「山城、あなたが遅い時間になってから、提督と飲んでみたい、なんて言うからよ?やっぱり、もっと早い時間でないと」


山城「姉さま、山城はそんな事言ってません」プイッ


陸奥「あら、私も聞いたわよ?」


山城「そんなの何かの間違いです。勝手に勘違いされてすごく不幸だわ」ムスッ


扶桑「しょうがない子ね」


叢雲「漣、戦艦の三人、いつの間にか仲が良かったのね。なぜかしら?(小声)」


漣「運の数値的なアレじゃないですか?(小声)」


叢雲「運の数値的なアレって何よ?(小声)」


漣「なんでもないです(小声)」


叢雲「よくわからないわね・・・。でもちょっと意外だったわ」


青葉「提督、おモテになるんですねー。で、結局お風呂と寝室はどうされているんですか?皆の命を預かる方がその所在を秘密にしちゃいけないと青葉は思うんですよねー」


提督(くっ、ダメだ、完全にゲスなマスコミの目になってる)


提督「ん、寝るのは、時間がない時は執務室近くの宿直室だし、そうでない時は11階、7階、5階の適当なシングルルームで風呂に入って寝てるよ。面倒だから全部1号室ね。さあ、これで満足かな?あまり広い部屋は好きじゃなくてね」


漣・叢雲(本当に広い部屋が嫌いなのね)


青葉「お答えいただきましたー!ありがとうございます。新聞に載せますね」


提督「なっ、まあいいか・・・」


漣「ご主人様質問!」


提督「なんでしょう?」


漣「お部屋に遊びに行ったり、何か手伝いに行ってもいいですかー?」


提督「自分の事は自分でするから手伝いは無いけど、あらかじめ言ってくれれば、時間のある時は別に構わないよ」


漣「あざーす!かわいい子いっぱい連れていきますね」


陸奥「今後は号室も教えてよね?お酒は用意して持っていくから」


-バンッ!ガタッ!


曙「あまりそういうの良くないと思うんだけど。提督は来るもの拒まずなの?だったら、本当のクソ提督じゃない!誰が見ても、陸奥さんと言う人が居るのに」


-微妙な沈黙が漂う


曙(あれ?)


陸奥「あら、あらあら!そんなに仲良く見えるかしら?」フフッ


曙「はい、見えます」


陸奥「提督が大人なだけよ。特に何もないわ」


曙「でも、提督は陸奥さんの事をむっちゃん、と呼んでますし、何か噂も・・・」


陸奥「ああ、私が提督のベッドに裸で、っていう話?」


曙「はい。すいません」


陸奥「その話は本当よ?」フフッ


曙と一部のメンバー「!!」


陸奥「前の鎮守府の時に、私の着任祝いを兼ねて飲んでいたら、いつの間にか飲み比べみたいなノリになったのよ。あれは楽しいお酒だったわね。提督はバーボン一本半に、テキーラを5ショット飲んでてね。結局、私が負けたのよ」


山城(強いのね・・・)


陸奥「提督は私を介抱してくれて、執務室のソファに座らせたり、ぬるめの麦茶をたくさん用意してくれたり、すごく申し訳なかったのを覚えているわ。そうしているうちに寝ちゃったのよ」


提督「で、むっちゃんを介抱してたら、下ばかり向いてたせいか気持ち悪くなって、トイレで盛大に戻しちゃってね。しばらく吐いてから麦茶がぶ飲みして、シャワー浴びて、寝息立ててるむっちゃんに毛布かけて、自分も寝たんだけど・・・」


陸奥「今度は私が目を覚まして、麦茶をたくさん飲んでやっと落ち着いたのよね。でも、汗ばんだ身体が気持ち悪いし、足に来ちゃっててまともに歩けないしで、とりあえずシャワーを借りたんだけど、もう眠気がすごいのよ!ふと見たら目の前のベッドで提督があったかそうに寝ているし、寝るとき何もつけない派の私は、なぜか脱いだ服を奇麗にたたんでまとめると、そのまま『失礼します、提督』とか言って、提督のベッドに入って一緒に寝ちゃって、朝になったら真っ青な提督と真っ赤な私、ってところね。あれはひどい失敗よ」フフッ


提督「あれは本当にびっくりしたよ。血の気が引いたね。記憶にないのに裸のむっちゃんだもの。あれ?そこまで一気に仲良くなったっけ?そんなやりとりあったっけ?みたいなね」


陸奥「まあ私は、何か起きていたとしても自分の責任だからと思えたし、私の事をすごく心配したり、言い訳もしないで謝る提督を見ていて、何もなかったのが少し残念な気になったのだけれど」フフッ


提督「またそうやって茶化すー!」


叢雲(やっぱり戦艦は何か違うわね)


漣(大きいのはおっぱいだけじゃないんだなぁ)


曙「でっ、でも、それ以上に親し気に見えますよ?(ああもう!わたし何を言ってるの?すごく嫌な感じになるじゃない。提督の事を知りたかっただけなのに)」


陸奥「それだけ誠実なのに、いざという時に自分の事を命がけで守ろうとしてくれて、その後も気を使わせないように気安く呼んでくれている人を、嫌う人なんているかしら?」


提督「よせやい。おれは別に気を使ってるわけじゃないぞ?こういう立場についている時点で、誠実ってのもむずがゆいし」


漣(あっ、ご主人様、素が出てる)


漣「ぼの、もういい?」


曙「納得しました。ごめんなさい、変な事ばかり聞いて(やっちゃった。泣きたい)」


提督「別にいいけど、ダメです」


曙「えっ?」


提督「ちょっとイラッと来たので・・・」


曙「はい・・・(嫌われたよね)」


提督「今後たまに秘書艦頼むね。服装はメイドで」ニッコリ


曙「なっ、えっ?何で?メイド?」


提督「今後ずっとやってくのに、互いが良く分からないと誤解も生じやすくなる。私も君のことをあまり知らないし。たぶん君は口下手なところがあるだけなんだと思うから、秘書艦でもしつつ色々聞いてくれたらいいんじゃないかな?と思ったのさ。あと、七駆はみんなメイド服で秘書艦やるって聞いていたからね」


曙「その、怒ってない、の?・・・あ、曙で大丈夫です」


提督「だって、漣の友達でしょ?ちょっと言葉がきつかったり、指摘が厳しく聞こえるけど、何だかうまく言えてないだけかな?って」


漣「ご主人様、曙はご主人様が気になってるだけなんですヨ?しゃべってると、何だか無意識に自分に指示出す人への信頼と不信感が勝手にせめぎ合ってるところがあるみたいで。でも、仲良くなると良い子なんで、可愛がってやってくださいね」


曙「なっ!可愛がるって、そんなセクハラ助長するみたいな!」


漣「あれれー?普通の意味でしか言ってないですヨ?どう可愛がってもらうの想像したのかなー?」


曙「えっそれは!・・・」カァァ


漣(ほんとぼのはおもしろいなぁ)


叢雲(七駆楽しそうね)


陸奥「曙、提督はさっきの通り安全な人だから、もし本当に信じられなかったら、私みたいに裸でベッドにもぐりこんでみたらいいわ。ただ、事故が起きても保証はしないけれどね」フフッ


漣(陸奥さんもちょっとだけイジワルしてる。ぼの大変ね)


曙「なっ、陸奥さんまで!そんな、裸って・・・」マッカ


提督「ちょっと待った!あれは泥酔していたからで、泥酔してなかったら普通に健康な男なわけで、そんな危険な事されたら本当に困る!提督を使った火遊びダメ!絶対!・・・あまり火遊びされたら、お兄さん、本気になっても知らないからね?」


山城「ぐふっ!」


漣(ご主人様が焦ってる!)


提督「・・・ま、まあとりあえず、提督いじりはここまでにしてもらってだね、あとは明日、各施設を回って行こう。じゃあ、私は先に失礼するね」


一同「はーい!」・・・テイトク、イッタワネ・・・ジャア、ウチアワセシマショ


-同日ニイサンマルマル、11階廊下


提督(ふーっ、疲れたね。しかしまずいなこれ、やる事が多すぎる。とはいえ、焦っても仕方ないかな。シャワー浴びて飲み物作ってとっとと寝るか。・・・ん?)


-ドアが少しだけ開いて、常夜灯の光が漏れている。


提督(照明は消したはず・・・。ドアも閉めたはず・・・)


-静かに部屋に入り、そっと照明をつける


提督「・・・あっ?なぜここに?」


扶桑「おかえりなさいませ、提督。お疲れ様でございます」


提督(いい香りがする。お風呂上りかな?ほんとこの人は奇麗だなぁ)


提督「うん、ありがとう。でも、なぜこんな時間にここに?・・・あっ、部屋を片付けてくれていたの?」


扶桑「はい。プライバシーに関わりそうな場所は手をつけておりませんが、それ以外の場所は一通り。でも、それだけではないんですよ?ちょっと失礼いたしますね」スタスタッ、ガチャリ


提督(え?内鍵をかけた?)


扶桑「提督、扶桑、よろしければ夜伽の相手をするつもりで、ここに来ました」手ギユッ


提督「夜伽って、えっ!」


扶桑「はい。男女の、その、そういう意味です」カァァ


提督「ちょっと待って、何でそんな?」


扶桑「他の鎮守府では、提督と艦娘がそういう関係になって提督の心身を癒したり、結婚に準じた不思議な仕組みもあるとか。提督は誰にでも優しいですが、健康な男性でもあります。禁欲に過ぎる生活はきっと心を蝕み、毎日の仕事や健康にも支障をきたしかねませんよ?艦娘を代表して、見た目の年齢も高い戦艦同士で話し合い、こういう事を提案してみた方が良いのでは?という話になったのです」


提督「それで、なぜ扶桑、さんがここに?」


扶桑「呼び捨てで呼んでください。以前陸奥さんとお酒を飲んだ時に、提督が私と山城の事をとても褒めてくださっていたと聞いたものですから。話し合って今日は私が来ることに致しました。・・・もし、山城か陸奥さんが良いのなら、扶桑は身を引きます」


提督「・・・その、他の鎮守府についての話は誰から?」


扶桑「以前の鎮守府からこちらに移動する前に、少しだけ他の鎮守府の方と交流があり、その時にです」


提督「なるほど・・・(困ったなぁ)」


扶桑「提督は、扶桑はお嫌いですか?」


提督「いや、全然そんな。むっちゃんの言っていることはほむっ」クチビルニユビアテー


扶桑「提督、なら今夜はもう、他の女性の名前は一切出さないで、私の名前だけ呼んでください。私も、提督の事はひそかにお慕いいたしておりますもの。順番が逆でも、最初に独り占めできるなら、それでいいと思えるくらいには。でも、嫌な女と思わないでくださいね?」フフッ


-ある場所


??「扶桑の迫り方、素敵ね。奥ゆかしくて情熱的(小声)」


??「これは男性はひとたまりもありませんねー(小声)」


??「姉さま、男性への迫り方も綺麗です!(小声)」


-鎮守府視聴覚室(旧シアタールーム)


漣「ここまでする必要があったのかなぁ?でも扶桑さん、さすが扶桑さんて感じ」


叢雲「わたしもちょっと微妙。でも、今後も沢山女の子が増えていくわけだし、ベンチテストでもないけど、意味はあるのよね。こんな時どうする提督なのか?っていう(でもこれ、ちょっとかわいそうよ)」


曙(これ絶対わたしのせいだ・・・でも)ドキドキ


-再び、提督の私室


提督(はー、女性運だけは昔から異様にいいんだよなぁ・・・。まさか一般社会を断ち切っても、よりハイレベルな女の子ばかりの環境になるなんて、どうなってるんだよ。でも・・・)


扶桑「私も、そろそろ抑えが効かなくなりそうです。いいですね?提督」スイッチパシッ、デンキケシ


提督(こんな素敵な人がここまでしてくれてるのに断るのも・・・いや)


提督「扶桑、帰って来たばかりだから、ひとまずシャワー浴びてくる。少しだけ考えさせて。

あと、これでも飲んでいて」ゴンッ、カラン、カチャカチャッ、シュワァァ、パラパラッ・・・コトッ


扶桑「ありがとうございます。待っていますね」


-再び、ある場所


??「待たせている間、扶桑にカクテル用意してるわね。カクテルも作れたのね(小声)」


??「いやー、うすうす気づいてましたけど、男性力高いですねー(小声)」


??(どんな結果になるのかしら?ドキドキしてきたわ)


-再び、提督の私室、シャワールーム


提督(決めた。嫌われても、筋は通すしかない。・・・・はぁぁぁぁ・・・そりゃ残念だよ、男としてはすごく残念だよ!でも、生き方の問題だもんなぁ・・・くそっ!)


-ガチャッ


扶桑「提督、この飲み物、美味しいですね」


提督「口に合うといいんだけど、オリジナルだからね」


扶桑「そうだったんですの?」


提督「夏バージョンと冬バージョンがある。まだレシピは完成していないんだけどね」


扶桑「時々、味見をお手伝いさせていただいてもいいかしら?」


提督「もちろん!」


扶桑「楽しみにしていますね。それで、提督、もう一つ言っておきたいのですが、扶桑は戦艦です。男の人に多少手荒に扱われても、愛情が伝われば大丈夫ですから、遠慮なさらないでくださいね?むしろ、提督にはそのように扱われたほうが、私には嬉しいかも・・・しれません」カァァ


提督「!(しまった、先にここまで言わせちゃった。・・・なんという攻撃力。クラクラする)」


-再び、ある場所


??「姉さまがここまで攻めるなんて!・・・あっ、鼻血が・・(小声)」ポタッ


??「扶桑さんの誘惑に勝てる人なんていないんじゃないでしょうか?青葉ちょっと不安になってきました(小声)」


??「扶桑もさすがね。これは油断できないわ~。普段あれだけおしとやかな和風美人にここまで言われたら、普通はもう無理ね、たぶん(小声)」


-鎮守府視聴覚室(旧シアタールーム)


朧「ちょっと面白くなってきちゃった。扶桑さんすごすぎ」


漣「うぐぅ、扶桑さんの女子力半端ねぇ」


叢雲「あまりこんな事言っちゃいけないけれど、参考になるわね。時には素直以上に捨て身になるくらいがいいのかも」


曙(どうにかなっちゃったら、どうするのよみんな・・・)


潮(・・・・)


-提督の部屋


扶桑「では、提督、可愛がってくださいね」クルッ、ファサ・・


提督(暗いところでも背中を向けて服を脱ぐって、本当に良い女なんだな・・・でも!)


提督「扶桑ごめん、本当にごめん!気持ちは本当に嬉しいし、理性を窓からブン投げたいけど、ダメなんだ、これでは。このままでは」バサッ


扶桑「えっ?服をかけてくださったの?」


提督「恥をかかせるような事をしてごめん!最初からちゃんと話せばよかったんだけど、善意や気づかいで受け取っていいレベルのものじゃないよ、これは。もっとずっと大切なものだ。だからごめん、本当にありがとう!しかし、おれは大丈夫だから!」


扶桑「提督・・・」


-カラカラッ


青葉「はい、そこまでですー!提督、お見事でした」


陸奥「ごめんね提督、辛かったわよね?」


山城「提督キライ。姉さまがあそこまで頑張ってるのに」


提督「なっ、ベランダにいたの?・・・!・・・えーと、これはどういう事かな?」


陸奥「ごめんなさいね。一応特務なの。理性テストみたいなものね。ちょうど良いタイミングだったので、この機会にさせてもらったけれど」


提督「・・・ハァ。まあむっちゃんが絡んでいるって事は、そうだよね。で、結果は?」


陸奥「言うまでもなく非常に良好ね。きっと、他の多くの鎮守府で起きている問題がここではかなり起きづらくなるんじゃないかしら?」


提督「要は、男女関係がらみの?」


陸奥「それも大きいわね」


提督「なるほど、他にもあるわけか・・・はぁ~。・・・結構真面目にがっかりしている自分にびっくりだよ。安心より、がっかり」


扶桑「提督、お怒りか失望されていますよね?」


提督「いや、特務なら仕方ないけど、みっともない姿を見せてしまったな。それにね、残念と言えばすごく残念。胸が高鳴らないわけないよ」


扶桑「私は演技のつもりではないのよ。演技なんてできないもの」


陸奥・青葉・山城「えっ?」


扶桑「演技や嘘をつくことは苦手なの」


提督「?」


扶桑「最初は、提督への感謝の気持ちを好意に置き換えて演じてみたのだけれど、私は提督の事が好きなのかもしれないわ。最近、なぜ提督とお酒を一緒に飲みたいと思ってしまうのか、理由に気づいてしまったのよ。提督はとても優しい方なんだわ」


提督「なっ?えっ?」


扶桑「山城、だからあなたも、提督と飲んでみたいなぁ、なんて言ったのね」


山城「姉さま、山城はそんな事言ってません。ただ、いつも大切にしてくれるお礼くらい言わないと・・・って。それだけです」プイッ


青葉「えーと、何なんでしょう。とりあえず提督の特殊なストレステストへの耐性について記事にしときますね」


陸奥「あら、あらあら。モテる提督さんは大変ね」


提督「・・・・もうあったま来た!嬉しいけどあったま来た!」


一同「!(ですよねー)」


提督「もう今日は飲む。執務室をアホな上層部があんな場所にしたのは、飲まなきゃやってられんって事なんだろ。もう飲む。飲みまくる。立たなくなるまで飲まないと寝れない!」


陸奥「立つっていうのは足かしらね?」


提督「言わせんな!男だ!」ニコッ


陸奥(怒るのも当然よね。ごめんなさい・・・でも優しいのね。何かお詫びしないとダメだろうなぁ)


陸奥「あなたがつぶれるまで付き合うわよ?」


扶桑「私も一緒に飲みます」


山城「あっ、私も・・・姉さまと」


青葉「青葉お酒は苦手なんですが、皆さんの事知りたいのでお付き合いしますねー」


提督「明日の予定より、今日の予定の方が大事だ。もう知るか―!」


-鎮守府視聴覚室(旧シアタールーム)


漣「ご主人様、笑ってるけどこれ絶対怒ってる。やば」


叢雲「扶桑さんも提督の事がまんざらじゃないみたいね」


曙「漣、これあたしのせい?」


漣「んなわけなーい。陸奥さんの仕事のきっかけだったってだけでしょ」


潮「提督はいい人なんじゃない、かな・・・。自分の事より相手の事を考えてるし、たぶん怒ってても感情的になったりしないし」


漣「おっ、潮も分かってきたねー」


朧「漣と似てる。だから仲いいんだね」


漣「んん、そんな事はありえませんぞ?」


曙(なんかうらやましい・・・)


-ドアガチャ


古鷹「ごめんなさい、加古が全然起きなくて遅くなっちゃった」


加古「もー、あたしゃ眠いんだよー。提督も男なんだからさー、あたしらにとったら眠い時寝るなとか、食べていい甘味を食べるなとか、そういう意味合いのテストなんてかわいそうでしょー?」


一同(そんなきつい事なんだ・・・)


加古「特にさー、戦った後の眠りとか、甘味とか、取り上げられたらあたしゃ発狂するね。・・・んで、どうなったの?」


一同(興味はあるんだ!)


叢雲「扶桑さんのほぼ本気の誘惑を断ったわよ、うちの提督」


加古「お!提督さっすが!」


古鷹「提督はとてもまじめで、優しい方ですもんね」


-ドアガチャ


提督「おー、みんな揃ってんねー!急だし自由参加だけど執務室ラウンジで宴会やります。飲まないとやってられません。・・・あ、加古は眠かったら無理しなくて大丈夫だからね?」


加古「顔出して適当に寝てるよー」


古鷹「私も行きますね!」


提督「ジュースも冷凍甘味も色々あるから、叢雲と漣たちも良かったら来てね」


漣「ほいさっさー!ご主人様の居るところに漣ありです。みんなしてメイドになって行きますね!」


叢雲「あたしも行くわ。たまにはみんなして愚痴くらい聞かないと」


-同日、マルフタマルマル、執務室ラウンジ


提督「うーん・・・ねむ・・・」


扶桑「提督、もう突っ伏してしまいましたね」


山城「あんなに皆さんの話し相手をしていて、少しは気休めになったのかしら?」


扶桑「山城、話しかけなかったら提督もお話のしようがないでしょ?」


山城「あんなにみんなが話しかけていたら、私が話しかけたら邪魔するみたいだもの。不幸だわ」


陸奥「任務の一環とはいえ、ひどい事しちゃったわよね」


扶桑「でも、私は提督の人柄がわかって嬉しいわ。今日の一件で嫌われていないといいのだけれど・・・」


陸奥「そうよね、艦娘にも色々な性格の子がいるから。提督がどんな判断をする人かわかっていたら、今後お互いに楽だもの。・・・とはいえ、何かお詫びしなくちゃね」


漣「ご主人様が今日の一件で扶桑さんや誰かを嫌うなんてこと、絶対ないと思いますヨ?」


叢雲「そうね。そういう人だと思うわ。でもちょっと可哀想なのは事実よね」


漣「漣、ご主人様を部屋に送っていきますね?・・・ぼの、手伝ってくれる?」


曙「えっ?うん。みんな寝ちゃってるもんね」


陸奥「あら、ありがとう。足元に気を付けてね」

漣「じゃあ、ご主人様、歩けます?漣と曙が肩を貸しますね?変なとこ触っちゃだめですよー?」


提督「ダイジョウブ、ダイジョウブ・・・」ガタッ


叢雲「私は後片付けをするわ」


扶桑「そうね、片付けましょうか」


-提督の私室


曙「ひゃっ!漣、提督の手が胸に当たるんだけど・・・」


漣「もう着くから大丈夫。でもなんか、ご主人様思ったより軽い?」


提督「・・・良くわかったな。もう大丈夫ありがとう!」


漣「やっぱり酔ったふりしてたんですね」


曙「え?えぇー?」


提督「つぶれるまで飲んだら明日仕事にならないし、むっちゃんや扶桑さんたちにあまり気を使わせても悪い。何より、おれの気がもう晴れたよ。みんなありがとう」


漣「んふふー、漣は薄々気づいてましたヨ?」


提督「まあ、むっちゃんたちも気づいてるかもしれないな。曙もありがとう。いいさわり心地で元気が出たよ」


曙「んっ・・・なっ!やっぱりクソ提督だわ!」


提督「そうそう、そんな感じで頼むよ。漣や君みたいな接し方をしてくれた方が、おれはとても気楽になれるからさ。ありがとう」


曙「ありがとうって、べ、別にそこまで怒ってないから!」カァァ


漣「やっとぼのらしくなったね。どれどれ?ご主人様の気に入ったちっぱいを」サワサワッ


曙「やっ、ちょっと!なんで漣までさわんのよ!」


漣「おー、いいねぇ。決して主張しすぎず、しかし手のひらに収まる。このサイズと初々しさ、たまりませんねご主人様」


曙「なっ!もう知らない!」プン!


提督「曙、ごめんね。手が触れちゃったのは間違い。でも、元気が出たのは本当」


曙「いいわよ、そんなに怒ってないし。提督だって大変なんでしょ?げ、元気が出たのなら、よかったじゃない」


漣「ぼのごめんね?でもありがと!あとは漣がお夜伽するから、恥ずかしいから先に部屋に戻ってて?・・・あ、一緒にやる?」


曙「・・・は?・・・え?よ、夜伽って、ええっ?」


提督「いや冗談でしょ?曙って面白い子だなぁ」


漣「プークスクスクス!」


曙「擬音で笑うなー!」


提督「ふふふ、いや、本当に元気出た。ありがとう。あとはとっとと寝るから大丈夫だよ。潮と朧にも、メイド服可愛かったって言っといてね」ドサッ


曙「じゃあおやすみ!クソ提督」ガチャッ


漣「おやすみ、ご主人様」


提督「漣」


漣「何ですか?ご主人様」


提督「ありがとうな、おやすみ!」


漣「ふふーん」ニコッ


-同じころ、医務室の特務端末前


-プリントアウト済みの暗号化ロールペーパーを見る陸奥


陸奥(現時点でのエスフレーム輝度値変動ね・・・。扶桑、大幅な上昇。山城、上昇。曙、大幅な上昇。漣、微上昇、か。・・・で、私とあの人は相変わらずフレームアウトなのね。意味が分からないわ・・・)



第二話、艦


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2019-02-22 23:35:44

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2017-10-08 16:21:16

SS好きの名無しさんから
2016-06-20 06:07:48

このSSへのコメント

5件コメントされています

1: SS好きの名無しさん 2016-06-20 06:08:09 ID: DB8Sefyo

続きが凄い楽しみ

2: SS好きの名無しさん 2016-06-21 04:51:49 ID: DLkPL5s0

扶桑の正ヒロインもすごいけど、山城の隠れヒロイン力がすごい...
ちゃんと提督に感謝を伝えてるあたりまじ可愛い

3: SS好きの名無しさん 2016-06-21 06:00:18 ID: DLkPL5s0

扶桑の正ヒロインもすごいけど、山城の隠れヒロイン力がすごい...
ちゃんと提督に感謝を伝えてるあたりまじ可愛い

4: SS好きの名無しさん 2016-06-21 06:01:43 ID: DLkPL5s0

>>2、3連投すいません

5: 堅洲 2016-06-23 00:55:56 ID: e6liHORm

皆さんありがとうございます!

今後も扶桑と山城のエピソードが出てきますが、作品の中で夏ごろに出てくる山城のエピソードと、もう少しで出てくる扶桑の話はかなり練ってあるので、気長に楽しみにしていただけましたら幸いです。


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