2017-08-21 03:20:29 更新

概要

5章です


前書き

注意事項
【勢い】
・ぷらずまさんと称しているだけのクソガキな電ちゃんの形をしたなにか。

・わるさめちゃんと称しているだけの春雨駆逐棲姫の形をしたノリとテンションの女の子。

・明石さんの弟子をしているアッシーという短気で無礼気味な明石君。


もう矛盾あっても直せない恐れあり。チート、にわか知識、オリ設定、独自解釈、日本語崩壊、キャラ崩壊、戦闘描写お粗末、魔改造、スマホ書きスマホ投稿etc.

ダメな方はすぐにブラウザバックお願いします。


【1ワ●:アッキー&アッシー】



間宮「大所帯になってきて、鎮守府らしくなってきましたね」

 

 

提督「まあ、思い通りには進みませんよね。当初の予定ではこんなに人が集まるとは」

 


乙中将「またまたー」


 

乙中将「カ級の捕獲もそうだけど、計画のほうはこの鎮守府に着任するずっと前から練っていたとか?」

 

 

提督「考えることは好きなので、暇さえあれば考えてますよ。もちろんこの戦いのことです」

 

 

提督「ここに来る前は、1/5作戦の処罰として新造の鎮守府の着任予定が白紙になりまして」

 

 

提督「軍の一般適性検査施設にいました」

 

 

提督「その時に面白い子達と出会いましたね。あの子達ももう軍学校を卒業する年です」

 

 

間宮「面白い子達、ですか?」

 

 

提督「はい。妹と兄でここに配属希望をしてくださってます」

 

 

乙中将「すごい優秀な子達だよー。成績は兄妹で一番と二番だったかなー」



提督「といっても今年の卒業生は3人しかいませんし。まあ、ここ5年間では素質としてはかなりのものみたいですが……」



乙中将「珍しくも秋月適性と明石適性があった兄妹なんだよー。明石はしかも男だよ、男!」

 

 

間宮「少年が艦娘の適性?」

 

 

間宮「ああ、そう言えば……」

 

 

龍驤「うちも混ぜてー。2年前くらいに騒ぎになったやつやろ?」

 

 

龍驤「男が、しかも希少な明石艤装の適性が出たーとかなんとかで」

 

 

龍驤「結局、軍の研究部は有利になる情報はないっていうてから、次第に騒ぎは収まったけど」

 

 

初霜「私、知ってます。確かお二人とも今期のホープですよね。でもどうしてこの鎮守府に配属希望なされたのでしょう?」

 

 

初霜「成績上位者は将校の鎮守府にも配属を検討される特権がありますよね」

 

 

初霜「こういってはなんですが、待遇面でもここより破格的に良いはずです」

 

 

間宮「……適性検査施設で、その未成年者を口説きましたか」

 

 

提督「拉致しろと命令されたに等しいといいますか……」

 

 

乙中将「お酒入ると青ちゃんは喋るんだねー」

 

 

乙中将「はい。みんな静かに」

 

 

飛龍・蒼龍「酒の肴と聞いて」

 

 

わるさめ「司令官さんの過去と聞いてわるさめちゃん参上したゾ☆」

 


提督「この話はフィクションです」

 

 

提督「とだけ」

 


乙中将「酔ってるね……色つけてもいいけど、あんまりストーリーはねじ曲げないでね……」

 

 

2 アカデミー工廠にて

 

 

明石さん「おい愛弟子よ」


 

明石「は、はい。姉さんなんすか」ビクビク


 

明石さん「……」


 

明石さん「艤装がなくて工廠が空いてるものでまさかとは思いましたが」

 

 

明石さん「もう少し寝てくればどうです。まだ目の下の隈が取れてませんよ」


 

明石「いえ、やっぱり明石艤装を使えるのは貴重な時間なんで……姉さんはまたすぐにどこか飛ぶだろうし、使える時に使って腕をあげておかねえと」


 

明石さん「書面で見せてもらったけど、酷すぎないですか?」

 

 

明石さん「イージーレベルで失敗しすぎです。装備改修なめていますね?」

 

 

明石「姉さんスンマセン、バーナーの噴射口を向けるの止めていただけると……」

 

 

明石さん「ネジの貴重さ知らないわけないだろうし、ふざけているのかなって」

 

 

明石さん「ん?」

 

 

明石「そんなわけじゃ………」

 

 

明石さん「ですよねー。こんな教え方してないですしね。ただ単に仕事し過ぎでミスってるんですよね」

 


明石さん「ま、改修希望装備はここにまとめて送ってもらっているので、今回は結構滞在できましたし」

 

 

明石さん「愛弟子の腕も、まあ、仕事させられる程度にはマシに成長したかなー」

 

 

明石さん「バラシ分野のセンスだけはまあ、認めてあげます」

 

 

明石「それはありがたい……明日には発つんですよね?」

 

 

明石さん「明日は卯月艤装の状態を見に鎮守府(闇)に行かなきゃなりませんけど」

 

 

明石「へえー。朝早くですか?」

  

 

明石さん「お前ちょっと嬉しそうですね。なんかムカつきます……」 

 


明石「んな理不尽な……」

 

 

明石さん「そういえば愛弟子よ」


 

明石さん「アッキーちゃんと一緒に鎮守府(闇)に配属希望出したみたいじゃないですか。丙さんや乙さんや元帥からもお声がかかった、と聞いていますけど」

 

 

明石「……」

 

 

明石さん「お前、昔話のことになると黙りますよね。アッキーちゃんからも濁らされますし……」

 

 

明石「まー……」


 

明石「あんまり人に語りたい過去じゃないし、俺とアッキーの家庭問題にもどうしても話が行くので」

 

 

明石「もうすぐ卒業だし、聞きたいなら語ってもいいんすけど」

 

 

明石さん「聞かせて欲しいな♪」

 

 

明石さん「お願~い♪」キャピッ



明石(うわ、きつ……)

 

 

 


山風「……アッシーに、明石さん」

 

 

明石さん「おろ、山風ちゃん、どうしました?」

 

 

山風「アッキーが……泡を吹いて倒れた、から、運んで……きた」

 

 

明石さん「ああ、『12時間兄と離れると過呼吸起こしてぶっ倒れてしまう病』の欠陥……」


 

秋月「.。o○」ブクブク

 

 

山風「はやく……なんとか……」

 

 

山風「しろ、アッシー……」

 

 

明石「おい、アッキー」バシバシ

 

 

明石「俺はここにいるぞー」バシバシ

 

 

秋月「(っ゚⊿゚)っ ハッ!」

 

 

秋月「アッシー、生きていましたか」ホッ

 

 

秋月「明石のお姉さんも、山風ちゃんも……」

 

 

山風「気にしなくて、いい……」

 

 

山風「けど、無理やり、その発作で私に構わせるの……止めて……」

 

 

秋月「感謝していますよ! いつものことじゃないですか!」

 

 

山風「ダメだ……こりゃ……」

 

 

明石さん「さー、愛弟子よ、語るといい。あの鎮守府(闇)は悪い噂がありますから」

 

 

明石さん「正直、二人を配属させるのに躊躇いがあるといいますか」

 

 

明石さん「そこら辺のことは後日に出向いて確かめてみるつもりはあるのですが、やっぱりお二人の口から聞きたいんですよねー……」

 

 

明石さん「お父さん殴り込みの件で予想はついていますけど、最後くらいは育ての師匠を安心させてくれてもいいじゃないですか?」

 

 

秋月・明石「……」

 

 

秋月「お兄さんのお話ですね!」

 

 

山風「兄? アッシー、の……こと?」

 

 

秋月「いえ、私とアッシーの恩人です! 私達が勝手にお兄さんと呼んでいるだけでして!」

 

 

秋月「鎮守府(闇)の提督さんなのですが、私達の人生の恩人なんです!」

 

 

秋月「あの人が鎮守府で提督をしているのなら、私達はそこに行きます」

 

 

秋月「そのための、命です!」

 


秋月「早くお兄さんに会いたいです」

 

 

明石「兄妹ともども大きな借りがあるんす。少し長い話になりますけど」

 

 

明石「話しましょーかね……」

 

 

明石さん「待ってました」

 

 

明石さん「それではどうぞ」



【2ワ●:Now is the time】

 

 

1

 


少女「じっと波止場から海を眺めてどうしたんですか?」


 

少年「小さい魚がより小さい魚を食べていた。あれを見ろ」


 

少年「男女が乗ってすいすいと優雅に進むあの黒塗りの外車一つでこの魚の餌を買えば、この魚たちは共食いせずに、どのくらい食べていけるんだろうか?」


 

少女「そんなのどうでもいいから、仕事に行こう?」


 



 

男性「今日は児童館の解体だ。嵐士は机椅子を運び出してから、トイレの金具を外して、扉をぶっこ抜いて壁に立てかけておくとはしごにのぼって天井をパールで叩き割っといてくれ」


 

少年「分かりました。やりなれた解体の、物を壊す作業っすね」


 

少年(ん、この敷かれてる新聞)


 

少年(あー、深海棲艦っつう化け物との戦争の……)


 

少年「それ、今日の新聞すか?」


 

男性「ああ、戦艦大和が沈んだってよ。まだ騒がれているみてえだ」


 

少年「ヤマト? 日本が沈んだんすか? どこら辺?」


 

男性「違えよ……」

 

 

男性「俺も詳しくねえけど、一番強い兵士らしい。軍艦の大和くらい知っているだろ。それをベースにした兵士が殉職したとかなんとか」


 

少年「殉職って、戦死したってことすよね……?」


 

男性「それ以外ないだろ。なにいってんだお前」


 

少年(つってもなー、にわかに信じ難い。自衛隊、とはまた違うんだよな)

 

 

少年(戦争して死ぬ。当たり前だが、周りの景色は平和そのもので、どこか別の世界の出来事みてえだし)


 

少年「…………」


 

男性「どうかしたか」


 

少年「いや、お国のために命を賭けて戦うってのを想像してみてたんですよ。それはどれだけ、生きる、という意味を実感できるんでしょうね」


 

男性「……お前さ、なんか家庭環境でも複雑なのか?」


 

少年「藪から棒になんすか」


 

男性「体が傷だらけだし、見る度に増えている気がする。お前気性は荒いほうだけど、ケンカするようなやつじゃねえだろ」


 

少年「親とよくケンカするだけっす」

 

 

少年「それよりその戦争の兵士は給料いいんすか?」

 


男性「噂ではかなり良いって聞くぞ。街は平和だ。好んで戦争に参加したいやつなんて好きものだろ」

 

 

男性「だから兵士を集めるのに苦労していて、まあ、そういう理由で金払いはよくしているんじゃねえの。所属艦隊だか鎮守府とかの戦績でボーナスとかも出るんだっけか」


 

少年「化け物を殺せば殺すだけ儲かるってことですか。最高すね。どうすれば兵隊になれるんすか」


 

男性「この戦争なら軍学校だったかな。というか男のお前は兵隊にはなれん」


 

少年「ええ? 兵隊って基本的に男がやる仕事でしょ?」


 

男性「興味あるんなら軍の施設にでも行って適性でも調べてこいよ。資格がいるんだよ」

 


少年「兵士の適性というのはまあ、根性なしのやつに生きるか死ぬかの戦いに出てこられるだけ邪魔ですしね」

 

 

少年「だけど、男では無理とはどういう理由ですか。逆ならまだしも」


 

男性「説明すんのだるい」

 

 

2

 

 

――――どうして自分だけが、と思うことがある。


 

――――自分だけが苦しい訳じゃないから、と誰かが歌ってたっけか。


 

――――ったく、正論だ。

 

 

――――正論っていう最強の暴言。

 

 

――――自分だけが苦しいわけじゃないと思うやつは、みんな苦しい世界がおかしいのだ、とは思わないのかね。

 

 

――――みんな同じだから、なんだ。

 

 

――――その洗脳染みた思考放棄の吹き溜まりが、今、なんじゃないのか。

 

 

――――当たり前のその苦しみを和らげることこそ、今を生きる人間が、未来の子供に送る最高のプレゼント。


 

――¥3000


 

――――今月に振り込まれたプレゼント少なすぎだろ。お小遣いじゃねえんだぞ。

 

 

――――朝から晩まで汗水垂らして働いている者の一か月分の給料だと思うと悲惨すぎる。



――――あー、むかつく。

 

 

―――ガキの頃からアルコールとギャンブル中毒で平気で俺達にDV実行、ギャンブルでふくれあがった借金を返すために。

 

 

――――俺達が高校辞めて働いている現状によォ……。


 

――――もっといえば親父は無色で、その金で悠々自適とギャンブルやりやがって。なにが金を稼ぐ仕事だよ。

 

 

――――収支マイナスばっかりじゃねえか。


 

――――いざ前に立つと怖くて足がすくむのどうにかならねえかな。


 

――――ガキの頃から逆らえばどうなるかが、刻まれている恐怖が刷り込まれているせい、だよな。


 

――――この左頬の傷。


 

――――親父に逆らった日に頬に切り刻まれた傷。

 

 

――――妹とおそろいとか笑えないし。


 

――――誰か助けて、と。

 

 

――――いえねえ男の意地はある。

 

 

 

 

――――だから、忘れんようにする。

 

 

――――兄さんが思い出させてくれた、

 

 

――――家族が正常だった頃の、

 

 

――――俺が、きっと、アッキーも。



――――欲しかったもんだと思うしさ。

 

 

3

 

 

少女「アッシー、その傷まだ痛むの?」


 

少年「ンなわけねえだろ。二年前の傷だぞ」


 

少女「なら早く! 卵1パックが売り切れちゃいますよ!」


 

少女「ほら、1000円渡すから買ってこいよ」


 

少年「アッシーも一緒に行こうよ! 精肉屋がウインナーの試食やっていたし!」


 

少年「俺の作業着は泥だらけだからスーパーのなかには行けねえだろ」


 

少年「アッキー、あそこの女子高生を見ろよ」

 


少年「もしも俺達がまともな家庭環境だったら、アッキーはあんな風に華やかにJKライフを遅れていたはずだ。そう思うと、本当に切なくなってこないか?」


 

少年「奴隷のように生きているのはまだいい。本当につらいのは、周りと自分達を比べてしまうんだ、俺はそれが本当に辛くて嫌だ」

 

 

少女「…………仕方、ないよ」


 

少年「あの歩道橋の垂れ幕の『明るい未来』に唾を吐きたくなる。未来ってなんだよ。死ぬまで搾取される自由のことか?」

 


少年「なあ、てのひらに握りしめたお札二枚は今を抗う自由の象徴に見えてきた」


 

少女「なにいっているんですか」


 

少年「ふとこれでどこまで今から逃げ出せるのだろう、と試してみたくなった」


 



 

少女「正気の沙汰とは思えないよ。全財産使って海軍施設にくるとか」


 

少年「昨日、帰りの車のなかで調べたんだよ。俺とアッキーが深海棲艦と戦う兵士になれば今よりずっと幸せになれる。給料だっていいし、軍学校に入れば冷暖房完備の寮住まいで、卒業すれば鎮守府に配属されてそこに住める。あのクソ親父から逃げられるってことだ。いいことづくめだろ?」


 

少女「バカです! アッキーチョップ!」


 

少女「戦争に参加するってことがいいことのわけがないよ!」


 

少年「資格さえあれば優遇されるんだ。貴重な戦力として認められたら軍に大事にしてもらえるから、親父だって簡単に手を出してこねえはずだ。そンて、行くなら二人一緒だ。じゃないと、残ったほうが標的になるだけだからな。二人一緒に逃げ出すんだ」


 

少女「そんな現実逃避のために二千円も使ったんですか!」


 

少年「現実逃避じゃねえよ! 未来のためだ!」


 

足柄「君たち正面玄関前で騒々しいわよー」

 

 

少女「あ、すみません。すぐに帰りますので」

 

 

少年「帰らねえから!」

 

 

少年「あ、そうだおばさん」

 

 

足柄「おば……」ピキッ

 


少女「こら! アッシーの馬鹿!!」


 

少年「俺達、対深海棲艦の兵士になりたくて兵士の適性を受けに来たんですけど……」

 

 

足柄「そちらの女の子、かしら?」

 

 

少年「俺もです」

 

 

足柄「……知らないようだから教えるけど」

 

 

足柄「対深海棲艦の兵士は艦娘っていうのよ。艦隊の艦に女の子の娘。適性はね、女性にしか出ないのよ?」

 

 

少年「受けてみなくちゃ分からないでしょ。やる前から諦めろとか」

 

 

少女「アッシーはこういうやつなんです。すみません……」

 

 

足柄「それに今日はもう締めちゃってるからね。受付時間は朝の9時から夕方の5時までね。また明日おいでなさい」


 

少年「明日来る金なんてないので、そこをなんとか。アッキーも頼め。2000円無駄になっちまう」

 

 

少女「確かに……」

 

 

足柄「ええっと……うーん」

 

 

足柄「ちょっと中で待っててくれる?」

 

 

4

 

 

提督「足柄さん、その子達は」

 

 

少女「ひい!」

 

 

少年「うおっ!」

 

 

少年「暗闇に溶け込むかのような精気のなさ。一瞬幽霊かと思った……」

 

 

足柄「適性検査受けに来たみたいですけど、今から受けさせてくれーって」

 

 

提督「……君達」

 

 

提督「軍に入りたいのですか?」

 

 

少年「おう」

 

 

提督「軍には規律があり、それを守ることは大事です。まずルールは守るよう心がけてください」

 

 

提督「受付は9時から17時です」

 

 

少女「あの、そこをなんとか」ウワメヅカイ

 

 

提督「今日はもう無理です」

 

 

少年「アッキーのお願いでも聞いてもらえないか……」

 

 

少年「仕方ない。アッキー、今日はもう諦めよう」

 

 

少女「うう、アッシーのバカ。2000円なんて大金があれば美味しいものがたくさん食べられたのに……」

 

 

提督「…………」

 

 

5

 

 

提督「あの、なぜ門の前に。今は冬で寒いでしょう。お帰りになられては」

 

 

少年「明日の9時からならいいんですよね。ここらで時間潰します」

 

 

少女「アッシー! そこの商店街のパン屋さんと交渉したらミミをくれた!」トコトコ

 

 

提督「……」

 

 

提督「今は子供がうろついていいような時間ではないです」

 

 

少年「俺はチビだけど、アッキーと同じく18歳だ。働いている。泥だらけの作業着見てわかんだろ」

 

 

少年「聞いてくれよ」

 

 

少年「朝から晩まで働いて毎月、3000円なんだ。健康診断とか税金関連は別にもらえるけど。必要な俺と妹の給料はクソ親父の遊興費に消えてる」

 

 

少年「ここまで来るのに2000円使っちまった」

 

 

提督「そうですか。では自分はこれで」

 

 

少年「冷たいっすね。氷かなんか?」

 

 

提督「ええ、最近自分でもそう思うようになってきてますね……」

 

 

少女「あ、お兄さん、パンのミミあげます! お仕事終わったなら少し質問に応えてもらってもいいですか?」


 

提督「ミミはいいです」

 

 

提督「質問は一つだけですよ」

 

 

提督「あ、少しだけ待ってください。寒いので車のなかの暖房かけておきたいので……」ガチャ

 

 

少女「ありがとうございます!」

 

 

少年「寝床確保ー」

 

 

提督「」

 

 

6

 

 

提督「以上、ですかね」

 

 

少年「深海棲艦をぶち殺せる唯一の武器が艤装ってもんなのは分かったけど、どうして女だけしか無理なの」

 

 

提督「さあ。妖精さんにでも……」

 

 

少年「男はあんたみたいに提督を目指すか、裏方に回るしかないと」

 

 

提督「妖精は映像に映りますが、見える人と見えない人がいるようで、提督を目指すなら可視の素質が必要となりますね……」

 

 

提督「見えますか?」

 

 

少年「お、見えるぞ。このちっこく動き回ってるやつか」

 

 

提督「それはなにより」

 

 

少女「女の人でも提督にはなれるんですよね?」

 

 

提督「ええ。ですが、艤装適性が出て兵士として問題がなさそうなら、軍からそちらを強く押されるかと」

 

 

少女「アッシーが提督で、私が艦娘になれば同じ鎮守府で一緒にいられますか?」

 

 

提督「艦娘のほうは初期配属においての希望はなるべく善処されます」

 

 

少女「アッシーは提督の素質があるから軍学校には入れるんだよね?」

 

 

提督「希望すれば入学テストはそうですね。合格できるか、提督に就けるかどうかは本人次第ですが……」

 

 

少年「学費って奨学金とかは使える?」

 

 

提督「ありますが、条件は厳しいですよ。軍学校には入学テストもありまして、そこで優秀な結果を出したものに限りです」

 

 

提督「艦娘のほうは無条件ですが……」

 

 

少女「アッシー、バカだし厳しいね……」

 

 

少年「なんとかやる」


 

提督「……対深海棲艦の海軍」

 

 

提督「である必要性はあるのですか?」

 

 

少年「金払いがいい」

 


提督「死ぬ危険が高いですよ」

 

 

少年「軍からの庇護が厚い」

 

 

提督「…………」

 

 

少年「家庭環境が劣悪なんだ。あいつが手出しできない場所に行きたいんだよ。アッキーが艦娘になれば、あいつは手出しできねえだろ」

 

 

少女「私はアッシーがだめなら行かない」

 

 

少女「というか初対面の人にそういうこと話すの止めなよ……」

 

 

提督「……少年、名前は?」

 

 

少年「小倉嵐士、妹が秋乃」

 

 

提督「嵐士君、命を賭ける覚悟あります?」

 

 

少年「あるに決まってんだろ」

 

 

提督「対面している家庭問題の解決には命を賭けられないのに、ですか?」


 

少年「……っ」

 

 

提督「半端な覚悟では、今の生活を続けた方がきっとマシです。死ぬ訳ではないのでしょう?」

 

 

少年「あんたになにが分かる。それを選ぶのは俺だ。そうだろ」


 

提督「……まあ、明日秋乃さんの適性検査をしてから、ですね」

 

 

提督「自分は家に物を取りに戻ります」

 

 

少年「なあ」

 

 

提督「……なんです」

 

 

少年「運転下手かよ。ギア間違えてんぞ。後ろの石垣にぶつかった」

 

 

提督「……まあ、ボディの傷を隠すやつが、確かトランクに」

 

 

少女「アッシー、直してあげなよ」

 

 

少年「そうだな。色々教えてもらった礼を兼ねて。鍵借りるなー」

 

 

提督「……大丈夫なんですか?」

 

 

少年「任せろ。俺の得意分野だ」

 

 

少女「一宿一飯の恩ですよ」

 

 

提督「一飯?」

 

 

少女「明日の朝ごはん!」

 

 

提督「イヤです」

 

 

少女「え、もうアッシーが直してますよ?」

 

 

提督(たくましすぎる……)

 

 

7


 

提督「――――え」

 

 

提督「……、……?」

 

 

少女「その反応、アッシー……は男だから違うか! 私に適性あったんですね!」

 

 

少女「戦艦ですか? それとも空母?」

 

 

提督「まあ、駆逐艦、しかも1隻しかありませんが……」

 

 

提督「10年も適性者が見つからなかった激レア艤装の適性です」

 

 

提督「秋月型一番艦、秋月」

 

 

秋月(仮)「へえー! なんかよく分からないけどレアって響きがいいです!」

 

 

秋月(仮)「一番艦ってなんかリーダーとか主役っぽいですし!」

 

 

提督「……隣の待機室に本棚の右上辺りに駆逐艦秋月についての資料があるので、少し読んで待っていてください」

 

 

秋月(仮)「了解!」ビシッ

 

 

秋月(仮)「なんちゃって!」キャッキャ

 

 

8

 

 

少年「同じこと何回もやらせんなよ! 一回ごとに血を抜かれるほうの身にもなれ!」

 

 

提督「……故障じゃなみたいですね。どの装置で何回やっても結果は同じです……」

 

 

少年「……はあ?」

 

 

提督「……あの嵐士君」

 

 

提督「艦娘の適性も、あります」

 

 

少年「どういうことだよ。男はなれないってあんたが力説していたよな?」

 

 

提督「過去に例を見ない事態です」

 

 

提督「大変興味深いですが、これはさすがに上に報告……」

 

 

少年「ちょっとPCの画面見せて」

 

 

少年「この青く光ってる艤装名か?」

 

 

提督「ええ」

 

 

提督「工作艦明石、の適性です」

 

 

少年「……あのクソ親父に」

 

 

少年「○○○片方潰されたせいかね?」

 

 

提督「」

 

 

8

 

 

足柄「本当です、ね……」

 

 

提督「でも、明石艤装は空いていませんよね」

 

 

足柄「解体希望されてましたよ。後任の適性者が見つからないので、軍に頼まれて30年以上も現役やっていただけで」

 

 

足柄「あの人なら後任見つかったのなら喜んで譲るかと。やっと出張の呪いから解放されて機械弄りに没頭できるーとかって」

 

 

提督「明石艤装を手放したら弄れなくなるのでは……」

 

 

足柄「艤装や装備じゃなくても機械ならなんでもいいみたいですよ」

 

 

足柄「東奔西走の出張という呪いがかかった本家艤装とか喜んで手放しますって」

 

 

提督「でもまあ、それなら……」

 

 

提督「嵐士君の希望も通るかもしれませんね」

 

 

足柄「とりあえず私のほうから上に報告しまして、あの二人はいかがなさいます?」

 

 

提督「条件を満たして彼等も希望していますしね……」

 

 

提督「艦娘の場合の定例では必要書類と入学案内をご自宅に送付して……まあ、秋乃さんの入学は最短で一ヶ月くらいですが」

 

 

提督「嵐士君のほうは上も混乱すると思いますので、どうなるか分かりませんよね……」

 

 

足柄「そうですね……」

 

 

足柄「この件を報告すれば、またあなたは目立ちそうですね」

 

 

提督「ホントですよ。また本部に召喚されて丙少将にでも会ったら」

 

 

提督「頬が痛くなってきました……」

 

 

提督「彼の明石艤装の適性、見て見ぬふりすればよかったかな……」

 

 

足柄「おい」

 

 

9

 

 

大淀「今、軍もごたついていまして。男性の方の適性は貴重なサンプルだって」

 

 

大淀「出ても適性とは言えない小数点以下の誤差の範囲内でしたのに、60%だなんて……」

 

 

大淀「性転換、性同一性障害等々。そういった方でも適性は出た例はなくて」

 

 

大淀「1/5作戦の処分が気に入らず、変な仕返しを思い付いたとかじゃないですよね……?」

 

 

提督「さすがにそこまで性格悪くないですけど」

 

 

大淀「え」

 

 

提督「……それでどうすれば」

 

 

大淀「秋月、明石、ともにかなり欲しい人材です」

 

 

提督「明石のほうは通常とは違って研究施設に行かせるんですよね。あの子……」

 

 

提督「電さん」

 

 

大淀「電さんとはまたケースが違いますけど、貴重なサンプルとしては同じですね……」

 

 

提督「一刻も早く軍学校に入って兵士として戦いたいみたいで、研究施設に滞在は断られましたけど」

 

 

提督「しかも妹と離れるのなら断るみたいです。いきなり強気な態度に」

 

 

大淀「なんとかなりません?」

 

 

提督「つまり本人をかどかわして軍の意向に従うよう手引きしろ、と」

 

 

大淀「強制ではありません。あくまで任意同行です。ここ大事です」

 

 

提督「まあ、でも金銭で動く子達なので」

 

 

提督「ぶっちゃけ大淀さんのほうからここの経費とか使っていいから、いくらか包んじゃって、とか進言して……」

 

 

大淀「そういうのはなしの方向で♪(デイリー解体スマイル)」

 

 

提督「……上にはまだ報告してませんが、身体検査の結果、家庭環境にも問題があるようで」

 

 

提督「お二人とも栄養失調気味ですし」

 

 

提督「明石君のほうは生々しい外傷が。ハッキリ申し上げますと、DVですね」

 

 

提督「ご家族ともお話する必要がありまして、正直、自分の処理能力では」

 

 

大淀「……そういうの」

 

 

大淀「青山さんの得意分野ですよね」

 

 

提督「得意じゃないです。児童相談所の仕事は畑違いですよ。無理矢理やらそうとするのやめてください」

 

 

大淀「得意になればいいんです。オープンザドアですよ」

 

 

提督「さっきから聞いていれば鬼畜眼鏡ですかあなたは」

 

 

大淀「でも、解決策とか対抗策とか考えるの得意でしょう?」

 

 

大淀「明石君が研究施設に来てもらえるよう、なにか案はありませんか?」

 

 

大淀「可能な限りの協力は致しますし、私に個人的な貸しということでも構いませんので」

 

 

提督「……はあ、分かりました。こっちでなんとかします」

 

 

提督「一ヶ月ください」

 

 

大淀「なんとか1週間で♪」

 

 

提督「……善処します」

 

 

大淀「ありがとうございます。とても有能な方で助かりますよ。大淀、電話越しに頭を下げております」


 

10

 

 

明石(仮)「兵隊にはなれるんだろ。だが、期間未定の研究施設なんて嫌だぞ。その拒否権はあるはずだ」

 

 

秋月(仮)「無理です無理! 私、アッシーと半日以上離れると過呼吸を起こしますからね!」

 

 

提督「……そちらの要望としては」

 

 

提督「軍の研究機関への協力は断る。妹と一緒に行動する。そしてさっさと軍学校に入りたい」

 

 

提督「で、間違いないですか」

 

 

明石(仮)「間違いない」

 

 

提督「男性の兵士は初ケースです。色々と不安要素があるので、軍は研究施設に協力を申し出ない限り、艤装は渡せないとのことで(テキトー)」

 

 

明石(仮)「…………」

 

 

明石(仮)「腹割ろうぜ」

 

 

明石(仮)「なんとなく分かる」

 

 

明石(仮)「本当の言葉で語ってくれるのなら聞いてやってもいい。別に絶対に嫌ってわけでもない。どうせ最悪、アッキーも同行してもらえれば済む話だしさ」

 

 

明石(仮)「さすがに年単位で拘束されるのならあれだが、それならガッコ通いながらにしてもらうさ。俺の身体の情報がこの戦争の役に立つかもしれないっつー」

 

 

明石(仮)「それ自体は本望だからな」

 

 

提督「まあ、あなたが研究体として協力させるように上からいわれまして」

 

 

提督「まあ、それ自体を飲ませるのは容易いです。あなたが手にしたいモノはこちらにあるわけですし……」

 

 

明石(仮)「……なあ、あんたは提督なのか?」

 

 

提督「鎮守府で活動はしておりません。着任のお話が来るかどうかも微妙です」

 

 

提督「ポンコツなので」

 

 

秋月(仮)「なんで提督になったんです?」

 

 

提督「まあ、命を賭けられるほどのやりがいがあるからです。全部を説明するのはめんど臭いです」

 

 

提督「あなた達もなにかないと心が壊れてしまいますよ。死と隣り合わせの毎日は」

 

 

明石(仮)「いつもそうだった。な、アッキー」

 

 

秋月(仮)「まあ、そうだね。毎日デッドオアアライブのその日暮らしだったよね……」

 

 

提督「どちらかが死んでもそんな風にへらへら笑えます?」

 

 

明石(仮)「ならねえ。アッキーは死なせん」

 

 

提督「そんな覚悟で安全が保証されるのなら話は楽です。お互いが大事ならば、戦争なんかに関わらず街で助け合って生きていくほうがいいかと」

 

 

秋月(仮)「はいはい!」キョシュ

 

 

秋月(仮)「秋月艤装で戦えるのは今のところ私だけなんですよね!」

 

 

秋月(仮)「どうせならやりがいがある方がいいです!」

 

 

秋月(仮)「艦娘の皆さんだって死にたくて戦っているわけじゃないですよね!」

 

 

秋月(仮)「だったら私ががんばれば誰かが落とすはずの命も助けられるかもしれません!」

 

 

秋月(仮)「すごくやりがいのあることだと思います!」

 

 

秋月(仮)「やりたいです!」



明石(仮)「……!」



提督「そうですか」

 

 

明石(仮)「…………」

 

 

提督「当ててあげましょうか」

 

 

提督「単に逃げ出す先が、欲しいのでは」

 

 

明石(仮)「それはダメなのか。みんなそんな大層な覚悟持っているわけじゃないだろ」

 

 

提督「まあ、そうですね。理由は表向きのために適当にでっち上げたところでばれませんよ」

 

 

提督「ただあなた達が軍に入るには、解決しなければならない問題があります」

 

 

提督「未成年ですから、この書類」

 

 

提督「保護者の同意がいるんですよ」



11

 

 

提督「現段階でお渡しする書類はご自宅に送付しておきましたから、ご家族で話し合って決めてください。必要書類は持参してまた来てもらうか、ここに郵送してください」

 

 

提督「それでは話は終わりです」


 

明石(仮)「分かった。ちょっと行ってくる」

 


明石(仮)「すぐ戻る。アッキーはここで待ってろよ!」ダッ

 

 

秋月(仮)「あ、行っちゃった。ここから走ったらけっこうかかるのに……」

 

 

提督「では自分も仕事に」


 

12

 

 

秋月(仮)「あ、お疲れ様です!」

 

 

提督「自分の車に寄りかかって……また寝床を確保したいんですか?」

 

 

秋月(仮)「あ、いえ!」

 

 

秋月(仮)「アッシーのことで少しお話しておきたいことがありましてっ!」

 

 

秋月(仮)「お仕事終わるの待たせてもらいました! 本当にただそれだけですっ!」

 

 

秋月(仮)「どうぞ! パンミミです!」

 

 

提督「……」

 

 

秋月(仮)「あ、要らない、ですよね。ごめんなさいっ」

 

 

提督「……いえ、ありがとうございます」パクパク

 

 

秋月(仮)「受け取りましたね! お話を聞いていただきたいのですが!」キラキラ

 

 

提督「どうぞ、あ、車のなかに入りますか。寒いですし」

 

 

秋月(仮)「ありがとうございます!」

 

 

提督「いえいえ。自分、明日は休みですし、多少の長話くらいなら……」

 

 

13

 

 

秋月(仮)「お父さんがおかしくなっちゃったの、お母さんが天国に行ってしまってからなんです」

 

 

秋月(仮)「その時期にこの不況の波が押し寄せてリストラ重なりましたし……」

 

 

秋月(仮)「まあ、もともと教育で手を出す人でしたけど、愛の鞭の範囲を越えたのはお母さんが死んでからで」

 

 

秋月(仮)「アッシーがやんちゃだったのもあると思います。お母さんがいなくなってから更に荒れましたし」

 

 

秋月(仮)「お父さん」

 

 

秋月(仮)「なんか気にくわないことあると、どちらかを殴るんです」

 

 

秋月(仮)「あんまり家にも帰って来ないんですけど、私達のお給料がいつもの日に振り込まれなかったり、額がいつもより少なかったり、支払いの滞納とかそういう連絡が行った時は帰ってきて」

 

 

秋月(仮)「すごく、怒ります」

 

 

秋月(仮)「私は震えているだけで、アッシーがわざと口で挑発して私に矛先が向かないようにボコボコにされるんです」

 

 

秋月(仮)「アッシーが暴力で抵抗した時、ひどい目に会いましたから。私とアッシーの頬の傷、その時にナイフでざっくりと」

 

 

提督「児童相談所……周りの大人には相談しなかったんですか」

 

 

秋月(仮)「そうやって第三者に相談したことをお父さんが知って、対面するようなことがあれば……怖いです」

 

 

秋月(仮)「ニュースで、助けを求めて死んだ子のことが流れていました」

 

 

秋月(仮)「緊急性が、とかなんとかで保護されなくて、家に帰されて」

 

 

秋月(仮)「その日に親に殺されちゃった悲しい事件」

 

 

提督「……」


 

秋月(仮)「信用、できません」

 

 

秋月(仮)「その子には分かりやすい暴力の跡があって、その場で保護するべきでした。どう考えても」

 

 

秋月(仮)「その子は最後の希望、と思って勇気を出して駆け込んだ、と思うんです」

 

 

秋月(仮)「でも、死んじゃって」

 

 

秋月(仮)「別に子供の命が大切だから、そこにいるんじゃないのかもしれないって」

 

 

秋月(仮)「ただお仕事だから、助けるんじゃないかって」

 

 

秋月(仮)「だから、その子は家に帰されたんじゃないのかなって。誰だって規則を破って自分が割りを食うのが嫌です」

 

 

秋月(仮)「そう思うと」

 

 

秋月(仮)「自分のことは自分で何とかするしかないって。結局、最後に頼れるのは自分だけって思えてきたんです」

 

 

秋月(仮)「私にはアッシーがいます。二人で支えあって兄妹で生きていけるだけ、幸せなんでしょうけど……」

 

 

提督「……」

 

 

提督「ご家族の問題は解決する方法はありますよね。あなた達ももう自分の頭で考えて動き出す年頃ですし」


 

秋月(仮)「そうですね。離れようと思えば私とアッシーの二人であの人に見つからないどこかに行けるかも」

 

 

提督「なぜそうしないのか自分には今年一番の謎です」

 

 

秋月(仮)「アッシーは親離れ出来ていないせいです。子供の頃からすごい親になついていましたからね」

 

 

秋月(仮)「またいつかあの頃みたいに」

 

 

秋月(仮)「家族で笑ってちゃぶ台を囲める日を夢見ているんです」


 

秋月(仮)「だから、今もここにいるんです」

 

 

秋月(仮)「今回みたいな突発的な発作はまあ、年に一度はありまして……」

 

 

提督「あなたは」

 

 

提督「夢見ていないんですか?」


 

秋月(仮)「……私は」

 

 

秋月(仮)「まず自分達が幸せになりたいです」

 

 

秋月(仮)「お母さんは死ぬ間際まで、私達のこと、心配してくれていましたから」

 

 

秋月(仮)「自分の思うように生きて」

 

 

秋月(仮)「幸せをつかみとることが一番の親孝行だと思っていますから」

 

 

秋月(仮)「winwinです」

 

 

提督「なるほど」

 

 

提督「……あ、そういえばそろそろここの駐車場締まります」

 

 

提督「帰りに食材買おうと思っていましたから、移動してもいいですかね」


 

秋月(仮)「もちろんです。なんならお手伝いますよ! スーパーでのお買い物術、お見せします!」

 

 

14

 

 

提督「お渡ししておきます。このスーパーの裏手にあるアパートの2階の手前が自分の部屋です」

 

 

秋月(仮)「……あなたはどこに?」

 

 

提督「少しあなた達の家に」


 

秋月(仮)「私も行きますよ!」

 

 

提督「いえ、大事にならないよう少し大人の話をしてくるだけなので。あなたのお兄さんも心配です」

 

 

提督「秋乃さんは待機していてはもらえないでしょうか。住所は覚えているので大丈夫です」

 

 

秋月(仮)「で、でも!」

 

 

提督「話を聞いている感じ、イージー問題です。丸く片付けてくることを約束しますよ」

 

 

提督「ですので、どうか」

 

 

秋月(仮)「……あなたを信用して」

 

 

秋月(仮)「裏切られたくありません」

 

 

提督「なら、今からすることを詳しく説明します」

 

 

提督「――、――ということです」

 

 

秋月(仮)「確かにそれならサインしてもらえるかもです……」

 

 

秋月(仮)「……分かりました。信じて指示通りに待ちます。あなたには色々恩がありますしね」

 

 

秋月(仮)「私は晩ごはん作って待っていますから、アッシーを連れて帰ってきてくださいね!」

 

 

提督「ええ、では」

 

 

バタン

 

 

提督「ええっと、これか」

 

 

提督「大淀さん、出てくれるかな」

 

 

15

 

 

ドガッ

 

 

明石(仮)「ふが!」

 

 

親父「秋ともども仕事サボってなにしてやがった。俺にも連絡来たじゃねえか」

 

 

親父「俺に迷惑かけんなよ」

 

 

明石(仮)「話を聞けよ、クソ野郎!」

 

 

親父「サインしねえよ」

 

 

親父「この海軍から送られてきた書類のことだろ」

 

 

親父「お前らが死んだら俺の生活どうすンだ、あほか」

 

 

明石(仮)「相変わらず絵に書いたようなクソ野郎だな!」


 

明石(仮)「いいからサインしろ!」


 

ドゴッ

 

 

明石(仮)「……ぐっ」

 

 

親父「お前、力仕事してんのに弱えよなあ。そんなんで兵隊とかやれるわけねえだろ」

 

 

明石(仮)「俺らが今までどんな気持ちで耐えてきたのかも知ろうとしないくせに」

 

 

明石(仮)「この奴隷みたいな生活になんで耐えてきたのか、分かろうともしないくせに」

 

 

明石(仮)「俺と秋はやるんだよ」


 

明石(仮)「あの秋が」


 

明石(仮)「やる、じゃなくて」

 

 

明石(仮)「やりたいって初めていった仕事なんだぞ!」

 

 

明石(仮)「再起不能にしてから腕を使って無理矢理にでもサインさせてやらア!」

 

 

親父「相変わらず馬鹿だな」

 

 

親父「まあ……」

 

 

親父「ちょうど今日は負けが混んでイラついてたからちょうどいいわ」

 

 

16

 

 

提督「ここの4号室……」

 

 

ピンポーン

 

 

親父「どなたです」

 

 

提督「対深海棲艦海軍、適性検査支援軍施設の青山と申します」

 

 

提督「小倉嵐士君がこの度の明石適性、そして軍学校入学についての、訪問説明をこの時間に予約されておりまして(テキトー」

 

 

親父「は、はあ。嵐士はいませんよ。連絡が取れないので、どこに行ったのかも分かりませんね」

 

 

提督「あの、最悪を想定しまして警察と救急車を呼んでも構いませんか?」

 

 

親父「突然なにいってるんだあんた」


 

提督「適性検査の際に嵐士君の家庭の問題は把握はしておりますので」


 

提督「今なら嵐士君の無事を確認し、お話を聞いていただければ大事にはしないとお約束できます」

 

 

親父「……、……」

 

 

ガチャ

 

 

親父「…………どうぞ」

 

 

提督(クマみたいにでかい……)

 

 

提督(……奥で死体みたいに転がってる……けど、動いてる)


 

提督(あ、こっち見た)

 

 

親父「話とは」

 

 

提督「送付した書類にサインしてもらいたい。それだけです」

 

 

親父「一軍人風情が家族の問題に首を突っ込む気か?」

 

 

提督「私もなかば左遷のような形で今の施設にいますゆえ、悪目立ちは避けたいのです。お教え致しますが」

 

 

提督「対深海棲艦海軍において」

 

 

提督「男性である彼が兵士としての適性を出したのは、世界初のことです」

 

 

提督「家族の問題ですが、事情はどうあれ軍関係者、メディアなどから目をつけられるのはまず間違いないです」

 

 

提督「公になれば家族の問題では済まされない部分がありますよね?」

 

 

親父「若えの」

 

 

親父「小賢しいな。最もな理屈がどうした。はい、そうですか、と頷かせるにゃ」

 

 

親父「旨味が足りないと思わないか」

 

 

提督「全くです。ご用意させていただきました」

 

 

提督「この書類」ピラ

 

 

提督「賞恤金制度の説明です。その受取人はご親族のみとさせていただいております」

 

 

提督「殉職した場合、ご家族へ支払われる賞恤金は基本一億五千万、兵士の評価によってまだあがります」

 

 

提督「対深海棲艦の兵士は貴重な適性が必要不可欠ゆえに、待遇制度そのものが他の軍と違って破格に設定されていますので」

 

 

親父「へえ、でもよお」

 

 

提督「通常の給金の振込先は、あなたが所持している御二人名義の口座に振り込むことは可能です」

 


提督「上からお二人を早く寄越せ、と催促されているので、これ以上なにかがあれば」

 


提督「不本意ですが、決裂の場合、上の命の遂行が滞った理由が欲しいので、表沙汰にさせていただきます」

 

 

提督「取引は今、だけです」

 

 

提督「お互いにとって利のある取引をこの頭で考えたつもりです。いかがなさいますか」

 

 

親父「……なかば脅しだな」

 

 

親父「あいつ、今あんな怪我してるけどよ、引き渡せば後は上手くやってくれんだよな」

 

 

提督「ええ」

 

 

親父「……ちょっと待ってろ」

 

 

17

 

 

提督「確かに。では早急に彼を……」

 

 

親父「おう、とっとと持って帰……」

 

 

明石(仮)「オラア!」

 

 

バキッ

 

 

親父「痛ッ」

 

 

親父「このクソガキ!」

 

 

ドガッ

 

 

明石(仮)「へへ、ざまあ、みろ……」

 

 

親父「っち、とっとと持ってけ」

 

 

提督「……ええ」

 

 

18

 

 

明石(仮)「……なあ」

 

 

明石(仮)「一発、入れてやったぜ」

 

 

提督「喋る元気が戻ったようでなによりです」

 

 

明石(仮)「このくらいなら、へっちゃらだよ。寝れば、なんとかなる」


 

提督「あの」

  

 

提督「軍施設の医療設備ですが、命に別状はない打撲とすり傷ですが、やっぱりまだ傷みますか?」

 

 

明石(仮)「痛く、ない」


 

提督「む、怪我が痛くて泣いているわけではないのですね」

 

 

明石(仮)「……悲しいんだ」

 

 

提督「上手く事は運びましたよ?」

 

 

明石(仮)「いつか昔みたいに戻れるって期待して生きてた」

 

 

提督「……」

 

 

明石(仮)「上手く、行かない」

 

 

明石(仮)「こんな風に苦労を背負っている人って俺だけじゃなくて、たくさんいるんだよな」

 

 

提督「恐らくは」

 

 

明石(仮)「大事なモノが取り戻せないって、すげー泣けるんだ」

 

 

明石(仮)「俺は馬鹿だから、なにをどうすればいいのか、分かんない」

 

 

明石(仮)「けど」

 

 

明石(仮)「戦争が悲惨なのはさすがに馬鹿な俺でも分かる」

 

 

明石(仮)「だから、そこに行くアッキーを守りてえ」


 

明石(仮)「そんで同じように誰かの大事なやつも、守ってあげたい」

 

 

明石(仮)「戦争が終われば」

 

 

明石(仮)「平和が訪れるとは、いえねえけど」

 

 

明石(仮)「今より少しくらいは平和な世界になるよな?」

 

 

提督「人間次第です」

 

 

明石(仮)「決断と決意をした」

  

 

明石(仮)「というこれどこ向かってんの」

 

 

提督「あ、ここが自分の家です」

 

 

提督「秋乃さんがご飯作って待ってくれています」

 

 

明石(仮)「未成年の女を連れ回して自宅に連れ込んで家政婦みたいなことさせてんのかよ」

 

 

提督「ま、まあ、緊急事態の保護的なあれで(震声」


 

明石(仮)「アッキー、帰ったぞー」

 

 

秋月(仮)「……」


 

提督「泡吹いて倒れてますね。一体なにが……」

 

 

秋月(仮)「……」ブクブク

 

 

明石(仮)「アッキーは俺と半日以上離れると泡吹いて倒れるんだよ」

 

 

提督「それ本当だったんですか……」

 

 

明石(仮)「おい、アッキー」バシバシ


 

秋月(仮)「っは、アッシー!」

 

 

19

 

 

秋月(仮)「アッシー、ボロボロだね……」


 

明石(仮)「その甲斐あって上手く行った。サインはもらえたぞ」


 

秋月(仮)「それ、あの人のお陰でしょう?」

 

 

明石(仮)「そうだな。なんか礼をしねえとな。といっても」

 

 

秋月(仮)「すかんぴんの私達がお礼できることが思いつかない。ご飯は作ったけど、私達が食べさせてもらう身だし……」

 

 

明石(仮)「とのことだ。なんか俺らにして欲しいことはないか」

 

 

秋月(仮)「お助けしてもらったお礼をしなければ気が済みません!」

 

 

提督「助けたというか、まあ、仕事でしたので……まあ、気が済まないというのなら」

 

 

提督「今度はお二人が助けてあげてください」

 

 

提督「海で命が散らないよう」

 

 

提督「自分は戦場に兵士として立てませんから。負けず挫けず、それぞれの使命をやり遂げてください」

 

 

明石(仮)「もともとそのために俺は軍に行くんだろうが」

 

 

秋月(仮)「なら、感謝と尊敬の念を込めてお兄さんと呼ばせてもらいます!」

 

 

明石(仮)「お、それいいな。あんたなら兄さんって呼んでもいいぞ」

 

 

提督「……」

 

 

提督「へっ、ガキはこれだからちょろいぜ」

 

 

明石(仮)「なんか急に悪者みたいなこといいだしたぞ……」

 

 

秋月(仮)「そんなに私達に慕われるのは嫌なんでしょうか……」

 

 

提督「あ、自分は少し電話してくるので外に出ますね」

 

 

20

 

 

明石(仮)「アッキー、いい大人もいるんだな」

 

 

秋月(仮)「……うん。少し変わってる人だけど」

 

 

明石(仮)「俺らみたいなのと関わりたがらないのに」

 

 

明石(仮)「困ったら」

 

 

明石(仮)「大丈夫かって助けてくれる人もいるみたいだ」

 

 

秋月(仮)「そうだね!」

 

 

提督「あの、ここは壁が薄いので大声は自重してくださいね」

 

 

秋月(仮)「あ、はい! すみません!」

 

 

提督「言葉が通じない、だと……」

 

 

明石(仮)「あんたは信用できるって話をアッキーとしてたんだよ」

 

 

提督「……秋乃さんは」

 

 

提督「大人を信用しないのでは」

 

 

秋月(仮)「信用するっていいましたよね! さすがに恩人くらいは信じます! そこまで大人不信ではないです!」

 

 

提督「信用しない方がいいと思いますけどね……」

 

 

提督「大人って馬鹿ばっかりですから」

 

 

明石(仮)「確かに。俺らの問題に首を突っこんでくるあんたもな」

 

 

提督「その通り」

 

 

明石(仮)「ところであの話、どうすんだよ。さすがに給金全部持ってかれたら俺らキツいだろ。ゴミとか漁っていいならやっていけるけどさ」

 

 

秋月(仮)「あ、そういえばお金あげるみたいな取引内容でしたっけ?」

 

 

提督「大淀さ……上に頼んであなた達はもう訓練生として登録されています。書類関連は後日に受理してもらえるように頼んでおきました。まあ、身内として融通利かせておくために」

 

 

提督「明日くらいに口座作りに行ってくださいね」

 

 

提督「まあ、上にも把握してもらってますので、親御さんはとりあえず完全シャットダウンです」

 

 

提督「あなた達のその適性に感謝ですね。軍はかなり欲しがっているみたいなので」

 

 

提督「さすがに国にケンカは売ってこないでしょうし」

 

 

提督「まあ、そういうことでいいですよね?」

 

 

秋月(仮)「本当になにからなにまで……」ウルウル

 

 

提督「仕事なので」

 

 

提督「貴重な兵士のためでもありますからね。どうもあなた達は、悩み、立ち止まる時間よりも、確かな未来に進む方が良きことだと判断しました」

 

 

提督「軍に入りたいのなら」

 

  

提督「今がその時、です」

 

 

秋月(仮)「ナウイズザタイムですね!」



提督「それよりご飯食べましょうよ。そろそろいいですよね」

 

 

秋月(仮)「はい、お鍋いただきましょう!」

 

 

提督・秋月(仮)・明石(仮)「いただきます」

 

 

提督「……」モグモグ

 

 

明石(仮)「……」ポロポロ

 

 

秋月(仮)「アッシー、泣きながらご飯食べるの止めなよ……」

 

 

秋月(仮)「こういう風に食卓囲むの夢だからってさ」

 

 

秋月(仮)「気持ちは分かるけど……」

 

 

明石(仮)「泣いてねえ」ゴシゴシ

 

 

明石(仮)「忘れてたんだよ」

 

 

明石(仮)「アッキーの飯」

 

 

秋月(仮)「自信作です。あ、美味しさのあまりに感動したんだね!」

 

 

明石(仮)「非現実的な味がすること」

 

 

オロロロロ

 

 

提督「?」モグモグ

 

 

明石(仮)「兄さんは、すごいな」

 

 

明石(仮)「あんた、もうアッキー嫁にもらったらどうだ。この飯マズでも食えるならアッキーにうってつけだ」

 

 

秋月(仮)「し、失礼な! アッシーの味覚がおかしいんですよ!」

 

 

秋月(仮)「そ、それに変なこといわないでください」

 

 

秋月(仮)「お、お嫁さんなんて私にはまだまだ早いです!」

 

 

明石(仮)「……やべ」


 

明石(仮)(今、アッキーのドレス姿を思い浮かべたら)

 

 

明石(仮)(幸せそうに笑ってるアッキーの顔が……)

 

 

明石(仮)(……見えたよ)

 

 

明石(仮)「……」ポロポロ

 

 

秋月(仮)「そこまで不味いのなら無理して食べなくてもいいです!」

 

 

秋月(仮)「アッシーの馬鹿!」



22

 

 

提督「ということがありまして」

 

 

提督「あ、一部、自分の想像入ってます」

 

 

龍驤「キミ、さすがやで!」

 

 

龍驤「よーやった! でもキミもその親父に1発ぶちかませばよかったんやで!」

 

 

初霜「想像以上の重さです……」

 

 

間宮「誰も死なずに済んでよかったです……」ホッ

 

 

乙中将「あー……」

 

 

飛龍「その二人がここに配属を希望する理由も分かったなー……」

 

 

蒼龍「というかこの人、めちゃくちゃ誤解されているだけで」

 

 

蒼龍「実はいい人なのでは……」

 

 

乙中将「少なくとも青ちゃんは苦労人だよね」

 

 

わるさめ「なにー、司令官って年下萌えだったの?」

 

 

わるさめ「おにいちゃーん」ウワメヅカイ

 

 

提督「そんな解釈をされるのは想定外です」

 

 

わるさめ「思い出はいつも綺麗だけどー、不幸話だけじゃお腹が空くわー」

 

 

わるさめ「まあ、家庭問題の不幸ってわるさめちゃん的にはすげー同情するけどね……」

 

 

わるさめ「今の話をしたらぷらずまのやつ面白い反応しそう」

 

 

提督「……」

 

 

わるさめ「それに聞いていた限り、明石のほうはぷらずまのやつと相性悪そうじゃん。まあ、司令官への忠誠度によってはむしろ仲良くやれるかもだけどー」

 

 

提督「彼等の配属を受け入れるかどうかはぷらずまさんの判断に委ねようかと」

 

 

提督「ぷらずまさんは戦争終結においてのプラスマイナスの勘定できるはずですし、私情は混ぜないはずです」

 

 

提督「使えるか使えないかで判断します」

 

 

わるさめ「提督さんの弱点はねー」

 

 

わるさめ「人の心の機微に疎すぎること☆」

 

 

わるさめ「女心とか全く分かんないタイプだもんねー」

 

 

龍驤「せやな」

 

 

間宮「ですね」

 

 

提督「最近必要性を感じて勉強中ですから……」

 

 

乙中将「ま、面白い話も聞けたし、開発やってくるよ。執務室にあるリスト借りるねー」

 

 

乙中将「それと明日は朝早くに発つからお見送りも要らないからね」

 

 

乙中将「あ、夕立がきた」

 

 

夕立「っぽい! 鎮守府(闇)の提督さん!」

 

 

夕立「卯月ちゃんから!」

 


夕立「電ちゃんと小学校でお友達だったって聞いたけどほんとっぽい?」

 

 

提督「いいえ」

 

 

乙中将「へえ。間宮さん」

 

 

飛龍「お酒を」


 

蒼龍「追加で」

 

 

間宮「はい、ただいま」

 

 

提督「夕立さん……悪夢を運んでこないでください……」

 

 

夕立「ぽい?」

 

 

龍驤「どんまい」

 


【3ワ●:明石さんの提督調査】

 

 

1

 

 

提督「…………」

 

 

コンコン

 

 

瑞鳳「失礼します。司令室にいらっしゃらなかったので自室にお伺いしました」

 

 

提督「あ、どうぞ」

 

 

瑞鳳(自室、書物だらけ……)

 

 

瑞鳳「陽炎さんと不知火さん、それと希望されたので秋月さんも連れて、夜間哨戒行ってきてもよろしいですか?」


 

提督「お願いします」


 

提督「瑞鳳さん」


 

瑞鳳「はい」


 

提督「深海棲艦との戦争の始まりをご存じですか?」


 

瑞鳳「座学での知識程度ですが……」


 

瑞鳳「確か深海棲艦が先で、その後に妖精と艤装の発見、深海棲艦と妖精は爆発的に出現したみたいですね」

 

 

提督「しかし、深海棲艦を深海妖精が建造するとしたら初めに現れたのは妖精でなくては矛盾が生じますよね」

 

 

瑞鳳「ええ」

 

 

提督「もっといえば深海棲艦を作るのに、艤装と人間が必要ならば、一番後に現れたのが深海棲艦でないとおかしいです」

 

 

瑞鳳「……はい」

 

 

瑞鳳「だからこそ深海妖精の発見がここまで騒がれているんじゃないですか」

 

 

瑞鳳「最もこれといった進展は聞きませんけど。こっちでは上が進展がないのか秘匿しているのかも分かりませんけど……」

 

 

提督「初期に発見された艤装は、吹雪、五月雨、電、漣、叢雲。共通点はあっても特別な意味が思い付きませんし」

 

 

提督「そもそも妖精って死ぬんでしょうか」

 

 

瑞鳳「?」

 

 

瑞鳳「艦載機の操縦する妖精さんは撃ち墜とされて海に還りますよ?」


 

提督「……還る……」

 

 

提督「って、死ぬんでしょうか」

 

 

瑞鳳「皆、無限に沸いてきますからね……」

 

 

提督「いくつか深海妖精を陸地に誘う方法を考えていますが、しらみ潰しは時間がかかりすぎるので1つに絞ろうと考えているんですけど」

 

 

提督「下手な人体実験は、あなた達から将校に漏れますし……」

 

 

瑞鳳「それはなによりです。私達を物扱いはさせませんよー……」

 

 

瑞鳳「あ、妖精のことなら明石さんに聞いたらどうです?」

 

 

瑞鳳「明日来ると、はっつんから聞きましたし」

 

 

瑞鳳「あの人、妖精可視の才がありますし、30年も明石さんやっていますからなにか参考になるお話が聞けるかもです」

 

 

提督「……ありがとうございます。それがよさそうです」

 

 

2

 

 

初霜「提督、先ほど明石さんから連絡がありまして、フタマルマルに到着するとのことです」

 

 

提督「やっと、ですか」

 

 

初霜「あの方も多忙ですからね」

 

 

初霜「明石艤装は例の彼に引き渡してはいないのですね」

 

 

提督「あー、後で軍学校に行って正式に引き渡すらしいです。明石さん、1年間血を吐きながら各鎮守府を回ったらしく」

 

 

提督「引き渡しの際に明石がしばらく配属された鎮守府に滞在できるよう、ここに改修装備を届けてもらって仕事するみたいです」

 

 

初霜「優しい人なのですね」

 

 

初霜「ところで提督、改修する装備はお決まりなんですか?」

 

 

提督「いえ、卯月艤装のメンテナンスをお願いしたくて」

 

 

初霜「そういえば、あの艤装は明石さんが魔改造したものなんですよね?」


 

提督「ええ、そのようです」

 

 

提督「あの人も妖精可視の才能があるみたいですね。なにやら妖精さんの技術を参考に頑張った結果があれだそうです。すごいですよね」

 

 

提督「天才かポンコツかの判断に困りますけど」

 


卯月「ポンコツだぴょん」

 

 

卯月「元に戻せません、はい!」

 

 

卯月「あれが成功作なのかも怪しいぴょん」

 

 

初霜「提督はあの艤装をもとに戻せるとしたら、戻すつもりもないのですか?」

 

 

提督「自分はあのままでも。卯月さん次第ですかね」

 


卯月「もー、あの艤装が馴染んでるし」

 

 

卯月「はっつんもあんな特殊な動きしたくはないぴょん?」

 

 

卯月「一人で輪形陣組む勢いの対空射撃を可能にする砲改造とか」


 

卯月「お祝い事があると、輪形陣を組みたがるって風の噂で聞いたぴょん」

 

 

初霜「いえ、そういうわけでは、ないですけど……私はどんなイメージなんですか」

 

 

卯月「器用貧乏」

 

 

初霜「う……」

 

 

卯月「中途半端」

 

 

初霜「……うぅ」

 

 

卯月「まあ、それでも」


 

卯月「駆逐艦卯月よりはマシだぴょん」


 

卯月「最弱レベルの卯月よりは、初霜のほうが誰だっていいし」


 

卯月「うーちゃんは砲撃、雷撃、回避、どれを取っても一流で、学校時でもトップだったぴょん。けど、適性という才能は乏しかったから」

 

 

卯月「『戦艦の適性があれば』」

 

 

卯月「頑張れば頑張るほど、そーいう風にいわれてきたぴょん」


 

卯月「駆逐艦卯月になりたかったわけじゃないし。選択肢さえあれば誰がこんな最弱艤装選ぶもんか」


 

卯月「強くなれるのなら手段は問わない。この司令官についている1つの理由でもあるぴょん」

 

 

初霜「……乙中将との演習時ですが、自分の傷を躊躇わない戦い方、怖くはないのですか?」


 

卯月「痛いのも怖いのも嫌いだぴょん。深海棲艦との戦いで負けて失うことはもっと怖いし。アブーは死なせん」

 

 

卯月「だから、戦ってる。シンプルだぴょん」


 

初霜「……なんだかすごく大人な感じが」

 

 

卯月「数年単位で殺し合い続けていれば大人っぽくもなるぴょん」

 

 

卯月「辛気臭いやつめ」


 

卯月「そ~ら~っ」ピラッ

 

 

初霜「きゃ」

 

 

初霜「卯月さん、提督の前で、そういうことは止めてください!」

 

 

卯月「司令官、見えたぴょん?」

 

 

提督「……」

 

 

卯月「駆逐艦はストライクじゃないぴょん?」

 

 

提督「初霜さん」

 

 

提督「申し訳ありません」ペコリ

 

 

初霜「い、いえ、別に構いません。というか、お見苦しいところをお見せして、申し訳ありません」ペコリ

 

 

卯月「む、司令官に触られても怒らないぴょん?」

 

 

初霜「その必要性さえあれば一向に構いませんが……」

 

 

提督「まあ、怪我や病気した時のような緊急性があれば……」

 

 

卯月「司令官ってホモ?」

 

 

提督「同姓に恋愛感情も性欲も持ったことはありませんが」

 

 

卯月「異性には」

 

 

提督「あまり記憶にありません(メソラシ」

 

 

卯月「恋したいとかは?」

 

 

提督「卯月さん、今は」

 

 

卯月「戦争中ですから、とかそういうのはなしで」

 

 

提督「特にはありません」

 

 

卯月「でーすーよーねー」

 

 

卯月「わるさめが来てからかなり明るくなった気はするけど」

 

 

卯月「うーちゃんが来た時、ここほどラブ勢のいない鎮守府は珍しいと思ったぴょん。ま、言い方を変えれば、適切な距離感保ててる鎮守府も」

 

 

卯月「うーちゃん的には実に」

 

 

卯月「つまらないぴょん」ピラッ

 

 

初霜「スカートをめくるのは止めてください!」

 

 

提督「……まあ」

 

 

提督「家族は欲しい、かも?」

 

 

卯月「む、それは面白そうなこと聞いたぴょーん」

 

 

卯月「ぷっぷくぷー。アブーとゴーヤ誘ってゲームしてくるー」

 

 

3

 

 

明石さん「工作艦明石です!」ビシッ

 

 

明石さん「例の卯月艤装のメンテナンスの施工に伺いました!」

 

 

提督「はい、よろしくお願いします」

 

 

提督「ところで卯月艤装、妖精の開発技術を見よう見真似で作ったと聞き及んでおりますが、本当なんですか?」

 

 

明石さん「あー、それよく聞かれますね。わたしは提督の素質もあって妖精さんが見えますし、意思疏通もある程度出来るんです。提督さんもですよね?」

 

 

提督「ええ、まあ……」

 

 

明石さん「わたしはその分野に才能あったみたいで、妖精さんに意思を伝えたり、なにを伝えたいのか、すごくよく分かるんです。もちろん比較的、ですよ?」


 

明石さん「乙中将なんかはすごいですよ。妖精コミュでは歴代提督のトップです。あの人、噂では動物とも会話できるとか」アハハ


 

明石さん「まあ、大事なのは諦めないハートですよ。回数が全てだ回せってやつです」

 

 

明石さん「妖精の技術は資材と開発資材を使いますが、最も重要なのは、妖精さん自身の能力ですしね」

 

 

提督「謎が多い、ですよね」

 

 

明石さん「未知の技術ですよね。彼らはどこでどうやって誕生したのかはまだまだ謎ばかりです」

 

 

提督「オカルトの一種かと。幽霊みたいなものじゃないですかね。ほら、幽霊も物理的にポルターガイストとか起こしますし」

 

 

明石さん「幽霊頼りの軍とか笑っちゃいますよね」

 

 

提督「超能力捜査を政府がやりますし、時代の流れですかね……」

 

 

明石さん「わたし達も見える側ですねー」

 

 

明石さん「さて、始めますか!」

 

 

4

 

 

明石さん「ん、見ていて楽しいですか?」

 

 

提督「ええ。やはり明石さんは装備を弄って艤装自体の改造は妖精さんにお任せしているんですね」

 

 

明石さん「まー、わたし一人で出来るのは取り外し可能装備の改修くらいで未知を扱う部分は私一人では無理ですから」

 

 

提督「なぜ卯月艤装だったのです。やはり弱いからですか?」

 

 

明石さん「うーん、今の卯月ちゃんの才能に艤装が応えられていなかったんですよねー……」

 

 

明石さん「兵士のポテンシャルを持て余すのは単純に損害でしたし、そこにやりがいを感じてしまいまして」

 

 

明石さん「面白い試みでもありましたし。まー、思い立ったが吉日だったので、すごい怒られましたけど……」

 

 

提督(そこら辺が卯月さんからポンコツといわれるゆえんですかね……)

 

 

明石さん「そう言えば、軍は隠していますが」

 

 

明石さん「今、世間を騒がしている」

 

 

明石さん「深海妖精は甲大将ではなく、あなたが発見したそうですね?」

 

 

4

 

 

明石さん「すごく興味があるんですけど、詳しいことは調査中とのことです。軍でも最新情報は一部しか知らないみたいで、おまけに箝口令も」

 

 

提督「その件は自分も存在を確認した程度で」

 

 

明石さん「まっさかー。深海になにかあると睨んだのは、あなただけではないです。たくさんの先人が調査したじゃないですか」

 

 

明石さん「あなたは当たりをつけていたと、わたしは考えていまして」

 

 

明石さん「多分、ずっと前から。戦争のことばかり考えて自由時間を有効に使ったんじゃ?」

 

 

提督「まあ、実際に艦娘を沈めて観察することはやりたいことではありましたが、人体実験です。自分だけが思い付いたことではないと思います。自分が出来る立場だっただけで」

 

 

明石さん「駆逐艦電のいるこの鎮守府に来たがっていたのも、そのためでは?」

 

 

提督「……」

 

 

提督「調べたのですか?」

 

 

明石さん「教えてくださいよー」

 

 

明石さん「その代わり、わたしも妖精さんの秘密を教えますから。確信はないですし、小話程度の面白い発見してしまいまして」

 

 

提督「……どんな発見ですか?」

 

 

明石さん「妖精にも色々と役割がありまして。開発妖精、廃棄妖精、建造妖精、解体妖精、装備妖精」

 

 

明石さん「全ての鎮守府にいるわけではありませんが、奇妙な妖精さんが稀におりまして」

 

 

明石さん「明石さん的発見が」

 

 

明石さん「そこの明石さんミステリーの深い話を」

 

 

提督「……」

 

 

提督「…………へえ」

 

 

提督「何が聞きたいですか。答えられる範囲であれば」

 

 

明石さん「私からじゃないんですね。信用してくれてありがとうございますー」

 

 

明石さん「あ、お互い黙っておきましょうね。私はあくまで興味本意ですから」

 

 

提督「ええ。そのほうが賢明ですね」

 

 

明石さん「深海棲艦は深海妖精が沈んだ艦娘から建造しているのですよね」

 

 

提督「確定かと」

 

 

明石さん「でもそれじゃ説明できない点があります。深海棲艦には色々な種類がいるじゃないですか?」

 

 

明石さん「過去に殉職した艦娘と数、合いませんよね。深海棲艦は遥かに多いです。これのからくりは知っていますか。あ、予想でも構いません」


 

提督「……予想になりますね」

 

 

提督「深海棲艦の建造行程は通常建造とは異なり、肉体に艤装を適応させるのではなく、艤装を肉体に適応させる」

 

 

提督「ですが撃沈時の艦娘の損傷具合は様々です。むしろ五体満足のまま沈むほうが少ないです」

 

 

提督「例えばですが」

 

 

提督「一部の艤装と肉体からも建造可能なのではないでしょうか」

 

 

明石さん「なるほどー……納得行く予想です」

 

 

明石さん「深海棲艦って顔に艤装つけたようなやつとか、体のどこかが欠けたような、体の一部そのものが艤装になっているような見た目、多いですもんね」

 

 

明石さん「引きちぎれた腕と、艤装の欠片をベースに作れるのなら、あんなに数が多いのも説明はできますね」

 

 

明石さん「もう1つ」

 

 

明石さん「深海棲艦が艦娘だとしたら、あいつらの艤装って艦娘の艤装とは性能が比較にならないほど上等なものもあるみたいで。改修では説明がつかない次元で」

 

 

提督「すみません。深海妖精は未知でして、彼らの技術が関係しているであろう、としか」

 

 

明石さん「もっと具体的な予想は?」キラキラ

 

 

提督「……これらの情報を魔改造に利用しないでくださいよ?」

 

 

提督「恐らく、艦娘と同じように条件があり、深海棲艦の種類が分かれるのかと。知能を宿すには完全に死亡していない。まあ、五体満足、生きている状態だと、恐らくそのまま人間レベルの知能が引き継がれる、かも?」

 

 

提督「姫級や鬼級は一体ではなく、複数の撃沈者から成り立っている可能性も。艤装の点については例えば駆逐艦が轟沈したとして」

 

 

提督「戦艦の擬装にその駆逐艦適性者の肉体を装備させる、とか」

 


提督「深海妖精の……技術の範囲では?」

 

 

明石さん「……、……」



明石さん「確かに、深海棲艦に対して魔改造が出来ると仮定したら、可能性はありますね」

 

 

提督「そうせざるを得ないのですよ。壊れた艤装を機能させるために」

 

 

提督「……確信が欲しいのですけどね」

 

  

明石さん「……でも艤装に人間のような意思があって、手足を得たから動き出したといっているようなものですよ?」

 

 

提督「龍驤さんと同じ疑問ですね」

 

 

提督「それが深海棲艦の正体ですし、あなた達が艤装を身に付けると実際、その艤装の過去を夢に見たりすると聞きますが……」

 

 

提督「艤装は疑似生命とかそんなんじゃないんですかね……」

 

 

明石さん「……、……」ウズウズ

 

 

明石さん「この卯月艤装に」

 

 

提督「はい?」


 

明石さん「ヨンロク砲いってみていいですか」

 

 

提督「絶対にやめてください」

 

 

5

 

 

提督「妖精は使命を受けて鎮守府に居着くということは」

 

 

明石さん「うーん、中には嫌々といった感じで仕事する子がいるんですよ」


 

明石さん「これあくまでわたしがそう見えるってレベルの反応です」

 

 

提督「……そうなんですか?」

 

 

明石さん「まあ、じっくり観察していないと分かりませんよ。わたしも何十年もお仕事していて、あれれーって気付いたくらいですから」

 

 

提督「例えば?」

 


明石さん「もしかしてその子達は役割が違うんじゃないかなと。その役割は分かりませんけど、嫌々、鎮守府でお仕事してるとか?」 


 

明石さん「わたしも最前線で砲雷撃戦やれとか言われたらやる気出ませんし」

 

 

明石さん「でも、やらなきゃ」

 

 

明石さん「命令が出たのなら」


 

明石さん「建造妖精はですね、少しだけ解体が出来るんです。開発妖精も少しだけ廃棄妖精の仕事が出来ます。やらせると、嫌々といった風です。解体は建造が出来れば、まあ、出来ないことはないし、開発だってそうです。ま、未知の部分があるので、あくまでわたしはそう思う、なのですが」

 


明石さん「わたしは妖精さんとともに30年以上の人生を歩んでいますから、妖精さん観察するのも意思疏通のレベルが高いのもそのせい、かも」

 


明石さん「テンションあがった卯月艤装魔改造の時に4日徹夜して、その時は建造妖精と解体妖精、開発妖精と廃棄妖精と四六時中一緒にいたんですけど」



明石さん「そこにいたはずの建造妖精さんがパッと消えて、あれ、なんでそんなに解体できるの? あれ、いつの間に建造妖精さんは、解体妖精さんと、立ち位置、入れ替わったんです? みたいに」



明石さん「ま、妖精さんはロストでしたっけ。たまーにそれするので、その間に入れ替わっただけかもしれないですけど」



明石さん「これはわたしが寝惚けていただけの一度きりのなーんとなくの恥ずかしい話なの胸に秘めてます♪」キャピッ



提督「そうですね」



明石さん「ですよねー。あなたという人が分かってきた気がしますー」



提督「まあ、自分は浅いですしね。よく初対面の人に見抜かれます」




提督「……、……」

 

 

提督「………、………」

 

 

提督「…………、…………」ツー

 

 

明石さん「鼻血出てますけど……」

 

 

提督「お気に、なさらず」

 


提督「そのやる気のない妖精、どの子ですか」

 

 

明石さん「手伝ってくれてるこの子です」

 


提督「うちのなかば深海棲艦化した子達を知っていますか?」

 

 

明石さん「ええと電さんと春雨さんですよね」

 

 

提督「これは可能性は極薄かと思いますが、彼女らの解体を頼んでも」

 

 

明石さん「それは実に面白い発想です!」キラキラ

 

 

提督「明石さん、妖精の種類は建造妖精、解体妖精、開発妖精、廃棄妖精、パイロット含む装備妖精、それぞれが……」

 

 

明石さん「?」

 

 

提督「すみません。明石君が来てから頼もうと思っていたのですが、装備改修の他に地下に置いてある水槽とその機材もろもろに」

 


提督「出来る限り海の状態と同じに調整してもらって構いませんか」

 


明石さん「……、……なぜです?」

 

 

提督「確信に変わったのです。明石さんのその妖精とともに生きたその人生が、ピースの1つになり得ました」

 

 

提督「これでやっと」

 

 

提督「暁の水平線」

 

 

提督「の影が」

 

 

提督「踏めます」

 

 

明石さん「……大淀さんがいっていた通り奇妙な頭をしている人ですね」

 

 

明石さん「あなたの頭をかち割って覗いてみたいです」

 


提督「この戦争が終わった時まだ自分が生きていたら、どうぞ」

 

 

6

 

 

ぷらずま「司令官さん、私は遠慮するのです」

 

 

提督「……了解です」

 

 

わるさめ「司令官マジ? わるさめちゃん普通の女の子に戻れるかもしれないって……?」キラキラ

 

 

わるさめ「わるさめちゃんは感動しました」キラキラ

 

 

わるさめ「割とマジで結婚前提のお付き合いお願いします」キラキラ

 

 

ぷらずま「●ワ●」

 

 

明石さん「では妖精さーん、やってみて」

 

 

妖精「……」ハア

 

 

明石さん「……あれ?」

 

 

カーンカーン

 

ブチッ

 

 

わるさめ「う、腕ぎゃもげあああ!」

 

 

わるさめ「くぁwせdrftgyふじこlp」

 

 

明石さん「す、ストップ! 中断!」


 

ぷらずま「●ワ●」

 

 

ぷらずま「妖精さん、続けるべきかと。良い仕事しているのです」 

  

 

カーンカーン

 

グチュ

 

 

わるさめ「目が、右目の視神経があ!」

 

 

ぷらずま「●ワ●」キャッキャ

 

 

明石さん「ぐろ……オエップ」

 

 

提督「妖精さん、ストップで」

 

 

提督「わるさめさん」

 

 

わるさめ「なんスかー……」

 

 

提督「この手、もらいますね?」

 

 

わるさめ「司令官さん、いくらわるさめちゃんでもさすがにそんなアブノな性癖は受け止めきれねっスよ……?」

 

 

提督「地下に大きな水槽があるので、そこに切断した身体の一部を入れておきたい」

 

 

提督「まあ、さすがにお願いできる相手は限られてるので」

 

 

わるさめ「ぷらずまじゃなくってわるさめちゃんってことは」

 

 

わるさめ「女の子に戻れる可能性のある実験ってことかな?」

 

 

提督「深海妖精を陸地に誘います」

 

 

ぷらずま「!!」

 

 

ぷらずま「司令官さん、このダボが断るのなら私でも構いません」

 

 

わるさめ「●ω●」

 

 

わるさめ「よろしい。高速修復剤は使わせてもらうからね」

 

 

わるさめ「つか、段々あいつみたいになってきてるね。いっちまわないように気を付けなよ?」

 

 

提督「心配ご無用」

 

 

わるさめ「ならよろしい」

 

 

提督「ぷらずまさん、電艤装も展開できますね?」

 

 

ぷらずま「ええ、初期装備+拳銃砲の固定装備となりますが」

 

 

提督「構いません。その艤装の一部でも構いません」

 

 

提督「龍驤さん、瑞鶴さん、瑞鳳さんに頼んで艦載機発艦してもらって、その艦載機を撃ち落とし、その艦載機を水面に触れる前に確保」

 


提督「艤装の一部とともに水槽に入れてもらって、地下にあるストップウォッチを水槽にくっつけてタイマーを」

 

 

わるさめ「カ級捕まえてた時も思ったけど、相変わらず変なこと思い付くっスねー……」


 

提督「それと、通常の艦娘の肉、訓練時スパルタでやってあなた方以外の通常の艦娘の体の1部、この手くらいで構いません」



提督「地下の冷蔵庫に入れて保管しておいてください」



明石さん(うわー……)



ぷらずま「●ワ●」



ぷらずま「了解」

 

 

ぷらずま「なのです」

 

 

提督「………もう、1つ。これは後々で構いませんが、ぷらずまさんわるさめさん」



提督「あなた達をその身体にした司令官が作った暗号、何種類くらいありました?」



わるさめ「んー、4種類くらいかな?」



ぷらずま「ダボが。その倍の8種類です」



ぷらずま「文字から作ったと思われる暗号が、恐らくSSS、そこから順に下がっていく、かもしれません。下位の暗号でも私にもよく分からなかったので、わるさめさんには分かるはずがないのです」



わるさめ「あ、でも、むかーしリコリスママがどうでもいいから見せてあげるよって、見せてくれた資料があったかな。チューキさんは嫌そうな顔をしてたけど、誰もリコリスママには逆えないからね。その暗号が……」



わるさめ「比較的簡単だってママが」



ぷらずま「どういう文字列なのです?」



わるさめ「よく覚えてないゾ☆」



提督「あなた深海棲艦と志を共にした仲間ではなく、情報引き出そうと思っていたんですよね? マジで向こうでただ遊んで過ごしていたんじゃないですよね……?」



わるさめ「わるさめちゃん、ノリとテンションで生きてるから」



提督「……」



わるさめ「……(メソラシ」



ぷらずま「司令官さん、ほんとこのダボは使えねーので資材に変換してもいいですか……?」



わるさめ「……あ、そうだ。ヒントもらってたんだった。レッちゃん&ネッちゃんがもっと賢くなるかもーって、リコリスママからお勉強させられてて、わるさめちゃんも一緒に遊んでた」



提督「やっぱり遊んでたんじゃ…………」



わるさめ「アルファベットの文字列に、日本の海辺と、そこに咲いている代表的な花言葉を考えて解くと文字が出てくるって」



わるさめ「確かそれがキーワードになって、その他の文字は携帯知っていれば解けるって」



わるさめ「ポクポクポク、ちょっとお待ちくださーいー………」



わるさめ「レッちゃん達と解いて、文字列で遊んでたー。『チューキさん! リコリスママ! プレイステーションがタウイタウイ、おっぱいがお空にかかる虹、夢が新潟の土佐犬、ミッドウェーが三越デパート本店になるよ!』」



わるさめ「キャハハハハ! って感じで笑ってたかな。そんくらいしか覚えてねっス……」



提督「っく、全く意味が分からないどころか、あなたの記憶をまるで信用できない自分が」



ぷらずま「ま、私が覚えている限りの文字列を資料として作成して置いておくのです」



ぷらずま「軍でも解けていねーのでリコリス棲姫と中枢棲姫以外には絶対に分からないよう出来ているとは思いますが」



提督「ですよねー……」



明石さん「電ちゃんも春雨さんも」



ぷらずま・わるさめ「?」



明石さん「この人のこと大好きなんですね」



わるさめ「そうですね。でもこいつ無機物なんで愛の言葉を投げても、壁にボール放り投げたかのように虚しくわるさめちゃんに戻ってくるんです。提督の修理……」



わるさめ「いや、こいつの場合は装備改修かな。お願いしますねー」



ぷらずま「くだらねー……」



ぷらずま「私は与えられた使命をこなすので、ここらでさよーなら、なのです」



7

 


提督「ありがとうございます。お疲れ様でした。間宮さんがお食事を作って待ってくれていますので……」

 

 

明石さん「ところで」

 

 

明石さん「わたしの弟子とその妹がこの鎮守府に配属希望しているんですけども」


 

提督「ええ、通達は来ています」

 

 

明石さん「過去のことは聞きました。なんとなく察してはいたんですけどね。大淀ちゃんからも話は濁されてはいたんですけど」

 

 

明石さん「二人の親父さんがアカデミーまで来ましたから」

 

 

明石さん「そこらも解決してくれればよかったのに」

 

 

明石さん「今からでもしてくれません?」


 

 

 

 



 










 

無茶苦茶いわないでください。絶対あなた大淀さんの親友でしょ。

 

 

 

 

明石さん「冗談ですよ。二人の親父さんは話が通じなくて、わたしがその時身体を張りました。ボコボコにされましたが、ボコボコにし返してやりました」

 

 

提督「男気ありますね……」

 

 

提督「それに、来たんですか……あの熊みたいな人……」

 

 

明石さん「元帥さんは歳のせいでしょうね。若者に優しいというべきか、甘いというべきか悩みますけど」

 

 

明石さん「その人をほぼ無理矢理、軍に押し込んで陸のほうで後方支援部隊のお仕事させているみたいです」

 

 

提督「そう、ですか。さすがですね。自分ではそこまで出来ませんでした」

 

 

明石さん「多少は元に修理できるかもしれません」

 

 

明石さん「だから、いつの日か」

 

 

明石さん「また家族で笑い合える日が来るのかもしれません」

 

 

明石さん「なのにあの子達は、その命はあなたのために使いたいっていうんです」

 

 

明石さん「きっかけである大淀さんも技術を教えたわたしもそうですが、あなたにも、あの子達をそうした責任があります」

 

 

明石さん「そういった責に報いることが、司令官として指揮を執ることだとわたしは常々思っています」

 

 

明石さん「あの子達が幸せなら、わたしは戦争なんか終わらなくたっていいです」

 

 

明石さん「あんまり感じたことなかったのですが、母性、がわたしにもあるのですかね。あの子達の幸せだけを切に、願っております」


 

明石さん「あなたはどうですか?」

 

 

提督「失ってしまった、ではなく、意図して死なせた。無駄死にだけはさせません。そしてその終点は全て」

 

 

提督「戦争の終わりへの布石です」

 

 

提督「以上です」

 

 

明石さん「よろしい。即答できなかったらお仕置きしてました」

 

 

提督「そうですか」

 

 

明石さん「わたし、独り身の一人っ子でして。30年近くも軍組織で浮いた話ひとつもなく、務めを果たしてきました」

 

 

明石さん「だから気持ちを完全に表に出してみますと、こんな感じです」

 

 

提督「?」

 

 

 

 

秋月ちゃんマジ人なつっこくて、妹可愛い。あの子のあの太陽のような笑顔でお姉さんと呼ばれるたびに息が桃色的に荒くなる始末でして。


 

 

 

愛弟子のほうはやんちゃなところがありますが、そこも含めて弟として見るとめちゃくちゃ可愛く思えてきて、ついつい意地悪してしまいますね。





今年は山風ちゃんもいるんですが、すぐにすねて「構わないで(プイッ」とかって頬をふくらますあの可愛さ、頬擦りしたい。なんとか私が出産したことにしたいほどです。


 

 

 

 

提督「正体を」

 

 

提督「現しましたね?」

 

 

明石さん「(*ノ▽ノ)イヤン♪」

 

 

明石さん「なので、提督さんがダメダメならどんな手を使おうとも、アッキーとアッシーはここに来させない。そういう腹積もりでした」

 

 

明石さん「ですけど」

 

 

明石さん「まあ、お話している感じ、最低ラインは越えてはいない、といったところでギリギリセーフですね」

 

 

明石さん「秋月さんもかなりの才能です。特に対空射撃は目を見張るものがあります」

 

 

明石さん「愛弟子は、なかなか機械弄りのセンスがありまして、工作艦としてのセンス自体は私より上です」

 

 

明石さん「時間の許す限り、私の30年に及ぶ明石さん人生のノウハウを叩き込んでおります」

 

 

明石さん「可愛がってあげてくださいね! 泣かせたらついでにこの明石さんも泣くと思ってくださいね!」

 

 

提督「正直、あの二人が最も性能を発揮するのは丙少将の指揮だと思うんですけどね……」

 

 

提督「丙少将は防空駆逐を欲しがってたはずですし、なにより秋月さんのあの味方の被弾を抑える立ち回り」

 

 

提督「明石君は工作艦性能はもちろん、彼のあの海上修理は『海上で入渠が可能』となる技能です。丙少将が欲しがるところだと思います」

 

 

明石さん「まー……きっとあなたはそういうところで苦労してそうですよね」

 

 

明石さん「あの二人がここに来たいっていうんです。あの二人の性格はご存じですよね。ならばここがあの二人のポテンシャルを最も引き出せるかと」


 

明石さん「素質、はお分かりですよね。心のあり方ってすごく大事です」

 

 

提督「……」

 

 

提督「ぷらずまさんのお眼鏡にかなえば歓迎しますよ。明石さんの艤装、彼に明け渡すのですよね?」

 

 

明石さん「はい。それで話は変わりますが、300日くらいです」

 

 

提督「といいますと」

 

 

明石さん「わたしの有休、ほぼ使ってません。30年間」

 

 

提督「本当に、本当に、お疲れ様です」ビシッ

 

 

明石さん「元帥さんと大淀ちゃんに祝いとして、300日の有休を消化しまして」

 

 

明石さん「あの子に艤装を貸し出し……いえ、渡すのは明後日です。つまり愛弟子は出張という明石艤装の呪いから300日間、解き放たれます」

 

 

提督「まさかそのためにここ1年ほど超過密スケジュールを」

 

 

明石さん「ええ。寄り道できる時はあの子のところに直接寄って、装備改修もアカデミーに送ってもらって、そうやって時間を作って技術と魔改造も教えてあります」

 

 

明石さん「まだ不十分です」

 

 

提督「魔改造はあまり教えなくても……」

 

 

明石さん「とんでもないです。あれこそが装備改修工作艦の至るところです」

 

 

明石さん「あ、これからわたしは引退式やら挨拶やらでしばらく走り回るんですが、それが終わってからの300日は」

 

 

明石さん「後任への指導の任につきます」

 

 

明石さん「また後で提督にお話はくると思いますが、あの二人がここに着任した場合」

 

 

明石さん「艤装はありませんが、しばらくの後、わたしもここに滞在することになると思いますのでよろしくお願いします!」

 

 

提督「はい、その際はよろしくお願いします」フカブカ



【4ワ●:VSアッキー&アッシー+山風ちゃん】

 

 

1

 

 

提督「お願いできますか。学校のほうからも、ぜひあなた達に、と」

 

 

ぷらずま「●ワ●」ナノデス♪



わるさめ「●ω●」デスハイ♪

 

 

ぷらずま「対深海棲艦海軍の将校、丙乙甲の誘いを蹴ってまでもこの鎮守府(闇)で戦死したい、というのですか」

 

 

ぷらずま「学校もなかなかお友達の成績のつけ方を理解してきたようでなによりなのです」

 

 

わるさめ「ま、使えるかどうかの判断は必要だよねー。私は面白そうだからカモンだけどー」


 

わるさめ「ぷらずまとは馬が合うかだよね。一応、こいつの運用目的の鎮守府だし」



わるさめ「一肌脱いでやるよー!」

 

 

ぷらずま「司令官さん」



ぷらずま「その特異な明石君は、なにか特異な力があるのです?」



提督「知らないのならお楽しみということで」



2

 

 

秋月「先発組が帰ってくるまで待機ですね。帰投したらすぐに出撃みたいです」

 

 

山風「私には……構わない方向で……」

 

 

秋月「構いますよ!? 山風ちゃんも行くんですから!」

 

 

明石(仮)「ほっとけ。そいつは言葉が拙いやつで、やる気がないわけじゃないからな。そうだろ?」

 

 

山風「……うん」

 

 

秋月「アッシーは戻ってくるの遅かったですし」

 

 

明石(仮)「俺が使えるトイレが遠い職員用か工廠に置いた仮説しかねえのが悪いと思うよ」

 

 

秋月「まあ、アッシーが来る前の常駐男性は少しの先生と用務員くらいしかいなかったみたいですし」

 

 

明石「みたいだなー……」



秋月「もうすぐこの3人で出撃ですからね!」

 

 

秋月「ここで結果を出さないと鎮守府(闇)に受け入れてもらえないんですから、頑張らないと!」

 

 

明石(仮)「兄さんのとこじゃないと嫌だ」

 

 

秋月「私もお兄さんのところがいいです!」キラキラ

 

 

明石(仮)「山風さんの配属希望は江風さんのいる……えーっと」

 

 

山風「甲、大将の……鎮守府」

 

 

明石(仮)「大将んとことか、すごいな」

 

 

山風「うん、すごい……二人の希望、する……鎮守府(闇)のほうは」

 

 

山風「ヤバイ、と……思う……」

 

 

明石(仮)「あー、合同練を見学した時か」

 

 

明石(仮)「甘さのない見事な戦いだった。プライドもなにもかも捨てて、地を這ってまでも戦う姿勢はいいね」

 

 

秋月「瑞鳳さんが可哀想でしたけど、戦いですからね!」

 

 

山風「……そう、だね」

 

 

秋月「あ、抜錨命令が届きました!」

 

 

秋月「ゴー、とのことです!」

 

 

明石「……まあ、とっとと行こうぜ。俺が先頭で、後ろに山風さん、殿がアッキーでいいんだよな」

 

 

山風「……アッシーはスカートを見るから先頭以外……だめ……振り返ってもだめ」

 

 

山風「死んで……」

 

 

明石「死んで!?」

 

 

明石「見ねえよ……そこまで気楽に海に出ねえから」

 

 

秋月「ですね! では抜錨しましょう!」

 

 

3

 

 

山風「えと、電探。反応、あり……」

 

 

山風「この反応……あ、故障、かな」

 

 

明石「どれ見せてみ」スイイー

 

 

明石「……んー、正常」

 

 

山風「反応……駆逐棲姫……?」

 

 

秋月「」

 

 

秋月「……っは、一瞬意識が」

 

 

山風「でも、ちょっと、違う……よく、分からない」

 

 

4

 

 

わるさめ「訓練生ども! ここを通りたくば!」

 

 

わるさめ「わるさめちゃんの屍を越えて行けー!」

 

 

ぷらずま「……はあ、一応、