整備兵・長内翔太と妹鎮守府の日常パート2
パート1の続きとなります。よろしければお付き合い願えれば幸いです。
これまでのあらすじ
『艤装整備兵』としての能力を持つ少年、長内翔太は相棒の『オヤカタ』と共に妹之浜鎮守府に着任するべく旅立った。しかし、財布とスマホを忘れてしまい、連絡がとれず無一文のまま妹之浜を目指す事になった。その途中、翔太とオヤカタはふと見つけた学校に寄って休憩する事になった。
ーーー学校
津波対策の為に作られた壁が、深海勢力の攻撃を多少防いでいてくれた為か建物自体は今までの破壊された海岸ぞいの建物と違い無事だった。
オヤカタ「おっ、門も閉められてない!ラッキー♪」
翔太「……(ハアハア)」
オヤカタ「とりあえず自転車は門のとこに置いていこう、もし中にいて俺達が気付かなくても見回りしてる人がいたら気付いてくれるかもしれない」
翔太「……わかった」
オヤカタ(……マジでこいつァまずい、鍛えているとはいえ翔太はまだ11歳だ。子どもの体力じゃあここまでが限界か。)
オヤカタ(クソッ!見通しが甘かった!途中で家があれば電話位借りて連絡しようなんて…このままじゃあここで一夜をあかす事になりかねない!)
門に自転車を立て掛けて、翔太はフラフラになりながら中に入って行く。
中に入ると一面に雑草の生い茂る校庭と、錆び付いた遊具が二人を迎えた。長い間人の手が入ってない何よりの証である。
オヤカタ「……とりあえず水だ、水が飲める場所を探そう!電話やら何やらを探すのはその後でもいいだろう!」
オヤカタを肩に乗せて奥へと足を踏み進める。
正面入り口にあった水道は蛇口が壊れていて水も出ていなかった。
だが、正面入り口のドアはガラスが割れていて中に入れた為、そこから中に入る。
オヤカタ「本来やっちゃならん事だが緊急事態だからな、誰かに見つかっても何とかなるだろ」
ピチョン……ピチョン……
オヤカタ「水の音?」
歩を進めると水溜まりがあり、蛇口からわずかに水が出ていた。
翔太は蛇口に駆け寄り蛇口をひねってさらに水を出して飲んだ。朝から走りどおしで水分補給もままならず、さらに強い日差しにさらされて疲労していた体には冷たい水は何にも勝る美味さだった。
翔太「ふぅ………」
オヤカタ「あーーーーっ、生き返るわーーーーー!」
水分補給をすませて開いていた校長室の来客用の長椅子に寝そべり、翔太とオヤカタはひとまずの休憩を始めた。
翔太「本当に倒れるかと思ったよ…」
オヤカタ「全くだな。だけど元はと言えばお前が財布とスマホを忘れてなきゃこんな苦労はしてねーんだぞ?」
翔太「うっ、そ、それは…ごめん」
オヤカタ「ったく、翔太は普段ミスがない分たまにやらかすからなぁ、俺が見ていてやらなきゃ心配でしょーがねーよ!後だな…(クドクド)」
翔太(あっ、これ昔の話で長くなるパターンだ)
その後オヤカタの話は1時間続き、疲労がピークに達した翔太はまどろみながら「うん」「うん」と相づちをかえしながらそのうちに眠ってしまった。
オヤカタもそのうちに眠っていた。
だが、二人は知らなかった。校庭に補食されたと思われる動物の骨と、補食した者達の多種多様な毛が雑草によって隠れていた事、そして
ーーー『その毛の主達』が自分たちのねぐらに帰ってきつつある事を。
フンフン、クンクン……タッタッタッ
夕○「………ッポイ」
ーーー妹之浜鎮守府正面
提督「……という訳でその新人の捜索を行う。これより車で出発し、各員二人一組(ツーマンセル)を組んでもらって、いるかもしれないポイントで下ろすから、その範囲を捜索してくれ」
提督「正直立ち上げたばかりの我が鎮守府にとって訓練の時間は一分一秒でも惜しいところだが、これからの我が鎮守府にとって決して欠かせない人材だ、すまないが宜しく頼む。何か質問は?」
那珂「はい!」
提督「何だ?」
那珂「今の今まで新人さんが来ることを隠してた理由は?」
提督「サプライズにしようと思って黙ってました!」
那珂「相変わらず人を驚かすのが好きですね!一度野球のボールに頭ぶつければいいと思います!」
提督「わ~お、那っ珂ちゃん辛辣ゥ!!」
叢雲「それについては後でこの落ち武者に『グローブ無し千本ノック』やらせる予定だから心配しないでいいわ」
提督「俺の身体は心配してくれないの!?ってゆーか落ち武者って何?俺の事!?」
叢雲「そのうざったくて後ろで縛ってる髪を下ろしたらどう見たって落ち武者じゃない、ちょうどお似合いの呼び名よ!(フン!)」
那珂「やったぁ!その現場、那っ珂ちゃん入りまーす!」
霞「あっ、あたしも(挙手)!」
潮「わ、私は…遠慮しておきます。ば、倍返しされそうだから…(汗)」
若葉「提督、大丈夫だ、痛みは友達だ。怖くはない」
雷「なら私は大破した司令官のお世話をするわ!」
提督「ワアオ!みんなイッキイキしてるゥ!あと若葉は痛みをサッカーボールと勘違いしてないかな!?それと雷ちゃんは僕が大破する前に止めてくれると嬉しいんだけどなあ~(汗)」
雷「そんなんじゃ駄目よ!司令官のお世話が出来なくなっちゃうわ!そうよ、たとえ両手両足が大破して使えなくなっても雷がぜ~んぶお世話してあげるわ♪(ハイライトさんがログアウトしました)」
叢雲「あら、良かったじゃない。あんたの将来は安泰ね(ウフフフ…)」
提督「安泰どころかNICE BOATの危機な予感がするんですけど!?」
霞「あれ?そういえばウチの『先任(初期艦とは別に配属される戦闘面で提督に助言するベテラン艦娘の事)』は?」
叢雲「あら?そういえば居ないわね?」
那珂「レッスンかなぁ?」
若葉「哨戒任務か?」
雷「それなら私達を連れて行くでしょう?どこ行ったのかしら?」
提督「俺の事は心配してくれないのね(トホホ…)アイツなら今街に行ってもらってるよ?」
潮「ど、どうして…でしょうか…?」
提督「アイツは今バーゲンという(女の)闘いに挑んでいる、邪魔はできない!(キリッ!)」
叢雲「キリッ!じゃないわよ!何遊びに行かせてンのよ!早く呼び戻しなさい!」
霞「そうよ!早くしなさいよ!このクズ!変態!スケベ親爺!」
提督「……そろそろ泣いていい?」
叢雲「ハゲ呼ばわりしないだけ気を使ってあげてンだから早くなさいな?」
提督「(……グスン)いや、実は理由があってな。諸君らの非番時の外出用の服を見繕ってきてくれと頼んであるんだ、四六時中制服とジャージだけじゃ味気ないだろうし、最初に買いに行くときに多少はおめかししていくのも悪くないだろうと思ってな」
雷「流石司令官ね!今度お出かけするときは雷が司令官の服を見繕ってあげるわ!(ニッコリ)」
叢雲「フン!ま、まぁ…そういう事なら…」
那珂「ン?…おい、ちょっと待て(ゴゴゴゴゴ…)」
提督「な、なんでしょうか?那珂さん?」
那珂「提督貴様…今服を見繕ってもらっていると言ったな?」
提督「(やべ、那珂ちゃんがキレかけて可愛くない台詞になってる!)は、はい…そうです」
那珂「という事はだ…我々のスリーサイズを『アイツ』は知っている事になるよなあ~~。なぁ、提督よ(ズゴゴゴゴゴゴゴ)」
叢雲&霞&潮「「「あっ」」」
雷&若葉「「??」」
提督「は、はい!」
那珂「……我々のサイズを『何処で』奴は知ったんだア!ンンン!?」
提督「そ、その…(チラッ)」
叢雲&霞&潮(ズゴゴゴゴゴゴゴ…)
提督「ひ、ヒイッ!(ガクブル)」
叢雲「あんた…」
霞「死にたくなかったら…」
潮「正直に…」
那珂&叢雲&霞&潮「「「「答えろ(てください)!」」」」
提督「……身体測定のデータを渡しました♪テヘペロッ!」
那珂「(ビキビキッ!)…フゥ。や~れやれだぜ。おい、テメー」
提督「は、はひ…(ガタガタブルブル)」
那珂「右の拳と左の拳、どっちで殴られるか当ててみな」
提督「ひ、一思いに、み、右ですか?」
叢雲「No!No!No!No!」
提督「じ、じゃあひ、左ですか?」
霞「No!No!No!No!」
提督「り、両方ですかーーー!」
潮「YES!YES!YES!YES!」
提督「も、もしかして、オラオラですかあーーーー!!」
那珂「いいや、正確には…」
那珂&叢雲&霞&潮「「「「全員でオラオラだあっ(DETH)!!!!」
提督「潮ちゃん、『です』が『DETH』になってない!?」
オラオラオラオラオラオラ……
メキャッ!ドゴバギ!グシャ!ドギャーン!
アーーーーーーーーーーーッ!!!!
ーーー提督!再起不能(リタイア)!
提督「いや、リタイアじゃねーよ!まだこれから」
ガシッ!
那珂「何だ?まだ元気じゃあないか?ならまだまだたっぷり味わってもらおうかあ。ンン??」
提督(あっ、これ死んだわ)
ーーーーーーー
ーーワンワン!ワン!ワン!
オヤカタ「ん、んん…(グイーッ!)」
夕方、少し冷えてきた空気と外の音にオヤカタは目を覚まし、寝ぼけ眼で外に目をやった。
ワンワンワンワン!ワンワン!ワンワン!ワンワン!
窓一枚を隔てて外にいたのは夕日を背にうけて体毛の色が判別できない大量の野犬の群れ、そしてその中心に立つ人影だった。
人影もまた夕日を背にうけてはっきりとは見えないが、一枚布をまとい、一部をフードのように頭に被せ、手には獲物らしき動物、恐らく猪が脚を握られ引きずられていた。
オヤカタ「おい、翔太!翔太!起きろ!」
翔太「う、うぅん…なぁに?ご飯の時間?」
オヤカタ「馬鹿!何寝ぼけてンだ!外を見てみろ!」
翔太「ンン?外ぉ?(チラッ)」
翔太は寝そべりながら外を見た
野犬の群れ(ワンワン!ワンワン!ワンワン!)
翔太「……………なにあれ?」
オヤカタ「見ての通りだ、俺達ゃ野犬のねぐらにきちまってたんだ!」
翔太「嘘でしょ……」
翔太は頭を抱えた。
実は翔太は犬が苦手だった。なのに、何故か犬に好かれるという不憫な資質があり、姉護島にいたころもしょっちゅう島に住む犬達に追いかけられては嫌なのに顔を舐められるわ、嬉ション(興奮のあまりしてしまうオシッコ)はひっかけられるわ、後ろから抱きつかれて腰をふられるわでさんざんな目にあって、ますます苦手に拍車がかかった。
オヤカタ「とりあえずここ(校長室)から移動しよう!アイツらのリーダーは人間みたいだけど、見た目や行動から見て恐らく話は通じねぇ。ドアを閉めて籠城もあの怪しい奴に開けられたら一発アウトだ!」
翔太「わ、わかったよ」
オヤカタ「とにかく見つからないように夜まで待ってスキを見て逃げるぞ!」
オヤカタは翔太の右肩にのり、翔太は寝そべっていた体を起こして腰を屈めて移動を開始
ドサッ!
翔太「あ、あれ?か、身体が(フラフラ…)」
オヤカタ「おい、何やってンだ翔太!大丈夫か!?」
翔太「ご、ごめん。ちょっと足が…」
ワン!ワン!ワンワン!
窓を見るとさっきの音に気づいた犬達が窓一杯に近寄って吠えていた。
その後ろから怪しい人影もゆっくり近づいて来ていた。
翔太「あ、ああ…(ガクガクブルブル)」
オヤカタ「何やってンだ!翔太!?早く、早く逃げるんだよ!!」
ワンワン!ワンワン!
バァン!バァン!
校長室の入り口に野犬達が入り込んで体当たりしているのか、大きな音が鳴り響く。
オヤカタ「こりゃあマジで…」
翔太「ハア……ハア……(ガタガタ)」
オヤカタ「『詰み』かよ…(アハハ)」
オヤカタの乾いた笑い声と
バターーーン!
という音とともに怪しい人影が窓を両手で力任せに押し開けたのはほぼ同時だった。
ーーー妹之浜鎮守府から30Kmほど離れた街。
鎮守府の寂しい周辺と違い、ネオンと活気、人に満ち溢れるこの場所にもそれらと引き換えに怪しく、危険なやつらも光に集まる虫のようにやってくる。
バキッ!
チンピラ1「ガハッ!」
ガラガラガラガラ…ガシャーン!!
チンピラ2「て、てめえ!!」
??「あら、ごめんなさいね。手が滑っちゃッたわ(ウフフフ)」
そんな街の路地裏で、見るからに危険人物ですと名乗っているような服装や腕や脚からのぞくタトゥー姿の男たちに、しかも背中を壁に遮られて逃げ道も男たちに塞がれているのにも関わらず、どこぞの会社のOLか?と思わせるパンツルックのスーツをその見事なラインを描く身体に身につけた1人の女はチンピラの1人に明らかに手が滑ったなんてレベルじゃない右ストレートを顔面に叩き込み、しれっとしながら笑っていた。
??「あら、さっきまでの威勢はどうしたの?私と遊びたいんでしょ?こんな風に…」
ビュン!
ドスッ!(ボディに前蹴り)
チンピラ2「グフッ!」
??「女1人に大勢で!」
シュッ!
ガツッ!(前蹴りで屈んだ所に顔面膝蹴り)
チンピラ2「ブギャッ!」
??「やりたい放題して遊びたいんでしょ!!」
ヒュバッ!
ゴシャッ(後頭部への踵落としからそのまま踏みつけ)!!
チンピラ2「ブルアッ!(ベシャッ!)」
シーーーン
チンピラ2「……(ピクピク)」
??「ウフフフ…アハハハッ♪」
チンピラ一同「ひ、ヒイッ!」
??「あらやだ、お気にの靴に血がついちゃったわ」
チンピラ一同(ガクガクブルブル)
??「何かで拭かなきゃ…あら(チラッ)」
チンピラ一同「えっ!?」
??「目の前に…たーっくさん『ティッシュ』があるわあ♪」
??「ねえ……(ツカツカツカ…)」
??「……靴、拭かせてくれなぁい?(ニヤリ)」
その時、チンピラ達は悟った、『ティッシュは……俺達だ』と
??「ふぅ…」
3分後、いくつものうめき声が響く路地裏を出たその女は悠然と雑踏の中を歩いていた。
??「あ、ね、姉さん!」
??「あっ、ゴメンね羽黒~~ちょっと迷っちゃった♪(テヘペロ!)」
羽黒「い、いえ。足柄姉さんが見つかって何よりです(ニコッ)」
足柄「羽黒は良い娘ね~。『あの人』が惚れたのもわかるわ~~」
羽黒「い、いえ、そんな…」
足柄「謙遜しないの!謙虚も過ぎれば卑屈になっちゃうんだから、過剰じゃない程度の自信は持ちなさい!」
羽黒「は、はい!」
足柄「よろしい!(ウフフフ)」
羽黒「ウフフフ…」
足柄「それにしても今日は悪かったわね、せっかくお休みもらってはるばる別の鎮守府から来てくれたのにあンの落武者ときたら『ついでに買い物してきて!』だなんて……(ブツブツ)」
羽黒「し、仕方ありませんよ。それに皆のお洋服選ぶのって楽しかったですよ」
足柄「うーん、ま、私と羽黒の分も買っていいってお達しもあったから、それで納得してあげようかしらね!」
羽黒「はい!」
足柄「さーて、夕食は何にしようかしら?せっかく街に来たんだからたまには普段食べられない」
ブーーーーーーッ!ブーーーーーーッ!
足柄「はい、足柄よ」
提督「休み中にすまないな、足柄」
足柄「何?緊急出撃でもかかった?」
提督「…相変わらずの戦闘脳だな」
足柄「喧嘩なら7割り引きで買ってやるわよ落武者(ビキビキ!)」
羽黒(足柄姉さんがちょっとキレてる)
足柄「それに私は戦いが好きなんじゃなくて『勝つ』事が好きなの、わかる?」
提督「わかったわかった、だが今はそれどころじゃないんだ」
提督説明中ーーー
足柄「はあ!?新人!?人間の!?」
羽黒「へ?」
足柄「あんた…何でそんな…サプライズじゃないわよ!この前髪後退守備!」
提督「(泣きたい)と、とにかくその新人を探すのにまだ人手が足りないんだ!すまないが、一旦こちらに戻って捜索に加わってくれ!」
足柄「でも…」
羽黒「あ、あの…」
足柄「?」
羽黒「わ、私もお手伝いします!」
足柄「えっ!だって羽黒」
羽黒「大丈夫です、お休みはまたもらえますから(ニコッ)」
足柄「羽黒…わかったわ」
羽黒「姉さん!」
足柄「ちょっと落武者!次の休みは必ず埋め合わせさせるから覚悟しときなさい!」
提督「り、了解だ」
足柄「とりあえずその新人の顔写真を送って。探そうにも顔がわからなきゃ探しようがないわ!」
提督「すまない、通話終了後に画像を送る!お前達はポイントの1つ、『妹之浜小学校』を頼む!」
足柄「わかったわ。後…」
提督「ン?」
足柄「カタがついたら新人の件で説教するから逃げるんじゃないわよ、じゃ(ピッ)」
提督「えっ、ちょ(プーッ、プーッ)」
足柄「はあ…本当にごめんなさいね、羽黒」
羽黒「いえ、姉さんのお役にたてれば」
足柄「羽黒…(ブーッ!)」
足柄「来たわね、どれどれ、どんな…」
羽黒「……?姉さん?」
スマホの画面を見て固まった姉を見て羽黒は何事かとスマホを覗きこむ。
それは砂浜で撮影した、小学校低学年と思わしき線の細い可愛らしい少年の『海パン姿』の画像だった。
足柄&羽黒(絶句)
足柄(何これ何これ何これ?えっ?新人てこの男の子?ウソ!?本当に!?冗談抜きで!?)
羽黒(は、裸じゃなかったら、お、女の子だと思った。)
足柄&羽黒((か……可愛い!!))
足柄「…………羽黒」
羽黒「…………はい、姉さん」
足柄「必ず私達が見つけるわよ!(ギラギラ!)」
羽黒「はい!(ギラギラ!)」
ーーーやはりこの二人は姉妹である(笑)
ーーー
バリイン!
突き破られたガラスの音と翔太の「オヤカタ!逃げて!」の声はほぼ同時だった。
布をまとった人影ははっきりとした姿を見せ、その後ろから野犬がなだれ込んでくると、翔太はとっさにオヤカタを上に放り投げた。
オヤカタ「し、翔ゥ太アアアア!」
ビタン!
オヤカタ「グエッ!」
投げ出されたオヤカタは天井にぶつかり、その弾みで吊り下げ式の蛍光灯の上に着地して難を逃れた。
翔太「はあ…はあ…ハッ!」
オヤカタの身が野犬にさらされる危険を回避したのもつかの間、翔太は入って来た野犬の群れに囲まれた。
翔太「あ、ああ…」
野犬達は近くまで寄ってはきたものの、布をまとった人影が「ウウウウ…」と唸ると皆それ以上は近寄らなかった。
人影は翔太に近寄ると、フードにしていた部分を後ろに下げてその顔をあらわにした。
その少女と思われる人物は、かつては金髪であったであろうと思われるが、長い間放置されて汚れ、ボサボサの髪の中からのぞく緑色の瞳、痩せこけた頬は垢まみれで傷痕がいくつもついていた。
翔太「うっ…グッ…(ガクガクッ!ブルブル!)」
翔太は完全に身体を動かせなくなっていた。
苦手な犬がいれば硬直して動けなくなる事があるが、今の状態はそれと違い、翔太の体は痙攣を起こし始めていた。
ここに来た時、翔太は水分補給をした。しかし、人間の身体を、特に神経からの司令を筋肉に伝達するのに必要なミネラルやカリウム、電解質が汗と一緒に流れ出て、足らないまま水分補給をすると、痙攣や、貧血を引き起こしてしまう。
身体の変調と苦手な犬、しかも群れに囲まれ、さらには身体も動かせない。翔太は完全に逃げ場を失った。
翔太(嫌だ、嫌だ、嫌だ!こんなところで!まだ何も…何もしてないのに!)
瞳に縄張りを荒らす侵入者に対する紛れもない敵意を宿した少女は近づいてしゃがむと翔太の服の後ろ襟を掴み、片手でグイ!と翔太の上半身を引き起こし、翔太の顔を覗きこんだ。
翔太(僕……このまま死んじゃうの…かな?)
翔太が胸にこらえてきた気持ちが堰をきる。
翔太(もう…お姉ちゃん達に会えないの…かな?)
そのこらえてきた気持ちは翔太の瞳に涙となって出口を求めるように溢れてきた。
翔太「ぉ…お姉ちゃん…(グスッ)おねえ…ぢゃん(ヒック、ヒグッ)」
強く、硬い意志ほど一度壊れるとリカバリーがしにくい。
今翔太の心は限界を迎えて泣くことしかできない。
そしてそんな翔太に対して少女は
フンフン…スンスン…ペロペロ
それは突然だった。
少女が翔太の匂いを嗅いだかと思った刹那、瞳からこぼれる涙をなめ始めた。
翔太「ふぇ?」
ペロペロペロペロ…
長い間身体も、髪も、歯もみがいてないのか、かなりキツい臭いにおいに顔をしかめる翔太にお構い無しに匂いを嗅ぎ、また顔をなめまわす。
翔太「な、なんで…?」
少女にとっても驚きだった。
目の前の侵入者から懐かしい匂いを感じてそれを嗅いだとたんに翔太に対する愛しさや、怖がられていることへの悲しみが津波のように押し寄せ、気がついたら「一緒にいたい!」「抱きしめたい!」という気持ちになっていた。
ギュッ!
少女は涙をなめながら翔太を抱きしめ、先ほどまで翔太が寝ていた長椅子に翔太を寝かせると、自分も寝転び添い寝の形になると、優しく身体を撫で始めた。
痙攣の痛みと苦手な犬への恐怖に心をへし折られた翔太にとって、それはかつて姉護島で共にすごした姉達の優しい抱擁に勝るとも劣らない安心感を与え、気がつけば翔太も少女を抱きしめ返していた。
ギュッ
翔太「おね…ちゃん…」
意識が朦朧としている中で言われた一言に、少女の胸には言い知れない気持ちよさがもたらされ、いつの間にかつり上がっていた眼は安らぎに満ちていた。周りを取り囲んでいた犬達もボスが翔太を認めた事を理解し、いつの間にか長椅子を守護するようにぐるりと周囲を囲み、寝そべっていた。
沈みかけた夕陽がほんの少しその光景を照らした後、日は沈み、闇が辺りをつつんだ。
海岸沿いの道は相次ぐ深海勢力の襲撃の為に舗装されているにもかかわらず、街灯もなく、ただ波の打ち寄せる音ばかりが暗闇の中に響く。
グアオーーーーーーーーン!
ブォン!ブォーーーーン!!
いや、そんな暗闇の中を切り裂くようなライトの光と、雄叫びのようなエンジン音をあげながら走る1台の車があった。
地を這うような車高とそれに見合う赤×黒のカラーリングを纏った外見に裏側だけ黒く塗られた可変式リアウイング。
2シーターの後ろに搭載された武骨ながらもそれがまた美しさと迫力を放つV12エンジン。
その447馬力・8800rpmの高回転型エンジンのパワーを路面に伝える極太のタイヤをはいたベルトーネ社製コンセプトカー『ブラボ』から移植されたマグネシウムホイール。
1976年製、ランボルギーニ・カウンタックのスペシャルモデル、その制作を依頼した人物の名を与えられた通称『ウルフ・カウンタック』がまるで頭のネジが2~3本飛んでるんじゃないか?と聞きたくなるような速度で夜の海岸沿いの道を飛ばす。
カウンタックのコックピット内では足柄が当時のF1サイズ、270mmのノーマルより二まわり小さいステアリングを握り、340Km/hまで刻まれたメーターなど一瞥もせずにただ無言でアクセルをあけていた。
そしてその様子にたいして驚いたり、怖がったりせずに羽黒もまた無言で自分のスマホを見つめていた。
足柄(なんとしてでも『私が』あの子を助ける!そう、私の『未来の勝利』の為に!)
足柄(今まで戦いに明け暮れて、姉さん達や羽黒のように各地の提督と結ばれる事なくすごし、気がつけばケッコンしてないのは私一人、更に残りがあの落武者だけだった!)
足柄(このままあの落武者と結ばれる?否!断じて否!!)
足柄(ならばどうするか?『自分好みの若い子を自分好みに育成』してしまえばよいのだ!)
足柄(幸いまだ未発達みたいだから、まずは胃袋を掴んで離さない!そして『優しく頼れるお姉さん』として色々教えて、さらにある程度育ったら、今度は…やだ!恥ずかしい///)
ーーー色々とヤバイ考えだが、断っておくが、別段足柄の女子力が低い訳ではない。実は影で、お嫁さんとしての訓練も欠かさないため艦娘・そして女性としてのスペック自体はかなり高いし、先にケッコンした姉妹と比べても劣らない。だが、勝利にこだわりすぎる為にガッツいて失敗するのがたまにキズなだけである。
たまにキズと言うなら羽黒も……
羽黒(写真を何回見てもちっちゃくて可愛らしいなぁ…きっとフリフリのスカートとか、吹雪ちゃん達のセーラー服とか着せたら似合うなぁ…それで顔を真っ赤にしながら上目遣いで『は、恥ずかしいよぉ///僕、僕…男の子なのに///』って涙目になりながらスカート掴んでプルプルさせたら……ウフ、ウフフフフフ…楽しいだろぅなぁ~~アハハハハ!)
キズどころかかなり手遅れだった。なお、本人曰く、『愛と嗜好は別腹♪』だそうである。
ーーーキキーッ!ブォン!
足柄「ここね、『妹之浜小学校』は」
羽黒「こ、ここにその…翔太君が…?」
足柄「まだわからないわ。けどなるべく早めに探しましょう。朝から何も食べてないだろうし、昼間は大分暑かったからかなり肉体的にハードだったはず。下手すると行き倒れなんてヤバイ事になってる可能性も」
羽黒「ね、姉さん!あれ!」
羽黒が指さした先には正門に立て掛けられた荷物を満載した自転車が置かれていた。
足柄「どうやらビンゴのようね。行きましょ、羽黒。あ、念のための用意は忘れずにね」
羽黒「は、はい!」
足柄「さてさっそ…」
ワンワンワン!ワン!…
足柄&羽黒「!?」
足柄「犬?」
羽黒「み、みたいですね。しかも一匹二匹じゃなさそうです」
足柄「…ちょっと正面からは危険ね、中を覗いて様子を見ましょう」
羽黒「は、はい」
正門の影からこっそり覗くと、校庭から校舎までの道々にまでたくさんの犬が犬種を問わずたむろしていた。
足柄「これはまたずいぶんと大きな群れね。この群れ、ボスの力量が並みじゃないと見たわ」
羽黒「力量?」
足柄「考えてもみなさいよ、ざっと見7~80匹はいるわ。つまりそれだけこの群れのボスには皆を従えるだけの強さと種々の問題に対する対応力、エサの確保力が求められる。そしてそれらを満たすだけの力量があるのよ」
羽黒「な、なるほど…」
足柄「となると当然、組織的な狩りもできるはず。あれだけの数なら熊だろうが猪だろうがものの数じゃないだろうし」
羽黒「じゃあわ、私達だけじゃ、さ、流石に」
足柄「艤装がなければせいぜい人間より多少強いだけだしね、私達は」
羽黒「じゃあ中の調査は…」
足柄「だからと言って時間もないわ。子どもの体力を考えればとっくに限界オーバーのはず。」
足柄「だから増援を要請して、私達は先に入るわ」
羽黒「エエッ!」
足柄「大丈夫、子ども騙しだけど犬なら十分通用する手があるわ(ニヤリ)」
羽黒(ね、姉さんがニヤリと笑った。す、すごく嫌な予感が…)
羽黒の額に嫌な汗がにじんだ。
ーーーー
??「ッポイ…(ムニャムニャ)」
翔太「……(スー、スー)」
オヤカタ「ンゴー!ンゴー!」
犬達(((天井ウルセーー!)))
少女と翔太はお互いに抱きしめ合いながら、まるで仲の良い姉と弟のように眠っていた。
たまに翔太が痙攣の痛みに呻くと、少女は優しく抱きしめ、翔太もまた、助けを求めるように少女を抱きしめ返す。
少女は今までこんなに安らかに眠れたのは、初めてだった。
仲間はいる、仲間は大好きだ。でもやはり自分とは違う。
でも今日出会ったこの子は自分と同じだ。それに懐かしくも良い匂いがする。
今安らかに眠る少女は『嬉しい!』『大好き!』『一緒が気持ちいい!』の3つに完全に埋められているような嬉しそうな顔だった。正に幸せの絶頂だった。
バババババババババン!パパン!パン!!
ヒューーーーーーン、ドゥーン!!
ヒュン!ヒュン!ヒュン!ヒュン!ヒュン!ヒュン!パパパパパン!!
?立「!?(ガバッ!)」
突如として始まった光と爆音のシャワーに起こされるまでは。
足柄「アハハハハハハハハ!たーのしーい!♪」
バンバン!ババン!バン!
足柄「燃ーえろよ燃えろーよー♪花火よ燃ーえーろー♪アーッハハハハハハハ!」
ドパン!ドパン!ドパン!
足柄「火ー花を散らしーてー♪やーみよを照らせー!♪」
キャンキャン!キャン!
足柄「ヒュー!逃げる奴はベト○ンだあ!逃げない奴は良く訓練されたベ○コンだあ!フゥー!」
バンバン!
キャン!キャン!ダダダダ……
羽黒「姉さん…ワンちゃん達はベトコ○じゃありません(頭抱え)」
足柄「気分よ、気分。それに当ててないし、子どもの命がかかってるんだから多少は、ね?」
注意!
足柄さんの行為は実際にはいかなる理由があっても動物愛護の面からやってはいけません。良い子は決してマネしないで下さい。
足柄「それより犬達がバラけて逃げた今のうちに探しましょう、花火もそんなにもたないわ!」
羽黒「は、はい!」
足柄「わかってるわね?見つけたらすぐに確保して速攻で逃げるわよ!」
羽黒「了解!」
二人は犬達が居なくなったスキに学校に侵入した。
羽黒「ね、姉さん!あれは!?」
ダダダダダダダ……
?立「グアーーオゥ!(バッ!)」
足柄「!?羽黒!そのまま中に突入!私が足止めする!」
羽黒「了解!」
足柄は羽黒の前に出ると、ジャンプして上から襲ってきた少女を右ストレートで迎撃
ビュン!
?立「ッ!」
グリッ!
足柄「嘘ッ!」
少女は顔面に向かってくるパンチを身をひねって交わし、そのまま後ろに飛び込みながら前転、すぐさま足柄の方へ向きを変えるとレスリングよりは四つん這いに近い姿勢になって、足柄を睨み付ける。
?立「グルルルルルルル……」
足柄「!!」
足柄もとっさに左側を前に、右側を後ろの斜(はす)に構え、両手は下げたままで対峙していた。
足柄(何!?大型犬?じゃない、人間?いえ、手加減したとはいえ、私のパンチを空中で避けた!?普通の人間にそんな事ができるはずがない。だとしたら…)
足柄「貴女…深海棲艦?それとも艦娘?」
少女「ヴァ、ァァ、ジ…ジン…ガイ?ガ…ガンムズ?」
足柄「(まともに声が出せてない?いえ、出せない?だとすれば深海?でも肌や髪が白くないし、泊地系の深海棲艦にしては違いすぎる、じゃあ…)貴女は艦娘?所属は?」
少女「ガ…ガン、ムス、ガ、ガガン……」
少女「ヴ、ヴァアアア亜アアアアアアアア亞アア堊アア吾アアア!」
ダッ!
足柄「!?」
ビュン!
ビリビリッ!
少女は足柄に飛びかかり、伸ばしっぱなしの爪を使って引っかいた。
が、間一髪でかわし、その代償としてスーツの腕の部分が爪に引っかかって裂け、生身の腕が露になる。
足柄「…このスーツ、高かったのよねぇ…」
ゴゴゴゴゴゴ……
足柄「…艦娘なら轟沈しなきゃ後で入渠すれば『完全に回復する』から…」
ゴゴゴゴゴゴ……!
足柄「多少は『大破(こわ)』しちゃっても…」
<●><●>ズゴゴゴゴゴ……
足柄『大丈夫よね?』
足柄は“左前構え”を“右前構え”に変える。
古来、武道・武術において、利き手を後ろに構えるのは、『襲いくる相手の攻撃を防ぐと同時に相手の体勢を崩し、そのスキに力ある利き手で相手に攻撃を加える為』と言われている。
その利き手を前にして構えるということは、当然利き手の損傷率が上がるという事である。
だが同時に『利き手による防御により相手の逆手(利き手の逆)による先制攻撃を確実に防ぎ、自らが先制攻撃する場合、相手を最短・最速で制圧する』事を可能とする事でもある。
足柄がこの構えになったという事は、本気になった合図であり、『アバラの5~6本は覚悟してね♪』という(本人なりの)意志表明である。
だが、相手は身体能力・直感力に優れ、さらにあらゆる武道・武術にはない『対四足獣戦』に近い戦い方をする。
いずれにしても互いにまだ戦った事のない戦い方をする両者の思いは
『こいつは何があっても倒す!』
であり、また魂の奥底に刻まれた『戦艦(いくさぶね)』としての本能が、戦いへの抗えない欲求を呼び覚まし、両者の顔には狂喜じみた笑顔が浮かんでいた。
少女「ウウウウウウウウ……」
足柄「あら?良い顔するじゃない。好きよ♪そういう顔」
足柄『メチャクチャに叩き潰してあげたいくらい♪にね!!』
ダッ!
少女『ゴワアアアアア!!』
ダッ!
両者は走りだし、そして
バキッ!ガッ!ゴッ!
互いの肉と骨がぶつかり合い、戦いは始まった。
外で戦いが始まった頃、羽黒は破られた正面玄関から中に侵入し、翔太を探していた。
羽黒「し、翔太く~ん、翔太く~ん、い、いますか~」
羽黒「は、早く見つけて脱出しないと…」
段々と花火の光や音が少なくなってきている。あれがなくなったら犬達はまた帰ってくるだろう。それまでの勝負なのだ。
羽黒「あ、あれ?あの部屋…」
ドアが部屋の中に倒れた『校長室』を見つけ、中を見渡すと、長椅子のはじから人間の足が見えていた。
羽黒「!?まさか!」
翔太「う、ウウウウ…(ハア、ハア)」
羽黒が駆け寄ると、小学校低学年並みの小さな身体に作業服を着た、事前に画像で知ってなければ女の子に見えるような少年がうめきながら寝そべっていた。
羽黒「し、翔太君!翔太君!しっかりして!」
翔太「ハア…ハア…お…」
羽黒「!?大丈夫!」
翔太「お、お姉…ちゃん…」
ズキューーーーーーン!!
羽黒「は、はうっ!///」
羽黒(いけないいけないいけない!画像で見るよりも小さくて可愛い!何なんですか!この可愛い生き物)ハアハア!
羽黒「じゃなくて!と、とにかく応急処置を…」
ガサガサ
羽黒は翔太の身体を起こすと、用意していたスポーツドリンクの口を開け
羽黒「翔太君?飲める?」
翔太「あ、アア…(ビクビク!)」
羽黒「大丈夫、ゆっくり飲んで」
グビグビ……
羽黒は翔太の身体を支えつつ、赤ちゃんにミルクをあげるようにペットボトルを口に近づけて飲ませる。
翔太「ング、ング、ング……」
突如として口一杯に現れた甘味と酸味、塩味の混ざりあった液体に一瞬びっくりしたが、すぐに「スポーツドリンクだ!」と理解し、飲み始めて、あっという間に飲み干してしまった。
スポーツドリンクを飲ませてひとまずの処置をすませると、羽黒はいわゆる『お姫様抱っこ』で翔太を持ち上げ、正面からではなく、裏口から脱出し、車に向かおうとした。
羽黒「ゴメンね、翔太君。もう少しだからね?」
ワンワン!ワン!
羽黒「!?いけない!このままじゃ!」
クルッ!タッタッタッ……
進行方向から野犬の鳴き声が聞こえ、このまま進むのは危険と判断した羽黒は正面から足柄と少女が戦闘中の正面口を突っ切ることを選んだ。
羽黒「姉さん達の戦いが終わっていれば良いけど…」
ーーー
ゴッ!ミシミシ!
少女「!?」
シュッ!ザシュッ!
足柄「ングッ!」
足柄の右ストレートが少女のコメカミをとらえたのと同時に少女の爪が足柄の腹に浅く突き刺さる。
ドシャッ!
両者は離れながらも膝をついて息をきらしていた。
足柄「ハア…ハア…やるじゃない」
少女「ハア…ハア…(ギロッ!)」
ほんの僅かな時間に足柄の『人の技』と少女の『野性』は限界ギリギリのところでぶつかり合い、あっという間に二人の身体はボロボロになっていた。
足柄は正直に言って驚いていた。
相手のスペックが未知数とはいえ、訓練もしていない艦娘(?)に遅れをとることはないにせよここまで食い付かれたのは初めてだった。
それは少女にしても同じだった。
今まで手にかけた獲物は数知れない。猪だろうが熊だろうが鹿だろうが自分の一撃で皆仕留めてきた。なのにコイツは何度攻撃しても倒れない。
そしてその『倒せない』という焦りが、少女のアキレス腱であり、また足柄のチャンスでもある。
足柄(確かにアイツは強い、でもまだまだ『人間』相手の戦いに慣れてない。)
少女「グルルルルルル…」
足柄(後一歩、後一歩何かきっかけさえあれば勝てるのに…!)
タッタッタッ……
足柄「ん?」
羽黒「ね、姉さあああん!!」
足柄「は、羽黒!?」
羽黒「あ、後をお願いしまあああす!」
ダダダダダダダダ………
ガチャッ!バタン!
キュキュキュキュキュキュ!ガオン!
ブゥオゥン!ブゥオゥン!ブゥオーー……
足柄「………置いてかれたーーーーー!(ガビーン!)」
少女「……ハッ!」
ダダダダダダダダ!
足柄「あっ、こら!待ちなさい!」
キキーーーーッ!ドオン!
少女「キャン!」
足柄「あっ!」
ガチャッ!
提督「やべえ!やっちまった!」
叢雲「なにやってんのよ!この馬鹿!」
提督「だ、だってこいつがいきなり車の前に出てくるから……」
叢雲「だってもベアトリーチェもないわよ!大体あんたは……」
ギャーギャー!ワーワー!
足柄「……何このオチ(汗)」
こうして、足柄と少女の戦いは提督による自動車アタックによりあっけない幕引きとなった。
パート2完、パート3に続く!
パート3予告
ついに鎮守府に着いた翔太、しかし翔太を待っていたのはいくつもの問題だった!果たして翔太はそれを乗り越えられるのか?そしてさらに増える(予定の)ショタコン艦娘達の魔の手から無事でいられるのか?次回、「始動!新生妹之浜鎮守府」にご期待下さい!
まずは「整備兵長内翔太と妹鎮守府の日常」をご覧いただき、ありがとうございます。
パート3にてやっと鎮守府生活を書けます。今まで引っ張り過ぎたと反省しきりです。
そして、また例によって書き込みの反応がおかしい為新しく作ります。見ていただいている皆様には誠に申し訳ありませんが、より良い物語にして皆様にお披露目できるよう、頑張ります。
では、パート3でまたお会いしましょう。
姉キラーですねw
1氏、ご覧いただきありがとうございます。
頑張っていきますので、よろしくお願いします!
忠犬や賢い動物は悲しんでる人間の側で
じっとして守るかこの子のように相手の顔を舐めて
励ますんだよね。しかし賢いからこそ邪悪な人間には近づかない。
3氏、ご覧いただきありがとうございます。
これからも頑張っていきますので、よければこれからもご覧いただければ幸いです。
此はもう餓えた狼やw
アカンw
5氏、ご覧いただきありがとうございます。
まだまだ餓えたショタコン達が出てくる予定ですので、是非ともお待ち下さい(笑)
足柄「野犬を引き連れた奴が相手なら、
覇王翔吼拳(20.3連装砲)を使わざるを得ない。」
7氏、ご覧いただきありがとうございます。
そんなもの使ったら跡形もなくなりますよ(笑)
龍虎の拳、懐かしいなあ~
これからもがんばります!
流石お姉ちゃんが病むぐらい愛される整備兵(ショタ)だ。
野生ぽいぽいが来てもなんて事ないぜ!
・・・ムフロン先生、続きが。続きが見たいです…!
9氏、ご覧いただきありがとうございます!
安○先生「諦めたら、そこで試合終了ですよ」
お待たせして申し訳ありません、ある程度までは話は決まっていますが、なにぶん遅筆なもので(汗)
頑張りますので、宜しくお願いします♪