No2 提督 『 急募!求む駆逐艦娘 』
第1艦隊が結成されてから数日が経過。いずれ訪れるであろう資材不足を事前に防ぐため、提督は駆逐艦を導入した
遠征班を結成することを決意する。
御無沙汰しています。ようやく千歳さんが我が艦隊に加わり、歓喜して振り上げようとした手の甲を机の角にぶつけ、1人勝手に小破した柔時雨です。
艦これをプレイしたり、wikiなどで調べているうちに、少し思うことがあったので訂正・再構成させていただきました。
前回読んでくださった方や評価してくださった方、誠勝手ながら申し訳ありませんでした。
本文の最初にも書かせていただきましたが、こちらは 『 提督 『 建造だけで艦隊を揃える 』 』 の続きになります。
前作からの繋がりはキャラクターくらいですが……
今回もクスっと笑っていただけたら幸い程度の作品です。無駄に気負わないで楽しんでください。
無事に第1艦隊を編成してから数日が経過したある日
執務室
那智 「なぁ、司令官。」
提督 「何だ?」
那智 「大したことではないのだが……ウチは駆逐艦を配属させないのか?」
提督 「え?……そういや、まだ居なかったな。前に168を建造したときくらいか、もしかして?と思ったのは。」
那智 「そうだな。まぁ、そう急く問題ではないが、そろそろ第2艦隊……遠征部隊のことも視野に入れておかないと……な。」
提督 「遠征部隊か……ん?今ってそんなに資材状況厳しいのか?第1艦隊6人が揃ってからは建造をしてないぞ?」
那智 「確かに建造はしていなかった……が、私達の補給と入渠による資材・資源消費も重なってきてな……レベルや練度が上がれば猶更だ。」
提督 「なるほど。資材のストックが空になる前に……か。けどなぁ……………」
那智 「何だ?駆逐艦を配属させるのに、何か問題でもあるのか?」
提督 「いやさ……駆逐艦の子達って見た目が幼いって言うだろ?……所持してるだけで憲兵案件なんじゃないのかって……」
那智 「流石にそれは無いだろう。噂では駆逐艦だけでしか突破できない海域というのがあるらしいぞ。」
提督 「………ちなみに……仮にもし、俺が駆逐艦の子達と遊んでいたとしよう。那智、お前が憲兵に通報する範囲ってどれくらい?」
那智 「そうだな………事情を知らずに朝潮型の子達と遊んでいる姿を目撃したら、おそらく迷わず通報していると思う。」
提督 「マジか……朝潮型はガチ……とはよく言ったもんだ。ただな、こうして実際に提督になって、演習で他の駆逐艦の子達を見て個人的に思うようになったんだが……睦月型や第六駆逐艦隊の子達も大概じゃね?」
那智 「いや、まぁ……境界線をどう捉えるかは人それぞれだから、私からは何も言わん。だが……そのように自分で思っているなら、自重 ・ 自覚ある
行動ができるだろ?何にせよ、そろそろ編成してやらないとウチの遠征番長が『 活躍の場がない 』って拗ねるぞ?」
提督 「遠征番長?あれ?園長じゃなかったっけ?」
天龍 「番長でも園長でもねえぇぇぇぇぇ!! 」
まるで今までの会話を聞いていたかのようなナイスなタイミングで、ウチのフフ怖さんこと天龍が執務室に入ってきた。
天龍 「……ったく、出撃の報告書を持って来てみれば、何くだらねえ話してんだよ。」
那智 「いや、そろそろ我が鎮守府も遠征部隊と駆逐艦の配属を検討してみてはという話になってだな……お前はどう思う?」
天龍 「んぁ?そうだな……あんまり仲間を悪く言うつもりはねえんだけど、山城と千歳の補給や入渠分の資源消費も馬鹿にならねえしな……手を打つんだったら、早い方が良いと思うぜ。」
那智 「……という意見が出ているが?司令官。」
提督 「今回は千歳がMVP……ん?あぁ、そっか。園長の意見なら重視しないといけないな。」
天龍 「園長言うな!……まぁ、資材や資源が無くなった俺も困るから、必要な時は遠征に出てやっても構わねえけどよお……」
提督 ・ 那智 「「フフかわ~」」
天龍 「よぉし、わかった……とりあえず、お前等1発ずつ殴らせろ。」
工廠
提督 「……といわけで、久々の建造だ!」
那智 「今回の目的は駆逐艦だ。投入資源も少なく、建造時間も短い……心臓に優しいな。妖精さん、頼む。」
妖精さんA 「あせをかくって、すばらしい~」
建造時間 : 00:22:00
提督 「あれっ!? また22分?」
那智 「また潜水艦が来るのか?まぁ、それならそれで問題は無いが………」
提督 「う~ん……急いで済ませる内容の仕事もなかったはずだし、またちょっと此処で待ってみるか。」
*** 建造終了 ***
那智 「新しい艦が進水したようだ。楽しみだな。」
提督 「さて、どんな子が来るのやら………」
「ちわ!涼風だよ。私が艦隊に加われば百人力さ!」
提督 「こりゃまた、えらく元気な子が来たな……何か良いことでもあったのかい?」
涼風 「元気なのがあたいの取り柄みたいなもんだからねぇ。あんたが提督かい?よろしくな!」
天龍 「何だ?また建造したのか?あんたも懲りねえなぁ。」
提督 「おう、さっきぶりだな……どうした?天龍。出撃の報告者ならさっき預かっただろ?」
涼風 「 !? 」
天龍 「高雄から頼まれごとを任されちまってな。『 明日の演習の部隊編成について相談したいことがあるから、執務室に戻って来てほしい 』んだってさ。」
提督 「わかった。それじゃあ…………」
涼風 「天龍!! 」
俺の横を走り抜けた涼風が、そのままの勢いで天龍に飛びついた。
天龍 「うおっと……こいつか?今の建造で着任したってのは。」
提督 「あぁ。白露型……10番艦!?マジで?白露型ってそんなに居るのか……とにかく、白露型10番艦の涼風だ。」
天龍 「涼風!?そっか……お前が……へへっ、また会えたな。」
涼風 「ごめん……ごめんよう、天龍。あの時、助けてあげられなくって……」
天龍 「何言ってんだよ。お前のおかげで多くの生存者を出せたんじゃねえか。ありがとな、涼風。」
涼風 「天龍ぅぅぅぅぅ~!! 」
那智 「私達がまだ 『 艦 』 だった頃の記憶か……偶然とはいえ、再会できて良かったな。2人共。」
天龍 「おう!それじゃあ、俺は涼風に鎮守府を案内してくるぜ。」
提督 「積もる話もあるだろう。天龍、今日はもう休みで良いから、涼風と一緒に居てやるといい。ほら……間宮券も渡しておこう。」
天龍 「すまねえな、提督。こいつはありがたく受け取っておくぜ。」
天龍はそう言って俺の手から間宮券を2枚受け取ると、涼風を連れて工廠を出て行った。
提督 「あぁいう光景を見ていると、ますます轟沈だけはさせてなるものか!と思えてくるな。」
那智 「殊勝な心掛けだな……頼りにしているぞ、司令官。」
◇◇◇◇◇
翌朝。
演習場
天龍 「なぁ……提督。今日の演習相手って確か、提督と同じ士官学校の同級生……とか言ってたよな?」
提督 「(。・ω・) ん? そうだけど?といっても、あんまり話したことないけどな。」
那智 「いや、今は別に貴様の人間関係はどうでもいいんだ。それよりも…………」
提督 「那智の……いや、皆の言いたいことは解ってる。」
同級生提督第1艦隊
雷 ( 旗艦 ) ・ 睦月 ・ 島風 ・ 雪風 ・ 霰 ・ 長門
提督 「旗艦が雷ってのは事前に知っていたが……何やってんだ?あの世界のビッグ7……」
高雄 「本来でしたら、あそこは漣ちゃんが来るはずだったそうなのですが、お相手さんがこちらに来られる前に急遽入れ替わりがあったとか……」
那智 「むっ……そのビッグ7がこちらを見ているぞ。」
千歳 「すっごく、目をキラキラさせていますね。」
天龍 「あぁ~……こっちにも駆逐艦が1人居るからなぁ……」
涼風 「あたいのことかい⁉ 」
168 「涼風以外に誰が居るのよ?」
那智 ( 旗艦・重巡 ) ・ 天龍 ( 軽巡 ) ・ 高雄 ( 重巡 ) ・ 山城 ( 航空戦艦 ) ・ 千歳 ( 軽空母 ) ・ 伊168 ( 潜水艦 ) ・ 涼風 ( 駆逐艦 )
提督 「……っていうか、うちの涼風に反応を示すって……あっちの鎮守府には涼風居ねえのかな?あれだけ駆逐艦主体の編成できてるくらいだし
居るもんだとばかり思ってたんだが……まぁ、深く追求するつもりはないけど。」
涼風 「むぅぅ~!駆逐艦だって、やるときはやるんだからね!戦艦が何だってんだぃ!今度こそ、天龍を守ってやるんだから!」
山城 「まったく……自分の処の駆逐艦だけで満足できないのかしら?安心して。あの長門の相手は私が引き受ける。涼風も天龍も私が守ってあげるわ。」
天龍 「そいつはありがてえけど……無理すんなよ、山城。」
涼風 「ありがとう!頼りにしてっからな、山城!」ニカッ!
山城 「あぁ……涼風は可愛いわね。」
168 「……うわっ!あの山城さんが、今まで私達に見せたことのないくらい満面の笑みになってる⁉ 明日は嵐かしら?」
千歳 「はぁ。……空はあんなに青いのに。」
山城 「ちょっと誰っ!? 今、扶桑姉さまの台詞を真似したのは!?」フソォォォォォ……!
天龍 「反応早えぇ www!! 」
提督 「とにかく、相手さんが急遽編成を変更してきたってんなら、こちらも変更させてもらおう。駆逐艦だらけの所に168を突入させるわけにはいかないからな……代わりに千歳に入ってもらう。あっちには空母が居ないみたいだから、安全に制空権を取って事を有利に進めよう。」
千歳 「了解しました。お任せください!」
提督 「それにしても……島風か……」
島風 「オゥッ!? 」
那智 「どうした?島風が気になるのか?」
提督 「いや、すごい格好してるな……と思って。」
天龍 「あぁ……あれで大破しちまったら、どうなるんだろうな……?」
山城 「ちゃんと服を着ている私や高雄で 『 あれ 』だったのよ?下手をすれば全裸になるんじゃないかしら?」
高雄 「山城さん!あの時のことはもう言わないでって約束したじゃないですか!」/////
千歳 「提督、私達が着任する以前に何か遭ったんですか?」
提督 「あぁ……うん。いろいろ遭ったんだよ……いろいろと……」
あの時の高雄のビンタはいろんな意味で衝撃的だったからな……吹っ飛んだ後、2回くらい地面の上を跳ねたし。
提督 「とにかく!相手は駆逐艦……例外も居るけど、おそらく練度が高い主力艦隊と思われる!気を引き締めて演習に臨むように!」
出撃艦娘's 「「「「「「 了解! 」」」」」」
提督 「ちなみに、敗北した場合は連帯責任で、次の歓迎会か何かの席で全員島風の衣装を着て何かしら面白いことをしてもらうから、そのつもりで!」
出撃艦娘's 「「「「「「 ⁉ 」」」」」」
168 「司令官……さすがにそれは………涼風ちゃんは今日が初めての演習なんだし……」
提督 「いや……冗談のつもりだったんだけど………」
出撃艦娘's 「「「「「「 ( 絶対に負けられない戦いが今、始まる! ) 」」」」」」
提督 「結果的にモチベーションが上がってるみたいだから、まぁいいか……」
168 ( その後、演習は無事に我が艦隊の勝利に終わり、冗談とはいえあのような発言をした司令官は、那智さんと天龍さんに1発ずつ殴られた後
全員の前で正座させられていました。演習が終わった後に見せた皆の心の底からホッとした表情は絶対に忘れません。 )
*****
執務室
那智 「失礼する。司令官、出撃の報告書を…………何をしている?」
提督 「え?執務だけど……?」
那智 「では、その膝の上のものは何だ?」
提督 「ん?」
涼風 on the 俺の膝
提督 「涼風だな。」
涼風 「おぃっす!なっちー!」
那智 「そんなことは見れば解る!何故、涼風が膝の上に座っているのかを問うているのだ! 後、私のことをなっ……なっちーと呼ぶな!」 /////
提督 「ちゃうねん……頼む!最初から説明させてくれ!」
那智 「聞こう。」
~ 数分前 ~
提督 「ふぅ……キリもいいし、少し休むか……ん?」
コーヒーでも淹れようと立ち上がろうと同時に、執務室の扉が盛大に開かれて涼風が入ってきた。
涼風 「提督ぅ~!」
提督 「バーニング、ラァブ!ってか?どうしたんだ、涼風。そんな不機嫌そうな顔して………?」
涼風 「不機嫌にもなるよ! 天龍達が出撃に行っちまってさぁ……なっちーも忙しそうだし……あたい1人で退屈してるんだよ!」プンスカ!
提督 「なっちーって、那智のことか?そうだな……今日は久しぶりに那智以外の5人で出撃してもらってるからなぁ。」
涼風 「むぅぅ……」
頬をいっぱいに膨らませた涼風がトテトテと俺の傍まで歩いて来たかと思うと、そのまま俺の膝の上に腰を下ろした。
提督 「あの……涼風さん?」
涼風 「提督!あたい、この間の演習頑張ったよな?」
提督 「え?あぁ……そうだな。」
涼風 「頑張った艦娘を労うのは提督の仕事だよな?」
提督 「労う……って……間宮で奢れってことか?」
涼風 「そいつも魅力的な提案だけど、違うよ!この状況でできることが他にもあんだろう?」
提督 「この状況でって…………こうか?」頭ナデナデ
涼風 「えっへへ~!」パァァ……
~ 回想終了 ~
提督 「……というわけで現状に至る。Yes ロリータ No タッチ! OK?」
那智 「日本語で話せ。しかし……まぁ、そういうことなら不問にしておいてやろう。」
涼風 「なぁ、提督。あたい以外の駆逐艦を迎えることも考えとくれよぅ……」
提督 「そうだな……やるか!」
那智 「出撃の際にドロップを狙うという選択肢は……無いよな、貴様には。」
提督 「さすが初期艦だな、よく解ってるじゃないか。それじゃあ……工廠に行くぞ!」
涼風 「がってんだー!」
工廠
妖精さんA 「ていとくさん、いらっしゃ~い!」
提督 「おう。妖精さん、今回も頼むわ。」
妖精さんB 「まかせろですぅ~」
涼風 「何だい、何だい!提督、今のやり取り。此処の常連っぽくって、粋だったんだけど!」
那智 「実際に常連だからな……」
提督 「涼風を初め、第1艦隊のメンバーは皆建造で蘇った子達だからな。」
建造時間 : 01:00:00
提督 「あれ?1時間?これって、確か軽巡の建造時間だったよな?天龍の時がそうだった。」
涼風 「いやいや、提督。もしかしたら1時間必要な駆逐艦が居るかもしんないじゃん。」
提督 「…………それもそうだな。じゃあ、1時間後くらいにまた来るか。」
*** 1時間後 ***
涼風 「おおお~!新顔登場ってか?」
提督 「( 1時間……!1時間費やしたんだ!流石にロリっ子ってことはないだろうが……頼むぞ、妖精さん! )」
「ども、恐縮です、青葉ですぅ! 一言お願いします!」
提督 「……アオバ……?ナチ、アオバ、駆逐艦?」
那智 「いや、彼女は青葉型1番艦……重巡洋艦だ。」
提督 「駆逐艦ですらねぇぇぇぇぇ!」il|li○| ̄|_
妖精さんA 「いつもいつでもうまくいくなんて、ほしょうはどこにもないのです。」
青葉 「ほうほう。今の発言から察するに……司令官は駆逐艦を求めるロリコンっと……」
提督 「あいや待たれよ!すまん、駆逐艦を求めていたのは事実だけど!それは遠征部隊の件と涼風の遊び……話し相手に建造しようとしていただけで、他意は無いんだ!青葉の着任に不平不満があるわけじゃない。むしろ歓迎するぞ。」
青葉 「いやぁ、面と向かって言われると……何かこう、くるものがありますね。とにかく……ありがとうございます。」
提督 「それじゃあ、涼風。青葉に鎮守府を案内してやってくれ。」
涼風 「がってんだー!先輩のあたいが、ばっちり案内してやるよ!」
青葉 「これはこれは、ずいぶん可愛い先輩ですね。よろしくお願いします!」
◇◇◇◇◇
鎮守府執務室
那智 「司令官。出撃中の高雄から入電だ。」
提督 「わかった、繋いでくれ。山城あたりがまた大破したのかな?……もしもし、こちら指令室。」
山城 『提督、聞こえてたわよ。戻ったら少し、お話がありますので……』フコォォォォォ……
提督 「oh……まぁ、それはそれとして、真面目な話……何が遭ったんだ?冗談抜きで誰かが中破か大破したのか?」
高雄 『 いえ、出撃中の私達は無傷です。深海棲艦も殲滅し、次の目的地へ向かう途中だったのですが……』
山城 『進路上で、轟沈寸前の艦娘を発見、接触しました。周囲に敵影は無いけれど、念のため……天龍、168、千歳に警戒をしてもらっているわ。』
提督 「なっ!? ……轟沈寸前ということは、まだ沈んでないんだな?」
高雄 『はい。あくまで現状は大破状態……ですが、弾薬も燃料も空になる寸前です。私達の燃料を少しずつですが分けてあげれば、我々の鎮守府までは航行可能ですが……』
山城 『その代わり、私達も資材不足で撤退することになるわ。提督の決断は解っているけれど、一応報告は義務だから……』
提督 「わかった。海域開放は日を改めよう。皆の資材を少しずつ分けてやって、できる限り速やかにその海域から撤退!全員、無事に戻って来るように。』
高雄 ・ 山城 『『 了解! 』』
提督 「…………那智。話、聞いていたな?」
那智 「あぁ。すぐに入渠ドック……いや、医務室に運ぶ準備の方が良いか?」
提督 「できれば両方頼む。無理言って、すまんな。」
那智 「構わんさ。承知した、すぐに準備に取り掛かろう!」
高雄達との通話を終え、那智に手配を頼んだ後、俺はこれまで使用したことのない執務室内にあったマイクを手に取った。
提督 「涼風、青葉。話がある、至急執務室まで来てくれ。」
†††††
鎮守府・港
涼風 「提督、見えたよ!」
涼風が指差した水平線からこちらに向かって、見慣れた5人+1人の姿が徐々に大きくなってくる。
提督 「皆、ご苦労様!ちょっと優先順位が解らなかったから、医務室と入渠ドックの両方を那智に手配してもらった。必要な方へその子を連れて行ってあげるんだ!」
高雄 「解りました!那智さんには後程改めてお礼を言わせていただきます。」
そう言って高雄は負傷した女の子を連れて入渠ドックの方へ駆け足で向かって行った。
提督 「皆もご苦労様。各自補給を済ませたら、ゆっくり休んでくれ。そうだ……天龍。」
天龍 「ん?何だ。」
提督 「補給が終わった後、念のため……また出撃できるよう、待機していてくれるか?もしかしたら、お前にも動いてもらうことになるかもしれない。」
天龍 「……了解。」
*****
執務室
提督 「………」
那智 「心配か?あの艦娘が。」
提督 「そりゃ……な。ウチも出撃の際、大破して戻って来る子は居るけどさ……それでも、あそこまで酷い状況に皆を追い込んだことは無いと思っている。それだけ……医療経験皆無の俺の目から見ても、あの子の状態は異常としか思えねえよ。」
那智 「そうか……愚問だったな、忘れてくれ……」
高雄 「提督。あの子の入渠が終了したので、お連れしました。」
提督 「ありがとう。それじゃあ、とりあえず自己紹介してもらおうか?」
「特型駆逐艦「曙」よ。って、こっち見んな!この糞提督!」
提督 「ごふっ!」
提督は 心に 50 のダメージを 受けた ▼
提督の MP が 300 減少した ▼
提督は 今までに 味わったことのないダメージに 戸惑っている ▼
高雄 「提督、大丈夫ですか⁉ 」
提督 「あぁ……今までウチに居ないタイプの子だったんで、ちょっとな……」
那智 「確かに……此処に居る艦娘の殆どが司令官に従順だからな。」
提督 「まぁいいや……とにかく、曙……さん。俺達は君の口から君を助けたことに対する感謝の言葉を聞きたいわけじゃない。ただ、何で1人で……しかも大破状態で居たのか、その理由を聞きたいんだ。」
那智 「高雄達から聞いた話だと、発見した時には燃料 ・ 弾薬共に底をつきかけていて、赤疲労状態だったそうではないか。そのような事態……余程のことがなければ、ありえないぞ?」
曙 「別に………あんた達には関係ないでしょ?」
提督 「確かに関係ない!俺と曙さんは今日が初対面だ!………けど、もしかしたら、君を助けてやれるかもしれない。」
曙 「え……?それって、どういう……」
提督 「青葉!」
青葉 「どもども!バッチリ調べてきましたよ。いやぁ、既にパソコンが使用できる環境で助かりました。」
既にスタンバイしていたのであろう。俺が呼んだ直後に執務室の扉が盛大に開き、青葉が紙の束を持って入ってきた。
高雄 「あの……提督、そちらの方は?」
提督 「ん?あぁ……涼風の遊び……話し相手の駆逐艦の子を建造しようとしたら、偶然蘇ってウチに来てくれた重巡の青葉だ。」
青葉 「ども!青葉型1番艦、青葉です!よろしくお願いします。」
高雄 「そうでしたか。私は高雄型1番艦の高雄です。こちらこそ、よろしくお願いしますね。」
提督 「……で、だ。青葉に何やかんやして集めてもらったこの情報資料によると、曙さん……君が元々居た場所は、ブラック鎮守府と呼ばれている場所のようだな。」
那智 「むっ……!噂では聞いたことはあったが……そうか、実在していたのか。架空の存在ではなかったのだな……」
青葉 「おそらくですが、曙さんは 『 旗艦は大破しても轟沈しない 』 という前提条件を利用され、長時間の遠征を強要されていたのではないかと……現在は旗艦が大破したら強制的でも撤退が義務付けられていますが、以前は……それはもう酷かったそうですよ。」
提督 「なるほど……そしてその遠征の道中、不運にも深海棲艦と遭遇して襲われ……何とか戦線から離脱したものの、燃料が切れて立ち往生状態になった……か。」
曙 「………えぇ。そうよ……あなた達の言う通りよ。あのクソ提督、『 勝つためには手段を択ばない! 』 とか何とか言っちゃって……!でもね、私達遠征組はまだマシよ。主力艦隊のメンバーなんて、補給無しで出撃、大破状態で放置なんて当たり前……作戦が失敗なんてしたら……言わなくても理解してもらえるかしら?そのせいで多くの仲間が海に沈んだわ。幸い……と言っては怒られそうだけど、他に綾波型の子が居なかったから、私はそういう場面を見ずに済んだ。けど……他の子達は戦場で、自分の目の前で、運悪く姉妹を失って……」
提督 「…………」
スカートの裾をキュッと掴み、俯きながら肩をプルプル震わせている曙を前に、俺は電話の受話器を手に取った。
元帥 『 はい。 こちら海軍本部……』
提督 「どうも、御無沙汰しています。パラオ泊地の提督です。」
元帥 『おぉ!君か。いや、先日は悪いことをしてしまったな。』
提督 「いえ、もう気にしていませんよ。それより……ちょいと真面目な話がありまして。」
元帥 『ふむ……聞こうか。』
~ 提督 事情説明中 ~
提督 「————というわけで、件の鎮守府に捜査班と憲兵を派遣していただけませんか?必要であれば、ウチの青葉が集めた資料を持っていきますし、今、こちらで保護している曙さんと本部まで伺い、直接話してもらうことも可能です。」
元帥 『わかった。では、明日にでもその資料を本部まで持って来てくれるかね?それを見たうえで待機させている捜査班を現地に向かわせるか判断しよう。すまんな……君は被害者である曙から事実を聞いた上でこうして報告してくれたのに、すぐに動けんで……』
提督 「いえ、元帥が謝ることでは……わかりました。明日、資料を持って本部を伺います。それと……天龍も同伴させて宜しいでしょうか?あいつ、クズを締め上げるのが得意だと思うので。捜査班が動くことになった時、一緒に連れて行ってやってほしいんです。」
元帥 『構わんよ。では、明日……本部で会おう。』
提督 「ありがとうございます。それでは、失礼いたします。」
厳しくも好々爺である元教官だった元帥との通話を終え、小さく溜め息を吐く。
提督 「聞いての通りだ。明日、天龍と本部に行ってくる。那智、高雄、俺の留守中のことは任せたぞ。」
高雄 「はい、承知いたしました……あら?青葉さんは?」
那智 「皆への報告のため、先程出て行ったぞ。こういう行動は早いのだな……今回は助かるが。」
提督 「さてと………曙さん。もしかしたら君が所属していた鎮守府は無くなり、艦隊も解散されて皆別々の鎮守府に異動になるかもしれないが……構わないか?」
曙 「えぇ、構わないわ。さっきも言ったけど、あの鎮守府には私の姉妹も居ないし、環境が環境なだけに特別仲の良い子なんて、もう……居ないから……」
『 もう 』居ない……か。以前は居たのだろうか?いや、それを訊いて曙の古傷を抉るような真似はしないでおこう。
提督 「そっか……とりあえず、この件が終わるまで君は我が鎮守府の大切な客人だ。ゆっくりしていてくれ。」
曙 「あり………一応、礼は言っておくわ。このクソ提督。」
提督は 心に 20 のダメージを 受けた ▼
那智 「まだ耐性がついていなかったか……無言のまま心に傷を負うな、司令官。」
それからの行動は早かった。
日が昇ると同時に天龍と本部へ赴き、元帥に青葉作の資料を見せ、それを読み終えた元帥が 『 すぐに捜査班と憲兵を動かそう 』と即決。
俺のお願いも聞き届けられ、天龍も憲兵部隊の一員として件の鎮守府へ進軍。悪あがきに等しい低レベルな抵抗を見せたブラック提督を締め上げ、そこの艦娘達は無事に解放された。
その後、海軍本部から派遣された軍人 ・ 役員達の働きによるメンタルケアや、ブラック鎮守府に所属していた艦娘達の異動手続きが滞りなく進められたという。
◇◇◇◇◇
鎮守府執務室
提督 「………で、曙さんの異動先がウチになったと。」
曙 「何?何か文句でもあるの?」
提督 「いや、全然!歓迎するよ。ようこそ、パラオ泊地鎮守府へ。」
曙 「そう……なら、その……さん付けはやめてよね。私のことは呼び捨てで構わないわよ、クソ提督。」/////
提督 「そっか?じゃあ、改めて……これからよろしくな、曙。」
曙 「……よっ……よろ……」/////
青葉 「」パシャ!
提督 ・ 曙 「…………」
青葉 「青葉、見ちゃいました!いやぁ、良い写真が撮れました。それでは!新聞の制作に取り掛かりますので————」
曙 「青葉ぁぁぁぁぁぁぁ!! 今すぐ、その写真のデータを消しなさい!! 」/////
満面の笑みで走る青葉と、顔を熟した林檎のように真っ赤にさせて追いかける曙が執務室から出て行こうとしたとき、執務室に入ってきた那智と曙がぶつかった。
那智 「おっと……」
曙 「きゃっ……あっ……那智……さん。ごめんなさい……」
那智 「なに、構わんさ。次からは気を付けるんだぞ。そうだ……そういえば状況が状況だったから、まだ礼も言えてなかったな。あの時は世話になったな、曙。」
曙 「なっ……!?別に、そんな……私の方こそ、那智さんを助けるどころか被弾して炎上して……あなたを助けられなくって……」
青葉 「」パシャ!
那智 「ん?何だ?今の音は………」
曙 「~~~~~っ‼ 青葉ぁぁぁぁぁ‼ 」/////
しんみりしたムードが一瞬で終わり、曙は青葉を追いかけて執務室から出て行った。
提督 「お前達も知り合いだったのか。」
那智 「あぁ。『 艦 』だった頃、私を救援しようとしてくれた子だ。尤も、先程曙が言った通り、救出してもらっている際に迷惑をかけてしまってな……
ちなみに、青葉とも少しだけだが面識はあるぞ。」
提督 「そうだったのか……偶然か、運命か……何にせよ、また会えて良かったな。」
那智 「あぁ。昔のように曙に心配をかけさせないようにせねばな………だが!それはそれとして、今夜の歓迎会では飲ませてもらうぞ!」
提督 「お前……良い感じで話を〆ようと思ってたのに……また飲むのか?」
那智 「うむ。千歳が良い酒を入手したそうなのでな!」
提督 「あんまりハメ外しすぎるなよ。曙の中のお前のイメージを壊したくないならな。」
那智 「善処する!」
提督 「それは善処しねえ奴の台詞だ。」
結果……この日の夜に行われた涼風、青葉、曙の歓迎会が無事に終了した時、案の定とでもいうか……那智と千歳は完全に酔いつぶれていた。
どこかの航空戦艦さんの言葉を借りて 『 …まあ、そうなるな。 』 と、言ってやりたい。
まぁ、馴染みのある子が来て嬉しかったんだろう。全員の……特に曙の前でリバースしなかっただけ褒めてやることにしよう。
2作目にして、順調に艦娘が揃ってきたのではないかと思ってます。あと3隻……?重巡が着任してる……?
ごめんなさい、タイトル詐欺とか言わないで!
艦娘を登場させるにあたり、割と史実に忠実にしたいとは、思ってるんですけどねぇ……学生時代の歴史の成績は壊滅的だったなぁ……
もしかしたら、第1艦隊の方でも何か見落としがあったりするかもです。
とりあえず、しばらくは……ネタが思い浮かび次第、このメンバーで日常のお話みたいなのを書ければ良いなぁと思ってます。
天津風からぼのたんに変更したんだね。
つまりツンデレが味わえるわけですなw
コメントありがとうございます!
ですです。ついでに重巡ではありますが、青葉にも来ていただきました。
( ごめん、皐月! )
これで色々と……二番煎じになるかもですが、今後の話の展開が楽になる……気がしてます。