2017-06-22 11:42:50 更新

概要

何故か“一番艦”がいない鎮守府、妹之浜(いものはま)。その妹之浜鎮守府に提督以外で初の男性が整備兵として着任する事に…


前書き

唐突に“艦これおねショタもの”を書いてみようと思い立ちました。おねショタの先人の皆様の域に到達できるとは考えてはいませんが、よろしければお付き合い願います。


プロローグ 静かなる?旅立ち




ーーー日本領、姉護島(あねごじま)



??「はあ…はあ…」


朝、まだ太陽が登る前の明るくなりかけた登り坂の道を一人、作業用の灰色のツナギにドカジャン、エンジニアブーツといったワークマンにいそうな姿をした小柄な人影とその肩で動くさらに小さな影が、前と後ろに荷物をくくりつけた自転車を息を切らしながら押し歩いていた。


????「おい、チンチラしてんな、早くしないと“あいつら”が…」


??「わかってるよ、オヤカタ!」


オヤカタ「解ってんなら急げ!モタモタしてる時間はねーゾ翔太!」


翔太「そんな事言ったって『妖精』のオヤカタは僕の肩に乗ってハッパかけてるだけじゃん。それに…いよいしょーっと(ハアハア)荷物が多くて自転車が重いんだよ!」


オヤカタ「あんまりデカイ声出すな!気づかれたら…」



ブウウウウーーーーーーーン!!!


オヤカタ「マズイ!そこの車の後ろに隠れろ!」


翔太「う、うん!」


急いで近くの車の影に隠れると、先程まで翔太がいた“姉護島鎮守府”からプロペラ音を静かな道に響かせて、何機もの偵察機が通りすぎていった。


オヤカタ「こりゃあまた過剰サービスな探し方だこって…」


翔太「偵察機の数からみて、少なくとも空母のみんなにはバレたと考えて間違いないね、オヤカタ!」


オヤカタ「だな。よし、まだ港にゃあ誰もいねえ筈だ、翔太!」


翔太「うん!!」



翔太は自転車に跨がり、ペダルを漕ぎだした。


最初はフラフラしたものの、スピードがのるにつれてまっすぐ走り出した。



オヤカタ「翔太!上だ!」



ブウウウウーーーーーーーン!!!



翔太「くそっ!」


翔太はさらに力を込めてペダルを漕ぐ。プロペラ音は翔太の後ろから迫ってきた。


翔太「オヤカタ!後ろから来てるのは?」


オヤカタ「ゲッ!あの馬鹿空母ども!天山の妖精に縄持たせてカウボーイみたいにお前を捕まえる気だ!」


翔太「それって僕死んじゃわない!?」


天山妖精「マテー!」


翔太「妖精さん、マジやめて!僕死んじゃうよ!」


オヤカタ「死にたくなきゃ急げ!こっから先は下り坂だ!カーブをリアブレーキ使ってスライドで曲がるんだ!」


翔太「無茶ゆーなー!!」



ーーー何故彼は追われているのか?



オヤカタ「だったら死ぬ気で曲がれ!できなきゃこっから先はねえぞ!」



ーーー別に罪に問われるような事はしていない。



翔太「解ってるよ!こおんのおーーー!!曲あがあれえーーーー!!!」




ーーー誰かの怨みを買った訳でもない。




オヤカタ「馬鹿!傾けすぎだ!!転倒するぞ!」


翔太「くッ!」





ーーただ彼は…長内翔太(おさないしょうた)は



翔太「うおりゃあーーーーーーーーーー!!!」


















翔太「なあんで転属するから出発するだけなのに追われなくちゃならないのーーーー!?」







ーーー本当に何故だろう?








何とかカーブを抜けて下り坂の勢いを活かして港までの道のりを一気に走り抜ける。


そしてそんな自転車の後ろからは先程の天山を始め、いつのまにか合流した艦載機達が編隊を組んで迫っていた。





オヤカタ「くそっ!団体さんでお出ましか」




ブーーーーッ!ブーーーーッ!



翔太が胸ポケットに入れたスマホがバイブする。

翔太は耳につけたフリーハンドの通話用イヤホンに「今取り込み中なんで後にして!」と叫んだ。



??「取り込み中?奇遇ね、私もその件で話があるわ」


翔太「どうせ“行くな!”って話でしょ!何回その話したっけ!?雲龍姉ちゃん!!」


雲龍「2~3回ほどだったかしら?」


翔太「昨日も含めて40回だよ!?なにサバ読んでるのさ!?」


雲龍「女性にサバ読みなんて言うなんて傷つきました。罰として今夜私の抱き枕になりなさい」


翔太「嫌だよ!雲龍姉ちゃんと寝ると姉ちゃんの胸に顔が挟まって息苦しい…じゃなくて!僕はもう行かなきゃだから無理だよ!」


雲龍「貴方はここにずっと居ればいい、そうすべきなの、わかる?」


翔太「そんな事言ったってもう決まった事なんだから変更なんかできるわけないでしょ!!」


雲龍「心配ないわ、相手が誰だろうと貴方は私達が守るから」


翔太「何さらっと大本営に喧嘩売る発言してんのさ!?」


雲龍「私達に…私にとって翔太の保護は最優先事項なの。わかるでしょ?」


翔太「…今まで…今まで育ててくれて、守ってくれた。それは感謝してる。産まれてすぐに捨てられて、みなしごだった僕を、孤児院に入れずに鎮守府で育ててくれたみんなに…」


オヤカタ「おい!お喋りは後にしろ!もうすぐ港だ!」


翔太「でも…でも!もう決めたんだ!みんなに胸を張れる“強い男”になる為に外に行くんだ!」


雲龍「翔太…」


オヤカタ「雲龍、あんたの気持ちも解る。我が子のように育てて、離したくないって気持ちも。だがな、誰でもいつかは別れが来る、そいつが遅いか早いかの違いはあるがな」











雲龍「わかったわ」


翔太「やっとわかってくれた?」


雲龍「ええ」
































雲龍「私の翔太がそんな事をいうはずがない、

きっとそこのク○ビ○チ妖精がたぶらかしたに決まっている、そう、それで決まり、証明終了(ハイライトOFF)」













翔太&オヤカタ((まるでわかってなーーーーーい!!!))


雲龍「こうしてはいられないわ、すぐに行くから待ってなさい、必ず貴方を助けてあげる。そしてそこの翔太をたぶらかした○ソ○ッチは体の関節が360度可動するようにしてあげるから。じゃ、後でね。愛してるわ(ブツッ!プーッ!プーッ!)」











オヤカタ「…なあ、翔太」


翔太「な…何?オヤカタ?」


オヤカタ「俺達、心の友と書いて心友(しんゆう)だよな?」


翔太「も、もちろんだよ!オヤカタがいなきゃこうやって鎮守府の外に出られなかったし」


オヤカタ「………………いざって時は、頼む」


翔太「………………介錯を?」


オヤカタ「ちげーよ馬鹿!!逃がしてくれっつ

ってんの!何で俺が死ぬ前提なんだよ!?」


翔太「じょ、冗談だよ!あは、アハハハハ…」


翔太「まぁ、僕も捕まったら2度とお日さまを拝めなくなりそうだし(白目)、ここは二人で必ず脱出しよう!オヤカタ!」


オヤカタ「翔太……あったりめーよ!(ニコッ!)」











ーーーこの少年、長内翔太が鎮守府の前にいくばくかの持ち物と首に巻かれたマフラー、そして『名前は翔太です』と書かれた置き手紙と共に置き去りにされていたのはもう10年も前の、その島には珍しい雪がちらついていた頃だった。


その時分の鎮守府、もとい姉護島は大部分の住民が避難した後で他に人がおらず、その他は女性提督とその部下の艦娘達しかいなかった。そこで皆で話し合って、女性提督の名字である「長内」を付けて「長内翔太」とし、『全員の子』として育てていく事になり、やった事のない育児と任務に板挟みになりつつも、皆で力を合わせて翔太を育てあげた。



しかし、そこは提督も含めて未婚者ばかりだった為、どちらかと言えば姉と弟といった関係に近いもので、さらには何故か一番艦が多く在籍していた為優しくも厳しく、時にお茶目な姉達に囲まれ、翔太はすくすくと成長し、妖精達も遊び相手として、時に悪さをする翔太の戒め役として育児に参加するようななった。



転機が訪れたのは5歳の頃、工厰にいた翔太が、当時中堅どころだったオヤカタが特Ⅰ型の艤装をいじっている時に整備の手伝いを始め、そのうち他の妖精達も面白がって駆逐艦の予備パーツ一式を与えて翔太に整備を教えたら、瞬く間に覚え、「ただ事ではない」と感じた妖精達は駆逐・軽巡・重巡・潜水・軽空・正規空・戦艦と段階を踏まえて翔太に教え、翔太もまた、期待に応えるようにすぐに覚え、今や人間としてただ一人の『艤装整備兵』として艦娘達に認知されるようになっていた。


だがその状況に女性提督は危惧を感じていた。

『今のまま翔太が成長したら鎮守府しか知らない大人になる。鎮守府でしか生きられない大人になる、それは駄目だ!』女性提督は焦った。


そんな時、内地の新興鎮守府が妖精の不足、正確には指導的立場にたてる妖精がいないという話を聞き、女性提督はそこの提督に『貴殿の要求を充たす妖精を着任させるかわりに、ウチの子を鎮守府から離れても生きていけるように外の世界で鍛えて欲しい!』と打診し、提督はそれを受け入れた。



問題は翔太自身に外に行く気持ちがあるか?もしなければどう説得するか?これは翔太自身に「島の外に出てみたい!」という気持ちがあった為すんなりいった。



それより問題だったのが翔太を弟としてより恋愛対象として好きな一部の(ヤバい)艦娘達の説得だった。


特にその傾向の強い空母勢、中でも雲龍型一番艦、雲龍の翔太への愛情は歪ともいえる程で、当然のごとく反対し、翔太を行かせないように監禁しかけた事もあった。しかもそれは昨日の晩だった。



そしてオヤカタ達と女性提督、その他の艦娘達の協力により密かに救いだされた翔太は、そのまま朝一番に船で島を出ることになり、翔太ラブ勢に気づかれないように、見送りは無し。ひっそりと鎮守府を後にして、それに気づいたラブ勢との追いかけっこを経て今に至る。


流石にラブ勢も無許可で島を出られないので、勝負は朝一番の船に翔太が乗るまでしかない。





ーーー姉護島港



翔太「や、やっと着いた…(ハア、ハア)」


オヤカタ「2~3回死んだかと思ったわ。あいつら演習弾とはいえバカスカ撃ちまくりやがって…(フゥ)」


翔太「あちこち隠れてまいたから、も、もう追って来ないよね…?」


オヤカタ「そうだと願いたいぜ。提督や他の奴等が足止めしてくれてるだろうからそう易々とは来れないだろう」


翔太「だ、だよね。やっと一息…」


五十○「そんな暇はないわよ!翔太!!」


翔太「ぴゃあっ!!」


オヤカタ「うおっ!て…なんだ五十鈴か、脅かすなよ!」



五十鈴「そんな事はどうでもいいの!こっちに来て!」


翔太「ちょ、待って…休ませて(ハアハア)」















ーーーーー


翔太「これって…」


オヤカタ「漁船…だな」


翔太とオヤカタを伴って五十鈴がつれてきたのは漁船の前、五十鈴は漁師の人と話していた。



五十鈴「……という訳なの、頼めるかしら?」


漁師「おぅ!翔太を内地の港に降ろしてやりゃあいいんだな!」


五十鈴「ええ、時間がないからすぐにでも出て欲しいの、お願い!」


漁師「任しときな!きっちり送ってやるよ!あんたらにはいつも助けてもらってんだ、このくらいお安いご用さ!なあみんな!!」


漁師達「「「おおっ!」」」


五十鈴「ありがとうございます!皆!!」




ーー積み込み作業中


五十鈴「いい?こっちは心配しなくていいから、必ず自分で立てた誓いを果たしなさい!頑張ってね」


翔太「うん!ありがとう…ありがとう、五十鈴お姉ちゃん!行ってきます(敬礼!)」


五十鈴「ウフフフ、よろしい!(敬礼!)」



漁師「おぅ翔太!!行くぞ!」


翔太「はい!」







船は翔太と自転車を積み込むとエンジンがまるで新たな若者の旅立ちを祝うかのように唸りをあげて港をはなれていく。


少しづつ離れていく景色と自分を厳しくも優しく育ててくれた皆との思い出に胸にこみ上げるものを必死に抑えつつ、翔太は五十鈴に向かって見えなくなるまで手を振り続けた。















五十鈴「行っちゃった…」


ブーーッ!ブーーッ!


五十鈴「もしもし?」


女性提督「もしもし?五十鈴?翔太は?」


五十鈴「もう行っちゃったわ。もうあの人達を離しても大丈夫よ」


女性提督「そう…良かったわ。さっきあの娘達に突破されたけど、今からじゃもう追いつけないわね(フゥ)」


五十鈴「やっと一息つけるわね。全く、慌ただしい一日の始まりだわ」


女性提督「そうしたいのは山々だけどねー」


五十鈴「何かあったの?」


女性提督「あの娘達が馬鹿やったせいで鎮守府の中、滅茶苦茶になってるわよ(白目)」


五十鈴「嘘でしょ…(白目)」


女性提督「とにかく戻りなさい、くれぐれもあの娘達に見つからないようにね。かなり焦って向かったからすぐ着いちゃうわよ?」


五十鈴「それってかなりヤバくない!?」


女性提督「見つかったら半殺しじゃすまないでしょうから、時間かけてもいいから見つからないように戻りなさい、いいわね?」


五十鈴「わかったわ、これから戻るから無事に戻れるように祈ってて!じゃ!」




五十鈴は通話を終了させると、鎮守府に向かって駆け出した。その胸に、一抹の寂しさと、弟の無事と成長への祈りを秘めながら。









五十鈴(ーーーしっかりやるのよ、私たちの…大切な、可愛い弟、翔太!)










ーーーちなみに五十鈴はその後ラブ勢に気づかれないように帰るため、某蛇さんのように隠れながら何とか見つからずに戻れたそうな








鎮守府着任!



ーーー本土、妹之浜鎮守府



カリカリカリカリ……


提督「………」


○雲「………」


カリカリカリカリ……



叢雲「アンタ…」


提督「何かね?叢雲君?書類ならもうすぐ終わるが」


叢雲「……何か悪いものでも食べた?それともまた何か悪さでもしたの?(今だけ)怒らないから正直に言いなさいな(ニッコリ)」


提督「ハハハハ、それでは私が普段からダメ提督のようではないかね?」


叢雲「その腹立つ話し方やめなさい!実際その通りじゃない!アタシが言わなきゃ仕事しないわセクハラ発言は連発するわ髪は薄いわ…」


提督「カカかカカか髪は関係ないだろう!?それにまだフサフサだ!(涙目)」


叢雲「いい加減その似合わない長髪は辞めたら?中途半端にあるからみっともなく見えんのよ。短髪にすれば少しはマシになるわよ」


提督「まだ…まだイケるもん。髪ないとモテないもん…(グスン)」


叢雲「アタシなら髪くらいでアンタの事評価しないわよ(ボソボソ…)」


提督「ン?何か言った?」


叢雲「な、何でもないわよ!(アセアセ)」




ガチャ!



那珂「たっだいまーー!那珂ちゃん、地方巡業(遠征)から只今戻りましたーー!」


提督「お、御苦労様!どうだった?」


那珂「ばーっちり成功だよ!ブイ!」


提督「さっすがーー!那珂ちゃんサイコー!!」


那珂「ありがとーーー!」


叢雲(イライラ…)



ジリリリリリリン!ジリリリリリリン!




提督「おっ、電話だ!」


ガチャ


提督「はい、餃子の○将、アルバイトの提督です!」


潮「ふえっ?!あの!その!すみません!間違えました!」


ブツッ!プーッ!プーッ!


提督「アハハハハハハハハ!ひっかかった!ひっかかった!」




叢雲(プッツーーーーン!!)




ガシッ!


提督「ん?叢雲?何でオイラの胸ぐら」



ゴチン!バキッ!ドカッ!


アンタッテヤツハー!


チョ!ヤメ!ムラ…シヌ…


コノバデインドウヲワタシテヤルーー!




ーーー只今叢雲さんによるGE†N☆KO◇TU♪タイムの為暫くお待ち下さい




提督「ま、前が見えねえ(顔面陥没中)」


叢雲「もしもし潮!アンタ何回ひっかかってんのよ!?」


潮「ご、ごめんなさい…」


叢雲「はあ…それで?何か用?」


潮「あ、あの、姉護島鎮守府という所から緊急連絡が来てて」


叢雲「姉護島!?。戦功ランキングトップ10の常連じゃない!緊急って事は深海の攻撃にでも…ってウチとは距離があるはずだし、まだ人手も何も足りないウチに助けなんか求めるはずないし…」



潮「そ、それが…(はい、はい、申し訳ありません!只今お繋ぎ致します!)とにかくかなり焦っていらっしゃるので」


叢雲「わかったわ、後は任せなさい」


潮「お、お願いします!」



叢雲「全く…」


ポチッ


叢雲「もしもし、お電話代わりました、秘書艦の叢雲です」



女性提督「もしもし?西条君はいる!?」


叢雲「西条はおりますが」


女性提督「すぐに呼んで!そっちに送ったウチの翔太が…翔太が…」


叢雲「翔太?こちらに?どういう事でしょうか?」


提督「叢雲、貸してくれ。すみません先輩、どうかしたんですか?」


女性提督「実は翔太がウチから出発した時に知り合いの船に乗った時に財布とケータイを忘れてたらしくて…」


提督「何ですって!それじゃあ…」


女性提督「知り合いもこっちに着いてから気づいたらしくて、慌てて降ろした港に戻ったんだけど、もうどこにもいなくて。」


提督「それで、何処の港に降ろしたんですか?」


女性提督「そちらの鎮守府の近くにある『御渡港(おとこう)』よ」


提督「御渡港ってここから80㎞はありますよ!?」


女性提督「どうしよう。きっと気づかないままそっちに向かってるんだ。自転車にかなりの荷物乗せてたから、もし途中で何かあったら…私…」


提督「落ち着いて下さい、先輩。今からこちらで捜索隊を編成して探しにいきますから、見つかったらまた連絡します」


女性提督「ごめんなさいね、宜しく頼むわ!」


提督「任して下さい!では、自分も捜索に加わりますので、これで」



ガチャ



提督「叢雲、訓練中の奴等を至急集めろ。人探しに行くぞ」


叢雲「ちょっとアンタ…」


提督「説明している暇はない、急げ!」


叢雲「りょ、了解!(ふ、普段からこうキリッとしてれば素敵なのに…)」









ーーーその頃翔太は



翔太「ハア…ハア…」


オヤカタ「大丈夫か?翔太」


翔太「…………」


オヤカタ(こりゃあかなりヤバイかな)


翔太が船にスマホと財布を忘れたのに気づいたのは、本土について、自販機でジュースを買おうとした時だった。


気づいたその時にはかなり距離を走っており、引き返す事もできず、さらに走っている道には家もコンビニも見当たらず、仕方なくそのまま鎮守府を目指す事になったのだ。


オヤカタ「少し休むか?」


翔太「……(フルフル)」


翔太は同じ年齢の子どもより肉体・精神共に我慢強い傾向がある。


昔からあまり弱音を吐く事をせず、さらに女だらけとはいえ集団行動を旨とする軍隊にいる為『周りに迷惑をかけてはならない』という意識がかなり強く意識に刷り込まれており、付け加えて(程度は抑えてはあるものの)姉達の訓練に自主的に参加していた為、肉体的にも鍛えこまれていた。





だが、今現在の翔太の場合にはそれがことごとく裏目に出てしてまっており、本来なら『連絡ができる場所まで引き返して迎えを待つ』のが正解なのだが、『迷惑をかけてはならない』という意識がその選択を拒否し、逆に自分に『訓練だ!』と言い聞かせてしまった結果、日差しの強い中をかなりの重量になった自転車を黙々とペダルをこぐ羽目になったのだ。



良く言えばまっすぐな気質、悪く言えば融通が聞かない、そんな不器用な少年が翔太である。




海岸ぞいの道は舗装こそされているが、深海勢力の攻撃にさらされた建物は破壊された当時のままに置き去られ、人の姿はおろか、動物すらいないゴーストタウンの中を進んでいるような錯覚すら感じさせる。




オヤカタ「ン?ありゃあ…」


ふと目の前に白い建物が見えた。三階建ての建物の正面には大きな時計があり、建物の周りを囲む壁には翔太と同年代の子どもが書いたと思われる絵が書かれていた。



オヤカタ「あれは学校か?学校ならいざという時の為の連絡設備があるかもしれないな。ちょうどいい、休憩がてら寄っていこうぜ!翔太!」


翔太「……(コクリ)」




パート1完・パート2に続く



後書き

本来もっと書きたいのですが、入力の反応がおかしい為、新しくパート2を作り、そちらに移行いたします。遅い筆の何番煎じかわからない作品ですが、お付き合い願えれば幸いです。ではまた、パート2にてお待ちしております。


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このSSへのコメント

2件コメントされています

1: T蔵 2017-05-07 20:49:41 ID: 1RJ566r6

電話って叢雲の耳ノアーレなんだろかと思ってしまいました

新作期待です、妖精の親分か、髭達磨なんだろうなぁ

2: ムフロン 2017-05-09 01:34:59 ID: c4XpFMH9

T蔵様、毎度ご覧いただきありがとうございます!がんばります!


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