時雨の涙
時雨の小噺
少し寒くなり始めたある日、扶桑達は提督に呼ばれて執務室へ来た。主に西村艦隊の面々だ。
「一体何の呼び出しでしょうね、姉様…」
「何かの作戦でしょうけれど…」
最近は資源を貯めるために戦艦や空母を擁した艦隊が出撃することが少ない。よって扶桑たちも暇を持て余していた。だから久しぶりの出撃なのかと期待半分不安半分で執務室に入った。
執務室の中に入ると既に提督が座っていた。なんだかいつもより雰囲気がピリピリしている。
「突然集まってもらってすまない。今日はとある作戦するにあたって極秘に伝えておきたいことがあって集まってもらった」
「極秘の……?」
「ああ。君たちには南方へと向かってもらう」
「……」
「それで……?」
「このあたりにいると考えられている敵主力を撃破し、敵泊地を破壊してきてほしい」
提督はそう言いながら地図を指さしていく。明らかに扶桑たちの戦力だけでやるような作戦ではない広さの戦域だ。沈め、と言われているのに等しい。
一瞬、とても短いのに長く感じた時間、皆の思考は止まり動けなかった。
「は……?」
「て……提督?聞き間違いでしたらすみません……この作戦は……?他の戦力は……」
「君たちのみで南方の敵を攻撃し制圧しろ、と言ったんだ」
「ふ……ふざけないでください!私たちに死ねと⁉︎」
山城が怒鳴るのも無理はない。
「……連絡は以上。このことは極秘だ。出撃は明日。各自準備しておくように」
さっさと執務室を出て行ってしまう。
「ま…待ちなさい!」
追いかけようとする山城を扶桑が止める。
「姉様……!?」
「落ち着きなさい山城。きっと提督にも考えがあるのでしょう…」
「ですが……!」
「戻るわよ山城。準備もしなきゃいけないわ」
「っ…わかりました姉様……」
「いったいどうなってんのよ……」
「わかんない……」
明らかに納得の行っていない山城を筆頭に皆混乱から抜け出せてはいないが各々の部屋に戻っていく。
扶桑型の部屋では、いや、さっきの話を聞かされた艦娘の間では提督への不信感が広がっていた。
「あのようなことをおっしゃる方ではないのに……」
「今までのが演技だったのですよ!そうに違いないわ……」
山城が怒鳴って提督への怒りを吐き出す。
「そんなはずは……」
「そうでなければ説明できません!」
いつもなら扶桑の言葉を遮ることなどないのだがそれを忘れるくらいの勢いだ。
「嘘よ……そんなはずはないわ…私は提督を信じる…」
「姉様……」
しかし扶桑は少しの不信感を抱きつつも山城をなだめるために、そして自らの判断を信じるためにそういった。流石に怒りも長く続かないようで山城も落ち着いてくる。
「離れ離れは嫌……」
「私だって嫌よ!」
駆逐艦の寮でも同じように満潮たちが混乱しつつ怒っている。
「……」
時雨はあまりのショックで何も言えずにどこかを見つめている。
「時雨……?」
他の艦娘から見ても異様な光景だ。
そして翌日になった。皆出撃するための準備を完了させた。
「はぁ……」
「……」
「提督は来てないみたいだね……」
そのつぶやきの通り、いつもは出撃の時見送りに来てくれる提督の姿がない。
「……」
そして出撃。
「行ってらっしゃいです~」
何も聞かされていない見送りの娘のいつもの行ってらっしゃいが少しだけやる気をくれた。
「ありがとう」
「行くわよ……皆……!準備はいいわね」
「ええ……万全です!」
出撃を執務室から見送っていた提督の目は伏せがちだ。
「行ってしまったか……」
すぐに目を逸らす。
扶桑たちはしばらく順調に出撃していた。
しかし、敵艦発見予測海域に近づいた時信じられない光景が広がっていた。
「敵発見!この数は……多すぎるわよ……!?」
扶桑たちの眼前には数十に上る敵艦が広がっている。電探でも今までに感知したことのないくらいの敵が映っている。
「な……予定と違うじゃない……!」
「どうするの……?」
「……戦うしかないわ。もう捕捉されているでしょうしね……」
「姉様がそうおっしゃるのならば……」
「やるしかないわ」
「皆で……生きて帰ろう」
「ええ……!」
「総員……!攻撃開始!!!!」
攻撃開始の合図とともに扶桑山城の主砲が火を噴いた。
「当たって……!」
射程距離に優れるのは扶桑たちなので先制攻撃を取れている。うまくいけば敵の出鼻をくじける。
そして、数秒したところで着弾をする。
「直撃したわ!」
「敵艦2撃沈!」
「きゃぁ!」
その報告の直後に山城に敵弾が直撃する。
「山城!?」
「大丈夫です姉様!」
頭から血を流しているが気丈に言う。
「……もう少し先鋒を削ってから一気に突撃するわよ!」
「わかりました姉様!」
「「了解!」」
次々に扶桑達の砲が火を噴く。
そして数分して敵先鋒が崩れかかった頃
「姉様!だいぶ削れました!!」
「わかったわ!行くわよ皆!」
「突撃!」
一気に近づいて、時雨たちが魚雷を発射する。
と同時に最上たちの主砲も火を噴く。
当然近づいたため敵からの砲撃も少しずつ命中していく。
「魚雷命中したわ!!三隻撃沈!!」
「敵戦艦一炎上したよ!」
誰も細かい数など気にしていないがそれぞれ敵艦の撃沈を報告していく。
しかし、彼女たちの奮戦むなしくあまりにも多い敵艦に徐々に被害が増えていった。
(皆疲れが出てきたわね…)
既に山雲、満潮、朝雲、最上は中破。扶桑と山城はもはや大破寸前。
無傷に近いのは時雨のみだった。
「敵に囲まれて……逃げられるとしたら一人だけね…」
砲撃しながらつぶやく。このままここで戦っていても誰も帰れない。
「私は姉様とご一緒します」
「もちろん僕も一緒にいるよ」
「私だって……!」
「僕もみんなと……」
「いいえ。時雨。あなたは撤退しなさい」
「い……嫌だよ!皆を見捨てるなんて!」
「あなただけなら逃げられるわ。皆で敵をひきつけるからあなただけでも生きて…!」
「扶桑……」
「行きなさい時雨!」
「っ……」
「そろそろ行かないと撤退できなくなるよ!」
満潮たちはすでに最後の力を振り絞って敵艦と至近距離で交戦している。
ほんの数刻迷ったがここで悩んでいても時間の無駄だった。
「……わかったよ」
「元気でね、時雨……」
「うん……さよなら……」
短い別れの言葉の後時雨は全速力の敵中突破で撤退を開始する。
それを妨害しようとする敵艦を山城たちの砲撃が沈めていく。見事なまでに当たっていく。
そして時雨が敵を突破して見えなくなった頃。
「時雨は……行ったわね」
「ええ……姉様」
覚悟を決めたときだった。
「私達は一隻でも多く沈めることに……」
視覚外から砲撃が飛んできて目の前の敵艦を沈める。
「何?!なぜ沈んだの……?」
突破してからしばらく最高速度で進んでいた時雨。
「みんな……」
もう砲撃音も何も聞こえない距離まで来ている。
「早く戻って援軍を出してもらわないと……」
昼夜問わず全速で移動し続けて鎮守府に着く。
もうそのころには疲労困憊であったが急いで提督の元へ向かった。
「提督!!」
執務室の扉を叩く。
「時雨か。どうした」
「提督!今すぐ援軍を出して扶桑達を助けて!」
「出撃ご苦労だった。休んでいいぞ」
「提督!どうして……!」
「援軍は出せない」
「扶桑達が必死で戦ってるんだよ!このままじゃみんないなくなっちゃう……!」
「すまないが、何もできない」
にべもない。
「っ……」
「提督には失望したよ…お邪魔しました」
恨みを込めて、一言だけ。
失意のうちに自室に戻った時雨。
ベッドの上でずーっとうつむいている。
「どうしてこんなことに……」
全身から暗い雰囲気がにじみ出ていて姉妹艦でさえ近づけない。
「いったい時雨どうしちゃったぽい…」
ほかの艦娘たちには今回のことは伝えられていない。
「……提督さんにきいてみよっぽい」
こんこん
「提督さーん!」
「夕立か?入っていいぞ」
「失礼するっぽい!」
「どうした?」
「時雨がすごく暗くなってるっぽい……何か知らないっぽい?」
「……すまない。何も思い当たることはないな……」
「そっかぁ……ありがとっぽい!」
「力になれなくてごめんな」
執務室を出た後。
「うーん……しばらくは様子を見てみるっぽい」
しかし、時雨はいつまでたっても明るくなるどころか部屋から出てきすらしない。
しかも段々と部屋に持ってこられたご飯さえも口にしなくなっていた。
さすがにここまでひどくなってくると誰もが何があったのか気になっていた。
「さすがに何かおかしいっぽい……でもその前にご飯くらいは食べてほしいっぽい……」
(流石に話しかければ反応くらいはしてくれるっぽい……?)
淡い期待を持ちながら時雨の部屋に入る。
昼間なのにカーテンも閉め切ったまま真っ暗の部屋だった。
「あ、あの時雨……?カーテン開けるっぽい……?」
「……」
シャッとカーテンを開けると時雨の顔がはっきり見えた。
目がうつろでどこを見ているのかわからない。泣いていたのか涙のあともある。
「時雨……時雨!」
いくら呼びかけても反応がない。
「時雨!せめてご飯食べるっぽい!」
肩をつかんでゆさぶっても反応はなくがっくんがっくんと首が動くだけだ。
「……」
「どうしちゃったっぽい……」
いったん部屋から出る。
「相談してみるっぽい……」
とある艦娘のところへいく。
「と言うわけで、お願いするっぽい……!」
「わかったよ夕立ちゃん。私が行ってみるね」
「ありがとうっぽい……!」
翌朝になって今度は榛名がご飯を持ってくる。
「時雨、ご飯もってきましたよ?」
「……」
榛名が時雨に近づいて隣に座る。
「時雨……?起きてる?」
「……」
時雨の顔を触ってみるが反応はない。
「……」
「ねぇ……時雨……?」
もう少し触ってみる。それでも時雨はなにも反応しない。
時雨を抱きかかえて自分の膝の上に乗せる。
時雨はされるがままだ。
「嫌な予感がします……」
数時間たったところでようやく時雨が反応を示す。
「榛名……」
「こんにちは時雨」
「ずっとここにいてくれたの……?」
「ええ!ご飯を食べてもらおうと思って」
「ご飯……今はいいや……」
「でもここ最近何も口にしていないのでしょう…?」
「そうだけど……今何か食べたい気分じゃないんだ……」
「そう……ですか」
「しばらくこのままでいいから…」
さらに数時間時雨を榛名は撫でていた。すると突然時雨が榛名の方を向いて抱きつく。
「どうしました?」
「僕のそばにいてくれて……ありがとね……」
目にうっすら涙を浮かべている。
「いいんですよ。気持ちは落ち着いてきた……?」
「うん……少しは落ち着いたよ……でもまだ……悔しくて悲しくて、寂しい……」
「何か……あったの?」
「うん…」
「そう……話したくなったら言ってね……?」
「話す……」
「ん…話してみて?」
「僕たち西村艦隊が呼ばれたんだよ……提督に」
「……」
「その内容が…沈んで来い……って」
「そんなことが……」
「そのあと……扶桑は提督を信じて出撃したんだ」
「しばらく進んだら予想外の量の敵がいて……」
「みんな中大破してしまった」
「僕だけが無傷で残って……」
あの時を思い出して涙があふれてくる。
「みんなが僕を逃がしてくれたんだ……」
「そっか……」
「戻ってきて提督に増援をお願いしたら……ダメって……」
「そう……つらかったね……」
「うわああああぁん」
大泣きしながら抱きつく時雨。何も言わずに撫でて落ち着かせようとする。
暫くして時雨が泣き止む。
「落ち着いた……?」
「うん……少し……」
「そっか……とりあえず……いったん寝る?あんまり寝てないんでしょう?」
「うん……」
「榛名が暫くここにいるから寝ましょう?」
「うん……!」
時雨を体から離してベッドに横にさせる。
「手、握ってて欲しいな……」
「ええ。もちろんいいわよ」
時雨が榛名の手をぎゅっと握る。
「あったかいね」
「うんっ……!」
暫く寝ていなかったからかそのあとすぐに眠りに落ちてしまう。
「ゆっくりお休み……」
少したって時雨が寝ているとき夕立が様子を見に来る。
ドアを開けてひょこっと顔を出して中を覗う。
榛名がそれに気づいて、もう大丈夫という風に微笑む。
それを見た夕立は少しほっとして去っていった。
「やっぱり榛名はすごいっぽい」
「時雨……」
時雨の寝顔を眺めていたら自分も少し眠くなってきてしまった。
「ふぁぁ……眠くなってきました……」
夜になって時雨が目を覚ます。
「ん……ふぁ……」
体を起こすと横で榛名が眠っている。
「榛名も……寝ちゃったんだ。起こさないようにしなきゃ……」
しかし、手を握っているのでほとんど動けない。
「ずっと握っててくれたんだ…」
「ん……」
榛名の横顔をずっと見つめている。
すると榛名がうっすらと起きてきた。
「榛名起こしちゃった……?」
「時雨……」
どうやらまだ寝ぼけているようだ。
「そうだよ?」
「はっ?!榛名、寝ちゃってました…」
「僕も今起きたばっかりだから気にしないで」
「ってもう夜……」
「だいぶ寝たからもう食欲戻ってきたかも……」
「じゃあ食堂行く?」
「うん!」
榛名と時雨が食堂に現れると、少し周りがざわついた。
「時雨!大丈夫っぽい!?」
「うん……夕立、心配かけてごめんね」
「ううん。ちゃんと戻ってきてくれてうれしいっぽい!」
「あぁ……久しぶりの食堂……」
「なんでも頼んでね」
「うん!」
暫くして、遠征に行っていた駆逐艦たちが戻ってくる。
「あ!時雨ちゃん!大丈夫だったの!?」
「うん……心配かけてごめんね」
「まぁきちんと戻ってきてくれてよかったよ」
幾人かと言葉を交わした後榛名の元へ戻ってくる。
「時雨皆に慕われてるわね。友達の多くて少しうらやましい……」
「僕なんて……そんな……」
「ふふっ。可愛いっ」
デザートを食べ終え、二人で時雨の部屋に戻る。
「榛名……本当にいろいろとありがとう」
「いえいえ。榛名は少しお手伝いしただけ」
「それでも……嬉しかった」
「そう……それなら榛名も嬉しいわ」
「その……今日も一緒に……寝ない?」
「一緒に……榛名と?」
「う……うん。だめかな……?」
「榛名はもちろん、大丈夫ですよ」
「ありがとうっ……!」
お風呂に入ってからベッドに座る。
「榛名がいてくれると安心だよ……」
「甘えんぼさんですね。ふふっ、かわいい」
「からかわないでよっ……もー……」
「お風呂上がりでほかほかぬくぬくですね時雨」
「榛名もでしょ」
時雨が榛名の方に頭をぽふっと乗せる。
お返しとばかりに時雨の手をぎゅっと握る。
「あったかい……」
「ね……あったかい」
暫くして時雨が榛名に抱き着く。
「時雨?」
「眠くなってきた……」
「じゃあとりあえず横になりましょ?」
「このまま横になりたい……」
そのままの体勢で横になる。
時雨が榛名の上に乗っかるような感じで抱き着いてくる。
「時雨、あったかいですね……」
ドアからそーっと夕立が覗いている。
(お楽しみ中っぽい…)
すごすごと退散する。
二人はしばらくイチャイチャした後寝落ちてしまった。
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「いったい何がどうなってるのかしら……」
「……さぁ」
「てっきりもう終わりだと思ったよ……」
時雨を逃がした後、残った彼女たちは決死の覚悟で戦っていた。しかし、そのあとすぐ遠距離からの砲撃が来て敵艦隊を殲滅してしまった。
いきなりのことで唖然としていると、紅白の美しい服を着て日傘のようなものを持っている艦娘を旗艦にした艦隊が近づいてきた。
「あなたたちは……」
「ご無事でしたか?西村艦隊の方々」
「私たちは……まだ……」
「そうでしたか。ならばとりあえずここを離れましょう」
扶桑達は互いに顔を見合わせる。
「わかりました……」
謎の娘達について別の鎮守府へ向かう。
数時間航行して、ついた場所は自分たちの鎮守府とそう規模の変わらない鎮守府だった。
扶桑達は状況がよくわからないと思いつつもずっとついてきた。
近づいていくにつれて何人かの艦娘が迎えに来ているのがわかる。
港の方から声が聞こえてきた。
「大和さーん!おかえりなさーい!」
目の前の艦娘が手を振る。
「貴女……まさか……」
「ええ。私は戦艦大和です」
「貴女が……」
港に上がる。
大和が全員上がり終わったあとこちらを向く。
「とりあえず……入渠してらっしゃいとのことです」
「……わかったわ」
西村艦隊の面々は言われた通り入渠と風呂に案内され修復する。
扶桑はとりあえず平常心を取り戻したが、ほかの面々はまだどうも呑み込めてない。
「いったい何がどうなってるんでしょうか……」
「とりあえず…助けて頂いたんだからあとでここの提督に挨拶に行かなきゃよ」
「時雨は……大丈夫かしら」
皆満潮の言ったことが気になっていた。
「たぶん……大丈夫よ。時雨だもの」
「そう……よね」
(せっかくお風呂なのにあんまり気分が晴れないわね…)
もやもやしつつものぼせる前に皆風呂を上がった。
「お風呂あがったようですね」
「ええ。気持ちよかったわ」
「ありがとうございました」
「いえいえ。気持ちよかったならよかったです」
「それで……この後は?」
「執務室に来ていただけますか?」
「わかりました」
大和に先導されて執務室のほうまで行く。
「やっぱりきれいな建物ね……」
「だねぇ~……」
執務室の目の前で大和がドアをノックする。
「入ってくださーい!」
若い女の声がする。
ガチャ
「どうぞ」
「失礼します」
目の前には18くらいの黒髪のきれいな若い娘が座っている。
「初めまして。私は小春、と申します。訳あって今提督さんがいないので私が代理になっています」
「小春……さんでよろしいですか?」
「ええ。お好きに呼んでください」
「それで……いったい何が起こってるのか…状況を教えていただけませんか?」
今西村艦隊の面々が今一番聞きたかったのは提督のことではなくて(もちろんいろいろ聞きたかったが)今の状況だ。
「ええと……扶桑さんたちは端的にいうと偽装轟沈……していただきました」
「偽装……?」
「はい」
「それで、理由は何なのですか…?」
よほどのことがない限りそんなことをする理由はないだろう。
「実は…皆さんには私とともにとある鎮守府の襲撃をしていただきます」
「鎮守府を……」
「襲撃!?」
皆唖然として小春の言葉を聞いた。
「といってもただの鎮守府ではありません」
「というと……」
いち早く驚きから立ち直った扶桑が質問する。
「実はその鎮守府は俗にいうブラック鎮守府というやつでして……」
「ブラック……過剰な出撃などを強いるやつでしたか……?」
「はい。まぁそれだけではないんです…。ならず者に艦娘を売り渡して利益を得たり、売春のようなこともやっているそうなのです」
「嘘……そんな鎮守府が……」
「恥ずかしながらあるにはあるんです…。ご存じの通り憲兵では艦娘を倒すことはできません。というわけで大本営の秘密任務を遂行していただくため偽装轟沈していただきました」
最上と駆逐艦娘はいまだに驚きから立ち直れていない。
「とりあえず…状況はわかりました」
「すぐにわかっていただいてありがたいです」
「それで、その任務とやらはいつ頃始めるのですか?」
「今日明日……というわけではありません。扶桑さん達……特に扶桑さん以外の方々の気持ちが落ち着いてから、作戦説明をしようと思います。それにここの提督もまだ戻ってきていませんし……」
「わかりました」
「じゃあとりあえずお部屋にご案内しますね。私についてきてもらえますか?」
小春が執務室の椅子から立ち上がって扉の方へ歩いていく。それに扶桑、山城、最上…と続いていく。
そうして単縦陣のように一列でしっかり清掃されている廊下を進む。
「扶桑さん、山城さんはこちらの部屋になります」
どうやらもともと客間だったものを改修した部屋のようだ。
扉を開いてみると、それなりに調度品もそろっていて小奇麗な部屋だ。
「ありがたく使わせてもらいますね」
山城も一礼をする。
次に小春は反対側の扉へ向かう。
「こちら、最上さんと満潮さんの部屋です」
同じような広さの部屋だ。
「あ、ありがとう」
「感謝するわ!」
最後に一つ奥に進んだところにある部屋に、山雲と朝雲を案内した。
「こちら、山雲さんと朝雲さんの部屋になります」
中を見てみると少し部屋は狭くなっているが、その分少し調度品が新しくなっている。
「ありがと~」
「ありがとねっ!」
最後に小春は何かあったら内線で自分を呼ぶように言ってから、執務室に戻った。
「ずいぶんしっかりした娘ね……」
「何者なんでしょう……」
「なんか普通の女の子じゃない気もするけど……普通の娘にも思える……」
扶桑と山城はしばらく小春のことを話し合っていた。
それは最上たち、山雲達の部屋でも同じように話し合われていた。
「まぁここであの娘のことをずっと考えてもしょうがないし休もうか」
「そうね…休みましょ」
そして部屋に案内されて小一時間立ったところで皆疲れで眠ってしまった。
そして、そこから数日かけて装備の改修やほかの艦娘との演習、襲撃の準備にしっかりとした休息をとっていた。
最後の日にようやく、提督の姿が見えた。
実際の指揮は小春が行うため、顔合わせは扶桑だけとなった。
「提督……はじめまして。扶桑と申します」
「初めまして。私がここの鎮守府の提督……の一人の姫菜、と言います。よろしくね」
「よろしくお願いします」
(この提督も女性。すごい綺麗な方。あの娘の母……ではないわよね)
「ん?どうかした?」
扶桑は自分が姫菜をじっと見つめていることに気付かなかった。
「あ……いえ。失礼しました」
「ん?言ってみていいよ?」
「いえ……小春さん……の姉かなぁと思いまして…」
「あぁ……そのことかぁ。ちょっと特殊な事情でね……そのことは秘密でお願い」
「わかりました」
そのあと少し質問した後、扶桑が退出した。
夕方。
「ふぅ……もうすぐしたら出撃だなぁ」
自室で横になりながら一人でつぶやく。
「でもこれでまた評価つけられるからね……頑張らなきゃ!」
そしてその後軽く仮眠をとって、夜になってベッドから起き上がって出撃するために姫菜のところへ向かう。
既に外は真っ暗になっている。
「皆集まりましたわ」
「了解です」
「もうそろそろだね」
「お待たせしました!」
赤城さんをどこか思わせるような黒髪に優しそうな雰囲気の少女が現れる。
「緋城と提督麾下艦娘12名これより姫菜さんの指揮下に入ります!」
緋城の後ろに、二艦隊分の艦娘が控えている。
「うん。よろしくね緋城ちゃん」
緋城の連れてきた艦隊の旗艦は摩耶だ。
小春が扶桑と摩耶と緋城に小型無線機を渡す。
「よし、準備整ったね」
「はい!」
「じゃあ……出撃!」
1艦隊目の旗艦は扶桑。それに続いて山城、最上、満潮、朝雲、山雲。
2艦隊目の旗艦は摩耶。それに続いて鳥海、能代、島風、長波、潮。
3艦隊目の旗艦は愛宕。続いて高雄、五十鈴、神風、電、夕立。
後詰め&提督護衛艦隊に天龍、龍田、木曽、川内、舞風、神通、鈴谷。
まず、1~3艦隊が出撃する。
そして、しばらくした後提督たちも出撃する。
月明りのない暗闇の中扶桑達が先行して進んでいく。麻耶、愛宕の艦隊は少し距離を離して進んでいく。
一行は数時間ほど特に衝突などの事故や、敵艦と接敵することもなく目標鎮守府の近海に着いた。
「ここまでは順調……」
「何があるかわかんないよ」
「そうだね……気を引き締めなきゃ」
と、ここで扶桑から入電。
「照明弾を確認!被害はありませんが位置はばれています!」
「わかりました。扶桑さん達は砲雷撃に警戒してください!」
「了解!」
「麻耶さん、愛宕さん。周りに注意しつつ航行を」
「了解!」
照明弾の撃たれた方向を重点的に索敵しながらどんどん鎮守府に近づいていく。
「なかなか見えないわね……」
「砲撃確認!!9時の方向!炎見えたよ!」
「了解!総員速度を上げて!山城!撃つわよ……!」
「了解です姉様!」
扶桑山城の両名が速度を上げつつ照明弾を撃たれた方向に撃つ。
弾が照らしたところに確認できた敵艦は
艦娘だ。
「あれは……艦娘、艦娘だよ!」
「ええ……確かにあれは艦娘ね」
「嘘……」
「小春さん!敵艦発見!艦娘です!」
小春に向け通信を送る。
「艦娘?!まだ攻撃は続いていますか?」
一瞬驚いたものの落ち着きを取り戻して返答する。
「……続いています!第二射来ました!」
「そうですか……わかりました。迎撃してください!」
「了解です!」
「戦艦1巡洋艦2駆逐3でしょうか……」
「そんな感じに見えるね……」
「敵の魚雷に気をつけつつ一気に片をつけるわよ!」
「了解です姉様!」
扶桑がそういった後一番先に突撃して山城、最上と続いていく。扶桑達が突撃すると相手もこちらへ向かってくる。
「撃て!」
敵先頭艦へ向け砲撃を開始する。
敵もこちらに砲を向けてくるがその前に二射目を撃つ。
「敵艦に命中確認!」
そして敵艦の砲撃があり、多少の被弾で互いにすれ違う。
「魚雷撃て!」
すれ違ったところで魚雷を発射する。
数刻立ったところで敵の側面に魚雷による爆発が起こる。
「命中!」
「きゃっ……!」
山城に一発魚雷が命中してしまう。
扶桑達が3射目を撃って敵艦に命中させる。
敵を中破か大破に追い込んで夜戦が終了する。
「ふぅ……皆無事?」
「山城以外はほぼ無傷、山城が小破だね」
「山城……大丈夫?」
「大丈夫です姉様……!まだ行けます!」
戦闘が終了してから小春の元に通信を送る。
「…そうですか。わかりました!気をつけて進んでくださいね」
「順調?」
「今のところは順調です……」
「ん。頑張ってね」
「はいっ!」
鎮守府にいる姫菜と定時通信をして現状を報告する。
「じゃあ……進むわよ」
「というかもうそろそろつきそうですよね……」
「そうね……」
数十分したところで遠くに鎮守府が見える。
「あれかしら……?」
「小春さん。鎮守府らしきものが見えました」
「ほんとですか?じゃあ…もう少しその場で待機願います。まだ後続が追いついてないので」
「了解です」
「摩耶さん、愛宕さん。先遣艦隊が鎮守府を見つけたそうなので合流してください!」
「了解!」
十分ほどたった後扶桑達と摩耶、愛宕の艦隊が合流する。
「全員揃っていますか?」
「ああ!と言ってもこっちは戦闘なかったからな……」
「こっちも大丈夫よ~」
「小春さん。合流できました」
「わかりました……!では、手筈通りでお願いします」
「了解しました」
全員が集まったことを確認して攻撃の命令を出す。
「では皆さん、突撃開始です」
「応っ!」
「出撃~!」
彼女たちが突入するのに合わせて小春達も前進して鎮守府を目指す。
摩耶が鎮守府の北側から突入をする。
「こっち側には工廠があるのか……」
「なんか怪しい感じの兵士もいますね……」
「さっさと制圧しちゃうぞ」
「周りを警戒してくださいね」
摩耶の言うとおりに工廠の中や建物の周りにまばらに兵士が立っている。
しっかり小銃を持っていて、外を歩いてる者はしっかり見回りをしていて普通なら気づかれなさそうだが摩耶達の夜用装備のおかげで気づかれずに近づけそうである。
「じゃあ、行くぞ」
「はぁ…なんか最近見回り頻度多くなったなぁ…」
ため息をつきつつも見回りを続ける兵士。後ろから摩耶が来ていることには気づきもしない。
「よし。ここも異常なし……戻るか……っ!?」
後ろから麻耶が首を絞めてきて意識を失ってしまう。
「よし……落とせたな……」
念のため小銃などの武器から弾を抜いて少し離れたところに捨てる。
「外側は終わったわ、摩耶」
「よし、いったん集まれ!」
陰になっているところに全員集まる。
「じゃあ……建物の中制圧するぞ」
「そんなにいないとは思うけど警戒は怠らないでくださいね」
能代達がこくりと頷く。
そして、摩耶たちが建物の出入り口付近に進んできた。
中にいる兵士が見回りの兵士たちがいつもの時間に戻ってこないことを怪しく思い、様子を見に行こうと出入り口を開けた。
「あいつらどこ行った……」
摩耶が闇の中からそっと兵士に近づいて、扉を閉めようと後ろを向いたとこに襲い掛かって意識を奪う。
「……よし。うまくいったな」
鳥海達残りの面々が集まってくる。
「じゃあ各々持ち場を掃討開始……!」
足音を立てずに6人全員が突入する。
一人目は廊下を歩いているところを。二人目と三人目は休憩室で休んでいるところを。4人目はモニターの前でスマフォをいじっていたところを。5人目は二階で部屋の見回りをしているところを。最後の一人は兵士用武器庫のチェックをしているところを。
それぞれ襲われて意識を失った。
一方愛宕たち。
「こっちは、寮みたいなところだから兵士はいないわね……」
「見つからないように注意しなきゃね……」
「でもこの調子なら鎮守府に直接入れそうね……」
「でもあの中はいっぱいいそうよ……摩耶達と合流して一気にやった方いいわ」
「そうね……合流しましょう」
「よし、制圧できたな」
「じゃあ早く合流しましょ」
「おうっ」
摩耶達はそろりそろりと事前に決めておいた場所に到着して愛宕と合流した。
「一か所からみんなはいるのは無理そうだから何箇所かに分けて入りましょう」
「決めておいた奴だな。わかった」
「では私たちは撹乱に入りますわね」
「頼む!」
扶桑達は鎮守府の車両置き場のほうへ向かう。
「少し心苦しいけれど……」
「やってしまいましょう。姉様」
扶桑、山城、最上の三人で一斉に車両に向け砲撃する。
「もう一発……!」
二度の砲撃で数量の車両を破壊し、そのうちの3両を炎上させて騒ぎを起こした。
炎上したのを確認して扶桑達はその場から離れる。
「やったわね……!」
「始まったようだな……」
「行きましょう……!」
騒ぎを聞きつけて建物から兵士が出ていくのを確認して、4か所のドアや窓を破壊して一気に突入する。
数人残っていた兵士がいたが有効な抵抗をすることもできないまま制圧されてすぐに1階は取れてしまった。数人が一階に残って、摩耶と鳥海、愛宕、高雄達が二階の提督の執務室へ向かう。扶桑達は3つに分かれて二階の窓を外から提督が逃げないように監視している。
「ここが二階だな……」
二階は不気味なほど静かで誰も廊下にいなかった。
「そろそろ提督たちもここに着くと思います」
「だな……」
摩耶は懐中時計を見てから顔を上げる。
「予定時刻だし行こう」
「じゃあまずは私たちが扉開けるわ」
「頼む高雄姉」
「行くわよ!」
愛宕と一緒に思いっきり扉に当たりに行って破壊してしまう。
すぐに摩耶と鳥海が砲を部屋の中に向ける。
「誰だ!」
提督の脇には秘書官であろう艦娘がいて即座に砲を摩耶達の砲へ向ける。
「……」
摩耶鳥海とその秘書艦の間に一触即発の雰囲気が生まれる。
高雄と愛宕は提督のほうに向く。
「反乱か……お前ら解体では済まないぞ」
「まもなく我らが提督が到着して理由をお話しされますわ」
数分してから姫菜と小春と緋城と護衛の艦娘達が提督の目の前に現れる。
「初めまして。姫菜と申します」
丁寧に一礼して、懐から紙の束を出す。
「……」
「これ、全部私がここに来た理由と根拠です。お心当たりありますよね?」
提督は沈黙を貫く。
「まぁ……黙秘されても私がすることは変わりません」
川内と神通、龍田が提督の前に進み出る。
提督が机の中でごそごそしている。
「何してるんですか?」
川内と神通が少しずつ近づいていく。
するといきなり机の前面、部屋の隅などあらゆるところから煙幕が勢いよく出てきて部屋の中を一気に満たしてしまう。
それとともにガラスの割れる音がする。
「チッ……逃げられる」
「提督大丈夫?」
「大丈夫。とりあえず煙幕外に出そう」
「わかった」
窓を全部開けて煙幕を外に逃がす。
「やっぱ逃げられた……」
「大丈夫です!外でこの建物見張ってもらってるので!」
「連絡あるかな?」
「まだ、ですね……」
外から見張っていたところ提督の執務室があるであろう場所の窓ガラスが割れる。
「ん……?煙?」
「中で何かあったのかしら……」
「まぁ私たちはここで見張ってるわよ」
鎮守府の建物の裏口から提督と秘書艦と数人の武装した女の子を連れて出てくる。
「あれは……」
こそこそっと鎮守府外に逃げようとする。
しかし
「待ちなさい!」
隠れてるところから出てきて最上とともに砲を向ける。秘書艦とそばの武装少女たちがこちらに砲と銃を向ける。
どちらも撃つことができず膠着状態になる。
「……」
「……」
扶桑が小声で最上に絶対に提督を見失わないように言う。
(この状態で通信は無理…なら)
扶桑が敵に何かを決心したような顔を向ける。
その次の瞬間秘書艦向けて扶桑が砲撃を始める。
ちょうど砲撃が始まった頃
「砲撃音…」
「あっち側ね…とりあえずここに二人残していくわよ」
「はい!」
「強い…」
陸上だが敵の秘書艦は提督をかばいながら砲撃する。
ちょうど戦っているとき提督が出てきた裏口の扉から川内と神通を先頭にして姫菜たちが出てくる。
「間に合った!」
「提督……」
「さて、もう逃がしませんよ」
「ただではやられん」
「はぁ……」
川内、神通、鈴谷、木曾、舞風が一斉に砲を向ける。
「やっちゃって!」
5人で一気に突っ込んで行く。
川内が真正面から突っ込んで神通が下から肉薄して攻撃を仕掛ける。
「やぁっ!」
秘書艦が川内か神通どちらに対応するかで一瞬迷った隙を見逃さず後ろから鈴谷と木曾が主砲を撃ちこむ。
「っ……」
手をついて伏してしまう。
すると、武装した少女たちが秘書艦のやられる間に姫菜、緋城、小春の元へあるものは斬りつけに、またあるものは撃ちに行く。
しかし、木曾がそのすべてをいなし弾いてしまう。
「木曾ありがとう」
「当然」
抜刀していた小春達も木曾が相手してくれたおかげで少しほっとしている。
しかし、少女たちはあきらめずに姫菜集中に攻撃をかけようと突っ込んでくる。
「何度やっても同じだ!」
手に持った獲物で少女たちの攻撃を吹き飛ばし飛び道具ははじき返す。
少女たちに隙ができた瞬間小春と緋城が距離を詰めて銃を刀で弾いて取り押さえる。
「お疲れ。小春ちゃん緋城ちゃん」
「けがはないか?」
手を拘束した後二人が立ち上がって
「二人とも無傷です」
「そうか……よかった」
「さて…あなたの頼りの秘書艦も少女も皆いなくなりましたが……まだ抵抗しますか?」
「っ……」
「皆この方を拘束して」
川内、神通が拘束に動こうとした瞬間
「死なばもろとも!」
懐から拳銃を取り出して姫菜に向ける。
「あきらめの悪い……」
向けた瞬間に木曾が姫菜を守るように立ちふさがって川内が銃を蹴り上げて吹き飛ばす。
「ぐあっ……」
そのまま倒れこんだ所を神通が拘束する。
そして川内が手を縛る。
「間もなく憲兵が来ますから……おとなしくしていてくださいね」
「……」
「そういえば、あなたに聞かなければならないことがありましたね……」
少し提督に尋問する。
「そう……そういうことね」
「これからどうしますか姫菜さん」
「そうね……。小春ちゃんと緋城ちゃんは憲兵さんを迎えに行って案内して差し上げて。私はまだやることあるから」
「わかりました!」
小春と緋城が数人の護衛の艦娘を連れて憲兵を迎えに行った。
「じゃあここは……扶桑達に任せてもいい?」
「大丈夫ですわ提督」
「じゃあお願い」
提督のことを扶桑達に任せて姫菜は川内や神通達を引き連れて鎮守府の庁舎の中に戻る。
「何かあったのかしら……」
姫菜が1階の廊下の壁の前に立ってカードキーを何もないところにかざす。
するとどこかに触れたタイミングで……バシュっと音を立てて目の前の壁が開く。
先には地下へつながる階段が割と奥まで伸びている。
「ずいぶん奥まであるみたい……」
「どうするの?もう突入しちゃう?」
「んーん。取り合えずすぐに憲兵来るだろうから到着を待ってからかな」
「了解」
数分すると小春達が呼びに行ったのとは別の憲兵が到着する。
「よし、合流できた……」
「こちらは準備完了です」
姫菜が憲兵に一つ頷き、
「じゃあいくよ」
川内神通を先頭に階段を下りていく。
暫く降りると曲がり角がありそこから先には地下室があった。
「貯蔵庫……?」
「どこかに扉があるはず……」
皆で手分けして壁に何かないか探しにかかる。
すると数分すると憲兵の一人が壁に隙間があるのを見つける。
「これで間違いない……」
そういってその近くに上からカードキーをかざしていく。
そうすると、真ん中らへんでかちっと音がして扉の鍵が開いて扉が勝手に開く。
「まだまだ通路あるの……」
「長いね」
「どっかには行き止まりがあるはず……というかもう部屋は一つしかないのよ」
「ならこの先に……」
「うん。この鎮守府の闇……みたいなのがあるはず」
一行はそのまま通路をずっと進んでいく。
ものの一分歩いたところで扉がまたあって、どうやら鍵もかかっていないようだ。
「開けていい…?」
「開けたらすぐに部屋の中に誰かいるはずだから構えて配置について」
「了解!」
川内が扉を開けて突入する。
まず目に入ったのは裸の艦娘の首を絞めているもの。
犯されて放置された艦娘
捨て置かれた艤装
数人に囲まれ輪姦されている娘
血まみれで伏している、明らかにおかしい方向に骨が曲がっている娘
そして苦痛そうな喘ぎ声
男共の荒い呼吸の音
卑猥な打ち付ける音
そしてほのかに血の混じった生臭いにおい
「これは……」
「やっぱりね……」
「酷い……」
「行くよ」
憲兵とともに男共の近くに行く。
「動くな!」
男達が姫菜を無視してそのまま行為を続ける。
「はぁ……お願いします」
憲兵達が麻酔銃を男達へ向け、一発ずつ銃撃する。
そして
男たちが倒れたとこで憲兵達が男たちを引きはがして姫菜が艦娘を保護する。
「大丈夫……?」
「あ……?」
「今保護したからね、安心して」
「ありがとう…」
涙をこぼして眠ってしまった。
「何人いるのよ……」
「見ただけでも10人は下らないわね……」
「とりあえず天龍と龍田と木曾と舞風でこの娘達の介抱をお願い」
「了解!」
憲兵に男たちを任せて、姫菜は川内、神通、鈴谷とともに奥の小部屋へ向かう。
「酷いにおい……」
「明かりは……ここか」
カチッとスイッチを押して明かりをつける。
そこには檻で区切られた部屋が10あってその中に平均2~3人の艦娘が監禁されていた。
「みんな檻壊して」
「了解!」
全ての檻の錠前を破壊して扉をあけ放つ。
「大丈夫?」
檻の一つに入って中の艦娘を抱きかかえて問いかける。
「……」
目がうつろで反応がない。
「……とりあえずみんな上に上げましょう」
三人も頷いて一人ずつ抱きかかえ地上まで運んでいく。
数人運び終わったところで鈴谷が檻の奥の方に腹を切り裂かれ死にかけている艦娘を見つけ応急処置してから地上へ運ぶ。
「血の匂いがすごいわ……なんて鎮守府……」
「酷いね……」
「あとは憲兵に検分を任せるしかないわね……」
そういって上に上がる。
「とりあえず憲兵に引き渡しましたけど……この後どうしますか?」
「とりあえず鎮守府の中で休憩しますか……」
「それがいいね」
「姫菜さん!終わったので来ました!」
「おお小春ちゃん!と言ってもまだ迎え来ないから……二階で待ってて?」
「わかりました!」
緋城と扶桑達を連れて二階へ行く。
「危なかった……」
「流石にあれは見せられないもんね」
「うん……」
姫菜たちがうまく盾となって小春達には何も見えてなかった。
「なんかさっき血の匂いしたね」
「たぶん戦闘あったんだでしょ」
「あーなるほど」
小春と緋城は見当外れな想像をしていたが姫菜達にとっては今はこれでいいだろう。
「落ち着いているのね……」
「提督になるって多分大変なんでしょうね……」
「この娘達どうしよう……」
「とりあえず病院っしょー?」
「それはそうなんだけどさ。そのあとよ」
「うちで引き取れないの?」
「やっぱそれがいいかなぁ」
「まだまだ寮もお部屋余ってますしね」
「じゃああとでそういう風に話し通しとくね」
暫くして怪我人を運ぶための大きめの車が数両来る。
「お願いします」
「お任せください」
そして彼女たちが運ばれていくのを見送る。
「これで、とりあえずひと段落かな……」
「こちらはあとはお任せください」
「ありがとう」
「ご協力ありがとうございました」
「こちらこそ」
暫くしてバスがやってくる。
「とりあえずこれに乗って私の鎮守府まで行くからね」
「わかった」
「あと、小春ちゃんと扶桑達も呼んできて」
「はーい」
「小春ちゃーん!」
「川内さん??」
「鎮守府に戻るから下に来てって。扶桑達もね」
「わかりました」
「やっと寝れる……」
まだ明朝で普段なら寝ている時刻だ。
「お。みんな降りてきたね」
「このバスに乗るんですか?」
二両のバスが来て停車している。
「そう!どっち乗ってもいいよ~」
それを聞いて小春と緋城が早速バスに乗り込む。
「さあさあ扶桑達も乗って乗って!」
こくりと頷いて扶桑達も小春の後に続く。
「あともう少しでみんな乗るかな」
「ふぅ……」
「姉様……お疲れ様です」
「山城も……ね。みんなお疲れ様」
「やっと帰れるんだね……」
「疲れた……」
「そういえば、時雨はどうしてるかしら……」
「元気にしてるといいですけど……」
少し話してるうちにバスが発車する。ほとんどの面々はすぐに疲れで眠ってしまった。
「私達も少し寝ましょ……」
少し眠気に耐えていた扶桑たちもしばらくして眠りに落ちた。
————————————————————————————————————
扶桑達がいなくなって暫く経ったが榛名たちの支えもあり何とか耐えていた時雨。
「遠征終わり……っと」
そういうと早速部屋に戻ってベッドに飛び込む。
「まだ帰ってこない……」
また涙ぐんでしまったとき部屋の扉を叩く音がする。
「誰だろ、榛名かな……」
ガチャ
「遠征お疲れ様。時雨」
「榛名、ありがとう……。入って入って」
「お邪魔します」
榛名がベッドの上に座ったところで時雨がお茶を入れて持ってくる。
「はい。お茶どうぞ」
「ありがとう」
「今日はどうしたの……?」
「まずは時雨とお話ししたかったの」
「嬉しい……」
「ふふっ。それでもう一つがね、とある噂が……」
「噂……?」
榛名が噂話をするなんて珍しい。
「つい最近とある鎮守府が成敗されたらしいんだけど……その中に艦娘がいっぱいいたらしいの」
「艦娘が……」
「その中に扶桑に似た艦娘を見たって噂が流れててね……」
「ほんと!?」
ずいっと身を乗り出して榛名に迫る。
「あくまで噂だけどね……」
「生きてるかもってだけでも……」
「生きてるわよ……きっと!」
「だよね!」
「ええ。だから元気出してね」
「うん……」
榛名にぎゅっと抱きつく。
—————————————————————————————
「そろそろ鎮守府に着くかな……皆起こさなきゃ」
一人ひとり肩を叩いて起こす。
粘り強く一回では起きない人はまたあとで起こすことにした。
「ん……姫菜さん……」
「おはよっ小春ちゃん」
「もう着きました……?」
「もう少しでつくよ」
「そうですか……ありがとうございます」
「んぁ……」
起こす者の特権としてみんなの寝顔が見られたのは役得だと思った。
扶桑が隣に寝ている山城の肩を揺らして起こしてから後ろに座っている娘達を起こす。
「姉様……」
「山城、起きてちょうだい」
「ん……?姉様……?」
「そろそろ着くそうよ」
「もうそんな時間ですか……」
「そうよ。皆起こすわよ。手伝って山城」
「わかりました。姉様」
扶桑と山城も手分けして起こしにかかる。
「もう着いたのかい……?」
「ふぁ……」
鎮守府に着いて姫菜が扶桑達をもてなすための部屋を用意しに行く。
「小春ちゃんあと扶桑達案内してね」
「わかりました!」
バスから続々と艦娘が降りてきてここの所属の娘はそれぞれの部屋に戻って別の娘達は部屋待ちでバスの近くで待機する。
「皆さん全員降りたでしょうか……」
「全員いないし忘れ物もないよー!」
緋城がバスの中に入って確認をする。
「わかった!じゃあ、お部屋に行きましょっか」
扶桑がこくりと頷く。
コンコンと扉を叩く。
「入っていいよー」
「扶桑さんどうぞ」
手で入るように案内する。
「お邪魔します」
扶桑に続いて山城たちも入ってくる。
「広っ……」
「広くていいなぁ~」
「麻耶さん達こっちー!」
緋城が連れてきた娘達は隣の部屋に案内される。
「何か必要なものがあれば言ってくださいね」
そういって小春と姫菜が部屋を出ていく。
「ふぅ。疲れた……」
ベッドの上に倒れこむ。
「大丈夫ですか?姉様」
「大丈夫よ……山城。ちょっと疲れただけ……」
「ゆっくりお休みください姉様!」
「ありがとう……」
疲れもそうだが、やっと自分たちの家に帰ることができるという安心感がどっと襲ってきた。
「やっと帰れるんだね」
「そうね……」
「時雨元気かしら……」
緋城も自分の鎮守府の艦娘を労いに来る。
「お疲れ様です皆さん」
「緋城もお疲れさん!」
「つかれたー!」
鳥海と潮はお茶を取りに台所へ向かう。
「無事に帰ってこれてよかったなぁ……」
「あたしたちが付いてるんだから当然だろっ!」
「ですね……!」
しばらくしてお部屋で一服した摩耶が緋城に聞いた。
「そういえば小春ちゃんのところ行かないのか?」
「もう少ししたら行ってきます」
「そっか」
夕方になって緋城が摩耶に一言伝えに来る。
「じゃあ今日は小春ちゃんのところに泊まってきますね」
「お。そっか!楽しんでこいよー!」
いつものように頭をなでて送り出す。
「はい!」
小春が鎮守府正門でスマフォをいじりながら緋城を待っている。
「ごめーん!待った!?」
「大丈夫だよ。今来たばっかだから」
「よかったぁ……」
「じゃあいこっか!」
「ん!」
二人仲良く(後ろから護衛もついて行っているが)正門を出て暁に染まった家路を進む。
「やっぱ仲良くていいねぇ」
少し遠くから二人のことを見つめていた。
そこに秘書艦の加賀が来る。
「提督。明日の車両と書類作成終わったわ」
「ん。ありがとね!じゃあ今日は終わりかな」
「ええ。そうね」
「一緒に夜ごはん食べる?」
「……たまにはいいかしらね」
「やった!じゃあいこいこ!」
加賀の手を引いて夕飯を食べに行く。
(かわいい……)
姫菜達が夕飯を食べに行く頃、同じように扶桑たちもお腹がすいてきた。
「もう日もおちてきたわね……」
「夕ご飯の時間ね」
「姉様起こしてごはんに行きましょうか」
「そうね」
全員そろってもらった案内図を頼りに食堂へ向かう。
「結構にぎやかな食堂ね……」
ほかの艦娘達も同じ頃に来ていたようで盛況である。
「限定メニューなんかもあるんですね……」
自分達の鎮守府にないものを物珍しく眺めながらも満潮達は早速注文をして席取りをしている。
「私たちも行きましょう姉様!」
「そうね」
「私たちの鎮守府でも限定メニューとかほしいわね……」
料理を取ってきて席に着きながらつぶやいた。
「提督に言ってみたらどうでしょうか……意外にあっさり決まるかもしれませんよ?」
「そうね……帰ったらやってみましょうか。いただきます」
「いただきます」
「……うん。おいしいわね」
温かいご飯と言うのは思ったより心にしみるものだ。
「おいしいね」
「おいしいご飯を食べてると自分でも作れるようになりたいと思ってしまうわね……」
「なら、一緒に練習しましょ?」
「いいのですか!?ぜひお願いします!姉様!」
「ふふっ。もちろんよ」
山城もだいぶ元気が出てきたようだった。
—————————————————————————————————
時雨は今日も夜空を眺めている。
「はぁ……」
幾時祈っても扶桑達が帰ってこない。
「早く帰ってきてよ……」
この日も夜が更けるまで夜空を眺めてから床に入った。
「起きて、時雨」
誰かが体を揺らしている。
「ん……何……」
ゆっくりと体を起こすと夕立が起こしに来ていた。
「夕立……?」
「起きるっぽい!遠征あるでしょ?」
「あぁ……そういえば……」
「昨日も遅くまで星みてたっぽい?」
「……まあね」
「夜更かしは体に悪いっぽい」
「わかってるよ……」
「じゃあ着替えて早く朝ごはん行こっぽい」
「わかったよ……」
「着替えるの手伝うっぽい!」
「一人でやるから大丈夫だよ……」
そう言ってパジャマを脱いで制服に着替える。
「じゃあ行こうっぽい!」
「うん」
二人そろって食堂へ向かう。
「いただきまーす」
「なんか外騒がしかったね」
「なんかあるっぽい?」
「誰か来るのかなぁ……?」
「さぁ……」
外が騒がしくなってるのを尻目にご飯を食べていると榛名もご飯を持ってきていた。
「あれ?榛名もご飯?」
「ええ。ここ座ってもいい?」
「もちろん!」
「ぽいっ!」
「ありがとう」
食べながら、何か知っていそうな榛名に聞いてみる。
「ねえねえ榛名」
「どうしたの?」
「今日偉い人が来たりするの?」
「何も聞いてないけど……」
「そっか」
「なんかあったの?」
「ううん。なんでもないよ」
もしかしたら扶桑が帰ってきたのかもしれないという希望があったがもうあまり期待はしていない。
ご飯を食べ終わって遠征に二人が向かう。
「じゃあ行ってくるね」
「行ってくるっぽい!」
「行ってらっしゃい」
榛名が微笑みながら手を振り見送る。
「やっぱり榛名は優しいっぽい」
「うん……そうだね」
夜になって、榛名が間宮から自室に戻る。
が、廊下を通っていたとき窓の外に大型の車が2両止まっている。
(あんな車ありましたっけ……?)
「帰ってきたのね……」
久しぶりに扶桑たちが我が家の鎮守府の土を踏んだ。
「久しぶりです……」
「ふぅ……。とりあえず提督のところに行きたいです……」
任務を終了したこと、そしてなぜあのように突き放すように送り出したのかを聞きたかった。
「ご案内します」
「ありがとうございます」
扶桑達は誰にも見つからようにして執務室の前に着く。
「ついに戻ってきたのね……」
「どんな顔して会えばいいのかしら……」
いつものように執務室の扉をノックする。
「……入ってくれ」
少しこわばった声が中から聞こえてくる。
「失礼します」
静かに扉を開け出撃した面々と最後に小春が入ってくる。
「艦隊、帰投しました。また、提督代理の方を結果報告のためにお連れしました」
「ご苦労。では報告お願いできるかな」
「はい。では最初から」
紙束を持ち、一から経過を淡々と報告していく。
「…となります。この報告書も提出しておきます」
紙束を提督に渡す。
「ありがとう。お疲れ様」
小春が無言で礼をして列に戻る。
「これから我々はどうなるんでしょうか……?」
少し沈黙があった後扶桑が切り出す。
「私たちは沈んだことになっているのでしょう?」
「その話だが……」
一瞬の沈黙がとても長く感じられる。
「すまなかった」
簡潔なその一言を発して立って深々と扶桑達に頭を下げる。
この一言には明らかに念がこもっていた。
「提督……」
「君たちの命を預かる立場でありながら、偽装とはいえ沈めと言ってしまったこと。とても謝って済まないということはわかっている」
扶桑達は黙っている。
「どうか……またこの鎮守府にいてくれないだろうか」
深く頭を下げる提督。
「提督……わかりました」
「姉様……。姉様がいいなら私も」
「まぁ……僕は大丈夫だよ」
「皆……」
「これからはどうか、私たちを信頼して事前にご説明お願いしますわ」
「わかった……。約束する」
あと一つ、大事な事を聞いておく。
「それと、時雨はどうなりましたか?」
「今……遠征に出ているはずだ」
「私たちが任務ということは……」
「伝えていない……」
「時雨に会うのは……大丈夫でしょうか?」
「もちろんだ。もう普通に過ごしてもらって構わない」
「そうですか」
ものの数十分で扶桑達は執務室から出てきた。
「遠征中ね……」
「とりあえず僕たちは自分の部屋に戻るね?」
駆逐艦を連れて最上がいなくなる。
「私は……もう少しお邪魔させていただきますね」
「……?騒がしい?」
戦艦寮の部屋。扶桑型の部屋には暫く人がいないはずなのに物音がする。
誰かが掃除しているのだろうか。
「誰かいるのでしょうか……」
気になって部屋の中をのぞこうとする。が、扉が開けっ放しになっているので普通に見ることができる。
「時雨帰ってきたら会いに行きましょうね」
「はい。姉様」
そこにはもう会えないと思った姉妹が経っていた。
「えっ?!扶桑……?!」
「あら、榛名……」
「全然みなかったけど……どこいってたの?」
「少し……任務にね」
「そう、ですか」
扶桑が少しためらいがちに紡いだその言葉に、何かを感じ取ったのか榛名はそれ以上何も聞かなかった。
いや、聞けなかった。
「少し埃が溜まってるわね……」
「お掃除手伝います!姉様!」
小春も手伝いつつ部屋を軽く掃除した。山城が窓を拭いている間に、小春がお茶を淹れに行った。
「ふぅ……」
「姉様!終わりました」
「お茶淹れてきました」
暖かそうな緑茶を淹れてくる。
「ありがとうございます」
「いえいえ」
「時雨さんいつ頃帰ってくるんですか?」
「夜……とだけ聞いていますが……」
「会うのが楽しみですね」
「ええ」
わずかに微笑む。
夜になって、時雨もちょうど帰ってくる。
「やっと遠征終わりかぁ……」
「お疲れ様っぽい」
「すごい疲れた……」
「早く部屋で休むっぽい?」
「うん……そうする」
「後始末は任せておいてっぽい!」
少し時雨の顔色が悪そうなので夕立が早く休むように言う。
そのころ扶桑と山城は先に時雨の部屋に行って待っている。
「そろそろね……」
「はぁ…」
時雨は少しうつむきがちに自室の扉を開ける。
時雨が部屋の明かりをつけたとき、信じられない光景が広がっていた。
会いたかった二人が立っているのだ。
「ふ…扶桑…山城…本物…?」
「時雨…ただいま」
「元気にしてたの?」
「嘘…やっぱ生きてたんだ…」
一瞬呆然としてぶつぶつつぶやいている。
「時雨?」
「扶桑…!!山城…!!!」
突然扶桑と山城に向かってダッシュして思いっきり抱き着いてくる。
「時雨?!」
「よかったぁぁ…扶桑…山城ぉぉぉ」
思いっきり扶桑と山城の胸で泣きながら抱き着く。
その様子を見て扶桑も山城も困ったように顔を見合わせて、それから微笑んで時雨を抱きしめる。
十数分経ったところで、時雨がやっと泣き止む。
「もう大丈夫…?」
「ん…大丈夫」
「もう…」
続きはよ
ごめんなさい!
年末にかけて行事が重なっていたのであまり更新できませんでした!
これから更新するのでお待ちください!
コメントありがとうございます!
頑張ってください、このSS面白いです
コメントありがとうございます!
面白いと言っていただいて嬉しいです!
これからも頑張ります!
いまさらだけど、摩耶
誤字指摘ありがとうございます!
直します!
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平和に済んで良かった。
時雨の好きの俺から見れば、感動し過ぎて泣きそうになりました。こんなに悲しいとは...深海棲艦は居なくなればいいのに.....
まぁ...そこは置いといて、正直とても読みやすかったです!小説風って感じで見れて良いと思いました。それに艦娘達の一人一人の感情がとても分かりやすく、楽しい気分になりました。
しかし...時雨が悲しむところ見ると、私は...死にそうになりました!(褒め言葉)