2020-04-03 21:04:24 更新

青い空。久しぶりに見る空。廃墟の地。見慣れた瓦礫。

目の前には恐ろしい怪物。背後には三人の死体。横には暗い青色の髪の少女。

「いくよ…!御津羽!」

「うん…照日姉」

槍と刀を構えて突っ込む。

次の瞬間には化け物が砕け散った。


辺りを静寂が支配する。

「御津羽…」

最初に声を発したのは照日、御津羽の姉だ。

「お姉ちゃん…また…また守れなかった…」

涙をぽろぽろ流しながら仲間の死体へ駆け寄る。

「私のせいね…ちゃんと周りを見ていれば…」

「でも…」

「ごめんね。御津羽」

照日の頭をぽんと撫でる。


しばらくして援軍が到着。

民間人の収容をして水戸基地へ撤退した。


「儺遣(ナヤライ)照日隊、三名死亡。二名生還しました」

「ご苦労だった」

立派な執務室。そこで照日は報告書を手に少将、九鬼義孝に報告する。

「お前達には東京へ行ってもらう」

すべての報告を終えた後突然九鬼がそう言った。

「少将様…?東京へ…ですか?」

「ああ。これからはこれから激戦になると予想される新宿方面へ戻ってもらう。もうここでやることはないそうだ」

「なるほど…」

「月鬼ノ組に配属が決まっている」

「月鬼ノ組…」

「ああ。黒鬼が多く所属している。いい経験が積めるだろう」

「かしこまりました。少将様」

「ご苦労、出立は4日後だ儺遣少尉。下がっていいぞ」

ぺこりと礼をし、ドアを閉める。


「東京…か」

壁に寄り掛かってつぶやく。

「真昼さん…いるのかな」

「どうだった?照姉」

横から御津羽がひょこっと顔を出す。

「あら、御津羽。4日後に東京のほうへ行くわよ」

「東京に!?懐かしいなぁ…」

「そうね。黒鬼装備もいっぱいいるらしいわ」

「ほんとに!?すごい!!いろんな人とお友達になりたいなぁ…」

「だから早く準備しちゃいましょ。あまり荷物はないけれど…」

「うん」


立ち直りが思ったより早かったのに少し不安を思いつつも家路につく。



4日後

「儺遣少尉!この車です」

兵隊に東京へ移動するための車へ案内してもらった。

「少尉には臨時小隊を組んでもらいます。つまり三人の殲滅部隊を連れて東京へ行っていただきます」

「わかりました」

「では私はこれで」

兵隊がその場を離れると変わるように車から二人の男と一人の女が出てくる。照日よりは年上だ。

「儺遣少尉!同行する二戸、大野、美濃羽です」

「よろしくお願いします。儺遣照日です」

「皆さんの鬼呪装備は…」

「美濃羽は羅刹、二戸、大野は童子です」

「わかりました。では参りましょうか」


5人そろって荷物を積み終えたので出発する。

運転は二戸と大野が交代で行って、後部席では御津羽と美濃羽が歓談している。

「儺遣少尉は…黒鬼装備を?」

「御津羽でいいですよ。ええ。黒鬼です」

「すごい…その若さで」

「いえいえ…まだまだですよ」

「月鬼ノ組配属なんですよね…一之瀬中佐のもとで戦えるなんてうらやましいです」

「一之瀬中佐…初めてお会いします…」


守谷に差し掛かった頃。

「前方に吸血鬼発見!隊長どうしますか」

「敵は何名ですか」

「1,2,3…4匹です!こちらに迫ってきます!」

「わかりました。迎撃します。車を止めてください」


車を止めて吸血鬼と対峙する。そして皆一斉に鬼呪装備を展開する。

奇妙な陣で、御津羽が一人前衛、傍らに照日。後ろに三人が固まっている。


「行くよ、十塚の闇」

「来て、八雷の陽」

その言葉を紡いだ瞬間に敵の吸血鬼が一人消える。

「何っ!?」

「家畜が消えた!?」

「遅いわ」

次に近い吸血鬼が貫かれる。一瞬だった。後ろから御津羽を切ろうと瞬間で間合いを詰めてきたが照日の刀が切り裂く。

後衛を叩こうとした吸血鬼も三人に囲まれ、切り捨てられた。一瞬の出来事だった。


「吸血鬼殲滅終了しました!」

「お疲れ様です。皆さん」

今まで見たことないくらいに速やかに敵を屠ることが出来て皆驚いている。

「あの…先ほどの力は…」

「鬼の力ですよ」

見たことのない攻撃だったのでつい質問したが、帰ってくる答えは普通のものだった。

「強いですね…」

「いえいえ…そんなことは…」

あはは…と笑いながら車に戻っていく。

「じゃあ皆さん行きましょう」

照日がそう言ってみな車に戻り、新宿へ向かった。


1,2時間ほど車を走らせると、廃墟となった建物の群れの先に大きい壁が見えてきた。

「あれが渋谷ですね…」

「やっと着いたぁ…」

門の前で警備兵に車を止められ、照日が許可証を警備兵に渡す。

「吸血鬼殲滅部隊の方でしたか…少々お待ちください」


「どんな人がいるんだろうね。渋谷には」

「きっと強くて頼りがいのある人ばかりよ」

「誰か迎えに来てくれるのかな」

「とりあえずはお偉い様への挨拶かしら…あと真昼さんはどこにいらっしゃるのか…」

「真昼さん…ますます綺麗になってそうだよね」


「どうぞ、お通りください」

数分経って警備兵が門を開けてくれる。

「ありがとうございます」

そのまま門をくぐると大きい都市が見えてきた。

「流石渋谷…人が多いですね…」

「昔と比べたら…少ないけどね」

「それでも十分増えてきてると思いますよ」

本部が近くなってきたので車を止め、徒歩で移動していると目の前の壁に寄り掛かっている人がいた。

「お、やっと来たか」

こちらに気づくと少しだるそうにこっちを向く。

「えっと…」

「照日と御津羽はどいつだ?」

「私とこの子です」

二人が前に出る。

「そうか…」

少し考えこんでいる

「あの…お名前をお聞きしてもよろしいでしょうか…」

「俺は一之瀬グレン。お前らの上官だ」

「い、一之瀬中佐でしたか…!」

「あ、あの!」

御津羽が照日の隣からグレンに声をかける。

「どした?」

「真昼さんってどこにいますか!柊真昼さん!」

「真昼…まあいいからついてこい」

少しはぐらかされてしまうが、あとで教えてくれると思ったので文句なしに五人で本部に入っていく。


しばらく本部の中を歩いてグレンの私室に入る。

「これからお前らには月鬼ノ組に入ってもらう。隊は追って指示を出す。以上だ」

ものすごい簡単に短く指示を出されてしまう。

「あ、あの。グレン隊長。宿舎は…」

「あー……そうだったな。あとで小百合に案内させる。待ってろ」

「わかりました」

「後質問はあるか?ないな?じゃあ下がってよし」

そう言われたのでグレンの私室を後にしてとりあえず車の方に戻った。


「宿舎がわからないんじゃなぁ…荷物の置きようもないですね」

「困ったね…」

照日達が困って車で待っているとすぐに茶髪の女性が走ってくる。

「すみませ~ん!」


「えっと……どちら様でしょうか……」

「グレン様から宿舎の案内をするように申し付かりました。花依小百合と申します」

「儺遣照日と申します。案内よろしくお願いします!」

互いに握手をして宿舎へ案内してもらう。


このSSへの評価

このSSへの応援

このSSへのコメント


このSSへのオススメ


オススメ度を★で指定してください