S4(オリジナル
「クリア!」
男が後ろにいる女に向けて敵がいないことを告げる。
「よーし、よくやった」
周りには同じように銃を持っている男女が十人ほど。
「もうこの辺りには何もいないみたいね」
「だなぁ。外にいる奴らもイーリス達が始末してるだろうし」
と、話す金髪の男の数メートル先にはかつて人だった者たちが横たわっている。もう動く気配もないが。
「とりあえず足掛かりの入手だ。喜べ皆」
「姫さんよ、結構ここボロボロだがどうするんだ?直すのか?」
「そうねぇ…空輸で資材運び込んで数百人程度の人員と食糧で…と行きたいところだけどそんなに人も割けないからねぇ…」
「いつもの自動人形かい?」
「だねぇ…10人ばかし配備して、修復がある程度なったら次は駅だね」
「仙台駅…って言ったっけ?あそこを手に入れられれば鉄道輸送ができるようになるだろうな」
そう話しながら撤退の準備を整えながらも周りの警戒は怠らない。
「ひーめー様ー!おわりましたー!」
入り口の方から銀髪の女の子と静かそうな雰囲気のメイド服を着た女の子、そしてガタイのいい男が3人。
「こらこらそこ~警戒を怠らない!」
「はーい」
日本刀に着いた血を払いながらこちらへ歩いてくる。
「姫様。撤退の準備が整いました」
「はいはい。じゃあみんな!撤退するよ!」
手を叩いて集合の合図をする。
日の高いうちに空に輸送機が飛びたつ。
下を眺めると、廃屋が辺り一面に広がっている。しばらく飛んでいると蠢く人だった者が見える。
今やこの日本、東北以北は汚染地帯。汚染といっても立ち入りが出来ないわけではない。とある理由によりばらまかれた未知のウイルスが人類を媒介に感染を広げたが何とか北の地域に押しとどめることが出来た。
境界線にはバリケードに加えて厚い壁が建設されてじわりじわりと元の地域を取り戻しつつある。その歩みは牛歩レベルなのでまだまだ時間がかかるだろう。何人かはすでに生存者が見つかっているのでまだまだ何人も生存者がいるだろうと考えられている。
世界でも同じ理由で数多の地域が立ち入ることが出来ない。世界中で起こっていることなのだ。徐々に人ならざる者の生態もわかってきて対策が練られ始めている。人工衛星などが一部落ちて通信障害が起こっている地域があるためなかなか互いの国で協力することが難しいが繋がれる国同士で徐々に掃討作戦が練られ始めている。
彼女たちは今その危険地帯に入って一つの拠点になりそうな建物と生存者数人を確保したのだ。
もちろん生存者たちはきちんと隔離されている。もしかしたら保菌者かもしれないからだ。
これからセーフゾーンまでもどってもう一度同じ場所へ向かう。これは政府からの直接の命令でも何でもない。自分達の利益のため、行っている。これからの目標は北に残された自分たちの倉庫を取り返しに。倉庫の今の状況が全く分からないから急いで様子を見に行かねばならない。しかし倉庫の数がいかんせん多いので時間がかかる。いまだに一つ二つしか奪還できていない。
「早くホテル戻ってお風呂入ろーっと」
「あんまりちんたらしてる暇はないぜ姫さん」
姫と呼ばれた女は椅子から足をばたつかせて端末を見ている。
「いやぁわかってるけどさぁ、どーもああいうのをやった後ってなんか体についていそうで嫌なんだよね」
「そういうもんかねぇ」
そういって他愛のない話をしているともう目的地に着く。プライベート機が着陸する用の滑走路へ着陸する。すぐに拠点にしているホテルまで戻ってお風呂に入る。
「きもっちいい~」
「姫様、あまりはしゃぎすぎては…」
「わーかってるよ~」
そこそこ大きい風呂だから三人四人で入ってもまだまだ余裕がある。
「ねぇねぇひーさま。次戦車使うんだよね」
「ん?そうねぇ、ニ三両は入れたいねぇ」
「あれって結構古い奴じゃないの?」
「もちろん改装してるよ。流石にオリジナルじゃあ戦えないからねぇ」
「すでに共有化は済んでおりますのでいつでも使えます」
「ありがとね」
翌朝、輸送機が三機離陸する。もちろん彼女たちが乗っている。とても大きい輸送機なので目立つがそんなことは気にしない。
「みんなおはよう。これからまたあの汚れきった世界に行くよん」
姫が無線を使って朝の挨拶をする。
「今日の任務は荷物の搬入と防衛拠点化!周りの奴らは皆殺し!生存者いれば保護してね!」
「ずいぶんと軽いなぁ姫さん」
「大丈夫!君たちならできる!頑張ってね!」
「おうっ!」
皆の元気のいい挨拶が聞こえたところで輸送機が離陸する。
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