2020-05-11 20:39:00 更新

概要

艦娘が母親の提督のお話し


病院に産声が響く。


赤子を抱いているのは黒髪の美しい若い娘だ。

落ち着いたころに、夫が様子を見に来る。

「提督っ…!」

「赤城…よく頑張ってくれたな…!」

「ええ…♪見てくださいこのかわいらしい娘…」

「赤城似で凛々しい娘になるといいな…!」

「提督似でしっかりした娘になってほしいです」

窓の外の満開の桜を見る。

(そういえば…提督と出会ったのも桜が満開のころだったわね…)


(新しい娘が着任したらしいが…どんな娘なんだろうか…)

そんなことを思っているとタイミングよく扉がノックされる。

「入ってくれ」

「初めまして提督。航空母艦赤城です。よろしくお願いします」

(か…可愛いな…)

「提督…?」きょとん

「あ…ああ。よろしく頼む」

派手ではないが、思わぬ綺麗さに一瞬言葉に詰まってしまう。


そんな出会いがあってから一か月たったころ。

「秘書艦…ですか?」

「ああ。今日から秘書艦を頼みたい」

「私でいいんですか…?」

「もちろんだ」

「…わかりました。頑張りますね」

一か月経って執務にも慣れてきたころに秘書艦を命じた。もちろん、優秀で執務が早く正確に終わるからという理由もあるが単純に気になる娘をそばで見ていたいからだった。


ある日の夜

「多いな執務…」

「ですね…」うつらうつら

「ただもう少しで終わりそうでよかった。赤城のおかげだな」

「…」すやすや

「おや…疲れたのか…当然だな。もう終わるし私が片付けよう」

そっと赤城に毛布を掛ける。

そのまま一人で執務を続ける。赤城の寝顔を見すぎないように。


「ん…私…寝てた…?」

どのくらい時間が経ったかわからないが、ゆっくりと身を起こすと隣には提督が机に突っ伏して眠っていた。

「あらら…かわいい…じゃなくて風邪ひいちゃうからなんか被せないと…」

そこでかけられていた毛布に気がつく。

「あら…これ…。ふふっ ありがとうございます提督…」

そっと提督に掛け直す。


またまたある日。

「そろそろ帰って来る頃だろうか…」

出撃から帰ってくるのを待ってずーっとそわそわしている。今か今かと待っているとやっとドアがノックされる。


「入ってくれ!」

「ただいま戻りました。提督」

ススだらけで怪我もしている。

「怪我してるじゃないか!早く入渠してこなきゃ!」

「ご心配には及びません。そこまで傷は深くないので…」

「そういうことじゃなくて…!いいから早く入渠してきて!怪我治して!」

「わかりました…ありがとうございます」

赤城が入渠へ向かう。


提督「赤城さん経験値もうちょっと…で99…」


暫くして赤城が入渠から戻ってくる。

提督「おかえり」

赤城「ありがとうございます提督」

提督「そういえば…赤城さんもう少しで練度最大になる…ね」

赤城「そういえば…そうですね」

提督「すごいね…赤城さん」

赤城「提督のおかげですよ。提督がいるから…みなさんがいるからここまでこれたんです」


またある日

赤城「大本営からお手紙が届いていますよ提督」

提督「ん?なんだろう」受け取ってガサゴソ

書面にはこう書いてある。

簡単に言うと

『練度が最大となったものと強い絆を結ぶことができる。疑似的に結婚という形をとる』

提督「なるほど…へぇ…」

赤城「何が書いてあったのですか?」

提督「んー…もう少し秘密!」

赤城「もう…わかりました」


提督(99になったら言おう…!)


そして

とある海域にて

加賀「敵艦隊撃滅を確認。勝利です」艦載機からの通信を聞く。

赤城「やりましたね加賀さん!」

加賀「ええ。今回もうまくいきました」

金剛「お疲れさまネ~!」

利根「さあ早く帰投するのじゃ!」

赤城「ええ。そうしましょう」


帰投中

鈴谷「そういえば赤城さん今の戦闘で練度最大になったんじゃないですかー?」

赤城「そういえば…そうですね」

鈴谷「おめでとうございま~す!」

加賀「おめでとうございます…!」

赤城「ありがとうございます」


全員無事に母港へ帰投する。

赤城「私先に報告に行ってきますね」

鈴谷「は~い!」

加賀「よろしくお願いします」


赤城(練度最大になったこと言ったら提督褒めてくれるかしら…だといいなぁ♪)

執務室の前に来るが改めて練度最大になったことを思い、一つの区切りになったのでで少し緊張してしまう。

コンコン

提督「入ってくれ」

ガチャ

赤城「失礼します…」

提督「作戦お疲れさま赤城さん」

赤城「ありがとうございます」

提督「ついに練度最大になったんだね…」

赤城「ええ…!みなさんのおかげで…ここまで来れました…」

提督「おめでとう…赤城さん!」

赤城「提督…ありがとうございます!」

提督(よし…渡すぞ!)

提督「あの、赤城さん!」

赤城「はい?」

提督「言いたいことがあるんだけどいいかな…」

赤城「もちろんです」

提督「今まで一緒にいて私を支えてくれてありがとう。いっつも凛々しくて優しい赤城さんを見てて思った。


好きだよ赤城さん。結婚してほしい!」


そう言って指輪の入った箱を開けてこちらに見せる。

赤城「て…提督?!結婚!?」いきなりのことで混乱し、赤面している。

提督「うん。結婚してほしい」

赤城「わ…私なんかでいいんですか…?!」

提督「赤城さんがいいの!日常で見てる赤城さんすべてが好きなの!」

赤城「提督…ありがとうございます…!」


赤城「これからよろしくお願いします…!!」目に涙を少し浮かべながら笑顔で答える。


その日のうちに鎮守府内にこのことは伝わった。

加賀「赤城さん…おめでとう…!」

赤城「加賀さんありがとう…!」


隼鷹「提督やるじゃ~ん!おめでとさん!」

提督「あぁ…ありがとな!」


甘味処では

間宮「赤城さんおめでとうございます!めでたいので特盛にしておきますね!」

特盛あんみつドン

赤城「間宮さん…!ありがとうございます!!!!」


明石「それで提督結婚式いつにしますー?」

提督「そーだなぁ…いつがいいだろうか」

明石「んー…この日なんていかがでしょう」

提督「確かにその日なら予定が合いそうだ」

明石「じゃあこれで企画しますね」

提督「頼む」


結婚式当日

加賀「とても綺麗ですよ…赤城さん」

赤城「ありがとうございます…加賀さん」


そして提督と強い絆を結んだ。


赤城(ケッコンした後少ししてこの子を授かったのよね…)


青葉「号外です号外です!赤城さんが提督との子を身籠ったそうです!!!」

鎮守府内が騒然となる。


赤城「やりました・・・提督!私たちの子供です…!」

提督「やったな…!大切に育てよう」

赤城「ええ!」



提督「どうした赤城?ぼーっとして」

赤城「ああいえ提督。提督と出会ったときのことを思い出してて…」

提督「なるほどな。そういえばあの時も桜満開だったな」

赤城「ええ・・・きれいですね」

提督「うんうん」

赤城「そういえばこの子の名前はどうします?」

提督「一応いくつか候補はあるんだが…」

赤城「教えてください!」

提督「緋城…なんてどうだろうか」

赤城「緋城…いい名前だと思います!」

提督「じゃあこの子は緋城で決定だな」

赤城「はいっ!」


数日して

提督「そうだ。写真とってもいいか?」

赤城「もちろんです!」緋城を抱いて。


パシャッ


満開の桜をバックに二人の写真を撮った。


赤城「元気な子に…育ってね」


提督「そういえば…先に必要になりそうな物買っておくか」

赤城「よろしくお願いしますね提督」

提督「任せてくれ!」


さらに数日後

赤城が退院して鎮守府に戻ってくる。

赤城「ただいま帰りました」

提督「赤城おかえり!」

加賀「赤城さんおかえりなさい」

赤城「提督、加賀さん、ありがとう」

加賀「可愛い赤ちゃんですすね」

赤城「でしょう?今度加賀さんにも抱っこさせてあげますね」

加賀「ありがとうね」


こうして、提督と赤城の赤ちゃんは鎮守府で大切に大切に育てられた。

皆が皆この赤ちゃんを可愛がっていた。

そして数年の月日がたった。


緋城「ままー!」

赤城「なーにー緋城?」

緋城「だっこ!」

赤城「だっこね。よいしょ」緋城をだっこする。

緋城「わーい!」


加賀「緋城ちゃんはあまえんぼですね」微笑む

赤城「そこが可愛いんですよ~」

緋城「あー!加賀ねぇー!」

加賀「久しぶりね。元気そうで何よりだわ」

緋城「えへへ~!」

加賀「可愛いわ…」


加賀「来年は小学校でしたっけ?」

赤城「ええ。もう少ししたら学習用品をそろえなきゃですね」

加賀「楽しみです」

赤城「みんなで選びに行きましょうか」

加賀「それがいいと思います」


提督「さっき加賀と何を話してたんだ?」

執務をしながら赤城に尋ねる。

赤城「ああ、見ていらしたんですね。みんなで緋城の学習用品をそろえに行こうと話してまして」

提督「なるほどな。確かに皆で選ぶのは良さそうだ。私はあまりセンスないしなぁ」

赤城「ふふっ。センスはあまり関係ないと思いますよ」

提督「そうかなぁ。」

赤城「そうですとも!」

提督「そっか。じゃああと予定を組んでおいてもらえるか?」

赤城「わかりました。声かけてみますね」

提督「頼む」


数か月後

赤城「加賀さんと二航戦の二人、金剛さんと榛名さんに声をかけてみましたが構いませんね?」

提督「もちろんだ」

赤城「では次の日曜に皆で行きましょうね」

提督「ああ!」


日曜


赤城「いい天気…!」

加賀「晴れてよかったです」

赤城「早く着替えて行きましょう!」

加賀「ええ」


提督「おお…今日の私服も可愛いな!」

赤城「ふふっ。ありがとうございます提督」

蒼龍「お熱いねぇ…」ボソッ

飛龍「だねぇ…」


緋城「やったー!加賀ねーにそーりゅーねえとひりゅーねえもいる!!!!」

金剛「私たちもいるデスよー!」

榛名「緋城ちゃんおはようございます」

緋城「わぁ!こんごーねーにはるにゃねえ!」


赤城「じゃあ行きましょうか」


大きい街に出ていろいろな商店が入ってるビルに入る。

赤城「ここならいろんな文房具が売ってそうね」

提督「だなぁ…早速あそこに新年度用のコーナーがあるな」

赤城「行ってみましょう」


コーナーには所狭しと文房具がおいてある。

主に小学生用のものが多い。

提督「いろんなものがあるんだなぁ…子供のころこんなに種類なかったからなぁ」

赤城「そうなんですか?」

提督「ああ。みんな同じような文房具を使っていたなぁ」

赤城「へぇ~…」


蒼龍「緋城ちゃんこれなんてどうかなぁ~?」

蒼龍の手には、緋城くらいの年の娘に人気のキャラが描いてある筆箱がある。

緋城「それ可愛いね!」

飛龍「こっちも良くない?」

赤系の色を基調とした筆箱を見せられる。

緋城「可愛い色…!」


緋城「んー…筆箱は…こっち!」

結局選んだのは青系を基調としたキャラ物の筆箱だ。

赤城「青かぁ…確かに緋城にも似合いそうだわ」

提督「とってもよく似合ってる!」


一行は次にノートを見に行った。

赤城「ノートといっても大体買うノートってこのノートですよね?」

赤城の手には某緑色の学習帳がある。

提督「だろうなぁ…ただほかにもあるっぽいし見てみるか」


赤城「こういうシンプルなノートならシールとかでデコりやすそうですね」

提督「シールか…緋城そういうのもやるのかな…」

赤城「緋城~」

緋城「なにままー?」

赤城「緋城ってシールとかペタペタするの好き?」

緋城「好きだよ?」

赤城「じゃあこのノートでいろいろペタペタしてみる?」

緋城「…!楽しそう!」

赤城「じゃあこのノート買っておこっか」

緋城「うん!」


飛龍「おお!このペン使いやすいなぁ~」

蒼龍「こっちも良くない?」

赤城「ボールペンも一本くらいあると便利ですかね」

飛龍「ですね!」

赤城「色は多いほうがいいかしら…」

蒼龍「赤と黒と青のやつでいいんじゃないんでしょうか?」

赤城「まぁ基本使うのはその色でしょうしね…」

提督「ついでに切れてたインクも買っておこう」


緋城「この消しゴム可愛い!!!!」

緋城が飛龍と一緒に消しゴムコーナーを見ている。

飛龍「いろんなカバーあるんだねぇ」

蒼龍「だねぇ…緋城ちゃんこれなんてどうかな?」

蒼龍がカラフルな消しゴムを差し出す。

緋城「これもいい!!」


このほかにも皆で様々な文房具をみて、最後にランドセルを見に来る。


緋城「ランドセルだ!!!!」

提督「うお…カラフルだなぁ…」

赤城「鮮やかですね…」

飛龍と蒼龍は緋城と一緒にランドセルの近くまで寄って行っていろいろ見始める。

提督「基本は縦なんだろうけど横型もいいなぁ」

緋城「縦がいいー!」

赤城「縦のほうが色も多いものね」

緋城「からふる…」

飛龍「緋城ちゃんは…やっぱ赤とか?」

蒼龍「青もいいと思うけど…」

緋城「青赤どっちもきれい…」

赤城「試しにしょってみる?」

緋城「うん!!!」


緋城が試着スペースから青いランドセルを背負って出てくる。

緋城「どう!?」

赤城「結構可愛いわね」

蒼龍「やっぱ青似合ってるよ!」

緋城「えへへ~」

飛龍「こっちもしょってみて!」

と言って赤いランドセルを渡してくる。

緋城「うんっ!」


緋城「…よいしょ!どー?」

くるりと一回転して飛龍に見せる。

飛龍「ほあああ!可愛いい!!!」

赤城「緋城はどっちがよかった?」

緋城「うーん…そうだなぁ…」

赤城「ゆっくり決めていいからね?」

緋城「青!」

蒼龍「おお緋城ちゃんわかってるー!」

飛龍「まぁ青も十分似合ってたからね!」

赤城「じゃあこれにする?」

緋城「うん!!!!」


赤城「じゃあだいたい決まったかしらね…」

緋城「かなぁ~?」

蒼龍「あと適当にまわりながら足りないものは買っていけばいいんじゃないですか?」

赤城「そうね…」


緋城が選んだものだけとりあえず買って後はぶらぶら店を回った。

赤城「もうお昼の時間ですね…」

提督「だな…緋城何か食べたいものあるか?」

緋城「うーん…何でもいいよ!」

赤城「なんでもいいかぁ…この人数ならファミレス安定かしら…」

蒼龍「ファミレス!いいですね!」

榛名「ちょうどこの建物にありますしね」

赤城「じゃあ行きましょうか」


赤城「結構いい雰囲気のファミレスね」

飛龍「いいですよね~このチェーン店!」

蒼龍「私達も良く来るんですよ~!」

緋城「おいしそうな料理いっぱい…」

提督「何を食べる?」

緋城「スパゲッティ!」

赤城「私はハンバーグご飯大盛りで」

加賀「私も同じものでお願いします」

飛龍「私ステーキ!」

蒼龍「スパゲッティかなぁ」


皆注文して蒼龍たちが緋城を連れてドリンクバーのほうへ向かう。

赤城「緋城もみんなと仲良くてよかったですね」

提督「だな。これからもずっとああいう景色が見れるといいな…」

赤城「ですね」


瑞鶴「あと十年したらほんとに姉妹みたいになってそうだよね」

翔鶴「自分がお姉ちゃんって言われたいんでしょう?」

瑞鶴「それを言われちゃ…そうなんだけどさ…」

翔鶴「全く…瑞鶴ったら」


緋城「どれ飲もうかなー」

飛龍「はいコップ!」

緋城「ありがとう飛龍おねーちゃん!」

飛龍「可愛いなぁ」

緋城「あー…届かない…」

一番上のボタンを押そうとしてはねるがなかなか届かない。

蒼龍「押してあげるよ緋城ちゃん」

緋城「ありがとー蒼龍おねーちゃん!」

蒼龍「どーいたしまして!」

ニコニコ微笑みながらジュースを取ってあげる。

飛龍「妹みたい…」

蒼龍「ほんとね…」


翔鶴「緋城ちゃん達戻ってきたし私達も取りに行きましょう瑞鶴?」

瑞鶴「だねー」

緋城「いってらっしゃーい!」


翔鶴達が戻ってきたところで料理が届く。

店員「ごゆっくりどうぞ~」


緋城「いただきます!!!」

赤城「いただきます」

もぐもぐ

緋城「おいしいっ…!!」

赤城「うん。これはおいしいわね」

蒼龍「なかなかおいしいっ」

加賀は無言だが雰囲気がキラキラしていて食べるのに一生懸命になっている。

緋城「お家でもたべてみたい!」

赤城「ふふっ。今度作ってあげるわね」

緋城「ありがと!」

提督「ほほえましいな…」


翔鶴「家族ってキラキラしてるわね…」

感慨深げにつぶやく。

瑞鶴「だねぇ」

翔鶴「少し…うらやましいわ…」


赤城「いっぱい食べて大きくなるのよ」

緋城「うんっ!!」


食べ終わって提督がお会計を済ませ、その間に皆店を出る。

緋城「おいしかったー!」

赤城「よかったね。緋城」

頭を撫でながらそう言う。

緋城「うんっ!」


そうしていろいろなものを買って、鎮守府へ戻ってきた。

赤城「一旦お片付けしましょうね緋城」

緋城「はーいっ!」

そういって新しく買った学習机に買ったものを片付ける。

赤城「よくできました」

緋城「えへへっ」

頭をぽんぽんと撫でる。




入学

加賀「赤城さん、緋城ちゃん二人ともきれいだわ」

赤城と緋城が入学式に行くために正装をして執務室にいる。

赤城「ありがとう。加賀さん」

緋城「加賀お姉ちゃんありがとう!!」


提督「用意できたか?」

奥から提督がやってくる。

赤城「ええ。しっかり準備できました」

緋城「できたー!」


提督「よし。じゃあそろそろ行くか。加賀、鎮守府頼んだぞ」

加賀「わかっているわ」

赤城「よろしくお願いしますね。加賀さん」

緋城「お願いっ!加賀お姉ちゃん!」

加賀「ええ。任せて」


提督「じゃあ行ってくる」

赤城「行ってきます」

緋城「行ってきまーす!」

加賀「行ってらっしゃい」


提督の私物の車で学校へ向かう。

運転は明石だ。


明石「じゃあ行ってらっしゃい緋城ちゃん」

緋城「行ってきまーす!」


小学校はすでに入学式に出る保護者や生徒がたくさんいた。

もちろん皆普通の一般人である。


赤城「えーっと…保護者はこっちみたいですよ。提督」

提督「そっか。緋城はあっちだな」

緋城「ん!行ってくるね!」

赤城「いってらっしゃい。緋城」

手を振りながら緋城が教室の方へ駆けていく。


きょろきょろしながら見慣れぬ教室に入っていく。

緋城(私の席は…)

見つけた自分の席に座る。


周りにはもう結構な人数座っている。

緋城(お友達できるかな…)


暫くして先生と思わしき大人が入ってきて軽く説明したあと体育館へ移動する。


提督「もうそろそろか…」

赤城「そわそわしすぎですよ。提督」

提督「す・・・すまん…」


新入生が先生を先頭にして入場してくる。

提督「おお…緋城ちゃんと歩いているな…」

赤城「心配ないですよ。緋城は意外としっかりしてるんですから」


つつがなく入学式が終了して、教室に児童が移動する。


緋城(皆もうお友達なのかな…)

周りではすでにある程度のコミュニティが出来上がっている。


すると、後ろから肩をトントンと叩かれる。

緋城「?」

「ねえあなた、名前は?」

緋城「緋城…だけど…」

「緋城ちゃん…これからよろしくね!」

満面の笑みで女子生徒が浮かべる。

緋城「あなたの名前は?」

「私?真昼だよっ」

緋城「真昼…真昼ちゃんか」

真昼「そうよ!よろしくね」

緋城「うんっ!」


軽く話を聞いた後、すぐに解散となった。


外では父兄らが桜舞う中子供たちを待っていた。

五分ほど待ったところで緋城たちが出てきた。

赤城「緋城?楽しかった?」

緋城「うん!もうお友達できたよ!!」

赤城「あら、よかったわね」

緋城「うんっ!」

提督「やっぱり子供はすごいな…」


真昼「じゃあね緋城ちゃん!」

少し離れたところから手を振ってくる。

緋城「じゃあねー!」

緋城も手を振り返す。


赤城「ほほえましいですね…提督」

提督「だな」


鎮守府に戻る。


緋城「楽しかった~♪」

ルンルンで鎮守府の廊下を歩く。

提督「転ばないようになー」

提督の忠言もどこ吹く風。緋城が執務室をぎぎっと開けて入っていく。


加賀「あら」

緋城「加賀お姉ちゃん!」

加賀「緋城ちゃんおかえりなさい」

緋城「ただいまっ!」

加賀の前で可愛く敬礼をする。


加賀が緋城をなでなでしていると、赤城たちも部屋に入ってきた。

赤城「加賀さん。ただいま」

加賀「赤城さん。おかえりなさい」

提督「留守番ありがとうな」

加賀「いえ」


緋城「楽しかった~♪」

加賀「よかったわね。緋城ちゃん」

緋城「うんっ!もうお友達できたんだ!」

加賀「あら…早いのね」

緋城「えへへ」


コンコンと扉をノックして、金剛達が入ってくる。

提督「どうしたんだ?」

金剛「Hey!提督~!緋城ちゃん入学式だったんだってネ~」

提督「ああ。そうだぞ」

金剛「じゃあ今日入学式おめでとうの会するネ!」

緋城「おめでとうの会!?ほんと!?」

榛名「ええ。みんなでちょっと前から計画してたんですよ」

提督「いいな。ぜひやろう」

赤城「楽しみです」


緋城「パーティー楽しみ~!!」

赤城「そうね。私も楽しみだわ」

赤城の膝の上で頭を撫でられながら緋城が髪を梳いてもらっている。

提督「緋城も髪がきれいだな…」

緋城「ほんと!?」

赤城「ええ。とっても綺麗よ」

緋城「やったぁ!」

足をぶらぶらさせながら赤城にもたれかかる。


榛名「赤城さん、私にも緋城ちゃん撫でさせてもらえませんか…?」

赤城「いいですよ」

緋城を持ち上げて榛名の膝の上に乗せる。

緋城「榛名お姉ちゃんのおひざ…!」

ルンルン気分で膝の上で足をパタパタさせる。

榛名「緋城ちゃんさらさら…」

緋城「榛名お姉ちゃんもつやつやだよ!」

互いに髪を触りあう。

榛名「赤城さんに似てるわ…」

赤城「ありがとう。目元は提督に似てるのよ」

榛名「確かに…」

緋城「えへへ。榛名お姉ちゃん暖かい~」

ぎゅっと榛名に抱き着く。

榛名「緋城ちゃんも可愛い~!」

ぎゅっと抱き返す。

赤城「ほほえましいわね」


緋城「ふにふにで気持ちいい…」

榛名「あははっ。包み込みますよ~」

赤城が後ろから榛名ごとぎゅっと抱きしめる。

赤城「ふふっ」

緋城「サンドイッチあったかーい!」

赤城「ふふっ。緋城もふにふにしてて気持ちいいわ」

榛名「間近で見るとほんとにそっくり…」


金剛「準備できたヨー!」

扉を勢いよく開けて入ってくる。

金剛「って…何してるの」

榛名「あ、これはその姉様…」

赤城「もう準備できたんですね」

緋城「パーティ!?もう始まるの!?」

金剛「そうデスよ緋城ちゃん!!さあ行きましょー!!」

手を引いて案内する。

緋城「わーい!」


赤城たちも金剛についてパーティー会場へ向かう。

間宮がすっかり手作りパーティー会場になっていた。

緋城「おおおお!!」

蒼龍「緋城ちゃんおめでと~!」

飛龍「おめでと~!」

緋城「ありがとっ!蒼龍お姉ちゃん!飛龍お姉ちゃん!」


間宮と鳳翔が料理を運んでくる。

緋城「おいしそー!」

間宮「いっぱい食べてくださいね」


金剛「緋城ちゃん。誕生日おめでとー!」

金剛を筆頭に皆がクラッカーを鳴らしつつ緋城におめでとうを言っていった。

緋城「みんな…ありがとうっ!」

大耀のような笑顔を浮かべて礼をする。


赤城「じゃあ…料理食べましょうか」

緋城「食べる!」

提督「どれもおいしそうだな…」

金剛「テイトク栄養はきちんと考えるんだヨ?」

提督「あ、ああ…わかっている」


緋城「この鶏おいしい~!」

間宮「それはよかった。まだまだあるからいっぱい食べてね」

榛名「この煮物もおいしいです…!」

金剛「ローストビーフも負けないくらいおいしいネ!」

鳳翔「時間をかけた甲斐がありましたね」


隼鷹「これ酒にめっちゃあうじゃ~ん!」

日本酒片手におつまみをつまんでいる。

提督「確かに…!流石だな鳳翔…」

鳳翔「いえいえ。飲みすぎないでくださいね?」

提督「ああ」

既に隼鷹の近くには酒瓶が二、三本転がっている。

隼鷹「提督飲んでるかぁ~?」

那智「そうだぞ提督。飲んでいるか?」

そういって二人とも酒を注ごうとする。

提督「あ、ああ…」

酔っぱらいに戸惑いつつも猪口を出して注いでもらう。


緋城「金剛お姉ちゃんあーん!」

金剛「あーん」

緋城は金剛や榛名たちにあーんをしている。

緋城「おいしい?」

金剛「とってもおいしいネ!」

榛名「次は榛名です!」

緋城「榛名お姉ちゃんあーん!」

榛名「あーん」

榛名「おいしい…!」


金剛「次は緋城ちゃんにしてあげるネ!」

緋城にあーんのお返しをする。

緋城「あーん」

緋城「おいしいっ!」

金剛「よかった!」


赤城は緋城を金剛達に任せて加賀達と黙々と料理を食べている。

お酒も進むようで隼鷹達よりは飲んでいないが、相当飲んでいる。

二人とも表情に変わりがないからわかりにくいが。


緋城「そろそろお腹いっぱいかも…」

金剛達と食べさせ合いをしていたら結構な量の料理を食べていた。

榛名「確かに…少し食べ過ぎてしまったかもしれません…」

金剛「私たちはそろそろお開きカナ…?」

酔っぱらい組はどんどん盛り上がっていく。


緋城「お姉ちゃんトランプしよー?」

執務室からトランプを持ってくる。

金剛「おっ。何やるネ?」

緋城「うーん…ばばぬき?」

榛名「いいですね。やりましょう!」

瑞鶴「じゃあ私もやるっ!」


緋城「結構枚数少ない…」

榛名「うーん…あんまり減りませんね…」

瑞鶴「これは勝てるかな~?」

金剛「oh…」


緋城「じゃあ緋城から行くね!」

隣に座ってる榛名のカードを一枚引く。

緋城「これっ!やったそろった!」

榛名「じゃあ私が引きますね」

瑞鶴のカードを引く。

榛名「うーん…」

瑞鶴「とりゃっ!」

金剛のカードを引く。

瑞鶴「あぅ…」

金剛「今度は私の番ネ!」

緋城「あー…」

金剛がぱさっと組み合わせを放る。


緋城「そろわない…」

瑞鶴「あ、そろった…」

最後の組み合わせを放って瑞鶴が上がる。

緋城「あう…瑞鶴お姉ちゃんつよい…」

瑞鶴「でも緋城ちゃんももう上がれそうじゃん!」

後ろからのぞき込んでみる。


緋城が次の手で榛名からカードを引い上がる。

緋城「やったぁ!」

榛名「あちゃー…」

金剛「ビリにはなりたくないネ…」


榛名「行きます!」

金剛の持っているカードを悩んでから一枚とる。

榛名がそっとそのカードを見ると、ハートの7。そろっていた。

榛名「やりました!」

金剛「あちゃぁ…負けちゃったネ」

緋城「金剛お姉ちゃんどんまい!」

ぎゅっと後ろから抱き着く。

金剛「緋城ちゃん…次は負けないネ」

と言いつつ緋城の頭を後ろ手になでる。


だんだんと緋城の瞼が落ちてくる。

榛名「そろそろ緋城ちゃんお休みしますか?」

緋城「まだ…みんなと遊ぶ…」

段々と呂律が回らなくなってくる。

金剛「ほーら。もう呂律が回ってないネ…」

緋城「う~…」

榛名と金剛で緋城をおぶって鎮守府内のベッドに寝かせる。


緋城はもう眠りについている。

金剛「可愛い寝顔ネ…」

榛名「守りたくなりますね、姉様」

金剛「ネ。緋城ちゃんが綺麗って言われる頃にはこの戦いも終わらせたいワ」

榛名「頑張りましょう…!」




時は経ち。



緋城「金剛さーん!」

金剛「お?緋城チャーン!どうしたネ?」

緋城「遊びに来ました~!」

緋城が金剛の方へ走ってきて飛んで抱き着く。

金剛「元気いっぱいネ~!」

緋城「金剛さん好きだもん♪」

金剛「もう…緋城ちゃんカワイイね~!」

二人でぎゅーっと抱き合っている。


「緋城ちゃんいっつも遊んでるけどいつの間にかこんなに大きくなってたのネ」

「えへへ…金剛さんとおんなじくらいぼんっきゅっぼんっって感じになりたいので!いっぱい食べていっぱい寝てます!」

「緋城ちゃんならすぐに大きくなるネ!もう結構身長もおっぱいも大きくなってきてるし」

「ほんと!?」

「ほんとほんと!」

「やったぁ~!」

「いい子ネ~!うりうり~!」

懐に緋城の頭をいれて撫でる。

「えへへ」


「じゃあテートクのとこ行く?」

「はいっ!」



赤城と提督が静かに書類を片付けていると、ノックされてからすぐに扉が勢いよく開けられる。

金剛「テートクー!緋城ちゃん連れてきたネ!」

提督「お…おう。ありがとな」

赤城「もう少し静かに…お願いしますよ金剛さん…」

金剛「sorryネ~」


緋城「お母さん!軽いお食事作ってきたよ!」

赤城「あら…ほんとに?」

緋城「うん!鳳翔さんに教えてもらったの!」

そういって重箱を執務室の机の上に置いて開ける。

中にはおいしそうな料理が所せましと置いてある。

赤城「食べてもいい?」

緋城「もちろん!食べて食べて!」

赤城「いただきます」

唐揚げを一つつまんで口に運ぶ。

緋城「どう…?」

赤城「…うん。おいしいわ!よくできてる」

緋城「やったぁ!」

金剛も横から一つ取って食べている。

金剛「美味しいネ!緋城ちゃんはいいお嫁になる!」

緋城「ほんとですか!?嬉しい…!」

赤城「提督もすぐに戻ってくるはずだから戻ったら食べてもらいましょうね」

緋城「うんっ!」


提督がしばらくして戻ってくる。

提督「お。緋城来てたんだな」

緋城「うん!お料理作ってきたから食べて!」

提督「おお。じゃあいただくよ」

そういっておかずを一つ、口に運ぶ。

提督「ふんふん…うまいな」

緋城「ほんと!?」

提督「ああ、どんどんうまくなってると思うぞ」

緋城「やったぁ!間宮さんに報告してこなきゃ!」


だだだっと走って間宮に向かう。

赤城「元気ですね。提督」

提督「それが一番だよ」


間宮の引き戸を勢いよく開ける。

緋城「間宮さーん!」

間宮「はーい」

調理場の方から手を拭きながら間宮が出てくる。

緋城「間宮さん!お料理うまくいきました!!!」

間宮「あら、やりましたね。小春ちゃん」

緋城「いっぱいほめてもらえました!」

間宮「じゃあ、もっとスキルアップしなきゃですね」

緋城「はい!お願いしますっ!」

間宮「次は何作りましようね」

緋城「美味しい和食…とかでしょうか」

間宮「和食…料亭とかのレベルは流石にまだ早いですよね…とりあえず夕食のレパートリー増やしましょうか」

緋城「ですね。まだ種類が少ないですし…」

間宮「頑張りましょうね。緋城ちゃん!」

緋城「はいっ!」


そのあと提督たちの執務が終わるころまで間宮とお料理特訓をしていた。

この間にもめきめきと上達していった。


間宮「また一つうまくなりましたね」

緋城「ありがとうございます」

緋城「今日もありがとうございました。間宮さん!」

間宮「どうしたしまして緋城ちゃん」


間宮を出て緋城は執務室に戻り提督と赤城と合流して一緒にうちに帰る。

赤城「久しぶりですね。三人そろって帰るのは」

提督「だなぁ。こういう時間もいいもんだ」

緋城「たーのしい~♪」


提督「そういえば緋城と同世代の娘が友人のところに転がり込んだと聞いたな…」

赤城「転がりこんだ?」

提督「ああ。なんでも拾ったらしい」

赤城「拾った…?どういう」

提督「詳しくはよくわかんないけど…」

赤城「同世代ならいつか一緒に緋城と遊べるかもですね」

提督「だな」


夕焼けを背景に歩いている姿はとても幸せそうな家族だ。


赤城「緋城。ちょっとおいで」

緋城「ん?どうしたの?」

赤城が自分の部屋へ緋城を呼び込む。

緋城「なになに?お母さん」

赤城「いいものをあげるわ」

そういって赤城の部屋に連れていかれる。

「いいものって…?」

「これよ」

そういうと赤いリボンを緋城に渡す。

「リボン…真っ赤でキレイ…」

「そうでしょう?私が昔から使っていたやつなのよ」

「そうなの!?お母さんの使ってた…」

「だから、今日これをあげるわ」

「えっ…くれるの!?」

「ええ、あげるわ」

そういうと緋城の後ろに回って髪を結い始める。

赤城と同じくらいつややかでさらさらな黒髪だ。触っているだけで幸せになる。

「よし、できたわよ」

「ありがと!お母さん!」

振り返ってがしっと抱き着く。

「あらあら、甘えんぼさん?」

満更でもなさそうにぎゅっと抱き締めて頭をなでる。

「えへへ、お母さんの匂い…♪」

「もう…かわいいわ」

ぎゅっと抱き締めていると様々な思いが頭をめぐる。



「提督。急に呼び出してどうしたんですか?」

「すまない、急に。明日前話した友達の鎮守府に行ってくれないか?」

「構いませんが…どうして?」

「この書類を持って行ってほしいんだ」

茶封筒を渡してくる。

「これは…?」

「ちょっとな。緊急の用事ではないんだが」

「わかりました。お任せください」


その日の夜。別の鎮守府の提督に会うのでいつもの服にアイロンをかけていると後ろから緋城がちらっと見てた。

「あら…?どうしたの?緋城」

アイロンを一旦おいて緋城の方を向く。

「お母さん明日どこか行くの?」

「少しお仕事で遠出するのよ」

「お仕事かぁ…大変だね」

「大丈夫よ。少しお荷物を届けるだけなんだから」

「気を付けてね。お母さん」

「ええ。お土産期待しててね緋城」

頭を軽く撫でると緋城はそのまま自分の部屋に戻る。


「じゃあ、行ってきますね」

赤城が朝早くに家を出て手紙を届けに鎮守府へ向かう。

「いってらっしゃーい…」

寝ぼけ眼をこすりながら赤城を見送る緋城。まだいつも起きる時間には早すぎるので部屋に戻って二度寝に勤しむことにした。


次に目を覚ました時は提督が部屋の扉を叩いていた。

「そろそろ起きろよ~」

「は~い…わかってるよ~…」

「朝ごはん出来てるからな~」

少し大きな声でそう言って階段を下りて行く。軽く身だしなみを整えてリビングへ行くと、いつもよりは簡素な、けれどおいしそうな朝ごはんが用意されていた。そのまま冷蔵庫からお茶と牛乳とコップを取ってきてテーブルに乗せる。

「ん。おいしそうだね」

「まぁ多分に冷凍のお世話になったからな」

「「いただきます」」


いつもとは違うけれどいつもと同じように支度を終えて学校へ向かう。

最近の緋城はどんどん姿が赤城に似てきていて、学校では物静かなかわいい娘の印象を持たれている。

「緋城ちゃんおはよ~」

「おはよ~」

友人も少なくはなく朝に挨拶をしてくれる人もまぁ多い方だ。先生からの評判も悪くはない。

来年には生徒会に入れるかもしれない。とのうわさもある。本人はあまり興味がなさそうだが。

「ねぇねぇ緋城ちゃん宿題見せてっ…!」

「しょうがないなぁ…」


いつもと変わらない学校生活を終えて家に帰ると、ちょうど赤城が帰ってきていた。

「あら、おかえり緋城」

「ただいまー。早かったね、お母さん」

「ええ。思ったより用事が早く終わったからね」


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