2020-05-25 04:25:10 更新

少女が真夜中、机の上でため息をついている。

少女「はぁ…」

少女は小春。今年で19になる大学生だ。

小春「瑞鶴さんかっこいい…」

この娘は若い姉弟提督の下で暮らしている、提督志望の少女だ。

ちょくちょく鎮守府に行って様々な艦娘と話したり、遊んだりしている。

最近小春はよく空母寮に行って遊んでいる。お目当ては五航戦の瑞鶴だ。とても小春と仲が良くある種の尊敬をされている。

小春「今度お菓子持って行こうかな」

ふとそんなことを思ってみる。


「ん?小春ちゃんキッチン使うの?」

「はい!少しお菓子作ろうかなって」

「あとで少し分けてもらってもいい?」

「もちろんです!」

「やったぁ。小春ちゃんのお菓子美味しいからなぁ」

「ありがとうございます」

嬉しそうに微笑んで、材料の用意を始める。


(こんなかわいいのに浮いた話を聞かないのは少し不思議だなぁ…)

小春と一緒に暮らし始めて何年も経つが、浮いた話を聞いたこともないし家に男を連れてくることもない。

「~♪」

鼻歌を歌いながら調理している。

「鼻歌も可愛いなぁ」

小春には聞こえないくらいの声でつぶやく。

「こんな感じでいいかなぁ」

材料を合わせて捏ねながら型を探す。



オーブンにクッキーを入れて焼き始める。

「ふぅ……あとは焼きあがるのを待ちましょう」

「お疲れ様。小春ちゃん」

自然に皿洗いをして、二人分のお茶を淹れている。

「姫菜さん…ありがとうございます」

「いえいえ~」

頭をぽんぽんと叩きつつリビングにお茶を運んでいく。

その後ろを小春がついていく。


「あのクッキー誰にあげるの?」

「えーっと…空母の方々に…」

「そういえば最近よく空母寮のほう行ってるものね」

「えへへ…いろんなことを教えてもらってます」

「うんうん。仲がいいことはいいことね」


お茶をすすりつつ小春が尋ねてくる。

「姫奈さん…瑞鶴さんと翔鶴さんってどんなお菓子が好きなんでしょうか…」

「あの二人…」

「はい…いろいろお世話になっているので…」

「なるほどね。そうだなぁ…」


小春が姫菜の次の発言を聞き逃すまいと構える。

「そうだねぇ……小春ちゃん作った物なら何でも喜ぶと思うけど…。和菓子も洋菓子も二人とも好きだね」

「なるほど…クッキーの次は和菓子に挑戦してみようかな…」

「いいね和菓子!」

「本買ってきて少し練習してみます!」

「試作品できたら食べさせてね」

「もちろんです!」

「楽しみだわ~」


お茶を飲みつつ姫菜ととりとめのないことを話していたらいつの間にか数時間が経っていて、クッキーの焼けるいい匂いがしてきた。

「焼けてきたね」

「もう少しで出来上がりますね」


タイマーのアラームが鳴って焼けたことを告げてくる。

「とってきまーす」

クッキーを取り出すために厚い手袋をつけてオーブンを開け、鉄板を引き出す。

「うん。うまく焼けた!」

鉄板を下して、少し冷ましてからクッキーを一つ一つ取っていく。

今食べてしまう分と瑞鶴達に渡す分とを分けて、今食べる分を皿にのせ姫菜の前に置く。

「うん。おいそうね!」

「えへへ…。あとで姫菜さんのラッピング用品借りてもいいですか?」

「ん?いーよー好きに使って!」

「ありがとうございます!」

お茶を入れなおして焼き立てのクッキーを食べる。

「いただきまーす」

「いただきます」

手を合わせてからクッキーを手に取る。さくっという音が響く。

「うん、おいしいねぇ…!上達してるよ!」

確かに前に食べたときよりサクサク感が増している。

「上手くいきました!」

「焼き加減も味もいい感じ」

「これなら胸を張って渡せそうです!」


「じゃあラッピング借りますね!!」

「はーい」

足早に袋に入れたクッキーを持って姫菜の部屋に向かう。


「うーん。可愛いなぁ小春ちゃん」

さくっと音を立てながらクッキーを食む。

「瑞鶴とうまくいくといいなぁ」

大体小春が誰に渡そうとしているのかは分かっていた。


「喜んでもらえるかなぁ」

袋をテープやリボンを使ってうまくまとまるようにデコレーションする。

「瑞鶴さん…緑多めで作ってみよう」

瑞鶴の姿を思い浮かべながら箱からがさごそといろいろなテープをひっくり返しながら作業を続ける。

しばらく部屋の中にはテープを巻く音や切る音が響いていた。

「できたぁ!!!」

数時間経ってやっと完成したので明日持っていくためにバッグに入れる。

「喜んでもらえるかなぁ~」

会心の出来なので絶対に喜んでもらえる自信がある。

その日の夜は、どんな風になるか楽しみでなかなか寝付けなかった。



「瑞鶴さーん!!」

次の日、鎮守府に遊びに来てすぐに瑞鶴の下へ向かう。

「ん?小春ちゃんじゃん!どうしたの?」

「えへへ…これ、受け取ってください!」

クッキーを両手で差し出す。

「これ…私に?」

「はいっ!」

「もしかして手作り…?」

「はい!頑張りました!」

「ありがとう…嬉しい!」

「喜んでもらえて嬉しいです…!」

「というかこんなところで話してないで部屋いこっか。早く食べたいし!」

「行きます!」

「はいはいっ」

さりげなく瑞鶴が小春の手を取ってくれた。いきなりでびっくりしたが転ばないように瑞鶴についていった。

足早に階段を上り瑞鶴と翔鶴の部屋へ向かう。

「翔鶴姉!!小春ちゃんからクッキー貰った!!」

「あら、よかったわね。と、小春ちゃんいらっしゃい」

「お邪魔しまーす」

「今お茶淹れてあげるねー!」

台所で手早くお茶を淹れる。

翔鶴がその間に小春を座らせる。


暫くして瑞鶴がお茶を持ってくる。

「お待たせ小春ちゃん。翔鶴姉」

三人分のお茶を置いて、クッキーもオシャレな皿にのせて机の真ん中に置く。


「いただきまーす!」

「ありがとうね小春ちゃん」

「どういたしまして!」

瑞鶴が形のいいクッキーを手に取って口に入れる。

さくっといい音を立てる。

「どうですか…?」

「うん!おいしいよ小春ちゃん!」

「ありがとうございます!」

「いいお嫁さんになるね。小春ちゃんはきっと」

「お、お嫁!?」

「うんうん」

小春が頬を赤くしてしまう」

「小春ちゃん顔赤いけど大丈夫?」

「だ、大丈夫です!」

瑞鶴が小春の顔を覗き込んできたので、思わぬ瑞鶴の接近に焦って体を反らせてしまう。

「ならいいけど…無理しちゃだめだよ?」

「はいっ!」


小春が普通に戻って他愛のない話をしながらミニお茶会を楽しむ。

小春はクッキーを食べながらちらちらと瑞鶴の顔を見ている。

特に端正に整った顔を見ている。

つややかな唇。

長いまつげ。

大きくて光あふれる目。

真っ白いわけではないほんのり血色のある頬。

肌がきめ細かくて思わずほおずりしたい衝動に襲われそうになる。

(ダメダメっ!ここでほおずりなんかしちゃ!)

腕の方に目を落とすと細いけどしっかり肉もついている、しなやかな白い腕が見える。

触ったらすべすべしそうだ。

(美しい…)

「瑞鶴さんお肌きれいですよね…」

「そう?小春ちゃんも十分きれいだと思うけど」

きょとんとしつつもそう言って小春の顔をじーっと見つめる。

「えっ!?そ…そんな…瑞鶴さんの方がきれいです!」

いきなり近づいてきた想い人の顔にびっくりして少し視線を逸らす。ほんのり頬が赤らんでいる。

「でも小春ちゃんも肌白くてすべすべじゃない?」

手を伸ばして小春の頬を少し触ってみる。

「ほぁ!?」

「うんうん。可愛いよ!スタイルもいいし…」

若干目を逸らしながら言う。

が、小春は放心してて何も聞こえていなかった。

「小春ちゃん?」

ずっと放心していて反応がないので目の前で手を振ってみる。

「ほあっ!?」

びっくりしてまた飛び退く。

「やっぱり体調悪いんじゃない…?」

「いえ…!大丈夫です…」


このやり取りを見ていた翔鶴は何も言わずにいた。特に微笑むこともなく。


「まぁ小春ちゃんが元気って言うならいいけど」

「ご心配かけてごめんなさい…」

「大丈夫よ!ね!翔鶴姉!」

「…ええ。気にしないで?」

「ありがとうございます…」

翔鶴の少しの沈黙には小春も瑞鶴も気づかなかった。


「本当にクッキーありがとうね!おいしかったよ!」

「喜んでもらえて嬉しいです」

暫くお茶を楽しんだ後、結構時間が経っていたことに気づいて帰ることにした。

「じゃあまたねっ!」

ぺこりと礼をして帰る。


「喜んでもらえて良かった」

「今度は何を送ろうかなぁ」

瑞鶴たちの部屋から少し離れたところで早くも次お邪魔した時何を渡そうか考えていた。今日は大成功だったし次もまた趣向を凝らして喜んでもらいたい。

「姫菜さんにいい報告ができそう」


翔鶴は窓から執務室の方へ向かう小春を眺めていた。もちろんその視線に小春は気づいてない。

「…」



「それはよかったね」

「はいっ!喜んでもらえて本当によかったです!」

執務室に戻ってさっきあったことを事細かく話す。姫菜も微笑みつつ話を聞いてくれた。

「またなんか作って贈ってあげな?」

「もちろんですっ!」

「でも何贈りましょうか…」

「うーん…だんだん寒くなってくるし防寒着とか?」

「防寒…」


小春が軽くお仕事の手伝いをして、先に家に帰る。

「小春ちゃんがいるとみんなの士気上がるからうれしいねぇ…」

ぼそっとつぶやく。


「えへへ…」

家に帰って部屋に戻ってから日記帳を開いて暫くニヤニヤしている。

「次は何にしようかな」

早速次にあげるものを考える。

姫菜に貰ったアドバイスを参考にネットで検索をする。

「セーター…マフラー…手袋って手もあるのかぁ…」

可愛い編み物の写真が下から上へ移動していく。

「うーん…初心者だしマフラーにしようかな」

実のところ編み物なんてしたことがなかったので一番簡単そうなものがよかった。

軽く日記を書いて日記帳を閉じる。


「そういえば、鈴谷さんにプレゼントもらってた…お返ししなきゃ」

そういってカバンの中からマカロンの箱を取り出す。

「お返しは…食べ物系を作ろうかな」

「明日帰ってきたら作ろうっと」

そういって何のお菓子を作るかを考えながら姫菜の帰りを待った。

ものの数十分したところで下から扉の開く音がしてきた。

「ただいまー」

「おかえりなさーい!」

階段からとたとたと降りていく。

「ただいま。すぐご飯にするからね」

「はーいっ!」

姫菜が部屋にいったん戻って荷物を置いてきてすぐに戻って来てエプロンをつける。

「改めてみるとエプロン可愛いですね…」

「ふふっ。そう?ありがとね小春ちゃん!」

ぎゅっと小春の頭を抱き寄せる。

「えへへ…」

姫菜に抱き締めてもらって頭をなでてもらうのはこの上なく気持ちがいい。

小春成分の補給をした姫菜は鼻歌を歌いながら手際よく料理を完成させる。

「はい小春ちゃんできたよ~」

「おいしそうっ!」

皿をリビングに持っていく。

お茶碗に米を盛って小春に続く。

「はいどうぞ」

「ありがとうございます」

二人とも椅子に座って食べ始める。

「やっぱおいしいです…!姫菜さん!」

一口食べて小春が早速料理の感想を言う。

「ほんと?よかった~」

「優しい味がします!」

「ふふっ…そう?」

テレビを眺めて少し話しながら晩御飯を食べる。



一時間ほどして小春がお風呂からあがってきて姫菜のいるリビングに来る。

「姫菜さんお風呂いただきました~」

「はーい。じゃあ私も入るね」

小春がこくっと頷いてから冷蔵庫から出した牛乳を一気飲みする。



とある日の昼下がり。

「よし!マフラーつくる!」

「頑張ってね~」

家に帰ってきて早々ものすごい気合いの入れようで部屋に戻る。

そして買ってきた糸と編み物の本を広げて慣れない手つきで編み始める。

「えーっと…この糸がここで…」

しばらく編んでいると段々慣れてきて編む速度が速くなってきた。

「おお…!だんだんスムーズに編めるようになってきた!」

「鈴谷さんにはこういう明るい色が似合うはず……!」

時々このマフラーを付けた鈴谷を想像しながら編むのを続ける。


小一時間したところで姫菜がドアをノックする。

小春「はーい?」

ガチャ


姫菜「小春ちゃん差し入れもって来たよ~」

小春「あ、ありがとうございます」

くるっと振り向いてぺこりと礼をする。

姫菜「いいってことよ~」

机の上に盆を置く。

小春「おいしそう…!!」

姫菜「これ食べて残り頑張りなよ!」

小春「はい!」



数日後

鈴谷「おっ!小春ちゃんじゃ~ん」

遠くから小春を見つけて手を振ってくる。

小春「鈴谷さん!」

小走りに駆け寄る。


鈴谷「こっはるちゃーん!」

近づいたところで思いっきり抱き着く。

小春「鈴谷さ~ん!」

二人ともぎゅーっと抱き合う。

鈴谷「あったかいねぇ」


小春「そうだ!」

手持ちのバッグから紙袋を取り出す。

鈴谷「ん?」

小春「これどうぞ!」

紙袋を渡す。

鈴谷「開けてもいい?」

小春「どうぞ!」


がさがさっと開けるとそこには長めのマフラーがきれいに畳まれている。

鈴谷「おお…!おお~!」

マフラーを広げて眺める。

小春「マフラー編んでみました!」

鈴谷「嬉しいよ小春ちゃん!」

ものすごくうれしそうにする。

小春「喜んでもらえて嬉しいです」

鈴谷が早速マフラーを自分の首に巻く。

鈴谷「結構長いんだね」

小春「ちょっと長すぎましたかね…」

鈴谷「んーん。ちょうどいいよ」

そういうとぱさっと小春の首にも巻く。

小春「…?」

鈴谷「二人で使えばちょうどいいよ♪」

小春「鈴谷さん…!」


小春「嬉しいです…♪」

鈴谷にぎゅーっと抱き着く。

鈴谷「あはは~可愛いなぁ」

小春「鈴谷さんも綺麗ですよ!」


熊野「いつまでやってるんですの…」

暫くして呆れ気味に熊野がやってくる。

鈴谷「いーじゃん熊野~!」

小春「ですです!」


熊野「はぁ…。まぁいいですわ…」

いつものことだと言わんばかりにため息をつく。


鈴谷「じゃあ、マフラーありがとね!小春ちゃん!」

小春「どういたしまして!」

五分ほどしたところで鈴谷が小春を開放して熊野と任務に出撃する。


小春「喜んでもらえて良かった…」

ほっと胸をなでおろす。


瑞鶴「あれ?小春ちゃんだ」

翔鶴「ほんとね…誰かと会ってたのかしら…」

瑞鶴「小春ちゃーん!」

手を振って呼びかける。

小春「瑞鶴さん!!翔鶴さんも!」


瑞鶴「こんなところでどうしたの??」

小春「鈴谷さんに少し贈り物を渡してました!」

瑞鶴「贈り物?」

小春「はい。マフラーを…」

瑞鶴「マフラー!小春ちゃんの手作り?」

小春「一応自分で…」

瑞鶴「いいなぁ…いつか私にも作ってほしいな」

小春「喜んで!」


翔鶴「小春ちゃんは家事全般得意なの?」

小春「ある程度…しかできないです」

翔鶴「ある程度…がわからないけどできるのね。すごいわ小春ちゃん」

小春「えへへ…ありがとうございます」

翔鶴が小春の頭を撫でる。

瑞鶴「あーっ!私も撫でる!!!」

瑞鶴も後ろから小春の頭を撫でる。

小春「嬉しいです…」

頬を赤らめつつつぶやく。

翔鶴「あらあら」

ぎゅっと抱擁する。

小春「あったかいです・・・」


瑞鶴「じゃあまた今度お茶でもしようね」

手を振って翔鶴と執務室へ向かう。

小春「はーい」

手を振り返す。


小春「瑞鶴さんにマフラー…翔鶴さんのも一緒に作ろうかなぁ」




二週間ほど経って二人分のマフラーが完成したので、渡しに鎮守府へ向かう。

小春「ふんふふ~ん。喜んでもらえるかなぁ」

足取り軽く空母寮へ行く。


五航戦の二人の部屋の近くまで行くと、何やら中の会話が聞こえている。

扉が一センチほど空いているからだ。


翔鶴「瑞鶴…」

中を覗き見ると二人で抱き合っている。


小春(何やってるんだろう…。仲いいなぁ)

翔鶴「好きよ…瑞鶴」

瑞鶴「翔鶴姉…」

翔鶴「あぁ…」

髪を梳いて撫でて匂いを嗅ぎ合った後唇を重ねる。

小春(えっ…)


翔鶴「ん…」

舌を絡ませて荒く呼吸する。

翔鶴が瑞鶴の舌を求めるように深くまで舌を差し込む。

瑞鶴「んっ…」

互いに顔を手で触り始める。

小春(二人で…いったい…何を…)

心臓が激しく鼓動している。


五分ほどして、二人が唇を離す。

二人の口の間に唾液の橋が架かっている。


小春が扉の後ろに隠れていつ入ろうかと思案する。

小春(どうしようどうしよう)


翔鶴「ありがとう瑞鶴…」

瑞鶴「いいよ、翔鶴姉」

瑞鶴が翔鶴を軽く抱きしめる。


小春は呼吸を整えて扉をノックする。

小春「ず、瑞鶴さーん。翔鶴さーん!いますかー?」


瑞鶴「小春ちゃん?入っていいよー」


おずおずと扉を開けて中に入る。

小春「お邪魔しまーす…」

翔鶴「どうしたの?小春ちゃん」

小春「あの…これを渡したくて…」

二人へマフラーを渡す。


瑞鶴「マフラーだ!前言ってたやつ?」

小春「あ、はい!お二人に気に入ってもらえるといいなと思って」

翔鶴「ありがとう…小春ちゃん」

小春「えへへ。喜んでもらって嬉しいです」


瑞鶴「似合う?」

マフラーをササッとつけて小春に聞く。

小春「はいっ!」

翔鶴「よく似合っているわ」


小春「翔鶴さんもつけて頂けませんか…?」

翔鶴「ええ。どうかしら」

ササッと巻く。

小春「似合ってます!よかったぁ」

瑞鶴「翔鶴姉いいよ!可愛い!」



瑞鶴「ありがとうね。小春ちゃん!」

小春「いえいえ。喜んでもらえて良かったです」

瑞鶴「今日はもう帰っちゃうの?」

小春「あー…はい。少しやることがあるので…」

瑞鶴「そっか…じゃあ、またね」

手を振って見送る。


小春「お邪魔しました。瑞鶴さん翔鶴さん!」

ぺこりと一礼して退出する。


小春「はぁ…緊張した…」

あんなものを見てしまったので変に緊張してしまった。


翔鶴(まさか、見られた…?)


小春「はぁ…」

姫菜の元に行ってから帰る前に港の方に出て海を眺めている。


「なーにやってるの?」

小春「んあ?」

鈴谷「小春ちゃんどうしてこんなとこで黄昏てるの?」

小春「鈴谷さん…」

鈴谷「お悩み事?」

小春「えっと…まぁそんな感じです…」

鈴谷「お話くらいなら聞いてあげれるけど…どうする?」

小春「お願いしても…いいですか?」

鈴谷「もっちろん!鈴谷にまかせなさいっ!」


小春「ちょっと好きな人がほかの人と…その、キスをしているところを見てしまって」

鈴谷「キスしてたのかぁ…。それは確かにショックだね」

小春「そのあと暫くしてからその人と話すことはできたのですが、こう…なんかぎこちなくなってしまって…」

鈴谷「なるほどなぁ…」


小春「どう接すればいいんでしょう…」

鈴谷「んー…とりあえずは、いつも通りに接する方がいいんじゃないかな?変に意識して避けてもいいことないよ」

小春「いつも通り…ですか」

鈴谷「うんうん。その素敵な笑顔でその人に接すればいいと思うよ」

小春の頬をふにふにつまみながらそう言う。

小春「笑顔で…」

鈴谷「うん!ほら笑って?」

鈴谷が笑みを浮かべて尋ねてくる。

小春「えへ…」

鈴谷につられて微笑を浮かべる。

鈴谷「その笑顔だよ!忘れちゃだめだからね?」

小春「…ありがとうございます」

また微笑んで礼を言う。


鈴谷「また悩んだときは鈴谷に何でも相談するんだよ?」

小春「はいっ!」


少し悩みがすっきりした顔で小春が鈴谷を見送る。

小春「私も…戻ろっと」


鈴谷「ちゃんと悩みに答えられたかな…」

少し離れたところでさっきのアドバイスを思い出している。

大好きな小春のために自分なりに頑張ったつもりだが、少し不安になったからだ。

鈴谷「まぁ…大丈夫だよね。小春ちゃんならきっとうまく…いく」

自分の気持ちと小春の気持ちを考えると気持ちが沈んでしまう。

鈴谷「はぁ…鈴谷が沈んちゃってどうすんのさ」

自分にそう言い聞かせて立ち直る。


鈴谷と小春がいなくなった後人影が角から出てくる。

「ふぅん…そういうこと」


熊野「どこに行ってたんですの?」

鈴谷「んー?小春ちゃんを見かけたから少し話してた~」

熊野「あぁ、なるほど」

何かを納得したように頷く。


熊野「本当に鈴谷は小春ちゃんのことが好きですのね」

鈴谷「そりゃそーだよ!だってあんなに可愛いんだよ?しかもめっちゃいい娘だし!」

熊野「それは私もわかってますわ」

鈴谷「熊野も小春ちゃんをぷにっとすればこうなるよ!」

熊野「そう…」


翔鶴「鈴谷さんに…小春ちゃんを取ってもらえば・・・」


鈴谷「次、何小春ちゃんにあげようかなぁ」

熊野が少し外に出かけたとき外を見ながらつぶやく。


すると、コンコンと部屋の扉が叩かれる。

鈴谷「はーい?」

翔鶴「お邪魔してもいいかしら…?」

翔鶴が珍しく鈴谷の部屋に来る。

鈴谷「翔鶴…?入って入って!」


お茶を出しながら翔鶴に尋ねる。

鈴谷「…いきなりどうしたの?」

翔鶴「ええ…少し話したいことがあってね?」

鈴谷「何々?」



鈴谷「ふぅん…」


翔鶴「…これで瑞鶴を私の…」



小春「今日は…瑞鶴さんのとこに行ってみよう」

少し間を開けてから、瑞鶴のところへ向かった。


小春「瑞鶴さーん!いますかー?」

瑞鶴「ん?小春ちゃん?入っていいよー!」

そーっと扉を開ける。

小春「失礼しまーす…」

瑞鶴「もう、小春ちゃんそんなに畏まらなくていいよ~」

小春「えへへ…ごめんなさい…」

瑞鶴「可愛いなぁ…。お茶淹れるね」

小春「あ、ありがとうございます」


瑞鶴「はい、お茶」

二つのカップから湯気が立っている。


小春「あったかい…」

瑞鶴「よかった。で、今日はどうしたの?」

小春「あ、その…瑞鶴さんに会いたいなぁ…なんて…えへへ」

瑞鶴「…もう。可愛いなぁ!」

小春に抱き着いて頭を撫でる。

小春「瑞鶴さんって…好きな人とかいるんですか…?」

瑞鶴「好きな人!?小春ちゃんも好きだし翔鶴姉も好きだよ」

小春「そう…ですか」

すこしだけしょんぼりする。

瑞鶴「どうしたの?いきなりそんなこと聞いて」

小春「あ、その…」

瑞鶴「ん?」

小春「ちょっと気になって…」

瑞鶴「そっか。小春ちゃんこそ好きな人いるの?」

小春「え、あ、その…はい…」

真っ赤になりつつたどたどしく答える。

瑞鶴「そっかぁ~。小春ちゃんに好かれるなんて幸せな人だねぇ」

小春「あ、あはは…」


瑞鶴「私恋愛的に好きな人はいない…からなぁ」

小春「そうなんですか…」

ほっとしたようなしょんぼりしたような複雑な気持ちになる。

瑞鶴「うん。まだ、そういう気持ちがわからないし…いつ私いなくなるかもわからないしね」

少し寂しそうに笑う。

小春「瑞鶴さん…」

瑞鶴「なんかごめんね?ちょっと暗い雰囲気にしちゃって」

小春「あ、いえ。大丈夫ですよ!」

少し無理したように微笑む。

瑞鶴「小春ちゃんなら、絶対相手のことを振り向かせることができると思うよ」

小春「ありがとう…ございますっ」

瑞鶴「頑張ってね」

微笑む。


小春「はいっ…!」

真っ赤になりつつ答える。


瑞鶴と別れて、家路を急ぐ。


瑞鶴「小春ちゃんにも…好きな人かぁ」

瑞鶴が窓の外を見てたそがれていると後ろから翔鶴が声を掛けてきた。

翔鶴「どうしたの?瑞鶴」

瑞鶴「翔鶴姉!んーん。なんでもなーい」

翔鶴「何か相談があったら…相談するのよ」

瑞鶴「もっちろん!」

窓を閉めて部屋の中に入る。



小春「もっと、積極的に行かなきゃ…」

帰りに改めて誓った。




誰もが寝静まって静かになった頃。

すやすやと瑞鶴は眠っている。

もぞ…もぞ…

瑞鶴「…んぁ?」

寝ぼけ眼を擦りながらわずかに体を起こす。

お腹の上あたりで何かが動いている。

瑞鶴「だぁれ…?翔鶴姉…?」

翔鶴「あら…起こしちゃったわね…」

瑞鶴「翔鶴姉ぇ…?どうしたの…?」

翔鶴「少し一緒に寝たくなって…」

瑞鶴「ん…いーよぉ…」

ぎゅっと抱きしめる。

瑞鶴は眠気で意識が定かではないのでそのままぐっすりと眠ってしまう。

翔鶴(あったかいわ…)


翌朝

瑞鶴「ん…重い…」

瑞鶴のおなかの上では翔鶴がすやすや眠っている。

瑞鶴「翔鶴姉…あぁなるほど…」

何かを納得したかのように一つ頷いてから二度寝に入る。


翔鶴「ん…瑞鶴暖かい…」

瑞鶴が二度寝をしてから数分後に翔鶴が目を覚ます。

翔鶴「いい匂いもする…ずっと抱きしめていたいわ…」

胸に頭を乗せてぎゅっとまた抱き着く。


瑞鶴「ん…翔鶴姉…」

翔鶴「瑞鶴…いい匂い…好き…」

瑞鶴「私も…翔鶴姉好きだよ…」

瑞鶴はまだ夢現の中にいる。


瑞鶴「それにしても翔鶴姉が私の布団入ってくるなんて珍しいね」

翔鶴「ええ…すこし一緒に寝たくなったのよ」

瑞鶴「翔鶴姉ならいつでも歓迎だよ!」

二人が目を覚まして十分くらいしたところで布団を畳みつつそんな話をする。


朝ごはんを食べて部屋でゆったりと休む二人。

今日は二人とも非番で、しばらくは非番予定なので今日は部屋でゆっくりしているのだ。


瑞鶴「あー…緩やかに時間が過ぎていく…」

翔鶴「そうねぇ…」


翔鶴「ねえ。瑞鶴」

瑞鶴「どしたの翔鶴姉?」

翔鶴「ちょっと相談があるんだけどね」

瑞鶴「相談?」

翔鶴「ええ」

瑞鶴は首をかしげている。

翔鶴「瑞鶴「、私と付き合ってくれないかしら…?」


瑞鶴「えっ…?」

翔鶴「私と恋人になってほしいの」

そういって瑞鶴との距離を詰める。

瑞鶴「翔鶴姉…えーっと…」

翔鶴「ダメ…かしら…?」

瑞鶴「ダメではないけど…」

翔鶴「何か心配事…?言ってくれたらできる限り解決するわ」

瑞鶴「ほんとに…私でいいの?」

翔鶴「ええ。貴女がいいの」

瑞鶴「わかった…翔鶴姉」

瑞鶴が翔鶴を抱き寄せる。

瑞鶴「好きだよ翔鶴姉」

耳元でささやく。

その言葉とともに瑞鶴が翔鶴を抱き寄せる。

翔鶴「あんっ…」

瑞鶴「覚悟してね、翔鶴姉」

翔鶴の和服をはだけさせる。


その間の時間を扉の隙間から小春が見ていた。

小春(嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘)

小春(こんなこと…あるの…?嫌ぁ…)

その場から静かに、そして素早く逃げるように立ち去る。


少し離れたところで走り出す。

涙をこらえながらとにかく走る。


見晴らしのいいところでうずくまる。

小春「うっ…ひぐっ…」

(翔鶴さんとお付き合いしてるだなんて…勝てないよ…)

小春「こんなに儚いものなんだ…」

小春「辛い…」


そこに鈴谷が通りかかる。

鈴谷「…あの。小春ちゃん?どしたの?」

小春「うぐっ…ひぐっ…鈴谷さん…」

鈴谷「そんなに泣いてどうしたの?」

小春「…られました…」

鈴谷「…?」

首をかしげる。

小春「振られました…」

鈴谷「ふ…振られた…?誰に…」

小春「瑞鶴さんに…」

鈴谷「瑞鶴に…?!」

小春がこくりとうなづく。

鈴谷「へぇ…瑞鶴に…」

小春「悔しいけど…翔鶴さんが相手じゃ勝てないです…」

鈴谷「なるほどね…」


鈴谷が隣に座って頭をなでる。

鈴谷「今は思いっきり泣くといいよ」

小春「鈴谷さん…うぇぇぇん…」

鈴谷の胸に顔を押し付けながら泣く。

鈴谷「よく頑張ったね…小春ちゃん」

小春「はい…」

ひぐえぐっとしゃくりあげながらも答える。


しばらく泣いた後小春が顔を上げる。

小春「ごめんなさい…ずっとつかまってて…」

鈴谷「いいんだよ。小春ちゃん」

頭をなでて落ち着ける。


小春「落ち着きました…ありがとうございます鈴谷さん…」

鈴谷「いいんだよ。これからどうするの?」

小春「部屋で落ち着きたいです…」

鈴谷「もし…よかったら鈴谷の部屋に来ない?」

小春「鈴谷さんの…」

鈴谷「うん。お茶でも出すからさ?ゆっくり落ち着いて…お話ししない?」

小春「…はい。お話ししたいです!」

そして二人は夕焼けを背に重巡寮へむかった。


鈴谷「さ、入って入って~」

小春「失礼します…」

鈴谷「今日は熊野出撃でいないからゆったりして大丈夫だよ~」

小春「あ、そうなんですね…」

鈴谷「そこに座って~」

椅子をピッとさす。

小春「はい」


鈴谷が紅茶を淹れてきて小春にも渡す。

小春「あ、ありがとうございます」

鈴谷「新しいお茶っ葉使ってみたんだ」


一口紅茶を飲んで喉を湿らす。

小春「はぁ…」

深いため息をつく。

鈴谷は黙っている。

小春「私って魅力ないんでしょうかね…」

鈴谷「そんなことはないと思うけど…」

小春「もっと私に魅力があれば…度胸があれば…成功したと思うんです」

鈴谷「うーん…そうかなぁ…?」

小春「絶対そうです…!」

鈴谷「でも、小春ちゃんにほんとに魅力なかったら誰も振り向かないし、度胸がなかったら話しかけられないよ」

小春「そういわれると…そうですけど…」

鈴谷「もっと自信もっていいと思うなぁ」

小春「…もし、鈴谷さんだったら私を好いてくれますか?魅力ありますか?」

鈴谷「えっ…?!…うん。鈴谷なら小春ちゃんを好きになるよ」

小春「そう…ですか」

鈴谷「小春ちゃんにはいっぱい、いーっぱい魅力があることを覚えててね」

小春「わ…わかりました…」

思わず優しい言葉をかけられてびっくりしてしまう。

鈴谷「だから、あんまり思いつめないで自信をもって!」

小春「…はい!」

鈴谷「ふふっ。いい返事だよ小春ちゃん!」

小春の体を優しく抱きしめる。

小春「暖かい…鈴谷さんやっぱりすごい優しい…素敵な人」

鈴谷「嬉しいこと言ってくれるね~小春ちゃんっ!」

小春は鈴谷の腕の中で少し涙をこぼした後眠ってしまった。


鈴谷「ふぅ…らしくなかったかもな鈴谷」

小春を静かにベッドに横にしてそばでつぶやく。

鈴谷「ここで鈴谷が…したらダメだよねぇ…」

今すぐにでも小春に告白してしまいたいがなかなか一歩が踏み出せない。

踏み出してしまったら最後卑怯だと思ってしまうのだ。


ずっと、ずーっと、小春が寝ている間寝顔を見続けていた。

「鈴谷、どうしたんですの?」

「あ、熊野。小春ちゃんが寝てたからちょっと寝顔を見てただけだよ」

「…かわいい寝顔ですわね」

「ね…。こんなかわいいいい子なのに失恋しちゃうんだね」

「失恋…?小春ちゃんがですの?」

少し信じられないといった顔で鈴谷を見る。

「うん。好きな人が別の人に取られちゃったんだって。目の前でキスしてたってさ」

「あら…まぁ…それは…」

何と言っていいかわからないがなんとなくかわいそうだ。

「鈴谷、こういう時小春ちゃんの支えになれればいいんだけどね…恋愛相談って難しいねぇ」

「…十分なっているじゃありませんの」

「え?」

熊野がボソッとつぶやいたため鈴谷には聞こえなかった。

「何かご飯買ってきますわ」

「あ、ありがとね熊野」


夕方になったのでそろそろ小春を起こして家へ帰さないといけない。

姫菜に許可は取ったので直接送っていくことにした。

「小春ちゃん。少しは元気出た?」

「…はい。少しだけ」

「それはよかった」

二人仲良く手を繋ぎながら家路についている。初めて握った鈴谷の手が想像よりあったかくてしっかりしてたので少しドキドキしてしまう。

「何か相談事があったらまたいくらでもお話ししに来てね」

「は、はい。ぜひ…お願いします」


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2020-05-28 00:06:16

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2020-05-28 00:06:32

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2019-03-30 01:04:00

このSSへのコメント

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1: SS好きの名無しさん 2018-12-28 15:59:25 ID: S:a_fzo5

おお、面白そうなSSですね!
あと、アドバイスになるんですがカテゴリに艦これとか瑞鶴 翔鶴って付けた方がいいと思います。

2: こけこっこ 2018-12-30 00:54:42 ID: S:k-zNij

コメントありがとうございます!
お褒めいただきありがとうございます

アドバイス反映させました!


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