2020-05-25 04:39:18 更新

とある山奥の村の中。

この村には建物は他の村のようにあるものの一般人にはたどり着くことはできない。

なぜなら結界が張ってあるためここにゆかりのある魔法師しか入ることができないからだ。


この村の学校らしき建物では、二人の姉妹の周りに数十人の重装備の男たちが倒れている。

二人とも息は上がっておらずまだまだ何人でも倒せそうだ。

しかしここで姉の無線に通信が入る。

「試験は終了です。二人とも戻ってきてください」

「はい。わかりました」


豪華な和風住宅に戻る。

戻ると初老の執事と見た目だけではとてつもなく若く見える当主の元へ向かった。

「ただいま戻りました」

「まずはお疲れ様沙夜さん、真白さん」

「ありがとうございます」

「それで結果だけれど。ええ、合格ね」わずかに微笑む。

「ありがとうございます!」

二人行きぴったりで礼を言う。

「葉山さんは言うことあるかしら?」

「及第点かと。これだけの実力があればあの方々の手伝いも十分に務まるでしょう」

「あ…ありがとうございます!」

びっくりして思わず声がつまる。

全使用人を統括する葉山が褒めるなどなかなかないのだ。

沙夜が驚くのも無理はない。

「それで…春からのことだけれど希望はあるかしら?」

「いえ、とくにはありません」

「そう…ならあなたたちには東京へ行って達也さんのお手伝いをしてもらいます」

「達也様…というと深雪様の…」

「ええ、そうね。来年から第一高校に入学するそうだから一緒に入学して雑事を手伝ってあげなさい」

「了解です」

「わかりました」

「行くときにはこの手紙を持って行ってくださいね」

白い封筒を渡される。

「わかりました」

「話は以上です。下がっていいですよ」

「失礼しました」

退出する。


当主「ふふ…きっとあの二人はよき手足になるでしょう…」



数か月後

「真白、あちらに住む前に達也さん達にご挨拶に行きましょ」

「ですね!もう荷物はあちらにあるのでしょう?」

「いえ、今運ぶ途中らしいわ」

「そうなの?」

「ええ。だから一日だけは、ホテルで過ごすことになると思うわ」

「そっかぁ。だから手荷物に着替えとか入れるようにしたんだね」

「そうよ、さぁ行きましょ?」

「はーい」

東京へ向かう。


「ここが東京かぁ…」

「人いっぱいだねぇ…」

今まで外に出たことがほとんどないために人の多さに少し驚く。

「そうねぇ…」

「そういえば達也さんの家の行き方はわかってるの?」

「ええ。教えてもらったわ」

「じゃあ早速いこー!」

「その前に手土産くらい買っていきましょ」

「それもそうだね…」

「行きましょ」

「はーい!」


達也達の家に着く。

「ここで…あってるわね」

ピンポーン

『はい、司馬です』

「敷島沙夜です。ご挨拶に参りました」

『わかりました。今開けますね』


ガチャ

深雪が出てくる。

「初めまして。お話は伺ってます。どうぞお上がりください」

「ありがとうございます」

「お邪魔します」


深雪に先導されてリビングへ向かう。

リビングでは達也が待っていた。

「初めまして。立ち話もなんだから座ってくれ」

「初めまして。ありがとうございます」


4人が座る。

「では、改めて自己紹介させていただきます。私は敷島沙夜と申します。こちらは妹の真白です」

真白が礼をする。

「丁寧にありがとう。俺は司馬達也だ。よろしく頼む」

「司馬深雪と申します。よろしくお願いします」

「まず、ご当主様から預かったお手紙をお渡しします」

手紙を達也にわたす。

「ありがとう」

もらった手紙にさっと目を通す。

「君たちも一高に入学するんだな」

「そうです。そして貴方方のお手伝いをするよう命じられております」

「俺は達也と呼んでくれ」

「私は深雪とお呼びください」

「わかりました」

「同学年なんだ、敬語も使わないで大丈夫だぞ」

「…わかった」


「学校では一緒に行動するのか?」

「深雪と達也がそれを望むのなら」

「ふむ…わかった」

「それはあとで連絡する」

夜「わかった」


「じゃあ私達はこれで失礼」

「ああ、また学校で会おう」



「終わったぁ」

「帰りにおいしいものでも食べに行きましょ?」

「そうね…行きましょ」





そして、始業式の日。

「始業式だね…」

「どうかしたの?」

「んーん。会場に行きましょ」

「体育館は…」

「あっちよ」

体育館の見える方向を指さす。


「新入生綺麗に分かれてるわね」

「私たちも座りましょ。姉様」

「そうね」

ちょうど一科生と二科生の間に座る。

「そういえば深雪さんが新入生代表でスピーチするのね」

「まぁ、当然っちや当然ですよね。あれだけ優秀できれいなんですから」

「そうね…どうやったらあんなに美しくなれるのかしらねぇ」

「さぁ…」


深雪のスピーチが終わる。

「みんな飲み込まれてるね」

夜「流石ね。場の支配がすごいわ」


つつがなく入学式が終わり、クラスごとに分かれることになった。

「じゃあ…クラスごとになるしまたあとで…」

「ええ。互いにうまくやりましょ」

「姉様もね」


沙夜は、深雪と同じクラスへ。

真白が達也と同じクラスへ。


「ここが私のクラス…」

達也はすでに席について履修登録を始めている。

「早い…」


真白の席は少し達也から離れている。

席について真白も端末をいじり始める。

少しいじってると端末に影が落ちる。

「ん…?」

赤みがかった髪の娘がのぞき込んでいた。

「早いね。もう端末で登録してるの?しかもアナログで」

「あはは…早く終わらせたいからね…」

「へぇ…変わってるねぇ」

真白「あはは…」

エリカ「あ、私千葉エリカっていうの」

真白「私は、敷島真白っていうの。よろしくね」

エリカ「真白ね」

真白「エリカさんの…千葉ってあの千葉?」

エリカ「エリカでいいよ。うん。真白の想像してる千葉で会ってると思う」

真白「すごい…じゃあエリカって強いんだね」

エリカ「いやいや。まだまだだよ」

真白「そうなの?」

エリカ「慢心は敵。ってやつよ」

真白「なるほどなぁ…」

エリカ「真白こそ何かやってるんでしょ?」

真白「え?あー…薙刀をちょっとね」

エリカ「へぇ…一回いつか相対してみたいなぁ」

真白「もう…エリカったら。いつかね」


しばらく話していたが、教員のような立場の人が入ってきていろいろな説明を始めた。

途中退出もokだったそうだが目立たないようにおとなしく話を聞いていた。

ここで目立つことは何の利益もない。むしろ損ですらある。


カウンセラーが説明を終えて退出したところで自由な時間になり、周りでは友達作りが始まる。

しばらくしてエリカが話しかけてくる。

エリカ「ねぇねぇ真白」

真白「どうしたの?」

エリカ「これからちょっと学校の中見て回る予定なんだけどさ、一緒に来ない?」

真白「いいわね。行くわ」


エリカ以外にも数人の同級生が一緒にいて、達也の姿もあった。

真白「これからどこへ行くの?」

エリカ「とりあえず武道場かな?工房とかにも行くと思う」

真白「なるほどね」

エリカ「真白は見たいところある?」

真白「うーん…何があるかもわからないからこれってものはないわね」

エリカ「なるほどね」

「真白は何が得意なんだ?武術とかやってそうだけど」

大柄な同級生のレオが話しかけてきた。

「そうね…。薙刀を少々…。あまり道場とかではやっていないから我流だけれど…」

「薙刀かぁ…かっけえなぁ」

「そうでもないわよ」


武道場では剣道部が演武をしていた。

「あれは…剣道部か」

「ふぅん…上手いわね…」


工房なども見て帰り路につくと校門付近で深雪たちが待っていた。

「あ、お兄様…!」

その中には沙夜もいた。


深雪が達也と帰ろうとすると、深雪の周りにいた一科生が騒ぎ始める。

簡単に言うと二科生と深雪が帰るのはよくないと。

(しょうもない…)

真白も沙夜も、もちろん深雪も達也もそう思っている。

だが、一科生の者たちの売り言葉に買い言葉でレオ達にも火がついてしまう。


ついには相手が魔法を使用しかけて生徒会に叱られる。

上手く達也がごまかしたが真白と沙夜にとってはヒヤヒヤものだった。


「はぁ…すこしあせったわ…」

「もうちょっと遊びたかったなぁ」

「エリカったら…」


その日は家に帰って本家へ報告をしそのまま眠ってしまう。


その時に本家からどうやら怪しい者が学校にいると忠告を受けた。

「怪しい者…」

「ご忠告したほう良いのでしょうか…姉様」

「いえ、おそらくもう連絡入っているでしょう。お伝えせよと書いてもないのですから」

「了解です」

手紙をしっかりと処分してから翌朝を迎えた。


「じゃあ姉様、警戒を怠らずに今日も頑張ってきます」

「ええ」

校門の前で互いの教室へ別れる。


「ねえ真白ちゃん。真白ちゃんどの部活にするの?」

「まだ迷ってて…」

「じゃあ剣術部入らない?」

「そうですね…考えてみます」

笑顔で相手に礼を言ってやんわりと断る。もちろん、部活なんてやってる時間もあまりないし興味もないからだ。


「今日の実習ってなんでしたっけ」

「台車往復の奴だったような…」

「あ、そっか!ありがとね!」

沙夜もそこそこの人間関係を築きつつ深雪のところからつかず離れずの距離で生活をしていた。深雪と仲良くしているのは主に二人。

雫とほのかだ。もちろん沙夜自身も二人とは良好な関係を築いていて、たまに一緒に行動することもある。

そのほかのクラスメイトとはあまり深いかかわりはないが一応、どんな人なのかを確認している。

今のところは特に目立った人はいない。普通の優秀な人がいるだけだ。


(私たちは彼らの手となり足となる者…表に立たなくていいのは楽…)

ぼーっとしながらそんなことを考えているうちに授業は終わっていた。


(特に怪しい人が動いてるような気配もないですし…帰りますか)

そう思って校門の方へ向かった。恐らく真白が待っているからだ。

だが、沙夜が到着した頃にはまだ真白の姿はなかった。

いつもならこの時間にはいるのだが…まぁ何か用事をしているのだろうと思って携帯端末をいじりながらしばらく待ってみる。

「真白~」

しばらくすると沙夜が軽く走りながらこちらへ来た。

「あ、沙夜。帰ろっか」

「ん。今日の夜ご飯何しよっか」

「そうだなぁ…」

他愛のない会話をしつつ夕暮の帰り路を歩いていく。



次の日、活発な部活勧誘を眺めるだけ眺めながら沙夜と真白が歩いていると当然といえば当然だが声をかけられた。

「ねぇねぇ、私たちの部活興味ない?魔法系の部活じゃないんだけど…」

「おい、うちが先に声かけようとしたんだぞ。割り込むなよ!」

だんだんと小さな人垣のようなものが出来てきた。

「あ、あの……私たちあんまり興味ないので……きゃっ」

いきなり腕を掴まれて驚いてしまった。

「ちょっと…妹に触らないでもらっていいですか。って聞いてますか?」

沙夜が掴んでいる生徒に尋ねるがほかの部活の者と言い合っていて聞こえていないようだ。それどころか別の勧誘に服の袖を掴まれてしまっている。


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