赤城さんといっしょ
赤城さんと異世界へ
「澪月さん澪月さん」
肩を揺さぶられて目を開けるとそこには赤城がいた。
「赤城さん…?」
「そうですよ。澪月さん」
「あれ…私赤城さんに庇われて…」
とっさに頭に傷はないか手を伸ばすが血も何もついていない。
「大丈夫です。澪月さんは無傷ですよ」
「いったいどうなって…」
確かに私は倉庫に隠れているとき敵の爆撃を受けて天井が崩れてくるときに赤城に庇ってもらっていたはずだ。
傷の一つや二つ、いや死んでいてもおかしくなかったはず。
「赤城さん…ほかの艦娘さんは大丈夫でしょうか…」
「…わかりません」
倉庫に隠れる前、逃げているときに明石や金剛が庇ってくれて自分の顔にも彼女たちの血が飛び散ってきたのを覚えている。
特に明石は私をかばった時に瀕死の重傷を負ってしまっていた。あの後さっさと逃げるように明石に言われたので生きているかすらわからない。
「…澪月さん。周りを見てください。ここはどこでしょうか…」
暗くなりすぎる前に話題を変える。
「え…?」
確かに周りを見渡してみると草原が広がっている。こんな景色一度も見たことはない。
「どこでしょう…?」
「私に聞かれても…」
赤城も困り顔だ。
「どうしましょうか…そういえば赤城さん持ち物は…」
「ええ。この弓と矢と服だけですね」
「私はこのバッグ一つ…。艦載機は飛ばせそうですか?」
「…試していませんでしたね」
そういっていつものように飛ばしてみる。
空に向けて矢を放つといつもの通り艦載機が出てきた。
そこら辺を少し一周させてから着艦させる。
「どうやら飛ばせるみたいですけど、どこで補給ができるかはわからないのでむやみやたらと使わない方がいいでしょうね」
「そうですか…」
「とりあえずどうしましょうか」
矢をしまった後に今後の方針を訪ねる。
「とりあえず人のいるところまで行ってみますか?外国だとしても村かなにかはあるでしょう」
「そうですね。そうしましょうか」
「でも闇雲に歩き回ってもどうしようもないですよね…」
「彩雲で周りに何かないか見てみましょうか」
「でも…」
「ずっと持っているだけではもったいないです。使うときには使いましょう澪月さん」
「ですね…」
彩雲を発艦させて周囲の様子を見てもらう。
「…澪月さん。どうやらそこの獣道のようなところを進むと泉があるみたいでそこから街につながっていそうな道があるみたいです」
「じゃあ…少し怖いですけど行きましょうか…」
「大丈夫。澪月さんは私が守りますから」
「赤城さん…」
獣道を歩き始めてから三十分立ったころ、草むらの中から何か物音が聞こえる。
ぴょこっといきなり何かが出てくる。
「ほあっ!?何々!?」
「うーん…スライムみたいですね」
青色のスライムのようなものが出てくる。
「どうしましょう!?」
澪月は赤城のほうを見る。
「戦う…にしてもどのくらい強いのかがわかりませんし…逃げましょう」
「わかりました…!」
来た道を戻ることになってしまうがスライムの姿が見えなくなるまで走って逃げる。
「ここまでくれば大丈夫でしょう」
「はぁ…はぁ…」
「少し休みましょうか…」
「はい…」
「うーん…あんなモンスターみたいなのがいるとなると…」
「誰かここら辺の地理に詳しい人通ればいいのに…」
「ですねぇ」
「…よし!行きましょう!赤城さん!」
「疲れは取れましたか?」
「さっきよりは大丈夫です!」
「じゃあ、行きましょうか」
またさっきの道を少し早歩きで通り抜ける。
「来ませんよね…」
「大丈夫ですよ。びくびくしないで行けば安心です。きっと」
「きっと…」
そうこうしているうちに大きい通りへつく。
通りには積み荷をたくさん積んだ馬車が目の前を通り過ぎていく。
「よかった…人がいますね」
「です…しかし…どちらへ行きましょうか」
「うーん…とりあえず何もわかりませんしあの馬車についていってみましょうか」
「了解です!」
少し馬車から距離を取ってついていくが、道を通る人に奇妙なまなざしで見られる。
まぁ、見たことのない服を着ている美人達が歩いているのだから。
「本当に見たことのないところに来ましたね…」
周りを見渡すと草原と、大きい道と、少しのお家がある。
「どこなのかしらねぇ…ここ」
「早く大きい街についてほしいです…」
「そうね…お腹もすいてきたし…」
赤城のお腹がぐーと鳴る。
「あはは…赤城さんのお腹の虫が鳴いてますね」
「少し恥ずかしいです…」
さらに歩いていると道が石畳に舗装されてきて、だんだん道幅も大きくなってくる。
歩いている人間もどんどん増えて大きい街に近づいてあるであろうことがわかる。
「あれですかね…」
澪月が丘の向こうを指さした先には何か大きい壁のようなものがある。
「うわぁ…大きいですね」
おそらくあれが大きい街の外壁だろうと思われる。もっと近づくと関所のようなものがあってほかの人たちが何やらよくわからないことをしている。
「もしかしてあそこで入城審査みたいなことしているのでしょうか…」
「かもしれませんね…困りました…」
「パスポートみたいなのいるんでしょうか…」
「わかりません…けど何かしらはいるのと思いますよ」
「とりあえず行ってみます…?」
「危険じゃないですか…?」
「でもここいても何もわからないですし…怪しい者ではないですし…」
「…そうですね。行くだけ行ってみましょうか澪月さん」
「はい…!」
大きい門の下まで来ると十人ほどが列を作っていた。いずれも冒険者のようないで立ちだ。
その人たちの後ろに明らかに違う服の澪月と赤城が並ぶ。といっても周りの冒険者たちはさして気にすることはない。冒険者は様々な境遇、身分、場所から来ているのだからいちいち気にしていたらきりがない。
そして、澪月たちの番が回ってきた。
「はい、じゃあ公認の身分証明証出して」
「申し訳ありません…私たちそのようなものを持っていなくて…」
「じゃあこの書類に必要事項書き込んで。仮の出してあげるから」
兵士に紙を二枚渡されて羽ペンで書くように促される。
「赤城さん…こちらの文字わからないのですがいいのでしょうか…」
「とりあえずはいつも通り書きましょう」
「わかりました」
とりあえず日本語で名前を書いて兵士に紙を返す。
「…っえーと?なんて読むんだこれ」
「こっちが赤城でこっちが澪月です」
「見たことねえ文字だ、ずいぶん遠くから来たのか?」
仮証明書を発行しながら兵士が訪ねてくる。
「え…えぇ。まぁそんなところです」
流石に本当のことを言っても信じてはもらえなさそうなので少しぼやかす。
「じゃあ入城料30マルスだ」
「え…30マル…ス?」
おそらく貨幣単位だろうがあいにくそんなものは手持ちにない。
「あーっと…その…今手持ちが…」
何と説明しようか説明にどもってしまう。
どうしようかと少し考えていると、後ろに並んでいた女が肩を叩いてきた。
「ちょいといいかい」
女はそのまま兵士の前まで行って
「この娘たち私たちの連れだから金は私が払うよ」
と言った。
「あ、そうかい」
「え…?」
澪月が質問しようとするとその女は唇に手を当てて微笑んだ。
その女は慣れた手つきで手続きを終わらせて門をくぐる。
「あ、あの!」
門をくぐり、街に入ったところで女にお礼を言おうとする。
「ああ、礼ならいいよ。なんか訳ありなんだろ?」
「どうしてそれを…」
「だって名前もここいらじゃ聞かないしお金の単位わかってなかったしね」
「なるほど…」
「本当にありがとうございました」
赤城が澪月といっしょにお辞儀をする。
「いいっていいって困ったときはお互い様よ」
「ついでだからさ、しばらく一緒にいないかい?多分ここら辺何もわからないだろう?」
「そうですね…」
「赤城さん、ぜひお言葉に甘えませんか?」
「…そうしましょうか。よろしくお願いします」
「あいよっ。あたしはナタリー。よろしくな!」
「私は赤城、と申します。こちらは澪月さん」
「よろしくお願いします、ナタリーさん」
軽く挨拶をしたところでナタリーが街を案内する、と言って人の流れに乗って街の中心部へ向かう。澪月達はとりあえずナタリーについていくほかない。
しばらく歩くと、円形の広場に出た。外周では数多の商店が開き、中心では大きい噴水の周りで歓談している人たちがいる。旅芸人のような人が子供を周りに集めて芸をしている。
「わぁ…人がいっぱい…」
「ここがこの町の広場だよ。一番この町で人がいるところだね」
「食べ物も…おいしそうですね」
「ああ。せっかくだしなんか食べるかい?」
「是非食べたいです」
「じゃ、ちょっと待っててくれ」
そういってナタリーが湯気の立ちのぼる屋台の方に走っていく。
「お優しい方ですね、ナタリーさん」
「ですね。運がよかったです。親切な方に巡り合えるとは」
しばらくするとナタリーが湯気のたったパイのようなものを持ってくる。
「はいよ。リンゴパイだよ」
「おお…おいしそうですね。いただきます」
一口かじってみる。少し熱いがトロっとした甘い蜜のようなものと食感の残るリンゴが口に広がる。シャキシャキとしているリンゴが新鮮だ。パイの部分も何層か重なっていてサクサクとしている。元の世界のアップルパイとそこまで変わりがない美味しさだった。
「おいしい…!」
「そうだろう?ここらへんじゃちょっと有名な屋台だからね」
「へぇ…有名なんですか…」
「この町の近くにだだっ広いリンゴ畑があってそこのリンゴを使ってるらしいんだよ。そもそもそこのリンゴがうまいからこのお店のリンゴパイが人気なんだけどな」
「リンゴ…いいですね」
リンゴパイを食べ終わったところでこれからどうするかをナタリーが聞いてくる。
「それでさ、アカギ達これからどうするんだい?」
「そうですね…どうしようにもこのあたりのことがまるで分からないので…」
「じゃあこの国の冒険者組合に入ってみるのはどうだい?」
「冒険者組合…ですか?」
「ああ。国と国を移動するのには結構便利だよ」
「そうなのですね…入りますか」
「よっしゃ、じゃあ案内するよ」
「ありがとうございます」
数分歩いたところでおしゃれな石造りの二階建ての建物が見えてくる。特徴的な紋の描いてある看板がかかっている。
「あれですか?」
赤城がナタリーに尋ねる。
「そうさ。あそこで冒険者の登録をして証のカードををもらえばあとは行動がしやすくなる」
そう言いながら少し大きめの扉をギギギっと開ける。中にはたくさんの人がいて、少し騒がしい。
ある人は紙の打ち付けてあるボードを見ながら仲間と話していて、またある人は丸机を囲んで何やら話し込んでいる。あまりこちらに興味を示す人は多くない。
まっすぐ奥に歩くとカウンターがあった。
「ここで冒険者の登録ができる。あたしはそこらで待ってるからちゃっちゃと登録しちゃいな」
そう言ってバーカウンターのようなところへ行って何やら飲み始める。
氷雨凛鈴華ちゃんへ
このssは面白いから、
投稿頑張ってね!
by艦隊の指揮官大鳳可愛いぃより
ありがとうざいます!!
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