鳳・比・北・漣
タイトルは適当です。ごめんなさい許してくださいなんでも(ry
鳳翔編
「……」
「提督!起きてください、お願いしますっ!」
部屋には、倒れた提督と包丁を持った私1人のみ。どうしてこんなことになってしまったのか……。
・・・
「あら、提督。どうしたんですか?」
「鳳翔さんか、少し調理場を借りたくてな……ダメか?」
「いえ、どうぞ。何を作るんですか?」
「ちょっとしたつまみを作る予定だが……」
「そうでしたか……後でご一緒しても?」
「いいぞ、ちょうど1人は少し寂しいと思っていたところだ」
「ありがとうございます。では、後ほど提督のお部屋にお邪魔させて頂きますね」
「おう」
「その前に、明日の分の仕込みだけしておきたいのですが……」
「構わないよ、俺もつまみ作らなきゃならないし」
「では……」
・・・
「……ん?この鍋、中に何かあるな」
「鍋?」
「……これはカレーか」
「そんなものありましたっけ……?」
「少し毒味をさせてもらうか……」
……あら、そう言えば比叡さんが『カレーを作ってみたので、是非味見をお願いします!』と言っていたような……。大変!
「提督、それを食べては……!」
「ごへぁっ」
「提督!?」
・・・
そうだ、思い出した。とりあえず比叡さんは調理場への出入り禁止にしないと……。と、そんなことより。
「提督、目を開けてください!」
「……はっ」
「提督っ!」
「え」
「良かった……本当に……」
「えっと、あの……」
「ごめんなさい、私の不注意で危険な目に……」
「あの、分かったからとりあえず離して」
「え?……あっ」
なんてこと、私ったら提督に抱きついてしまっていたのね。なんてはしたない……。
「失礼致しました……」
「いや、別に嫌な思いはなかったし良いさ。むしろ嬉しかったかもな」
そう言って提督は満更でもなさそうな笑みを浮かべる。……もうっ。
「もう、からかうのは止めてください!」
「はっはっはっ、すまんすまん」
「まったく……」
「ははは……さて、続きを作るとするか」
「そうですね、早めに終わらせてゆっくり呑みましょう」
・・・
「提督、鳳翔です」
「来たか、入っていいぞ」
「では……」
初めて入る提督の部屋に、少し緊張してしまう。
「そんなに固くならなくてもいいぞ、俺とあなたの仲だ」
「そ、そうですね……」
……不思議な感じ。初めて入るはずの部屋なのに、何故か安心する。緊張が和らいでくる。
「……何か変な物でもあったか?」
「いえ、何も……」
この感じは……。
「……何か、懐かしい感じがします」
「そうか?」
「はい、何故かは分かりませんが」
「ふむ……ま、いいか。とりあえず」
「ええ、そうですね。呑みましょうか」
先程から呑みたくてウズウズされている様ですしね。
「ああ。日本酒でいいか?」
「はい。お酌をさせて頂いても?」
「ではお言葉に甘えて」
「いえいえ……どうぞ」
提督の盃に酒を注ぎ終えると。
「ありがとう。次は、こちらからだな」
「あら、そんな……」
「ダメか?」
「……その言い方は狡いですよ」
「すまんな」
……ふふ、まったくもう。
「では、お願いしても宜しいですか?」
「勿論だ」
提督が私の盃に酒を注ぐ。あまり慣れていないのだろうか、手が震えていた。それが可笑しくて、少しだけ笑ってしまった。
「……ふふ」
「……すまんな、まだ慣れるほど回数をこなした訳でもないんだ」
「いいえ、こちらこそ笑ってしまってすみません」
「ほら、注ぎ終わったぞ」
「ありがとうございます。では……」
「これからの世が平和であることを願って、乾杯」
「乾杯……偉く壮大な音頭ですね」
「そうか?ま、細かいことはいいじゃないか。ほら、さっき作ったやつだ」
「これは……結構本格的ですね」
「鳳翔さんも食べるからな。無様なものは作れないだろう?」
「そんな、気を遣わなくても……」
「ん、これは俺の自己満足だ。気にすることはないさ。ただ、鳳翔さんに美味いものをと思ってな 」
「……ありがとうございます」
……今の気持ちを、どう表現すればいいのか分からない。嬉しい?恥ずかしい?否、それらとは違う。これは……?
「……二人きりというのも久しいな」
考え事をしていると、提督が話しかけてきた。
「そう、ですね……最後に二人きりだったのも、もう随分と前のことですからね」
「初期の頃はずっと2人で回してたんだがな」
「そうですね……」
・・・
『軽空母、鳳翔です』
『……良かった、やっと大人が……』
『ど、どうかなさいましたか?』
『ああ、すまない。実はだな……』
・・・
『これを……1人で?』
『そうだ……』
『小学校と言っても過言ではないですね……』
・・・
『吹雪ちゃーん、こっちにゃしぃ!』
『早くするっぽい!』
『おっそーい!』
『待ってよー、みんなー!』
『あー、やっぱ駆逐艦ウザいわー』
『……お、レアモンスターktkr!』
・・・
『と、このように唯一の軽巡である北上がよくサボるせいで俺が1人まとめ役を担っている』
『だから大人の手が欲しかったんですね……』
『頼む、俺に手を貸してくれないか』
『分かりました。その役目、この鳳翔が承ります』
・・・
『なんだか鳳翔さんはお母さんっぽい?』
『そうだねー、睦月もそんな気がしてたのね!』
『それじゃあ、司令官はお父さんなのかな?』
『なるほどー、さしずめ私はお姉さんかな』
『北上さんヤル気になるのおっそーい!』
『レアモンスターGETktkr!』
・・・
・・
・
「……ふふ、昔が懐かしいですね」
「そうだな、今は阿武隈達がまとめ役を買って出るから楽だ」
2人で鎮守府を支えていたあの頃が、今となっては良き思い出だ。
「……提督は、あの頃に戻りたいですか?」
「うーむ、それは無いな」
即答され、少し悲しくなる。
「……どうしてですか?」
「昔であれば、こうして二人きりで酒を呑むことはできなかっただろう?」
「……」
提督は、昔の騒がしくも楽しい鎮守府より、今のこの状況を選んでくれた。それはつまり……。
「……変なことをお伺いしてすみません」
「いや、いいさ。俺も昔に戻りたいと思うことはあるしな」
つまり、昔の皆との時間より、私との今の時間が大切だということ。
「提督、少しお願いがあるのですけれど……」
「ん、どうした?」
ならば、私は。
「また、ご一緒しても宜しいですか?」
提督にとっても私にとっても心地よい時間を、もっと増やそう。
「……構わんさ、むしろ歓迎するよ」
心の何処かで私が呟いた。『よくやった』と。
「それでは、今日はこの辺りで……」
「ああ、気をつけて帰るんだぞ」
まだその意味は分からないけれど、分かる日が来るその時までは。
「今度も楽しみにしていますね」
「うむ、またな」
この人と、一緒に居よう。
・・・・・
比叡編
「鳳翔さん、最近明るくなりましたねー」
「あら、そうですか?」
「ええ。ところで、私の調理場の使用許可は……」
「ないです」
「ひぇぇ……」
折角司令に手料理を食べさせてあげられるチャンスだったのに……。バーニングラブ出来ないよ……。
「金剛さんは一緒じゃないんですね」
「はい、この事は金剛姉様には内緒です。私1人の力で料理を作らなければ、意味がないんです」
金剛姉様に言ったら姉として手伝ってくれるに違いないけれど、それじゃあ私の料理じゃなくなってしまう。恋敵に手伝ってもらうなんて、私のプライドが許せない!
「……なるほど、金剛さんにサプライズですか?」
「いえ、これは別の人に……」
「もしや……提督?」
「ひぇっ!?」
バ、バレた!?
「やはりそうでしたか」
「……あの」
「ええ、金剛さんにも提督にも秘密にしておきますよ」
「ありがとうございます……」
「あと、1つだけ」
「ひぇ?」
「料理を習いたいのなら、何時でも私の所へ来てくださいね。その時は、特例で出入り禁止を解除します」
「鳳翔さん……!ありがとうございます!是非、頼りにさせてもらいます!」
いずれは鳳翔さんみたいな優しい女性になりたいなぁ……そしたら司令は、もっと見てくれるかな?
「……比叡さんも敵、かしら」
「何か言いましたー?」
「いえ、何も?」
「ふーん……ま、いっか!じゃ、ご馳走様でした!」
・・・
「司令!」
「な、なんだ比叡」
「お願いがあります!」
「お願い?週末に休暇でも欲しいのか?」
「違います!今度、私の手料理を食べてほしいんです!」
「比叡の……手料理……!?」
「駄目ですか?」
「……まあいい、食おう。但し、食えるものを頼むぞ」
「はい……この前はすみませんでした」
まさか司令が倒れるなんて……。鳳翔さんに怒られちゃったな。
「では、そういう事なのでよろしくお願いします!」
とりあえず、約束は取り付けた。今は、これでいい。
「それにしても、何故手料理を俺に?」
「はい、司令に喜んでもらえたらいいなと思いました!」
「そ、そうか……行っていいぞ」
・・・
「さて、鳳翔さん」
「いいですよ、何から作りたいですか?」
「とりあえず司令の好きな物を!」
「……そう、分かりました。では、そばを作りましょうか」
「はい!」
司令はそばが好き……。よし、覚えた。
・・・
「出来たー!」
「では、ご自分で味見をしてみてください」
「はい!……んむっ」
「どうですか?」
「……いい感じです!」
こんなに料理が上手くいったのは初めて!
「なら良かったわ、教えた甲斐があったというものです」
「ありがとうございました!これからも、よろしくお願いします!」
「えぇ、何時でも頼ってちょうだいね」
「ふんふーん」
私は鼻歌を歌いながら部屋から出ていった。
・・・
「……やはり、比叡さんは提督のことが好きなのでしょうか。それに危機感をもった私も……結局、提督が好きだということになるのでしょうか?」
・・・
「あ、司令!」
「どうした?比叡」
「手料理のことなんですけど、何が食べたいですか?」
「そうだな、蕎麦と……天ぷらが食べたい」
「了解です!」
・・・
「と、いうことで鳳翔さん」
「天ぷらですね、分かりました」
「蕎麦と合う天ぷらってなんでしょうか?」
「そうですね……人によって違うらしいですけど、提督は海老天が好きみたいですよ」
「そうなんですねー……勉強になります!」
「なら良かったわ」
「それにしても鳳翔さんは司令のことをよく知ってますね!」
「……まあ、昔からの長い付き合いですからね。これくらいは覚えますよ」
……今、鳳翔さんが少し顔を赤らめた気が。少しだけ不味いかな?
「……それに、あの人のことは私が1番よく見ていると思いますしね」
とっても不味いかな?
「……さっすが鳳翔さん!早速作り方を教えてください!」
「そ、そうですね……」
よし、危ない空気を断ち切れた。
・・・
「出来たー!」
「次は味見です」
「……うん、美味しい!」
「さあ、これでもう大丈夫ね?」
「はい!ご指導ご鞭撻、ありがとうございましたっ!」
これで、司令に手料理を……!
「あ、まだ調理場は出入り禁止ですよ?今回は特例でしたけど、1人では絶対入らないように。使いたい時は、必ず私のいる時に許可を得てからでお願いします」
「ひぇっ?」
・・・
うう、そんなぁ……。
「ん、比叡か?」
「司令……?」
廊下を歩いていると、後ろから司令に声をかけられた。
「落ち込んでいるようだが、何があったか教えてくれないか?」
「それが……」
・・・
「ふむ、それは困るな。折角比叡が手料理を振舞ってくれるというので楽しみにしていたのだが……」
「ごめんなさい……」
「よし、俺が鳳翔さんに口添えしてやろう」
「え、いいんですか?」
「さっきも言っただろう?俺は比叡の手料理が食べてみたいんだ」
「司令……!ありがとうございます!」
・・・
と、いうことで。
「司令、楽しみにしててくださいね!」
「ああ、期待しているぞ」
「……ばか」
「ん、何か言ったか?鳳翔さん」
「いえ、なんでもありませんよ?」
さーて、作るぞー!
・・・
「出来ました!」
「おお、いい出来じゃないか」
「早速食べてみてください!」
「分かった。では……頂きます」
……無言の時間。1秒が、1時間にも感じられる。緊張が、不安が、私を襲う。
「……うん、美味いな」
「ホントですか!?やったー!」
司令に『美味い』って言って貰えた!
「どうしてこんなに美味いものが作れるのに、あの毒物を生み出したんだ?」
「あの時の私はまだ未熟だったんですよ……」
どうしてあんなものが作れたんだろう、今じゃありえないよ。水加減とか火の強さとか材料とか……。
「まあ、それは置いておこう。このそばも天ぷらも、見事な出来だった。ありがとう」
「こちらこそ、食べてくださってありがとうございました!」
・・・・・
北上編
「あーウザい。とってもウザい」
ポロリと口から出た言葉。いっつもそれを耳ざとく拾うのは……。
「北上、何がそんなにウザいのだ?」
提督だ。地獄耳なのか。
「最近比叡さんも鳳翔さんも提督にベタベタじゃん?暑苦しくて堪らないわけよ」
「む、そうか。2人にはそれとなく注意しておこう」
「あー、いいのいいの。本人達には悪気ある訳じゃないし」
「ならいいんだが……」
近頃、鳳翔さんと比叡さんの2人が提督を取り合ってるんだよねー。提督は気づいてないけど。で、そのやり取りを見てるとなんかイラッと来ちゃうんだよねー。あれかな、『リア充爆ぜろ』ってやつかな。
・・・
「ねー大井っちー」
「はい、どうしました?」
「提督がねー、またイチャイチャしてたんだよー」
「……」
「そんでねー、なんかイラッと来ちゃうんだよねー。なんでだろ?」
「……私にも、分かりませんね。ごめんなさい」
「いや、いいよいいよ。こっちこそ変なこと聞いてごめんねー」
・・・
「まさか、北上さんもこっち側?でも、そんな、まさか……」
・・・
最近、『ウザい』と感じる艦に共通するものがあることに気づいた。よく提督の近くにいる奴らが、とてもウザい。こう、なんというか媚を売ってる感じ?が苦手。『リア充爆ぜろ』だよねこれ。……んー、でもそれだったら提督もウザいか。リア充の中には提督もいる訳だし。
「北上さん、少しお話が……」
「ん、どしたの大井っち」
・・・
「幾つか質問をしたいんですが、宜しいですか?」
「いいよー」
「ではまず、最近ウザいと思った艦は?」
「比叡さんと鳳翔さんだね」
「どのタイミングでしたか?」
「そうねー、提督と喋ってる時とか?」
「金剛さんをウザいと思ったことは?」
「毎日ウザいね」
「……もし私が提督に告白したら?」
「何それ、何故かとってもウザい。ごめん」
「いえ、いいんですよ。変な質問してごめんなさい」
「大井っちがいいならいいけど……」
・・・
「やっぱり北上さんもこっち側で間違いないようね、何か対策を練らないと……」
・・・
「提督ー」
「ん、どうした?」
「寒ーい」
「ふむ、確かにもう冬が近いからな。こたつの許可でも出すか?」
「いや、あっためてー」
「え?」
「なんか人肌恋しい気分なんだよねー」
というより、提督不足?なんてーか、提督との時間が少ないとモヤモヤしちゃうんだよねー。
「……俺は一体どうすればいいんだ?」
「んー、考えてなかったわ。提督のお好きに」
「まったく……ほら、これでどうだ?」
ハグ……。ちょっと恥ずかしいけど、まあいっか。
「ん、良いねー、痺れるねー」
「お気に召したようで何よりだ。それにしても、なんで時々人が変わったように甘えてくるんだ?」
「分かんない。気分?」
「俺に聞くな」
・・・
「なんとか北上さんをこちら側から離さないと、好きな人が被ってしまう……そうなれば血祭り必至……北上さんの意思も尊重したい……でも私もここを譲る気はないし……うぅぅ」
・・・
「今夜あたり、また一緒に呑みませんか?」
「良いぞ、最近はご無沙汰していたしな」
「……」
「司令!今度は洋食を作ろうと思うんですが、何か食べたいものはありますか?」
「そうだな、カレーがいいな」
「……」
「……なんだ」
「……別に。気分」
「気分で俺の膝の上に座る奴があるか……?」
・・・
「ああ、考えれば考えるほど頭がおかしくなりそう……誰か助けて……」
・・・
「アツゥイ!」
「冬にこの暑さとは、異常気象も極まったりだな」
冬にまさかの30度超え。暑すぎ……。
「ね、提督。今日は折角お休みなんだしさー、海とかプールとか泳げるところに連れてってよー」
とりあえず打開策を提示。
「海はいつも行っているだろう?プールだって、演習場に行けばいいだけの話だ」
「や、娯楽として海やプールに行きたいんだよー、提督と二人っきりで」
ついでに提督不足の分も補給しておこうかなー。
「俺が行く必要がないと思うのだが」
「何つれないこといってんのさー、女の子からのお誘いだよ?提督ともあろう男がまさか断るはずがないよねー。しかも、年頃の女の子を1人プールなんかに放り出して、無事に帰って来ることなんてできるのかなー?」
「……いいだろう、そこまで言うのなら行ってやろうではないか」
……チョロいねー。
「じゃ、準備してくるから車よろしくー」
「早い目になー」
・・・
「……あら、北上さんが何処かに出かけるようね。この隙に提督の所へ……って、提督も一緒?え、2人で?車で?……えぇぇぇ!?」
・・・
「提督ー、どう?」
「うむ、似合っているぞ。すまんが人と海に来ることがないので水着の感想などを言い慣れていなくてな……」
「あー、いいのいいの。私だって言われ慣れてる訳じゃないし」
ま、褒めてくれただけ良しとしますかー。
「提督、早く泳ごー」
「分かっているよ。だが、しっかりと柔軟運動をしてからだ」
・・・
「出遅れた?いや、きっと北上さんはただ遊びに行っただけで、そのアシに提督は使われただけ……そうよ、きっとそうに違いないわ!」
・・・
「……げぇ、なんでここにご主人様が」
「え、どこ?」
「ほら、アレ。見える?ウッシー」
「……あ、ホントだ。おーい、t……」
「バカ!バレたらどうすんのさ! 」
「えー、別にいいんじゃない?」
「私はヤなの!ほら、帰るよウッシー!」
「も、もうちょっとだけ遊びたい……」
「なら1人で遊んどいて!」
「そんなぁ……」
・・・
「ん?今漣と潮の声が聞こえたような……」
「気の所為じゃない?」
「まあ、こんな鎮守府から離れた所にいるはずがないか……」
「そうそう、今は二人っきりなんだしさー、もっと楽しも?」
「……そうだな、折角海まで来たんだ。楽しまなければ損だな」
……ま、私にも聞こえたけどね。あちらさんは引いてくれるみたいだし、今は提督不足の分をしっかり補給しないと……。
・・・
「あら、漣に潮。どうしたの?そんなに息を切らして……え?提督と北上さんが?なんですって!?」
・・・
「楽しかったねー」
「そうだな、俺もあんなにはしゃいだのは数年ぶりだ」
「え、あれではしゃいでたの?」
そんな風には見えなかったけど……。
「ああ、俺は感情を表に出すのが苦手なようでな……」
「わっかりづらいねー」
「ぐっ……すまん」
……提督補給完了、過剰摂取しちゃったかな?過剰摂取、癖になりそうだなー。まあ、別に害がある訳でもないし?もっともっと一緒にいても良い……よね?
「ねー、提督ー」
「ん、どうした?」
「これからも沢山私と一緒に居てほしいなー、なんて」
「……俺は、艦娘を見捨てるつもりは毛頭ないぞ?」
「そういうことじゃないんだけど……まあ、今はそれでいいや」
「……つまり、どういうことだ……?」
・・・
「……不味いわね、近頃北上さんが自分の気持ちに気づき始めた節がある……時間はない。どうすればいいか考えないと……」
・・・
「ねー大井っちー」
「は、はいなんでしょう」
「今日ねー、提督がねー」
・・・
「ほら、また提督の話。しかも提督の話をしてる北上さんはとっても楽しそう……うぅ、負けてられない!幾ら相手が北上さんだと言えども、負けるものですかー!」
・・・・・
漣編
「漣ちゃん、漣ちゃん」
「んぁ?なんですかいウッシー」
「今日ね、提督がね!沢山褒めてくれたの!」
ああ、そんなことで喜べるなんてウッシーはピュアだなぁ……。
「それは良かった、とても良かった」
「聞く気無いでしょ!」
・・・
初期艦として、責務は果たしたつもり。ご主人様が1人前になるまでは、育てたはずだ。もう、初期艦としての自分はいない……と、思う。それでも、何処かにまだ少しだけ、初期艦としての自分がいるような気がする。
・・・
「漣ちゃん、近頃ちゃんと提督と話してる?」
「んー、あんまり話してないね」
「そんな調子でずっと話しかけてないじゃない!漣ちゃんは初期艦なんだから、提督にとっては特別な存在なんだよ?」
「そんなこと無いよ、ご主人様はそんなことで差別したりなんかしない。それは私が1番分かってる」
でも、ほんの少しだけ。特別扱いしてほしいと思うこともある。だが、それが叶わないのは経験から分かってしまう。
「そんなのわかんないよ!物は試しだって!」
「……うるさいな、放っておいてよ!」
気がついたら怒鳴っていた。
「……ごめん、ちょっとしつこかったね」
「……こっちこそ、急にどなってごめん」
何故怒鳴ってしまったのか、その理由は分からなかった。
・・・
「おほー、ぼのたそ水着?」
「な、うっさいわね!関係ないでしょ!?」
「ぼのたそが水着だったら、私が水着でも問題ないよねー……ってんで、はいな!」
「えっ、なんで脱いで!?」
「まだまだお主もピュアよのう」
「な、なんだ。ちゃんと水着を下に着てたのね……それならよ……くない!水着だけって変態じゃないの!?」
「人のこと言えないでしょー?」
「わ、私はいいのよ。クソ提督から許可ももらったし」
「水着1枚で歩くための許可をご主人様に出してるぼのたそ……強い(確信)」
「変な妄想はやめなさい!」
……私も許可もらおうかな。
・・・
最近ご主人様に構ってもら……じゃない、構ってあげていないので、そろそろ構いに行こうかと考えていたのだが。
「司令、ボルシチです!」
「ボルシチか、少し前にВерныйも作ってくれたな。ありがとう、頂くよ」
「今夜も1杯どうですか?」
「最近よく呑むな……呑みすぎには気をつけるんだぞ?」
「提督ー、眠ーい。膝ー」
「まったく、お前という奴は……」
まるで近付く隙がない。いつの間にやら、ご主人様は人気者になっていた。しかも鳳翔さんと比叡さんからはなんというかこう……ご主人様Love勢の雰囲気?が感じ取れる。北上さんもいずれはああなるのかな……。
「……み」
ご主人様は、昔は私以外とは喋らないような無口な感じだったのに、今ではすっかり打ち解けて皆とも会話をするようになって。
「……なみ」
いつしか私の出番も私と一緒の時間も減って。
「……ざなみ」
ご主人様が皆と仲良くなる一方で、私は変なキャラ設定のせいであまり友人も作れず。これは私のせいじゃないけど……。
「漣!」
「っへぁ!?」
危ない、メタな領域に足を踏み込んでた!
「どうしたんだ、執務室の前で突っ立って」
「え?……あ、もうこんな時間?」
ご主人様に話しかけられ我に帰ると、辺りはすっかり暗くなっていた。大体4時間ほどここに立っていたのね。こんなに長時間動かなかったのは溜まった録画を一気見したとき以来だよ……。
「何か用事か?」
「いや、なんでもないんだけどさ……」
「そうか。……飯は食ったか?」
「まだだね」
「……着いてこい、飯を食いに行くぞ」
・・・
「わあ……」
ご主人様に連れてこられたのは、めちゃんこ高そうなレストラン。
「遠慮せずに好きなだけ頼め」
「でも……」
「俺がいいと言っているんだ。食いたくないのか?」
……ぐぅぅ。
「ほれみろ、腹は正直だ」
「……もう、仕方ないね。どうなっても知らないよ?」
・・・
「メシウマァ!」
「使い方が違うんじゃないか?」
「美味いものは仕方ない」
「そういうものなのか……?」
「それにしても、なんでこんな所に私を?」
こんな所に連れてきてもらうような活躍もしていなければ、連れてきて欲しいと頼んだ覚えもない。一体何故……?
「……さて、今日が何の日か分かるか?」
「知らんな(キリッ」
「……俺が、そしてお前が鎮守府に着任したのは?」
「あっ、ふーん……」
「お察しの通り、ちょうど5年前だ。このような記念日をお前と2人で祝ったことがなかったからな。時には初心にかえって初期艦のお前と2人だけでゆっくりとした時間を過ごしたいと、前々から思っていたんだ」
「……そう、なんだ」
……なんだ、全部私の思い違いって訳ね。ご主人様は差別こそしないものの、ちゃんと初期艦の私を大切にしてくれてたんだ。……あれ、おかしいな。前がボヤけて見えにくい。
「……喜んでもらえたようで何よりだ」
「嬉しい……に、決まってる……じゃん」
「……そうか、なら良かった。これからもよろしく、漣」
「こちらこそよろしくね、ご主人様!」
・・・
あの日から、自分でも分かるくらい私は変わった。よくご主人様と話すようになり、2人の時間が増えたから。もうご主人様無しの生活は考えられなくなってしまった。だったら、独り占めしちゃえ。
「ご主人様、ご主人様!」
「どうした、また話をしに来たのか?」
「うん!」
もう逃がさないよ、漣はしつこいから!
艦!
🍎平成30年『防衛白書』86頁🍏
💀韓.国.🇰🇷💀
🍎19年連続で『軍拡』実施🍏
🍎特に『ミサイル・海軍・空軍』の『軍拡』が『顕著』である。🍏
💀極めて危険な『兆候』💀
かが『🍎流石に気分が高揚します。🍏』