2021-03-22 00:20:22 更新

概要

このssを書いてる最中に、右腕を痛めました。文章力は通常通りなのでご了承ください。


前書き

(前回までのあらすじ)
少し前に茜を助けたのは自分自身のいとこでもあり、もう死んだと言われていた夕暮だった。
自分の名前を呼ばれた際に怒り、前元帥を襲った夕暮だったが、色々とあり前元帥のいる施設に連れて来られた。


夕暮「まったく、あっちこっちに連れて行かれたかと思えば、よく分からない機械で身体調べられるし…。何なのよ、本当に…」


用意された部屋の中で、ため息交じりに言葉を吐く。

調べられただけで、何か身体にされたワケではないがなんで調べられたのかが分からない。


夕暮「まぁ、今、私が考えても意味は無い、か…」


ベッドで眠るのは何年ぶりだっだっけ…。とりあえず、もう寝よ。

明日も色々あるかもしれないし…。


まだ10時にもなっていないが、襲い来る眠気に負け、そのまま眠ってしまった。

これまでの硬い地面の上とは違って、フカフカのベッドが相手だから仕方がないかもしれないが。


夕暮がベッド上で寝息を立て始めたとほぼ同時刻、機械などがあちらこちらに乱雑に置かれている部屋の中で、前元帥と優斗は2人で大型機械の前で色々と苦戦していた。


優斗「これで、いいんですかね…」


前元帥「まぁ、たぶん…」


優斗「たぶんじゃ困りますよ…」


前元帥「俺もアイツに説明はされたけれども、アイツの言ってる事はよく分からんからな」


優斗「じゃあ、俺が代わりに機械にデータ打ち込んでおくんでそっち見ておいてください」


前元帥「分かった。じゃあ、頼む」


手渡された資料に載っているデータを機械に打ち込んでいく。

モニター上に、数字が浮かんで消えるを繰り返す。

データを打ち込み始めてから数分経つと、打ち込みが終了し決定キーを押す。


優斗「これでいい…。ハズ」


説明書的なモノを読んではみたが、入力の仕方しか分からなかった。

一体この機械は何を調べるためのモノなんだ?

身体の状態とかを調べるのか? それとも、深海棲艦について調べるためのものか?

さっぱり分からん。


頭をフル回転させるが、まったく見当がつかない。

必死で考えていると、機械から処理完了を告げる音が聞こえてきた。


前元帥「特に、何も問題なくいけたみたいだな」


優斗「けれども、この機械って何を調べる機械なんですか?」


前元帥「あぁ、これか? コレは本来は艦娘の遺伝子について調べる機械だったんだけれども、例の医者さんが改造して深海棲艦の遺伝子についても調べられるようになったヤツだ」


優斗「でも、遺伝子を調べてどうにかなるんですかね」


前元帥「俺には分からん。そこんトコはあの人にしか分からないワケだから。ただ、これだけのデータがあれば例のブツを作成するぐらいならできるかな…」


優斗「例のブツ? なんすかソレ。もしかして、違法薬物とかじゃないですよね…」


前元帥「んなワケあるかい!」


優斗「ですよね」


前元帥「と、言いたいところだが」


優斗「…え?」


前元帥「このデータから作り出すモノは、実際にはお前の言う「違法薬物」に当たるかもな…」


優斗「ちょ、ちょっと、それはいくらなんでもマズいですよ。笑えないですよ!? …でも、何を作るんですか」


前元帥「簡単に言えば、わざと深海棲艦化させる薬、かな」


聞いた瞬間、耳を疑った。人為的に深海棲艦化!? 


優斗「な、なんでそんなモノを!? そんな危険なモノを作り出してどうするつもりなんですか!?」


前元帥「まぁ、一旦落ち着け。これには理由がある」


優斗「…理由?」


前元帥「確かに、深海棲艦化させるのは色々とマズいかもしれない。けれども、君のお嫁さんと夕暮のデータを見る限りだと身体の半身だけが深海棲艦化しているだけなのに、能力が大きく向上している」


優斗「だからと言って、今なんも問題がない艦娘にこの薬を使うつもりですか!?」


前元帥「いや、違う。コレは俺ら人間が使うためのモノだ」


優斗「俺たちが…?」


人間を深海棲艦化させるって事は、あのバケモンと同じようになっちまうって事か?

でも、上手く制御出来れば大きな戦力アップにはなるっちゃなるけれども…。


優斗「でも、危険も大きいと思うんですが」


前元帥「確かにな。だから、時間制限を設ける事にしてる」


前元帥が、手に持っているタブレット端末を操作し始める。

画面には、2種類の薬のデータが表示されていた。

1つは今さっきも言った深海棲艦化させる薬。もう1つは、深海棲艦化した人間を元に戻すための薬のデータが映っていた。


前元帥「元に戻すための薬は、前に子供の頃に深海棲艦化したあの娘のデータを使って、この薬をココの医者さんや研究者たちが作り出したんだ」


子供の頃に深海棲艦化した娘…。春香の事もいくらか関係しているんだろうか。


前元帥「けれども、この薬は深海棲艦化してからまだ10分以内のヤツにしか効果がまだ無くてな…」


10分、か…。じゃあ、あのバケモンには効果無しか。

薬の開発も上手くいかないもんだな。俺が言える様なセリフではないのは分かっているけれども。


優斗「こんな事聞くのはちょっと、アレかもしれませんけれども…。その薬を使って、深海棲艦化して10分過ぎてしまうと、どうなってしまうんですか?」


前元帥「俺の憶測でしかないが…。恐らく、暴走する」


優斗「暴走?」


前元帥「深海棲艦化するって事は、深海棲艦と同じように頭には人間に対しての憎悪や殺意が沸くようになる。10分までならギリギリ抑えられるだろうけれども、過ぎてしまえばコントロール不能になる。つまり、人間、艦娘を皆殺しにするまで止まらなくなる」


優斗「けれども、この薬を使わないと…」


前元帥「あのバケモンは倒せないだろうな。実際、あのバケモンはこの薬を使った人間10人相手でも余裕で勝てる程の力を得ている。しかも、あのバケモンの能力は戦えば戦うほど上昇してきているのも現状だ」


優斗「どうやってあのバケモンを倒せばいいんでしょうかね…」


前元帥「今は、この薬を改良していくしかないな。今は調査とかで別場所にいるが、ココにいる医者さんらが戻ってきたらこの薬の改良の再開も行うことが出来るからな」


優斗「今は、耐えるだけしかできないのが辛いですね…」


前元帥「まぁな…。けれども、今は作れるぶんだけ作って緊急事態用に持っておくしかないな。とりあえず、後は機械に任せよう。薬の作成は機械がやってくれるみたいだからな」


手に持っていたタブレット端末を前元帥が再び操作し始める。

操作し始めると、目の前にある機械も動き始める。


前元帥「今の状態だと、この薬は4,5個ぐらいしか作れないのが現状か…。もう少し作っておきたかったんだがな」


機械が動き始めてから1時間程経つと、人間を10分だけだが深海棲艦化させる薬が完成した。

出来上がった薬を、前元帥が丁寧に瓶の中に入れていく。


前元帥「おい、お前」


優斗「…はい?」


前元帥「お前にも2つだけ渡しておく。ただし、深海棲艦化したら絶対に10分経つ前に元に戻すための薬を必ず飲むこと。そして、何があったとしても、深海棲艦化する薬を2つ同時に飲まない事。これだけは絶対に守れよ」


優斗「分かってます。ただ、この薬を使う事が無いといいんですけれどもね…」


前元帥「そういう事を言った時に限って起きたりするのが怖いんだよな…」


優斗「じゃあ、俺はそろそろ休みます。お先に失礼します」


前元帥「おう。ゆっくり休めよ」


優斗が部屋を後にする。その後ろ姿を見ながら前元帥は上を見上げた。


前元帥「…。どうして、あの子はこんなにも辛い目にあわせるんだろうかねぇ、神様は」



部屋に着くと、茜が先に眠っていた。

茜も今日は色々あって疲れているんだろう。帰って来てからは身体の検査とかもやって、夕暮とも色々とあって…。

茜も夕暮も、どっちも身体の半分が深海棲艦化してるから、互いに気にせず話せるかもしれないけれども…。


優斗「まぁ、2人の事は後々考える事にするか。俺も寝よ」


ベッドに横になる。視線を窓の方に向けると、いつも通りの海が映っていた。


優斗「明日も、こんな海が見れたらいいんだけれどもな…」


眠気が少しずつ襲ってくる。目を閉じて、眠りにつくのを待つ。


だが、目を閉じてから1分も経たない間に海から1つの閃光が走り、あまりの明るさに目が覚めた。


優斗「な、なん…」


海の方を見る。

そこには、絶望が待っていた。見た瞬間、言いかけた言葉が途切れた。


あのバケモノが、海の中から出てきた。

こっちに向かって、ゆっくりと歩いてくる。


優斗「う、嘘だろ…?」


茜はまだ眠っている。無理やり起こすのは、流石に茜に悪いと思い起こさないように部屋から出た。

仮に起こしたとしても、半分寝ぼけている状態じゃ足手まといになってしまう。

けれども、なんで俺らの居場所が分かったんだよ!? 


バケモノ「はハァ…。コこかラ、艦娘の艤装ノ信号が出てルなァ…」


もしかたらあのバケモン、コンピュータ能力とかが高いのか?

そうだと考えたら、もう艤装が使えなくなっちまうじゃねぇか!? クッソ、どうすりゃいいんだ!!

前元帥は、今はまだ作業とかで部屋から出れる状態じゃない。今動けるのは、俺と前元帥の横にいた深海棲艦2人ぐらいか?


優斗「あのバケモンが…。こんな真夜中に襲ってくるんじゃねぇよ…!!」


貰ったばっかりの薬…。使うしかねぇのか。

外から、戦い始めた事を知らせるかのように砲撃音等が聞こえ始める。


優斗「…。覚悟決めるしかない、か…」


薬を取り出す。そして、口に入れる。


優斗「あんまり身体に異変を感じないけれども…」


薬を飲み込んでもなんにも感じない。

けれども、1歩踏み出した瞬間、身体が軽く感じた。走り出すと、いつもよりも早く走れている事に気付く。


優斗「10分、か…。何とかしてこの辺から追い出すぐらいならいけるか…?」


バケモノの方に向かって走っていく。

走っていて気付かなかったが、海の上でも問題なく走れていた。

走っていると、バケモノがいる近くまで来た。そこではバケモノとレ級、ヲ級が戦っていた。


レ級「こんのぉ!!」


ヲ級「くっ…」


バケモノ「弱イ、弱過ぎル…。コノ程度で倒せルとデモ?」


腕をバケモノがぶん回す。レ級、ヲ級がそのせいでつっ飛ばされてしまう。


優斗「この…。バケモノが!!」


バケモノの死角である後ろから、蹴りをかます。バケモノが体勢を崩している最中に、今度は足を破壊しにまわる。


バケモノ「ナ…、人間がナゼこンな力を!?」


優斗「さっさとココで死んでろ、このバケモノがぁ!!」


身体がでかいぶん、小回りが利きずらいハズだ。しかも、足元に向かって攻撃するとなると外した時は海水を顔面に被る可能性があるため、上手く攻撃できないはずと考え、足元を破壊しにいく。


バケモノ「こノ…。ちょコまカと…!!!」


触手が身体が出てくる。けれども、身体能力が上がっているおかげか上手く回避していく。


優斗「こんなんじゃ効かねぇよっ…!」


足に向かって蹴りを全力で放つ。

バケモノが、足を抑えようとするタイミングで、顔付近にまで飛び上がる。そして、顔の部分に向かって今度は拳を入れる。


バケモノ「グッ…。がァ…ッ!!」


レ級「嘘だろ…?」


ヲ級「なんていう力なの…」


少しずつ、ダメージを与えられている気がするが、時間的にもそろそろマズい。

バケモノから離れようとする。しかし、バケモノが最後の抵抗と言わんばかりの触手攻撃をしてくる。

上手く回避出来ているが、このまま回避し続けると、10分を過ぎてしまう。


優斗「ヤベぇ…。もうそろそろ10分過ぎちまう…!!」


必死でかわし続ける。何とか触手攻撃から逃げ切る事は出来た。

が、薬を口の中に入れるよりも先に10分経ってしまった。


優斗「や、ヤッベッ…!?」


急いで薬を口に入れようとするが、慌ててしまい海の中に落としてしまった。


優斗「あっ…」


残っているもう1個は、部屋の中に置いてきてしまっている。

もうどうしようもない。


優斗「嘘だろ…。ッ、アッ…!」


急に頭に激痛が走り出す。脳内が、怒りや殺意でいっぱいになり始める。

意地で耐えようとするが、頭にくる激痛のせいで耐えようがない。


優斗「アッ…。グッ…アァァァァ!!!」


必死の抵抗も、脳内に溢れてくる怒りを抑えきれなかった。

激痛が止まった後、海の上で優斗は下を向いて動かなくなる。


バケモノ「な二ボーっトシテるん…、だァ!?」


触手を優斗目掛けて放った後、バケモノは歩いて優斗の元に歩いていく。


バケモノ「…イない? …グッ!?」


痛みを感じ、触手の先端部の方を見る。

放った触手はズタズタに引き裂かれ、大量の血液に似た液体を垂れ流していた。


優斗「ダアッ!!」


バケモノの腕を引きちぎり、引きちぎった腕で殴りつける。

抵抗しようとするが、抵抗する間もなくバケモノは肉片にされていく。

グチャグチャと耳に悪い音をまき散らしながら、優斗はバケモノを破壊していく。


バケモノ「ガ…ァッ…」


真顔のまま、グチャグチャになっていくバケモノを見ると普通の人間では有り得ない表情を優斗は浮かべた。


優斗「ハハッ…。アハハ…。アハハハハハ!!」


優斗は笑っていた。ただし、いつもの楽しい時に出す笑顔ではなく狂った笑いだった。


レ級「ちょ、アイツおかしくなってんぞ!?」


ヲ級「な、何が…。零、ココであの人の事見ておいて! あの人に報告してくる!」


レ級「ちょ、分かったけれども、急いで戻って来いよ!?」


スピードを上げて施設の方へとヲ級が戻っていく。

そのすぐ近くでは、優斗がバケモノを血祭りにしていた。


優斗「アハハ!! もっと苦しめ、もっと叫べ、もっと血を出せ!!!」


レ級「お、おい…」


完全に狂ってしまっている。

もう手の施しようがないんじゃないかと思う程である。

けれども、この地獄のような状況はこれだけでは終わらないどころか、更に悪化する方向に舵を向けた。


レ級「…なんか近づいて来てる?」


まだ遠いが、海の上を走ってくる音が聞こえてくる。

音は、時間が経つにつれて大きくなってくる。

あのバケモノの仲間が援護しに来たと考え、その場から離れようとしたが優斗が狂ってしまっているので動けない。


行動出来ずにどうするかを考えていると、今度は砲撃音が聞こえてきた。

放たれた砲撃はバケモノにも優斗にも当たらずに海に落ちた。


レ級「こ、今度はなんだ…!?」


砲撃が放たれた方を見ると、数人の艦娘と提督らしき人物が船で来ていた。


レ級「ウッソだろ、おい…」


どうにも出来ずに動けなくなっていると、ヲ級が前元帥と一緒に戻ってきた。


前元帥「オイオイ…。なんでこんなこんな事になっちまってんだよ…!」


ヲ級「今さっき説明した通りでこうなってしまいました…」


前元帥「そりゃそうだろうけれども…。てか、なんだアレ?」


レ級「アイツとバケモンが戦っている時に急に来たんだよ。ただ、まだ1発だけしか撃ってきてはないけれども…」


前元帥「とりあえず、優斗を止めるぞ。仕方ないが、コレを使うしかないか…」


ポケットから、深海棲艦化させる薬などとは違う薬を取り出す。


前元帥「行くぞ。あのバケモノを助ける事になっちまうが、優斗があのままだと嫁さんも可哀想だからな…」


3人で優斗の方に向かい始めた。すると、今さっきまでは何もしてこなかった艦娘と提督らが一気に砲撃してきた。


レ級「ちょっ…!? 危ねっ!」


ヲ級「きゅ、急に!?」


前元帥「何なんだよ、ホントに!?」


??「やっぱり、親父は深海棲艦の仲間なんだな。これで確信がついた」


前元帥「なっ…。祐樹、テメェ!!」


こっちに向かって撃ってきたのは、祐樹らの艦隊だった。

周りには、元優斗の艦娘だった娘がそこにはいた。


(次回に続く)


後書き

次回、「終わらない絶望的現実」に続きます。


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