提督「赤のネクタイか…」
提督「おはよう龍田」
龍田「あら~おはよ~ていとっ…」
提督「ん?どうした」
彼は今日赤いネクタイをつけていた…とても似合っていた。あの柄は私が提督に送ったものだ。
龍田「ううん…なんでもないわ~」
でも彼は違う色のネクタイをつけていた。
龍田「どうして…」
色が気に入らなかった?でも…態々ネクタイを買いに行く人ではない、私が送ったのは青色のネクタイだった
かといって聞くものなんだがおかしい気がする。私が送った物の筈だから
龍田「持ってたのかしら…でも見たこと無い」
彼の部屋を掃除する事もあった。でもネクタイ類は持ってなかったし…そもそも衣類自体が少なかった
いつも着るのはワイシャツに軍服の下…付き合うまではこの格好しか見たことが無かった
それに私服といっても普段の格好とあまり変わらない。シャツにズボン…よく見る服装
あの人はお洒落をするって事に関心が無かった。だからネクタイをプレゼントした。
龍田「…もしかして他の人が」
提督は人気者…私と付き合っている事を公言したのにも関わらずアピールが耐えない
でもいつも私を最優先に選んでくれた。いや選んでくれていた。
天龍「どうした~提督と喧嘩でもしたのか?」
龍田「天龍ちゃん…」
天龍「いつもならニコニコしてんのに今日はブルーだな…相談なら乗るぞ?」
龍田「実は…」
龍田「いや、なんでもないわ~」
ここで相談すれば天龍ちゃんは提督に事の真相を聞くだろう。そうすれば答えは出る
私はその答えが聞きたくなかった。
正確には聞くのが怖かった…もしかしたら誰かが送ったものかもしれない。そしてその人と事が…
嫌なことが頭を駆け巡る。どんな考えもマイナスになってしまう
天龍「…そうか」
龍田「ごめんなさいね~心配させて」
天龍「あんまり考え込むなよ?脳がパンクしちまう」
龍田「うん…」
…
提督「龍田…」
扶桑「元気ないですね…そんなんじゃ駄目ですよ」
提督「いや…すこし気になることがあってな」
扶桑「何か問題でも?」
提督「…個人的なものだ」
扶桑「そうですか…ネクタイ似合ってますよ」
提督「…そうか」
…
日が進むにつれ疑惑は険悪に変わっていく…心では分かっているのにあれが憎い
提督の笑顔が赤に隠れて見えない…
龍田「…もぅ駄目かもしれないわ」
一緒に居るのが辛い。いや、彼を信じれない自分を変えられないことが辛い
日に日にそんな思考が交差する。変えたくない、変えないと心が壊れてしまいそう。矛盾が私を追い詰める
提督「龍田、話がある。大丈夫か?」
龍田「…!?」
龍田「ど、どうしたの?」
提督「いや、最近調子が悪そうに見えてな・・・大丈夫か?」
龍田「・・・」
提督「辛いなら言ってくれ・・・」
龍田「なんでも…ないの、大丈夫」
提督「しかし…」
龍田「放っといて!!」
こんな時に話を打ち明ければよかった・・・でももう遅い。突き放す言葉が先に出てしまったのだから
今更引き返せない・・・焦る気持ちは二の次に、私は彼の顔を見上げる
提督「っ…!」
龍田「…ぁ」
龍田「ごめんなさい。でも大丈夫なの、それじゃね」
タタター
提督「…龍田」
扶桑「追いかけないんですか?」
提督「俺は、引きとめられなかった…もしかしたら俺が…」
扶桑「駄目ですよ?彼女さんなんですから、追いかけないと…」
扶桑「消えてしまいますよ?」
…
天龍「おい、提督」
提督「なんだ?」
天龍「お前、龍田と喧嘩したか?」
提督「・・・分からない」
天龍「分からない、だと?」
提督「なぜだか、避けられている。それは分かるんだ」
天龍「随分と他人事だな?おい」
天龍「それはお前が何か仕出かしたんだろ」
提督「知らない内に傷つけていたのか?・・・なにが悪かったんだ?」
天龍「提督、俺前に言ったよな?絶対に泣かすなって・・・」
天龍「なんで龍田は!泣いてるんだ!!約束しただろうが!!」
提督「・・・」
天龍「何とか言ってくれよ・・・これじゃ・・・」
・・・
龍田「・・・はぁ」
龍田「これじゃ・・・」
熱々だった心は冷めていくだろう、彼のとの関係はベタベタしたものではなかったが心は満たされている
なんとも表現しがたい・・・2人だけが分かるこの距離感。それが心の原動力だった
龍田「・・・」
扶桑「元気ないですね、そんな顔では幸せが逃げてしまいます」
龍田「・・・そうね」
扶桑「ふむ、」
扶桑「提督と何かありましたか?」
扶桑「喧嘩ですか?でも話を聞いてあげても・・・」
なんだか説教を受けてる気分だ。何かを見透かした、そんな態度が気に食わない
龍田「・・・何が分かるの?」
龍田「私の、何が分かるの?」ギリリ
何も知らない。分かっても無い癖に・・・人が苦しんでいる事も、知らない癖に・・・
他人から見れば痴話喧嘩。そんな事は分かってるけど、口出しされたくは無い
扶桑「分かりません、でも…」
扶桑「泣いてますよ?」
龍田「」
龍田「え?」ポロポロ
知らない間に下瞼には涙が溜まっていた。
昔、感情的緊張で涙は出ると本で読んだことがある。味も変わってくるらしい。
私の涙は辛いのだろうか?苦いのだろうか?
龍田「やだ・・・そんな・・・」ポロポロ
扶桑「否定してても、助けて欲しいって出てますよ」
龍田「違うの!これは・・・そんなんじゃ・・・」
扶桑「その涙は彼の前で・・・ね?」
龍田「・・・会わせる顔が、無いわ」グシグシ
扶桑「今、会いに行きましょう。この方が本音が出ます」
龍田「嫌、お化粧が崩れちゃってる」
扶桑「仮面をつけたままじゃ相手の事も見えません。行きましょう」
思ったよりも強引だ。嫌というのに引っ張っていこうとする。彼女は本気で心配してくれているのだろうが?
それとも裏で何かが・・・こんな時も信用しきれない私は性根が悪いんだろう。
だけど・・・そんな彼女がとても頼もしい。そんな気がした
提督の部屋
扶桑「さて、そろそろかしら?」
龍田「・・・」
ガチャ
天龍「ったく・・・ウジウジしやがって」パタン
扶桑「もう大丈夫ですか?」
天龍「ん?・・・あぁ、大丈夫だ。活入れてやったから」
龍田「ぇ・・・」
天龍「いやいや、なにもしてねーよ」
扶桑「やっぱり大好きなのね」ウフフ
龍田「ぅぅぅ・・・」
天龍「お前達に何があったかは知らんが、突き放してちゃ進展しねーよな、行って来い!」ガチャ
扶桑「吉報聞かせてね」トン
龍田「きゃ・・・」トットット
提督「龍田・・・」
龍田「・・・提督」パタン
もう、逃げられない。
龍田「・・・提督」
ここは一番に謝ってしまおう。私が逃げたんだから・・・
彼は悪くない・・・はず。勘違いだと思いたい
提督・龍田「すまなかった!(ごめんなさい!)」
提督・龍田「え?」
龍田「なんで謝るの?」
提督「えっ!?」
龍田「やっぱり・・・あのネクタイは・・・」
龍田「誰かから貰ったの…?」
提督「ネクタイ?」
提督「ネクタイって龍田がくれた…これか?」
龍田「違う!!私があげたのは赤じゃないの!青なの!!」
提督「赤…」
龍田「なんで…私のあげたのを付けてくれないの…?」ウルウル
龍田「私が送ったものは…着けるの嫌?」
提督「そんなわけあるか!!!」バンッ!
提督「俺は!龍田が!好きだ!」
龍田「…っ///」
2度目のプロポーズはとても情熱的だった。いつもは感情的にならない彼が見せた本心にも聞こえた。
提督「他の子からアプローチも受けた。でもお前が…龍田の笑顔が好きだから!全部断って告白した!」
提督「そんな子から貰ったものを着けるの嫌なんて女々しい事言うか!!」
龍田「でも…その赤色は」
提督「ちょっと待ってろ…」ガララ
その引き出しには私との写真やMVP記念に行ったテーマパークのぬいぐるみ、色々な物が置いてあった
見ていると思い出す。楽しい日々…ちょっと几帳面すぎる?もうすこし大雑把でもいいのに…
提督「あった、箱。置いておいて良かった」
提督「え~っと…ん?青?青色が入ってるって書いてるぞ?」
龍田「…でもでも、そのネクタイは」
提督「おいおい入れ間違いかよ!!どうしてくれんだよ!!」
提督「クレーム入れてやる…」ピポパ
龍田「いいの!勘違いだったらもういいの!」
提督「いや、俺の気が治まらない。クレーム入れて最悪訴えてやる!」
龍田「待って~似合ってるわ。それも似合ってるから~」アセアセ
彼の新たな一面も垣間見れた気がする。これからも付き合っていくのなら…私がちゃんと見ておかないと
安心と未来へのちょっとした不安。そんな物で溢れ返った数日だった。
…
提督「準備出来たか?」
龍田「あとちょっと~」
今日の彼は私の送った”赤い”ネクタイじゃない。
提督「そろそろ、再入場だぞ。大丈夫か?」
龍田「あんまり着慣れなてないからね~ふらふらするわ~」フラフラ
提督「こけないでくれよ?ヒロインが怪我したら大変だ…」
提督「さっきのドレスも良かったが、いまのドレスも似合ってるぞ」
龍田「うふふ、あなたもそのネクタイ似合ってるわ」
そう、今日の彼は白いスーツに白いネクタイ
今日はそんな、大切な日
提督「さぁ、行こうぜ。これからスタートだ」
勘違いが生む物は、いつも問題ごと。でも私はその中からもいい物を見つけれた気がする
実際にあれがきっかけでより距離が縮んだ。あれは運命だったんだと思う。ありがとう気まぐれな神様
でもこれからは、ちゃんと中身を確認して物を送ろう。そう思った。
今回は仕事であったクレーム内容を創造で膨らませたものです。
実際はこう上手く行ってはないでしょうが・・・こうあって欲しい。
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