鎮守府清掃員の活動記録 2さつめ
た・だ・い・ま。
この物語は、鎮守府で働く清掃員の青年と、艦娘や提督が話したり、遊んだりするお話です。(ワッフルさーん、お借りしますねw)
前作の続きです~。
ちょいとここで、主要な登場人物について
・青年
鎮守府で働く清掃員の仕事。
前作でヘタレ→ロリコンカッコカリ→変質者→滑ってやらかした人→ラッキースケベと少し残念な称号を獲得しまくっている。
前作
※前作読んでない人はわからないので、前作読んでからの方が……
青年「ん……」
北方「ア……オキタ」
青年が目を覚ますと、そこには色の白い少女がいた。先ほど(前作参照)青年を海の中へと落とした張本人である。青年は重い体を起こして、その少女を見る。
青年「……ここは?」
北方「ココハ、ワタシタチノスム……トコロ」
その少女がそう言って、周りをぐるっと見回してみると、本当にどこか知らないところに連れて来られたようだ。青年は立ち上がり、辺りを少しだけ歩いてみる。
青年「……。深海棲艦……」
北方「ソウ……」
青年はどうやら、鎮守府の艦娘や提督達が戦っている敵・深海棲艦達の一拠点に連れて来られたということだ。しかし、この拠点がどこにあるのかはわからず提督に連絡を取れる手段もない。
青年「……目的は?」
青年はこういった時、自分が連れて来られたということは、何か人質や実験台に使われるのではないかと思い、それなりに覚悟した。
だが、白い少女から返ってきた答えはまったく別のものだった。
北方「ソウジ」
青年「……はい?」
北方「ダカラ、ココヲ……ソウジシテホシ……イ」
青年「え、それでいいの……?」
北方「ウン」
青年「……」
青年は安心したのか、大きなため息をつくと同時に自分のお腹が空いているのをやっと認識した。朝から何も食べていない状態でここへと連れて来られたのだから、当然だろう。
青年「……」
北方「オナカ、スイタ?」
青年「ま、まぁ……」
北方「……コッチ」
そう言って、白い少女は歩き出した。青年はそれについていく。目的地へとたどり着く前に青年はその少女に名前を聞いた。どうやら「北方棲姫」と言うらしい。
青年は何度か深海棲艦に関する写真を見たことはあったが、まさか深海棲艦が喋るとは思いもしなかったし、このように普通に人間とコミュニケーションが取れるということに驚いた。
そして、青年が連れて来られた場所では、もう1人の深海棲艦が何かを作っていた。鎮守府内では見たこともない、食材が並んである。魚らしき姿をしたものもあるが、あれは深海魚なのだろうか……。そんなことを考えながら、北方棲姫に案内された場所へと座る。
北方「モウスグ……デキル」
青年「あ……うん」
青年はもう1つある疑問を思い浮かべた。そもそも、この拠点は深海にあるのだろうか。だとすると、どうして、自分はこうして息ができるのか……。
青年「……やめておこう」
青年はこれ以上このことを考えると頭が痛くなりそうなので止めておくことにした。そして、少し待つと先ほど何かを作っていた深海棲艦がこちらへと料理のように見えるものを運んでくる。
駆逐棲姫「デキタヨ……」
青年「……春雨?」
駆逐棲姫「ハルサメ……? チガウ。コレハ、ベツノ……リョウリ」
青年「あ、いや……ごめんなさい」
青年はその料理らしきものを持ってきた深海棲艦の姿を見て驚いた。自分が昨日の夜に「うっかり」キスをしてしまった駆逐艦の艦娘、春雨と雰囲気や容貌が似ていたのである。
青年「……」
青年は、昨日の夜のことを思い出し、思わず顔が熱くなっていくのを感じた。やはり、忘れたくても覚えているものは仕方がない。それほど、昨日の春雨とのうっかりファーストキスは、青年にとって強く印象に残るものだった。
北方「セイネンサンモ……タベル」
青年「あ、うん……」
青年がボーッとしているのを見て、北方棲姫は青年に料理らしきものを食べるようにすすめてきた。
あまり食欲がそそられる料理ではなかったが、いつここから出れるのかもわからないのに何も食べないのは自殺行為に等しいと考え、仕方なく食べることにした。深海棲艦達の生活は、想像していたよりも人間寄りだった。ちゃんと食器のようなものも利用している。
青年「……」
北方「セイネンサン、コノアトハ……ソウジ」
青年「あ、わかった……」
青年はそう言って、料理らしきものを口に入れた。一瞬、その食感に嫌な感じがしたが、なかなかいい味が出ている。青年は噛めば噛むほどその食感に病みつきになってしまい、結局その料理らしきものを完食したのであった。
青年「ごちそうさまでした」
駆逐棲姫「オイシカッタ?」
青年「あ……えと……う、うん……」
春雨に似た深海棲艦に話しかけられ、思わずドキッとしてしまう青年。青年は、急に恥ずかくなり、立ち上がってから北方棲姫に掃除する場所を案内するように頼んだ。
北方「コッチダヨ……」
そう言って、北方に連れて来られた場所はかなり散らかっていた。青年が見たことの内容なゴミでいっぱいだった。少しばかり悪臭が漂っている。
青年「……」
北方「ココ、ドウシテモ、カタヅカナイ……」
青年「うん……そのようだね。とりあえず、掃除しないと……あ、そう言えば掃除道具ってある?」
北方「……ソコ」
そう言って、北方棲姫が指さした場所には乱雑に放置された掃除道具があった。明らかに誰か掃除しようと思って投げ出したとしか言いようがない状態である。青年はその掃除道具を一度手に取り、様子を確かめてみた。
青年「ま、何とかなりそう……かな」
北方「ワカッタ……ジャア、オネガイシマス」
青年「……了解です」
こうして、青年のいつもと違う職場での清掃活動が始まったのであった。
それから青年はしばらく掃除を続けていた。だが、なかなか片付かない。そもそも、処理をどうすればいいかわからない見たこともないようなゴミのような残骸のようなよくわからないものが転がっているのが一番の原因である。
青年「はぁ……いつまでかかるんだろ……これ」
青年は、ため息をつきながら、今頃、鎮守府のみんなはどう過ごしているのかを考える。自分のせいで慌ただしくなっているのではないかということや、迷惑をかけて申し訳ない、という気持ちで胸がいっぱいになる。
青年「とにかく……帰れることを信じて待たないとな……」
青年は、そう言って、仕事を続ける。
青年が仕事続けていると、掃除している部屋の中に誰かが入ってくる音がした。振り向くと、青年が何度か写真で見た空母ヲ級であった。
ヲ級「……ダレ?」
青年「あ、どうも……勝手に連れて来られた者です」
ヲ級「ソウ……」
ヲ級は青年に近づいてきて、こちらをじっと見つめてきた。まるで観察されているように思えて、青年は思わず視線を逸らす。ヲ級は青年の体に少しだけ手を添えたりしている。
ヲ級「ニンゲンニハ……スコシ、キョウミガアル……」
青年「そう……ですか」
ヲ級「ニンゲン、カシコイ……」
そう言って、ヲ級は青年にさらに近づいてくる。青年は思わず後ずさりして、距離を取ろうとするが、ヲ級は遠慮もなく近づいてくる。そして、青年はいつの間にか壁に追いやられていた。
青年「……」
ヲ級「……ナマエハ?」
青年「青年と言います……」
ヲ級「ソウ……ソウジ、ガンバッテ」
青年「え……は、はい」
ヲ級は青年から離れ、この散らかっている部屋から何かを取って持っていった。青年は、何もされなかったことに安心し、大きく息を吐く。ここで、青年はあることを思いついた。仮にここから出た場合、自分がどのような待遇を受けるかということだ。
青年「……たぶん、大本営には連れて行かれそうな気がする」
そう、深海棲艦の拠点から帰ってきたとなると大本営がその情報を見逃すはずがない。青年はその時のために、ここにある部屋で持って帰れそうなものは持って帰ることにした。何かの証明にはなるかもしれないからだ。
青年「……」
青年は、持って帰れそうなものをポケットに入れ、掃除を続ける。
掃除を続けながら、大本営に呼び出され、質問された時に何と答えればいいか迷った。深海棲艦がそれなりにフレンドリーだと言うことを言ってもいいものなのだろうか。かと言って嘘を言うわけにもいかない。
青年「こりゃあ、戻っても戻らなくても大変だな……」
青年はしばらく掃除を続け、休憩をすることにした。そして、掃除した範囲を一度見てみる。先ほどとは違って、それなりには片付いた。だが、まだまだやるべき場所は残っている。
青年「……はぁ……」
北方「……終ワッタ?」
青年「あ、いや……まだ」
北方棲姫が扉を開けて中に入ってくる。手には何かの容器を持っている。
北方「……差シ入レ」
青年「……あ、ありがとう……」
北方「……」
青年は、その容器に入っているものを見ると、先ほどの料理らしきものに近い何かが入っていた。だが、手で掴めるほどの大きさであるから、おやつか何かなのであろう。青年はそれを1つつまんで、恐る恐る口に入れる。
青年「……ん。美味しい」
北方「良カッタ……」
青年「……」
北方「アノ、セイネンサン」
青年「……ん?」
北方「コレカラ、『オニイチャン』ッテヨンデイイ?」
青年「……はい?」
北方「……ココノミンナ、カゾク、ダケド……ヤラレタラ、マタ、新シイノガ『デキル』、ミンナ、ワタシノコト、覚エテイナイ」
青年「……」
つまり、北方棲姫が言いたいのは、『家族が欲しい』と言うことだった。それも、離れることがなく、ずっと一緒にいられる家族を。
北方「ダカラ……オニイチャン……」
青年「……」
青年は、北方棲姫の思いをわかった上で、その単語を聞くと思わずときめいてしまった。本来敵対しているはずの者にときめくなど、大それたラブストーリーの映画の中だけの話だと青年は思っていた。
青年「……うん、それでいいよ」
北方「……オニイチャン」
青年「うん……」
北方「オニイチャン……オニイチャン」
青年「わかったわかった……」
青年は、それから何度も嬉しそうに『オニイチャン』と呼んでくる北方棲姫と、兄妹のように過ごした。
それからも、掃除を続け、しばらくすると、青年は寝る場所へと北方棲姫に案内され、その中へと入る。
青年「……」
北方「オニイチャン、コノ後ハ、ゴ飯……」
青年「あ、わかった……後で行く」
青年は、北方棲姫が立ち去るのを見送ると、その場に座り込み、ここからどうやって出るかを考えた。もし、無理やりここの外に出たところで、深海であれば、青年が生きて鎮守府に帰れる保証はまずない。かと言ってずっとここにいては、いつ出れるのかどうかすらわからないままだ。
青年「……直接交渉しかない……よな」
そして、青年は来たばかりの初日のその交渉を深海棲艦達の食卓でいきなり試してみた。
青年「……お願いします。もとの鎮守府に帰してくれませんか……?」
北方「エ……オニイチャン、ズットココニイルンジャ……」
ヲ級「……」
レ級「マーマー。セイネンサン、オチツイテ……今ハ、ご飯食ベル時間ダヨ!」
少しだけ、他の深海棲艦より穏やか……というよりは妙な笑みを浮かべているレ級がその場をなだめるような声を青年にかける。その声を聞いてから青年は一度諦め、席へと座った。それと同時に、他の深海棲艦達の表情も少しだけマシにはなった気がした。
だが、青年は諦めることはなかった。ご飯を食べた後も、必死にどうやって戻るかを考えた。そして、暗い深海での夜は更けていくのであった……。
一方、鎮守府では、提督と空母の艦娘たちによる会議が開かれていた。
提督「……青年君がどこに消えたのかはわからないが、港には彼の掃除道具が置いてあった。というのは再確認しておこう」
瑞鶴「……」
赤城「まさか、途中でサボッて逃げ出したということは――
瑞鶴「せ、青年がそんなことするわけないでしょ!!!」
加賀「口を慎みなさい、五航戦」
翔鶴「瑞鶴、落ち着いて……」
瑞鶴「……大体! 蒼龍さん達が最後の目撃者なんでしょ?! さっきから黙ってないで何とか言ってよ!」
翔鶴「瑞鶴、やめなさい……」
蒼龍「……」
飛龍「……」
翔鶴「瑞鶴……怒ったって、ことは進まないわ。一度、落ち着いて……」
瑞鶴「うん……ごめんなさい……」
青年は、目を覚ました。だが、今何時かは時計を持っていないため、わからなかった。青年は一度用意されてた場所から降りる。ちなみに青年が寝ていたのはベッドや布団と言った安眠できるようなものではなく、ちょうど寝るのには良いサイズの岩場だった。青年は慣れない場所で寝たために体のあちこちに痛みを覚えながら、部屋から出る。
青年「……一応、二日目……か。どうするかな」
青年は、まだ少し頭が完全に起きていない状態でもここから出る方法を考えた。
青年「……あっ。服着替えないと……。……服?」
青年は、自分が昨日着た服を一切着替えていないことに気づき、ある作戦を思いついた。そして、青年はその交渉のために、急いで深海棲艦たちの食卓へと向かう。
北方「オニイチャン、オハヨウ……」
青年「あ、おはよう……」
駆逐棲姫「オハヨウ」
青年「……お、おはよう」
相変わらず、駆逐棲姫が春雨に見えて、あまり思い出しくないことを思い出してしまう青年だった。だが、青年の今回の交渉対象は、ヲ級に対してである。
青年「ヲ級さん、ちょっといいですか?」
ヲ級「……?」
青年「ちょっとだけこちらに来ていただけると……」
ヲ級「ワカッタ」
そう言って、他の深海棲艦達に見られないような場所へと連れて行き、交渉を始める。
青年「えっとですね、服がないんです」
ヲ級「ソレガドウカシタノ……?」
青年「着替えを取りに行かせてくれませんか?」
ヲ級「……デモ、着替エヲトッテモ、マタ濡レル」
青年「……いや、まだマシな方法が1つだけ……」
ヲ級「……?」
ヲ級「ジャア、今カラ上ニ行ク」
青年「はい」
ヲ級は、何とか青年の頼みを聞いてくれた。だが、これから青年はある1つの賭けに出る。
ヲ級「まさか、イ級ノ口ノ中ニ入レバ大丈夫ダナンテ……」
そう言って、ヲ級は一体のイ級の口を開けた。青年は、覚悟を決めてその中へと入る。中では、非常に嫌な思いをするのは確実だが、上へと行くにはこうする他はなかった。ヲ級は青年を口の中に入れたイ級とともに、拠点を出発し、鎮守府へと向かっていく。
港まで連れてきてもらい、青年は一度鎮守府へとたどり着いた。時間は青年が普段起きる時間より少し早めと言った辺りの時間だろうか、いつもより空が暗かった。
青年「えっと……着替え、取ってくるので、ここで待っていてください」
ヲ級「ワカッタ」
ヲ級を待たせ、青年は艦娘たちを起こさないように自分の部屋へと向かい、まず最初にメモ用紙を取り出し、今の自分の状況を書いた。
青年「えっと……『深海棲艦の拠点にいます。深海棲艦についての情報を集めてくるので1週間後に、また戻って来ます。警戒態勢の準備と大本営への連絡をお願いします』……よしっ」
書き終えると、青年はすぐさま、自分の着替えとメモ用紙とペンをボストンバッグの中に詰め込んだ。そして、少し急ぎ足で執務室のところへと向かった。
そして、提督を起こさないようにこっそりと入り、執務室の中の大きな机のところにそのメモと、昨日拾った深海棲艦の部屋にあった大きな謎の塊を置く。
青年「……戻ってきます」
青年はそう呟き、敬礼をしてから執務室を出て、ヲ級の待つ港へと向かう。
青年「お待たせしました」
ヲ級「遅イ……」
青年「す、すみません……」
ヲ級は表情こそは変えてはいないが、相当イライラしているのが語調からわかった。イ級は既に口を開けて、青年を中に入れる準備をしている。青年はもう一度大きく深呼吸をして、イ級の口の中へと入った。
そして、青年と鎮守府のみんなにとって最も長い一週間が幕を開けるのであった。
青年はまず戻り、ここでの自分の部屋へと戻った。そして、服を着替えてからメモ用紙とペンを取り出し、ポケットの中へと入れた。イ級の口の中はイ級が口さえ閉じていれば水はあまり入ってこなかったので、服や紙が濡れると言ったことはなかった。
青年は、そして、まだ朝食を取っていなかったために、朝食を取りに食卓へと向かう。もう既にヲ級と自分以外は食事を済ませてしまったようだ。遅れてからヲ級がやってきて、青年と席を並べて食事を取る。
青年「……」
北方「オニイチャン、オカエリ」
青年とヲ級が食事を取っていると、北方棲姫がそれに気づいたらしく青年に近づいてきて、青年の膝の上に座った。どうやら、よほど青年のことが気に入ったらしい。
青年「……うん、ただいま」
北方「オニイチャン……コノ後ハ……昨日トハチガウ、マタベツノトコロ、ソウジ」
青年「そう……わかった」
そう言って、青年は北方棲姫を膝に乗せたまま器用に食事を取る。この時ばかりは青葉のような存在がいなくて少しだけ助かったと思いながらも、自分でもこの環境を少しだけ受け入れようとしていることに気が付き、何が何やらわからなくなってきた。だが、青年は先ほど、自分がここに来たのは、鎮守府のみんなのために、いや、国のために何か深海棲艦の情報を集めるためだと決意したばかりである。
青年「……ごちそうさま」
北方「オニイチャン、コッチ……」
青年が、食べ終わると北方棲姫に案内され、また別の場所へと向かっていった。
青年がいったん連れて来られたのはおそらく、深海棲艦達のそれぞれの個室なのだろうか、中に入ると昨日掃除したほどではないが、それなりに散らかっている部屋があった。
北方「ココモ……オニイチャン、オ願イ」
青年「うん……了解」
飛行「ア、セイネン……」
青年「え、ええっと……飛行場姫さん?」
青年と北方棲姫が話しているところに、一人の深海棲艦が現れた。一応、昨日の食卓で、青年が交渉する前に自己紹介は名前は知っていた。北方棲姫と比べると非常にグラマラスな女性の姿をしている彼女は、飛行場姫と言い、これも青年が初めて見た深海棲艦だった。
飛行「……セイネン」
青年「……はい?」
飛行「ホッポウハ、アナタノコトヲ……オニイチャンッテヨンデイルケド」
青年「あ、そうですね……」
飛行「ジャア、ワタシノコトハ、オネエチャンッテヨンデモイイ」
青年「……え」
飛行「イヤダッタラ……イモウトチャンデモ……」
青年「いやいや……ちょっと待ってください……」
どうやら、深海棲艦達は青年のことを本格的に『家族』として迎えるつもりのようだ。青年は、飛行場姫に迫られ、対応に困る。そして、青年が仕方なく選んだ、呼び方は……。
青年「……お、オネエチャン……」
かなり棒な読み方であったが、飛行場姫は青年のことを気に入ったようで、思いっきり抱きしめてきた。もしこの状況を、軍のみんなが見れば何と言うのだろうか、まさかあの深海棲艦が人間をこのように扱うだなんて、誰も予想しないだろう。
青年「く、苦しいです……」
飛行「ア……ゴメン」
飛行場姫が離すと、青年は少しだけ距離を取りつつ、北方棲姫に言われた通り、この部屋の掃除を始めることにした。しかし、先ほどから青年が気になっているものは1つあった。それはこの部屋に備え付けられているもう1つの扉。その奥からは何とも言えない邪悪なオーラが滲み出ているのが青年でも感じとれた。
青年「あ、あのー、あの部屋は?」
北方「……アノ部屋ハ、ココガ片付イテカラ……」
青年「りょ、了解……」
こうして、青年の深海棲艦達の拠点での仕事、二日目が始まったのであった……。
その頃、鎮守府では、またもや緊急会議が開かれていた。今度は、各艦種の代表者が集まっての会議だ。
提督「えー……。今朝、このようなメモを見つけた」
提督は、青年の残したメモを取り出し、集まったみんなの前でそれを読む。その内容を聞いてみんなは一気にざわつき始める。
提督「私一人で判断するのは難しい。だからこそ、お前たちに力を貸してほしいんだ……。本来なら、彼もただの一職員にはすぎないし、この程度のことで大本営を動かすことはできない……。だが、青年君は私達の仲間だ。放っておけるわけがない。みんな、力を貸してくれるな?」
当然、艦娘たちから返ってきた答えは、イエスだった。
そして、また場所は戻り、深海棲艦達の拠点では青年が頼まれた場所の掃除を終えていた。
青年「ふぅ……まあ、こんなものかな」
青年が一度休憩するために床に座ると、北方棲姫がトコトコとやって来て、また青年の膝の上に座る。
青年「……」
北方「オニイチャン……オツカレサマ」
青年「うん……でも、まだ残ってるんでしょ?」
北方「ウン……ツギノトコロハ、タブン、モットタイヘン」
そう言って、北方棲姫に案内された場所は先ほど青年が気になったこの部屋の開かずの間のような場所だった。北方棲姫は躊躇もせず、その扉を開ける。
その中は、先ほどの部屋よりもかなり散らかった部屋であった。
北方「オネエチャン……オニイチャン、キタヨ」
港湾「ク……クルナ……ニンゲン、キライ……」
青年「あ、港湾棲姫さんの部屋だったの……」
北方「オネエチャン……オニイチャンハ、ココ、ソウジシニキタ」
港湾「ヒツヨウナイ……」
港湾棲姫は青年が、深海棲艦達に自己紹介をした際に一番不満気な顔をしていた深海棲艦である。昨日の第一交渉の時でも青年のことを一番睨みつけていた。そのため、青年は、早速、この港湾棲姫に苦手意識を感じ始めていたのだ。
北方「デモ、オネエチャン、ソウジガヘタダカラ……」
港湾「……ワタシヒトリデガンバル」
そう言って、港湾棲姫は自分で掃除をやり始める。どうやら、港湾棲姫は一人で掃除をしようとしているがなかなか上手くいかず、かえって散らかしてしまっているらしい。青年は、この時、以前の美化週間での長門のことを思い出し、微笑ましく思ってしまった。
港湾「……ナニガオカシイ……」
青年「えっ!? あ、い、いや、何でもないですよ……」
自分でも笑みがこぼれているのに気が付かず、港湾棲姫の機嫌を損ねてしまったようだ。青年は、慌てて港湾棲姫の機嫌を持ち直そうと何とか方法を考える。
北方「トイウワケデ、オニイチャン……オネエチャント、ナカヨクシテアゲテ……」
青年「あ、う、うん……」
港湾「ヒツヨウナイノニ……」
北方棲姫はいつの間にか別の場所へと移動してしまい、青年と港湾棲姫が二人きりになった。港湾棲姫は一度青年のことを睨みつけてから、自分で掃除を始める。それから少し離れた場所で青年は掃除を始めることにした。
青年「……」
港湾「……」
ニ人の間で沈黙が続く。青年は時折、港湾棲姫が掃除する様子を見ているが、先ほどから掃除を頑張ってはいるのだが、上手くはいっていないようだ。青年は少しずつ近づいていき、港湾棲姫の近くに寄ってから掃除を手伝い始める。
青年「あ……そこは、そうやるより……こうした方がいいですよ」
港湾「エ……ソ、ソウナノカ―――アッ……ク、クルナ!!」
港湾棲姫は、一瞬青年の言うことを聞こうとしたが、すぐに今の状況を理解し、慌てて青年との距離を空ける。そして、その勢いで、自分の近くに置いてあるゴミ箱を倒してしまい、せっかく掃除をした部分がまた汚れてしまった。
港湾「ア……」
青年「あちゃ……港湾棲姫さん、一緒に掃除しましょう。そっちのほうが、早く終わりますよ」
港湾「……ワカッタ」
港湾棲姫はついに諦め、青年との掃除を開始し始めたのであった。
青年「港湾棲姫さん、そっち、大丈夫ですか……?」
港湾「ダイジョウブ……アッ……」
青年が声をかけ、港湾棲姫が返事をする。そして、それに気づいてしまった港湾棲姫が慌ててミスをする。先ほどから、何度繰り返したことだろうか。
港湾「マタ、散ラカシテシマッタ……」
青年「……」
港湾「ワタシ、ブキヨウ……」
少し悲しそうな表情をする港湾棲姫に青年は近づく。港湾棲姫はまたもやびっくりした後ずさりをする。
青年「港湾棲姫さん、少し、休憩しましょう……ね?」
港湾「……ウン」
青年と港湾棲姫はその場に座り込んで、ただ静かにしている。港湾棲姫は当然、青年にはまだ慣れていないためにかなり距離を空けている。本来なら、これが正しい反応なのではあるが、青年は若干フレンドリーな深海棲艦に頭が毒されてしまったのか、その距離感に妙な寂しさを覚えた。
青年「港湾棲姫さんは……北方棲姫のお姉さんなんですよね?」
港湾「イチオウ……ワタシタチ、ミンナカゾク……」
青年「……えっと……何て言えばいいんだろ……羨ましいです」
港湾「エッ……?」
青年「家族がいるって……いいですよね。僕も、あの鎮守府では、艦娘のみんなとは仲良くさせてもらっているつもりなんですけど……ですが、たまに家族が恋しくなる時もあるんです」
港湾「……セイネンノカゾクハ……ドコニ?」
青年「……もう土の中ですよ。……いなくなったのは、深海棲艦が、初めて現れて、攻撃を始めた頃ですね……。たまたま、海の近くに住んでいたので……そうなっちゃったんですけど……」
港湾「……」
青年「でも、正直に言うと……北方棲姫に『オニイチャン』って呼ばれた時……結構、嬉しかったんです……。本当は、憎むべき対象なんですけどね……。ですが……ここへ来て初めてわかったことも色々ありますし……ただ恨むだけじゃダメかなって……」
港湾「……」
青年「……あー。何というか変な話をしましたね……ごめんなさい……」
港湾「イヤ……」
青年が少し照れくさそうに言うと、港湾棲姫は近づいてきて、青年の手を取り、優しく握りしめた。その手は青年の手と比べるとかなり大きな手だったが、青年は嫌がることなくそれを受け入れる。
青年「……」
港湾「……セイネンハ、ホカノニンゲントチョット違ウ気ガスル……仲良ク……デキソウ」
青年「そ、そうですかね……」
港湾「セイネン……優シイ心ヲ持ッテル……ワタシノコトヲミテモ、コワガラナイシ……」
青年「……本当は結構怖いですよ」
港湾「ワカッテル……」
青年「……」
港湾「……セイネン、チンジュフノミンナノトコロニ帰リタイ?」
青年「……はい。……ですが、まだ掃除は終わってないので、帰りません。それに……これは僕の中では、『出張仕事』として捉えますので……気にせず、使ってください」
港湾「……セイネン、ホントウニ優シイ……」
何となくだが、港湾棲姫との距離が縮まった気がした青年だった。
朝の会議が終了後、執務室内ではみんなの忙しさが増していた。
提督「で、ですから元帥とお話が――……くそっ……」
瑞鶴「ダメだったの?」
提督「ああ、『たかが清掃員ごときで大本営は動かせない』とさ……。後、『必ず戻ってくる保証があるなら助ける』とのことだった」
瑞鶴「……」
執務室内では、先ほどから提督が大本営に電話をかけては切られ、電話をかけては切られと言った行為が繰り返されていた。瑞鶴は艦娘という立場を理解し、その様子を見守ること以外はできなかった。
提督「すまないな。瑞鶴……君に書類仕事を任せてしまって」
瑞鶴「……いいの。……あ、ごめんなさい。ちょっとだけ席、外させて」
提督「ああ」
瑞鶴は、執務室を出ると、大きなため息をつく。彼女は、青年がいなくなって、心にポッカリと穴が空いてしまったような気持ちに陥ってしまっている。
瑞鶴「……」
瑞鶴は、廊下内を歩き、いつぞやの青年と指切りをした港まで出て行った。そこに座り込み、また1つ、ため息をつく。
瑞鶴「……呆れるわ……まったく……。もし、無事に戻ってきたら、ふてくされてやるんだから……」
瑞鶴はそう呟き、そのままじっと海の方を見つめる。だが、海から吹き付ける風が、瑞鶴を妙に嫌な気持ちにさせる。
ゆー「瑞鶴さん……」
瑞鶴「あ、ゆーじゃない。……どうしたの?」
瑞鶴が声をした方を見ると、ずぶ濡れのゆーが立っていた。ずぶ濡れということは先ほどまで、海の中に潜っていたことがわかる。
ゆー「……」
瑞鶴「出撃命令とかも出てないし……演習ってわけじゃないわよね……?」
ゆー「青年さんが心配で、海の中に……勝手に潜ってた……でも、ゆー、青年さんのこと心配だから……」
瑞鶴「ゆー……。大丈夫よ……青年は……きっと戻ってくるから」
ゆー「……」
不安そうな顔をするゆーを瑞鶴は、立ち上がって近づき、柄にもなく抱きしめてなだめる。ゆーは、抑えてた気持ちが溢れだしたのか、静かに泣き始める。
瑞鶴「……大丈夫……戻ってくるから……。絶対……」
その日の夜、青年は深海棲艦達の日常をメモで記録することにした。話せば意外にもフレンドリーだったこと。料理らしきものを作って食べることなどもちゃんとメモを取っておいた。
青年「ふぅ……明日も頑張らないと……鎮守府のみんなは大丈夫かな……」
そう呟き、青年はまた慣れない岩場で眠りにつくのであった。
次の日、青年は起きて、食事を取ると昨日のように北方棲姫に連れられ、別の部屋へと案内された。中に入ると、黒髪の二体の深海棲艦がこちらを見てくる。
軽巡棲鬼(以下、軽巡)「……」
戦艦棲姫(以下、戦艦)「……」
青年「あ、どうも……」
軽巡「セイネンサン……待ッテタ。ワタシタチノヘヤ、ソウジシテクレル?」
青年「あ、はい。仕事となれば、掃除しますよ」
戦艦「ジャア、オネガイ……」
そう言って、二人は、青年に掃除道具を渡してくれた。青年は礼をして、掃除を始める。
軽巡棲鬼には、どこかで見たことがあるような姿をしていると思った青年。一方で、戦艦棲姫についての第一印象は普通に『綺麗』な人だった。
青年「……」
戦艦「セイネン……マジメ……」
青年「え、そうですか……?」
戦艦「……マジメナ子ハ、ケッコウ好キ……」
青年「えっ……」
戦艦「……フマジメナ子ハ、アイアンボトムサウンドニ沈メタイ……」
青年「……真面目でよかった」
どことなくヤバイオーラを感じ取った青年は、ある程度真面目で本当によかったと心の底から思うのであった。戦艦棲姫の言葉には本当にやりかねない、語調の強さがあった。
軽巡「ソレニシテモ、マサカ、ココニ来ルトハ思ワナカッタ」
青年「え?」
戦艦「ソレハ言ワナイ約束ジャナイ……」
軽巡「デモ……」
青年「ちょっと待ってください……それ、どういうことですか?」
軽巡「……」
戦艦「……仕方ナイ……。実ハ、セイネンヲ連レテ来ルヨウニ、ホッポウニ、頼ンダノハ……ヲ級」
青年「え……でも、あの人、僕に対して、『誰?』って聞いてたんですけど……」
軽巡「ソレハ、タブン、照レ隠シ」
青年「……」
青年が話を聞くと、ある日、ヲ級が海面から顔を出してみると、港近くを掃除している青年を見かけたらしく、それ以来、人間に興味のあったヲ級は青年のことを毎朝観察していたらしい。そして、いつの日か、人間のことをもっと知りたくて、北方棲姫に頼んで、わざわざここまで連れて来たという。
青年「……マジですか?」
軽巡「ウン。ヲ級、セイネンサンガ来タ日、トテモ嬉シソウダッタ」
青年「そ、そうなんですか……」
あまり表情を変化させない、ヲ級が嬉しそうにしている姿はぜんぜん想像できなかった。困惑の表情を浮かべる青年を見て、戦艦棲姫が何かを思い出したかのような顔をして、部屋から出て行った。
そして、しばらくして、戻ってきたかと思うと、ヲ級を連れて来た。
青年「……」
ヲ級「ア……セイネン……」
戦艦「ヲ級……、セイネンニ思イヲツタエテ……」
軽巡「ガンバッテ……」
ヲ級「エ……ニ、ニンゲンニハキョウミガアルケド、セイネンガ好キトカソウイウノジャ……」
戦艦棲姫と軽巡棲鬼に迫られたヲ級は表情は変えてはいないものの明らかに困惑していた。青年は何となく、自分が蒼龍、飛龍、青葉に迫られた大宴会の二次会の出来事を思い出し、少しおかしくなって笑ってしまう。
ヲ級「ナ、ナニガオカシイ……!」
青年「あ、いやっ……何でもないです」
ヲ級「……」
青年「で、でもまあ、お二人とも、ヲ級さん、嫌がってますし……ね?」
戦艦「ム……セイネンハ、ヲ級ノコトハ、好キ?」
青年「え、な、なんでそうなるんですか……」
軽巡「セイネンサン、ダイタン……」
ヲ級「セイネン……」
青年は、このままこの二人と会話を続けていけば、無理やり、ヲ級とくっつけられるという結末が待っていることを悟った。そして、青年が取ったことは、ヲ級と逃げるという選択肢だった。ヲ級の手を取り、急いで二人の部屋を出て、誰もいないところへと向かう。
そして、たどり着いたところで、青年はヲ級の手を離した。
ヲ級「……」
青年「すいません……ヲ級さんの秘密……と言いますか、ああいったことを聞くつもりはなかったんですけど……どうしても、ここに連れて来られた理由は知っておきたくて……」
ヲ級「……モットニンゲンノコトガ知リタイ……ダカラ、連レテ来タ……」
青年「……そうですか……。一応、僕なんかでよければ……」
ヲ級「ウン……。アト、ニンゲンニキョウミハアルトイッタガ、ニンゲンハ嫌イ……」
青年「そ、そうですか……」
ヲ級「デモ……セイネンハ『トクベツ』」
青年「……」
ヲ級「ソレダケ……ジャア、ソウジ、ガンバッテ……」
そう言い残し、ヲ級は足早に去って行った。取り残された青年は『特別』という言葉の意味を考る。ここまで来たら、少し鈍感な青年でも意味に気づき、顔を赤くした。
青年「うーん……はぁ……まさかそんなことはあるはずは……うーん……」
一人で、わけのわからない言葉を呟きながら、再び戦艦棲姫と軽巡棲鬼の下へ掃除に向かった青年だった。
その夜、青年はメモに、深海棲艦は人間に嫌悪感を抱いている者はいるが、興味を抱き、独自の探究心のようなものを持っているということを記録した。このメモが後でどれくらい役に立つかはわからないが、備えていて損はないと思い、記録をどんどん付けていく。
青年「はぁ……」
記録をつけながら、何度ため息をついたことだろうか。青年はいよいよ鎮守府に早く帰りたいという気持ちが強くなってきた。もちろん、深海棲艦達といるのがそこまで嫌だと言うわけではないのだが、もはや鎮守府は青年にとって、我が家のようなものに変わっていたのだ。
青年「っていうか……あの鎮守府に来て一ヶ月経ったばかりなのに、色々なこと、起こりすぎだよなぁ……」
それから、青年は鎮守府に色々なことを思い出した。みんなの前で、仲良くなりたいと宣言させられたあの日から、青年の日常は驚くほどに変わった気がする。今では、艦娘たちと出かけたり、一緒にお酒を交わす仲にまでなってしまった。
青年「……うーん……ここのみんなには悪いけど……やっぱり、あっちの方が……いいな……でも、残りの日も頑張らないと……とりあえず、まず鎮守府に戻ったらみんなに謝らないと……」
思えば思うほどにネガティブな独り言が増えていく青年。暗い深海の拠点での夜はまだ続く……。
それからも青年は深海棲艦達のもとで働き続けた。気がつけば、深海棲艦たちはちゃんとした青年の話し言葉を聞いていたおかげで以前のカタコトではなく段々と慣れた話し方になっていた。そして、青年があのメモを鎮守府に残してから5日目……青年は深海棲艦達の間でちょっとした人気者になっていた。
北方「お兄ちゃん、今日は一緒に遊ぼ?」
青年「あー……いいけど……」
港湾「待って……青年、今日は私と一緒に過ごす約束をしてたはず」
ヲ級「青年……人間のこと、もっと教えてくれるって言ってた」
青年「あ、あれ、そうでしたっけ……」
レ級「青年さんは人気者だねー! ししし……」
青年がひっぱりだこになっている様子を見てレ級は非常に楽しそうである。ちなみに、青年はは地上に戻った後のことを掃除しながら考えていたことが多かったために大体深海棲艦達との約束は二つ返事で了承することが多かったので、このようなブッキングが起こってしまうのだ。
青年「どうしたらいいんでしょうか……」
レ級「青年さんが一番好きな子と過ごせばいいんじゃないかなー?」
北方「じゃあ、私?」
港湾「何を言ってるの……?」
ヲ級「ちょっと待って……青年を一番最初に見つけたのは私……」
それからも、青年の奪い合いは続いた。とりあえず、場が収まるまで青年は名目上の自分の部屋へと戻り、今までつけた記録を見直すことにした。
青年「『感情は持っている』……『深海棲艦である、ということを忘れてしまえば人間とほとんど同じである』……あと2日で戻れるかもしれないんだ……。鎮守府のみんなを信頼するしかないな……」
その頃、鎮守府では来る2日後についてのことで会議が行われていた。
提督「青年君が示した日まであと2日……おそらく、彼のことだから2日後、必ずここへ戻ってくると、私は信頼する……。そこで、彼の希望通り、この鎮守府周辺で警戒体制の準備を始めることにした。大本営も動いてくれるらしい」
赤城「えっ……この前は動いてくれなかったと」
提督「ここまで来たら、私も覚悟はできてる……。青年君が必ず戻ってくるということを提督という地位と一緒に賭けた。……彼が戻って来なければ私は提督を辞める」
瑞鶴「提督さん……そこまで……」
提督「……。ここまで来たら、後は気持ちの問題だ。……みんなが青年君に戻ってほしいと願えば、きっと天は味方をしてくれる。当日何が起こるかはわからない。だが、最後に勝つのは青年君を含めた『我々』だ」
結局、北方棲姫と港湾棲姫、ヲ級の三人の言い争いは終わって、青年はヲ級に、人間について教えてていた。
青年「まぁ……こんな感じですけど……他に何かありますか?」
ヲ級「……特には無い」
青年「そうですか……あ、そうだ。ヲ級さん、また地上に着替えを取りに行っていいですか? 明後日、お願いします」
ヲ級「……わかった」
そして、そこからの時間はあっという間だった。鎮守府では、警戒体制が青年の戻ってくる数時間前に準備が完了した。そして、青年は荷物を持ち、再びあの日のようにイ級の口の中に入り、ヲ級とともに地上を目指す。
段々と水面に近づいていく。そして、ヲ級とイ級が水面から出てきた。辺りには艦娘たちはいないが、おそらくどこかに隠れているのだろう。
大淀「提督……ヲ級とイ級がそれぞれ一体ずつ出現しました。どうなさいますか?」
提督「各艦に告げてくれ。まだ、攻撃はするな。向こうの出方を少し見る」
不気味な静かさが港近くで漂っていた。ヲ級もその静かさに、違和感を覚えたのかかなり気を張って、辺りをジロジロと見回している。青年は外で何が起こっているのかはわからなかったため、イ級の口の中でじっと待った。
ヲ級「……」
そして、あの日のようにイ級が大きく口を開けた。そして、青年が中から港へと降りた瞬間だった。
大淀「青年さんです……!!」
提督「主力艦隊は、攻撃準備に―――「提督!! 新たな反応が4つ……何か来ます!!」
青年が、走って港から離れ始めると同時に、ヲ級とイ級の後ろに主力艦隊が姿を見せ始めた。だが、それに反応してなのかさらに4体の深海棲艦達が姿を見せる。
それは武装した北方棲姫、港湾棲姫、戦艦ル級と重巡リ級だった。
提督「主力艦隊、戦闘配置に! 鎮守府内で待機している艦娘は、青年君の保護を頼む!!」
ヲ級「……まさか、青年が私のことを騙した……?」
港湾「……今はそんなことを言ってる場合じゃない……あの主力艦隊を倒さないと……」
北方「お兄ちゃんは……私達の家族だから……」
そして、戦いの火蓋が切られた。青年は、後ろの方から聞こえる轟音を耳にしながら提督のいるところへと向かう。
弥生「青年さん……こっちです……」
青年「弥生……わかった!」
弥生とともに、鎮守府内を移動していく。そして、たどり着いた先には、提督と大淀の待つ場所だった。
青年「提督……ただいま戻りました……」
息を切らしながら、青年は提督に戻って来たことを告げる。
提督「青年君、よく戻って来てくれた……」
大淀「っ! 提督、瑞鶴さんが大破してしまったそうです……」
提督「なにっ!?」
青年「瑞鶴さん……」
海の上では、激しい戦いが繰り広げられていた。主力艦隊のそれぞれの艦娘たちはダメージのせいで、少し服がところどころ破けていたりしてしまっている。その中でも瑞鶴は一番多くのダメージを受けていた。
瑞鶴「くっ……」
加賀「五航戦、少し無理しすぎよ。下がりなさい」
瑞鶴「だって――「下がりなさい」
瑞鶴「……」
加賀「あなたが、自ら主力艦隊に志願したことは知ってるわ。だけど、沈んでしまったら元も子もないわよ」
瑞鶴「……」
加賀「しかし、このままではこちらの方が不利ね……」
場所は戻り、再び提督のいる司令室に戻る。提督は主力艦隊が戦っている音を聞きながら戦況があまりよくないことを不安に思い、汗をかいている。
大淀「提督、大丈夫ですか……?」
提督「ああ……くそっ。大本営は何を……」
青年「……」
青年は、この状況では何もすることはできず、ただ見守ることしかできなかった。
だが、そんな状況が覆る瞬間は起きた―――。
大淀「っ……提督! 大本営から連絡です!」
提督「何!?」
元帥『遅れてすまない……だが、あと少しで支援艦隊が到着する。それまで持ちこたえてくれ』
提督「はいっ……」
それから支援艦隊が来るまでそこまでの時間はかからなかった。支援艦隊が到着してからは戦況が一気に逆転し、気づけば、相手は、ヲ級と北方棲姫、港湾棲姫の3体になった。
ヲ級「……」
北方「まだ……諦めない……」
港湾「青年……取り戻す……」
ヲ級「……」
港湾「ヲ級……?」
ヲ級「二人とも……逃げて、後は私が引き受ける」
北方「でも……」
ヲ級「……大丈夫」
港湾「……」
北方「……」
北方棲姫と港湾棲姫は、顔を見合わせた。そして、少しずつ、海の中へと撤退を始める。その時、二人の表情は非常に悲しそうなものになっていた。
ヲ級「……」
長門「む……逃げるつもりか……」
それを見つけた長門が追い打ち攻撃をかけようとするが、一度陸奥が静止する。
陸奥「待って! ……何か……嫌な予感がするわ」
加賀「あれは……」
木曾「まさか……さっきまで普通のヲ級だったよな……」
吹雪「変化した……?」
瑞鶴「フラグシップ……でも……あの目の色……」
ヲ級の体が一瞬だけ黄色いオーラで包まれたかと思い、艦娘たちは普通のヲ級がフラグシップ艦に変化したのだと思った。
これだけでもかなり異例なことであったのに、このヲ級は片目から水色のオーラが少し出ている。
木曾「マズイ……早く沈めてしまうか。撤退させるしかないぜ……!」
ヲ級「……!!」
木曾が砲撃準備をしようとした瞬間、それに気づき、艦載機を飛ばしてきたヲ級。一瞬の隙を突かれた長門と陸奥は反応が遅れ、艦載機を撃ち落とせず、そのまま攻撃を喰らう。
瑞鶴「っ……!!」
加賀「マズイわね……」
大淀「提督……どうなさいますか?」
提督「これは、もう賭けるしかない……全員で一気に攻撃をしかけて、沈める他は……」
大淀「わかりました……。『全員、総攻撃の準備を』」
そして、その指示が出た瞬間、先ほど攻撃を喰らってしまった長門と陸奥も攻撃の構えになり、空母ヲ級に狙いを定める。
木曾、吹雪も同じようにして、狙いをヲ級に定めた。支援艦隊も作戦を汲み取ってくれたのか、狙いをヲ級に向ける。
いくら急な強化があったヲ級とは言え、一度にこれだけの攻撃を喰らえばひとたまりもないだろう。
ヲ級「一人だけでもいい……沈める……!!!!」
ヲ級はそう言って、ありったけの艦載機を主力艦隊に向けて飛ばして来た。
だが、非情にも多くの砲撃音が鳴り響き、ヲ級に向けて砲撃の雨が降り注ぐ。ヲ級の艦載機は、加賀の放った艦載機により、何とか撃ち落とされる。
ヲ級「……!!!」
そして、着弾したと思われた瞬間に、砲撃音よりもさらに大きな爆発音が鳴り響いた。
それからしばらくして、煙がなくなった後、そこにはヲ級の姿はなくなっていた。
提督「やったか……」
大淀「勝利……ですね」
青年「……」
ヲ級は暗い海中で目を覚ました。
ヲ級「……あれ……私は……沈んだはずじゃ」
レ級「……まーったく、ヲ級は無茶するんだから……」
ヲ級「レ級……?」
ヲ級の視界がハッキリしてくると、どうやらあの砲撃を喰らう瞬間にレ級が海の中に引きずりこんだらしく、どうやら撃沈せずに済んだらしい。
だが、ヲ級がよく見ると、レ級の姿はヲ級以上にボロボロだった。
ヲ級「あなた……」
レ級「はいはい。その心配は帰ってから帰ってから……それに、私は伊達に頑丈じゃないよ~。しししっ!」
レ級は何とも無いと言った表情で笑って見せた。
ヲ級「……」
レ級「ただ一つ言いたいのは、そりゃ、もちろん、青年さんも私達の家族にしたいけどさー。何よりもまず、ヲ級は私達の家族だし……私としては一度に家族を二人も失いたくないかな~って」
ヲ級「レ級……」
レ級「さっ、今日は帰ってのんびり休もーね。港湾棲姫と北方棲姫もきっと心配してるよ?」
ヲ級「……うん」
青年と提督は、それから二人で主力艦隊が戻ってきたのを迎えに行った。その傷ついた姿を見て、改めて青年は鎮守府のみんなにかなり迷惑をかけたことを痛感し、申し訳なく思った。
だが、瑞鶴は傷ついて露わになってしまっている胸を隠しながら、青年に近づいてきて、青年の前に立つ。
瑞鶴「ほら、そんな辛気臭い顔しない。……何か言うことがあるでしょ」
青年「……ただいま戻りました」
瑞鶴「ん。おかえり……あと、私達が傷ついてるからって気にしなくていいわ。私達は、守るのが仕事なんだから」
青年「……」
瑞鶴「……提督さん、私達はこれから入渠してくるから……」
提督「ああ。お疲れ」
瑞鶴「じゃ、青年。『また後で』ね」
青年「あ、はい……」
主力艦隊のみんなが入渠の場所へと向かって行った後、青年は執務室へと連れて行かれた。そして、ソファに座らされ、お茶を
出される。青年はここで、お茶を頂いたことは滅多にない。お茶を出されたということはかなり長い話になるということだ。もちろん、青年もそのことを理解した。
提督「さて……帰ってきたばかりで悪いが、色々聞かせてくれないか?」
青年「はい。大丈夫です」
提督「……深海棲艦達のところにいたと言うのは本当なんだな?」
青年「はい」
提督「……そうか……。青年君、これから大本営に連絡する。近いうちに呼び出されるのは確実だろう……もちろん、行く覚悟はできてるな?」
青年「……はい。任せてください」
提督「まぁ、私も同伴するがな……。とりあえず、今日はゆっくり休むといい。体が疲れているだろう」
青年「そうですね……」
提督「あと……瑞鶴には特にお礼を言っておく方がいいぞ。……君のことを一番心配していたのは彼女だからな」
青年「……」
その晩、青年の帰還を祝してちょっとした祝いの宴が催された。で、青年はこの前の如く、また再び乾杯の音頭を取らされている。
青年「……」
隼鷹「もう次、何言うかわかってるでしょー!?」
青葉「では、青年さん、『この前』のように一発、お願いします!!」
青年「マジでやらないとダメですか……」
青葉「はい!」
青年「お、お◯ぱーい!!」
結局、その日、ゆっくり休むはずが余計に疲れがたまった青年であった……。
青年は布団だけを敷いた後、大本営に呼び出されてから元帥にどのように報告をするかを考えた。そして、頭の中では先ほどの提督との会話を思い出している。
提督『そう言えば、深海棲艦達に何も変なことはされていないんだな?』
青年『これと言っては……』
提督『食事はどうしていた?』
青年『向こうに出されたものをそのまま……』
提督『ふむ……身体に異変はないな?』
青年『今のところは……』
提督『そうか、もしかすると、何かしらの異常がないか検査などもされるかもしれん……もし、異常が見つかれば、ここに戻ってくるのは確実に遅くなるだろう』
コンコン。
青年「ん?」
青年が色々思い出して、少しボーッとしていた頃にノックの音が聞こえた。青年は、すぐに自分の部屋の入り口を開けてノックをした人物の姿を見る。
瑞鶴「こ、こんばんは」
青年「あ、瑞鶴さん……えっと……どうしたんですか?」
青年が見た瑞鶴の姿はもう既に就寝準備が完了している姿だった。手には、なぜか枕を持っている。
瑞鶴「……し、失礼するわね」
青年「え?」
そう言って、瑞鶴は青年が止めようとしたのにもかかわらず、青年の部屋の中へと入り、枕を青年の布団のところに置いた。青年はわけがわからず、困惑した表情を浮かべている。
瑞鶴「……この前の私との約束破った罰の続き」
青年「あ、そう言えば……」
瑞鶴「……今日は私と寝ること」
青年「……」
そして、青年と瑞鶴は、二人で同じ布団の中に入った。もちろん、青年は予備で置いてあるもう一つの布団を出そうとしたのにもかかわらず、瑞鶴が「別にいらない」と言ったので、仕方なくこのような状況に陥っている。瑞鶴曰く、翔鶴にも許可は取ったとのことである。
青年「……」
瑞鶴「ねぇ、寝てる?」
青年「寝れるわけ……ないじゃないですか」
瑞鶴「そうよね……私もよ」
瑞鶴は自分から提案したはずだが、かなり青年と距離を離して横になっている。あと少しずれれば、掛け布団の外に出てしまいそうなほどだ。青年も青年で、緊張で理性が飛ばない程度の距離まで離れている。結果、お互い、布団の両端で横になっているという何とも奇妙な状態になっているのだ。
青年「……」
瑞鶴「青年……ちょっと話さない? 寝れるまででいいから」
青年「あ、はい……」
瑞鶴「……深海棲艦たちに何か変なことされてない? というより向こうで何してたわけ?」
青年「えっと……掃除してました」
瑞鶴「え」
青年「……掃除してました」
瑞鶴「はぁ……私の心配を返してよ……もうっ」
青年「すいません……」
そう言って、瑞鶴はふてくされてしまったのか身体の向きを変え、完全に青年からは表情が見えない方向を向いてしまった。
青年「と、ところでどうして、こんなことを?」
瑞鶴「その……せっかく戻ってきたのに、晩ご飯の時から青年の元気がないって言うか……。浮かない顔、ずっとしてるから……。無理しないで……何か言いたいことがあれば言ってくれてもと思って……」
青年「そうですか……えっと……今日、僕はかなりひどいことをしてしまったんです」
瑞鶴「……」
青年「……一応僕のことを受け入れようとしてくれた深海棲艦のみんなを騙して……そして、沈める原因を作ったんです……。もちろん、立場上、深海棲艦の味方はできませんでしたが……それでも……やっぱり、少し、胸が痛いですね。ヲ級さんが、攻撃を浴びている時なんて、ただ僕は立ってそれを見ているだけでしたし……」
瑞鶴「……仕方がないことね……。でも、私としては……青年のそういうところは嫌いじゃない……かも」
青年「瑞鶴さん……」
瑞鶴「……青年はそのままでいいと思うわ。いつまでもその優しい心……持ったままでいなさいよ」
青年「……」
青年が横を見てみても、瑞鶴は顔が見えない方向を向いてしまっているために、どのような表情をしているかがわからなかった。青年は瑞鶴のその言葉に何となく救われた気がして、先ほどから胸につっかえていた思いがとれた。
瑞鶴「……青年。近いうちに、大本営に呼び出されると思うけど……緊張せず、見たままのことを言うのよ。あなたは緊張したら変な失敗ばっかりするんだから……」
青年「あ、はい……」
瑞鶴「……あ、あと……えっと……青年がまた休日もらえたらさ……今度こそ一緒に遊びに行かない?」
青年「え?」
瑞鶴「……私だって、本当は青年とそのっ……ちょっとくらいは遊びに行きたいというか……たまには、艦娘じゃない一日を味わってみたいというか……えっと……」
青年「……瑞鶴さん」
瑞鶴「は、はいっ!」
青年「色々ありがとうございます……。提督から聞きました……僕のことなんかを心配してくれて……。お礼として……今度は必ず連れて行きます……僕、頑張って、えっと、その……瑞鶴さんをエ、エスコートできるようにしますから……」
瑞鶴「わ、私だけが心配してたわけじゃないし……別にいいんだけど……と、というより慣れないことしなくていいわよ……。エスコートなんて……その、私は青年と一緒に行けるだけで嬉しいというか……」
青年「え?」
瑞鶴「~~!! なんでもないっ! おやすみっ!」
そう宣言してから、瑞鶴は何も話さなくなった。しばらくしてから青年は、無事に帰ってこれたことに感謝しつつ、目を閉じ、寝息を立て始めた。
そして、夜は更けていく……。
瑞鶴「……せいねーん……寝ちゃった?」
青年「……」
しばらくしてから、瑞鶴が目を覚まし体を起こし、静かな声で尋ねるが、青年は静かに眠っていた。瑞鶴は、ちょっとずつ青年に近づいていき、その寝顔を覗きこむ。
瑞鶴「まったく……。幸せそうな寝顔ね……」
青年「……」
瑞鶴「……隣で寝てもいいかな……」
そう言って、体を試しに青年にくっつけてみる。だが、瑞鶴は、恥ずかしさのあまりにすぐさま離れてしまう。
瑞鶴「……本当にぐっすり眠ってるのね……ちょっとイタズラしても起きないのかしら?」
そして、瑞鶴は寝ている青年のほっぺたを触ってみる。
青年「ん……」
瑞鶴「……ちょっとおもしろいかも」
そう言って、瑞鶴は、日々の恨みと言わんばかりに青年の髪の毛をいじってみたり、もう一度ほっぺたを触ってみたりした。どうやら、深夜ということで少しだけ妙なテンションになっているらしい。
青年「……」
瑞鶴「……本当に何しても起きないわね……」
そう言って、顔を青年に近づける。何か手違いがあれば今にでも唇と唇がくっついてしまいそうな距離だ。
瑞鶴「……」
青年「……」
瑞鶴「……いや、何か違うわね。やめとこ……」
そう言って、瑞鶴は再び横になり眠りにつくのであった。
次の日の朝、青年が目を覚ますと、そこには瑞鶴の姿はなく、もう部屋に戻ってしまったらしい。青年は、顔を洗いに洗面所へ向かった。
青年「……ふふっ」
顔を洗い、鏡に映った自分の顔を見た瞬間に、眠気が一気に吹き飛び、笑ってしまう。
青年の頬には、いつ書いたものかはわからないが、『おかえり by瑞鶴』という落書きがマジックで施されていた。青年はその字を見て、笑顔になり、こう呟いたのだった。
青年「―――――ただいま」
~深海の拠点編・完~
さて、青年は顔に書かれた落書きを拭きとった後、久しぶりに戻ってきた鎮守府の掃除を始めだした。そして、以前のように提督と挨拶をかわし、朝食を取る。それからは、これまでの青年がしてきたことと変わらなかった。だが、1週間ぶりに食べた鎮守府での朝食は最高に美味しかった。そして、何よりも今、ここにいられることに幸せを感じたのだった。
青年「さ、今日も頑張るぞ……」
鳳翔「あ、青年さん。ちょっといいですか?」
青年「あ、はい。どうかしましたか?」
鳳翔「今日のお昼ご飯なんですけど……お昼時になったら私の店にいらしてください」
青年「え、いいんですか?」
鳳翔「はいっ。用意しているものがございますので」
青年「わかりました」
そう言って、鳳翔との約束をかわした青年はいつもの様に掃除を始める。ふと、窓から外を見ると昨日海戦があったとは思えないほど静かで綺麗な海が広がっていた。
青年「……あれ?」
ふと、何やら港近くで動いている二つの影が見えた。青年は昨日の海戦を思い出し、「もしや……」と思ったが、よく見ると扶桑と山城の二人が何やらゆっくり港を歩いているだけだった。別に、これだけならそこまで違和感はないのだが、この二人は港近くから離れようとはしなかった。
青年「何やってんだろ……」
そう呟いてからも仕事を続け、気づけばお昼時になっていた。
青年「あ、鳳翔さんのところに行かないと……」
そう言ってから青年は鳳翔のお店、つまり、居酒屋『鳳翔』へと立ち寄った。中に入ると、いつものお酒好きの隼鷹や千歳と言った面々も見られたがさすがに昼間なだけあって、お酒の量は少なめのようだ。とは言っても青年からすれば、昼から飲むなんて正気の沙汰ではないと言った感じであったのだが……。
鳳翔「あ、青年さん。お疲れ様です」
青年「ど、どうも……」
鳳翔「えっとですね……これ、どうぞ」
青年「え……」
そう言って、青年が手渡されたのは、弁当箱であった。わざわざ作ってくれたと言うのだろうか、青年は思わず笑みをこぼし、お礼を言う。そして、鳳翔は「どういたしまして」と言ってから、さらに言葉を続けた。
鳳翔「あ、青年さん。大変おこがましいのですが、この二つの弁当箱を、扶桑さんと山城さんに持っていってあげてくれますか?」
青年「あ、はい。大丈夫ですよ」
そう言って、二つの弁当箱を受け取り、青年は港の近くへと向かった。どうやら、扶桑と山城は港近くからはまったく動いていなかったようで、二人で、港で座り込んでいる。
青年「あ、あの~。扶桑さん、山城さん、こんにちは」
扶桑「あら、青年さん、こんにちは。いい天気ですね」
青年「そ、そうですね……ところで、お二人は何をしていらしたんですか?」
山城「実は、昨日の海戦があったせいで、もしかしたら、深海棲艦が再び攻めてくるかもしれないと提督が心配して……港近くの監視を『くじ引き』で決められてしまったの」
青年「そ、それはそれは……大変ですね」
扶桑「ところで、青年さん、その手に持っている人は?」
青年「あ、これ、お二人に鳳翔さんからの差し入れのお弁当です」
山城「わざわざご苦労様」
青年「え~っと、まあ、僕も頂いてますし、せっかくですから三人でここで食べちゃいましょうか?」
扶桑「くすっ、いいですね」
それから、三人は弁当箱を開け、昼食を取り始める。三人の弁当箱の中のおかずは全て同じだった。そのおかずは、玉子焼き、麻婆春雨、ウインナー、小さなハンバーグと、実に可愛らしいというより、母性の溢れるおかずであった。
山城「『麻婆春雨』がおかず……何か意味があるのかしら?」
扶桑「あら、この玉子焼き、ちょっと焦げてるわ……。鳳翔さんが玉子焼きを焦がすなんて珍しいですね……」
青年「でも、美味しいですよ……どれもこれも」
確かに、一部の料理に鳳翔らしくない失敗は見られたものの、どれもこれも味はそこまでひどいものではなかった。しかし、それでもやはり鳳翔がミスをするということが三人には考えられなかった。
青年「何かあったんでしょうかね……ん?」
青年がふと空を見上げると小さな鳥が数羽飛んでいた。そして、まさかの次の瞬間、山城と扶桑の弁当箱に狙いを定めて急降下……。なぜか青年の弁当箱は無事で、二人の弁当箱は少しだけ食い荒らされてしまった。
山城「……」
扶桑「……」
青年「……え、えーっと……」
山城「……不幸だわ」
青年「ぼ、僕のおかずまだ余ってるので……どうですか?」
扶桑「青年さん……本当にすいません」
そう言って、残りのおかずを三人でそれなりに仲良くわけあって食べた。
三人「「「ごちそうさまでした」」」
青年「では、弁当箱、僕が鳳翔さんのところに持っていきますので」
山城「ありがとう」
二人から、食い荒らされてしまった弁当箱を受け取り、鳳翔の店へと向かった。鳳翔の店に入ると、隼鷹やら千歳の姿はなく、鳳翔が静かに台所の掃除をしていた。鳳翔は青年に気づくと、微笑み、座るように言ってくれた。
鳳翔「どうでしたか? 今日のお弁当」
青年「あ、とても美味しかったんですけど……扶桑さんと山城さんのが……」
鳳翔「あ、あら、これは大変ですね……」
青年「はい……どうしてなんでしょうか……」
鳳翔「謎が深まるばかりです……。ところで、青年さん、今日のおかずで一番美味しかったものは何でしたか?」
青年「おかず……ですか?」
鳳翔「はい。玉子焼きにミニハンバーグ、麻婆春雨、ウインナー……実はこれらのおかずで、私が作ったのはウインナーだけなんですよね」
青年「えっ?! そうだったんですか?」
鳳翔「はい。……なぜこのようになったかを話すと少しだけ長くなっちゃうんですが……」
この話が最初に持ち上がったのは、青年が帰ってきた日の夜のことである……。
電「青年さんが、無事に帰ってきてくれてよかったのです」
雷「そうよね! 私達まだ、大宴会の時のお礼もちゃんとできてないし……」
響「何かできることはないかな?」
暁「料理でも作ってあげましょうよ! 料理はやっぱり、レディーの基本だからねっ」
雷「でも、何を作ってあげればいいのかしら?」
四人「…………」
四人「というわけで、よろしくお願いします」
鳳翔「え、え~……」
四人は鳳翔のところへ、何の料理を作ってあげればいいかを聞きに向かった。明らかに鳳翔が少し困った表情をしながら、「どうしましょうか……」と言う。
鳳翔「……そうですね……。こういう時はやはり、お弁当でしょうか」
暁「お弁当?」
鳳翔「はい。青年さん、掃除道具をいったん片付けてから、食堂に向かうのは二度手間だと思いますから、掃除していた場所でもすぐに食べれるお弁当なんかが適していると……」
響「なるほど……」
??「あ、あのっ……!」
電「?」
春雨「そ、その話、ちょっと加わってもいいですか!?」
鳳翔「春雨ちゃん?」
春雨が、突如として、話に加わって来た。どうやら、先ほどの、第六駆逐隊の会話を聞いていたようで、気になってついて来たらしい。春雨は頬を赤くしながら、鳳翔に、「私も作ります!」と宣言をした。
鳳翔「あら、これは……」
春雨「わ、私色々青年さんに謝らないといけないことがあって……だから、お願いします!」
鳳翔「そ、そこまで言わなくても大丈夫ですよ……」
弥生「……」
鳳翔「あら、弥生ちゃん、どうしたんですか?」
弥生「弥生も、青年さんに料理、作りたいです」
どこから見ていたのかはわからないが、急に弥生が現れ、そう言った。
鳳翔「えっ……。……ふふっ。段々面白くなってきましたね……。では、こうするのはどうですか?」
そう言って、鳳翔が提案したのは、各自で自信のおかずを一品作り、明日の青年のお弁当に入れ、味わってもらった上で、さらについでとして、青年に何が一番美味しかったかを判断してもらおうとのことだった。
鳳翔「……どうですか? こうすれば、みなさんの料理のスキルと言いますか、技術も上がると思いますし、何よりも食べてもらう人の気持ちをしっかりと考えることのできる勝負だと思いますよ」
暁「おもしろそう! やってみましょ!」
春雨「は、はいっ! 頑張ります!」
弥生「……」
鳳翔「では、念のために、それぞれアシスタントの人を探してきてください。私は、おそらく一人で大丈夫ですが、やはり、みなさん火や色々な道具を使うことになりますから、万が一のことも考慮して、アシスタントをお付けすることをオススメします」
雷「じゃあ、早速探しましょう!」
弥生「誰がいいですかね……」
春雨「っ……わ、私心当たりがあります! お先に失礼します!」
そう言って、春雨は一番最初に鳳翔のお店から出て行った。後から遅れて、弥生と第六駆逐隊のみんなも鳳翔のお店から出てアシスタントをしてくれる艦娘を探しに行った。
みんなが出て行ってから、鳳翔は一人で笑う。
鳳翔「ふふ……私としたことが、つい熱くなってしまいました……」
――――――――――――――――――――――――
青年「なるほど……そのようなことが」
鳳翔「巻き込ませて申し訳ありません」
青年「い、いえいえ。いいんですよ。本当にお弁当美味しかったですし……」
鳳翔「そうですか……それでは、誰の料理が一番美味しかったですか?」
青年「うーん……もう少し考えさせてください」
鳳翔「では、もう少しこの話の続きをしますとですね―――
――――――――――――――――――――――――
そして、時間は経ち、今日になって青年が掃除をやり始めた午前中の頃である。食堂の厨房にて、各人がそれぞれアシスタントを連れて集まった。
鳳翔「みなさん、準備はいいですか? それでは、持ち場について、料理をスタートしてください」
鳳翔がそう宣言して、お料理バトルは幕を開けた。
暁「こっちには強力な助っ人がいるんだから、負けるはずないわっ!」
電「頑張るのです!」
龍田「お料理勝負なんて、楽しそうなこと、見逃せるわけないもの~」
暁達の第六駆逐隊のアシスタントは龍田がつとめるようだった。理由は、響の「何となく料理が得意そうだから」という理由だったが、龍田は快く了承してくれた。第六駆逐隊は、龍田と昨日のうちに相談して、作るおかずはミニハンバーグということを決めていた。
龍田「じゃあ~、まずは下準備から始めましょうね」
響「了解。材料の準備はできてるよ」
雷「道具も準備バッチリ! 料理を始めましょ!」
第六駆逐隊はそれなりに上々な滑り出しでミニハンバーグを作り始めた。それを、弥生はゆっくりと見て、まだ材料に手付かずの状態でいたままだった。
睦月「え、え~っと、弥生ちゃん?」
瑞鳳「じっとしてたら始まらないよ?」
弥生「あ、は、はい……ごめんなさい」
睦月「もしかして、弥生ちゃん、緊張してる?」
弥生「……」
弥生は黙って頷いた。弥生はお弁当には定番の『玉子焼き』を作るつもりだった。そこで長女である睦月と玉子焼きの味には鎮守府のみんなから定評がある瑞鳳に頼んだのだ。
弥生「……実はあまり料理は作ったことがなくて……」
睦月「大丈夫大丈夫。勝負って言っても、何もそこまで大きな勝負じゃないから、それに、瑞鳳さんもいるから、ね?」
弥生「……お願いします。瑞鳳さん」
瑞鳳「うん。いいけど……玉子焼きはおそらく、他の子達の料理よりきっとすぐに出来上がっちゃうから、スピード勝負だよ?」
弥生「……弥生、頑張ります」
そう言い始めて弥生はやっとのことで、卵を一つ手に取った。
春雨「……わわ、もうみんな作り始めちゃってる……」
時雨「春雨、慌てなくても大丈夫だよ」
大鯨「うんうん。それに、春雨ちゃんの作るのはもちろん『麻婆春雨』だよね?」
春雨「う、うんっ……やっぱり、得意料理で勝負したいから……」
時雨「……うん。春雨、頑張って」
春雨「頑張るよ!」
こうして、3グループの料理対決が始まった。第六駆逐隊は龍田の見事な手ほどきにより、料理を着々と進めていく。春雨も、自分の得意料理を作っているので、時雨や大鯨に手伝いながら、下ごしらえを終えていく。
一方、弥生はかなり苦戦をしていた。
弥生「……あっ……殻が入っちゃった……」
瑞鳳「大丈夫だよ、取ればいいだけだから」
弥生「……不器用……ですね」
睦月「弥生ちゃん、思考がネガティブになっちゃってるよ!」
睦月が励ましの言葉をかけるが、なかなか料理とは慣れない人間がやると上手くいかないものである。弥生はここで、周りを見てみるが、第六駆逐隊も春雨も既に調理の段階に入っている。
瑞鳳「弥生ちゃん……」
弥生「あっ……急がないと……」
睦月「弥生ちゃん、落ち着いて、大丈夫だよ。一生懸命に作れば、きっと青年さんも美味しいって言ってくれるから!」
弥生「……う、うん」
この言葉で、火がついたのか弥生は先ほどよりも集中して調理を始めた。玉子を割り、ボウルの中をかき混ぜていく。
瑞鳳「弥生ちゃん、もうちょっと、手首のスナップきかせて!」
弥生「……はい!」
瑞鳳も段々と色々なアドバイスを弥生にしていく。弥生はその一つ一つをしっかり、頭で理解していった。その様子を見ていた春雨は、弥生が作っている様子を見て、一度手を止めた。
時雨「春雨……?」
春雨「……このままじゃダメ……まだ何かアクセントが……」
時雨「春雨、落ち着いて。弥生のペースに巻き込まれてるよ」
大鯨「春雨ちゃんのいつも通りが最高に美味しいと思うよ?」
春雨「……」
龍田「は~い、そろそろコネコネしていきましょうね~」
料理マンガのような白熱した心理戦を展開していた弥生グループと春雨グループに対し、第六駆逐隊と龍田はまるでお料理教室のように料理を楽しんでいた。第六駆逐隊も楽しそうにミニハンバーグを作っている。
暁「この調子だと、いけそうね」
??「甘いわよ、四人とも」
雷「あ……足柄さん!!」
突如として、四人と龍田の前に現れたのは重巡洋艦の足柄だった。現れた足柄はエプロン姿で既に何かを作る気満々である。
足柄「四人ともそのまま作り上げても……男は惚れないわ!」
龍田「足柄さん、別に惚れさせるというわけじゃないんですけど……」
足柄「えっ……で、でも、あなた達、何か忘れてないかしら?」
電「?」
足柄「あなた達が作っているのはお弁当のおかず……お弁当で辛いこと、それは……おかずが『冷たい』ことよ!!」
響「つまり、温かいものを提供しろってことだね?」
足柄「その通り! だからこそ、もっと慎重に作っていかないと青年が食べる時にはミニハンバーグは冷めてしまうわ! それは……他のおかずでも同じことよ。それを気づくかどうかがこの勝負のポイントになるわ!」
そして、それぞれの努力によって、お弁当のおかずが出来上がった。どのグループもヒートアップして、量が多すぎてしまったため、鳳翔の図らいにより、余分に作ってしまった分、山城と扶桑にも弁当を作ることになった。
そして、どのグループもそれぞれ出来たおかずを持ち寄り、お弁当が完成した。
鳳翔「……色々あったんですよ。みんな、楽しみにしているんですから」
ここまでで、鳳翔が青年に伝えたのは誰がどの料理を作ったか、どのようにしてお弁当を作ったか。ということで詳しい調理のことはまったく伝えていない。よって青年は、足柄が突然乱入して、第六駆逐隊にアドバイスを送ったことも知らないのだ。
青年「なるほど……。どうりで鳳翔さんが作ったのに玉子焼きがちょっと焦げたりしていてちょっとだけ変だなと思ったんですよ」
弥生「っ……」
鳳翔と青年が話している様子を春雨、弥生、第六駆逐隊のみんなは隠れながら見ている。そして、青年の玉子焼きの発言を聞いた途端、弥生が表情を曇らせた。
鳳翔「あら、美味しくなかったんですか?」
青年「いえいえ。そんなことはないですよ。とっても美味しかったです」
弥生「ほっ……」
思わず、安堵の表情を浮かべる弥生。だが、勝負はまだ終わったわけではない。これから一番美味しいおかずを青年が選ぶのである。
鳳翔「では、青年さん、そろそろ選んでください」
青年「そうですね……」
青年は昼に食べたお弁当の味を思い出す。まず、ミニハンバーグは、どれも食べやすい大きさでこの段階から食べる人のことを考えてくれている料理に仕上がっていた。そしてやはりハンバーグのお供の一つ、ケチャップがかかっていたというのも青年の中では大きなポイントとなる。
続いて玉子焼き、先ほど言った通り、一部で焦げがあったもののそう言ったことをひっくるめてやはり外せないお弁当の定番料理を作ってくれた弥生には頑張ったと褒めてあげたいところだった。それに玉子焼きは、なかなかのスピード勝負になることもあるので、料理に不慣れな弥生が本気で作った姿を想像すると、それを無下にはできない。
最後に、麻婆春雨。青年としてはお弁当の中に麻婆春雨はいかがなものかと最初は思った。しかし、口に入れた瞬間に麻婆春雨らしいちょっとした酸味か辛味か、何とも言えない味わいが広がり、青年の舌を唸らせた。
青年「……」
鳳翔「どうですか?」
青年「……。あ~……えっと、正直に言わせてもらうと……味だけなら……麻婆春雨……ですかね」
春雨「……!!!」
隠れて、見ていた春雨がたちまち笑顔になる。一方、それを聞いて、弥生と第六駆逐隊のみんなは表情を暗くした。
だが、青年は「でも」と付け加え、自分の言葉で思いを伝えることにした。
青年「玉子焼きも美味しかったです。弥生が作ったんでしたっけ……。たぶん、今頃、玉子焼きを焦がしてしまったことで、自分のことを不器用だと考えてしまっていそうですが……僕は、弥生と掃除をした時に、弥生は一度覚えたら本当に何でも上手にできるって知ってますし……。おそらく、今回は春雨との経験の差が出てしまっただけだと思います……次に勝負をした時はわからないかもしれませんね……。できれば、もう一度弥生の手料理を食べてみたいです」
鳳翔「ミニハンバーグについては?」
青年「ミニハンバーグも美味しかったですね。大きさや形もそれぞれ違っていて、暁達が本当に楽しそうに作ってたんだなって言うのはわかります。それに、大きさが違っていたと言ってもやはり、一口サイズに出来ていたっていうのは食べる人の気持ちを一番よく考えていたのではないかな……と。あと、ミニハンバーグ、すごくあったかくて美味しかったです。やっぱり、お弁当であってもあったかいご飯とおかずで食べたいっていう気持ちはありますから」
鳳翔「そうですか……ふふっ」
青年「どうかしました……?」
鳳翔「青年さんがまるでグルメレポーターみたいなことを言うものですから……それにいつもよりかなり饒舌ですし」
青年「あ、いやっ……こ、これは別に……」
鳳翔「ふふふ……あ、そろそろお仕事に戻らないとマズイのでは?」
青年「あ、そ、そうですね……すいません鳳翔さん、今日のお弁当とっても美味しかったって、みんなにも言っておいてください!」
そう言って青年は慌てて掃除道具を持ってまだ掃除していない場所へと立ち去って行った。
鳳翔「……らしいですよ。みなさん」
鳳翔の声で、隠れていたみんなが姿を現す。弥生は、かなり頬を赤くしながら静かに立ったままでいて、第六駆逐隊は褒められたことの嬉しさによりそれぞれ色々なことを話し合っている。その一方、本来勝利したはずの春雨はちょっとだけ不満気な顔をしていた。おそらく、青年が出した弥生や第六駆逐隊のフォローのコメントがうらやましかったのだろう。
弥生「や、弥生は少し、潮風にあたってきます……」
弥生はいつもと違う声の様子で、鳳翔の店から立ち去ってしまった。その去り際に、顔が今まで見たことがないほど嬉しそうな表情をしていたのを鳳翔が見ていた。第六駆逐隊は、龍田と足柄にお礼を言いに行くと言ってそれについて出て行った。
春雨「……」
鳳翔「春雨ちゃん……」
春雨「は、はいっ! 何でしょうか?」
鳳翔「青年さんは、きっと春雨ちゃんのこともわかってますから大丈夫よ」
春雨「……はいっ」
春雨は鳳翔の言葉を聞いてから気持ちが楽になったのか先ほどの笑顔を取り戻し、立ち去って行った。
鳳翔「……」
みんなが立ち去り、少しだけ静かになった鳳翔の店。鳳翔は空になった弁当箱を洗いながら、ふと何かを思い出したかのように顔をあげる。
鳳翔「そう言えば……青年さんに私が作ったウインナーのこと、聞くのを忘れてましたね……。でも、おそらくウインナーのことをあげなかったということは……。青年さんもやっぱりわかってるんですね……色々と……」
さて、青年が鳳翔の店を出てからしばらく掃除を続けていると、廊下の方で二人の艦娘が歩いてくるのが見えた。姿を見ると、潮と浜風の二人である。二人は何やら楽しそうに会話をしながら青年に近づいてきた。そして、青年はその二人に軽く挨拶をする。すると、潮と浜風は顔を見合わせ、青年の方をおそるおそる見ている。青年はなぜこのような態度を取られたのかよくわからず、思わず首をかしげてしまった。
青年「え、え~っと……」
潮「あ、せ、青年さん、こんにちは……」
浜風「どうも……」
青年「……うん、こんにちは」
そして、青年は、何かこの二人の態度がよそよそしいものになっていることに気づいた。気づくことができたのはおそらく、自分が一度かつて瑞鶴とこのような関係になったことがあるからだろう。今の青年はあの時の瑞鶴と似たような立場になっているのだ。
青年「あ、じゃ、じゃあ、演習なのかな? 頑張って」
潮「は、はい……」
浜風「それでは、失礼します……」
青年は、去っていく二人の姿を見送りながら、少しだけ胸が痛くなるのを感じた。瑞鶴はあの時、このような気分だったのかと思うと、本当にひどいことをしたと思うのだった。
青年「瑞鶴さんにもう一度謝っておこうかな……。というより、どうして避けられてるんだろ……」
青年はそう呟きながら、掃除を少しテンションが落ちた状態で続けるのであった。
結局その後、青年は瑞鶴の部屋に立ち寄ることにした。
瑞鶴「ん? 青年どうしたの?」
青年「え~っと……瑞鶴さん、その……すいませんでした」
瑞鶴「え? 急にどうしたのよ……な、何かあった?」
青年「実は―――
それから青年は先ほどの潮、浜風とのやり取りを話し、自分が思ったことや感じたこと、そして、瑞鶴に対して改めて罪悪感が生まれてきたことを正直に全て話した。瑞鶴はそれをしっかりと聞き、「う~ん」と何かを考えながら、青年の方をじっと見ている。
瑞鶴「私との一件はもう終わったから大丈夫よ。……でも、潮と浜風には何かありそうね」
青年「はい……」
瑞鶴「やっぱり、こういう時は、情報通に頼むのが一番だと思うけど、青葉とか」
青年「そうですね……では、一度青葉さんのところに行こうかと……」
瑞鶴「あ、待って。私も……その、ついていくわ」
青年「そ、そうですか……では、行きましょう」
そう言って、二人で並んで歩き出す。瑞鶴は歩調を青年に合わせながら青葉の部屋へと向かって行った。そして、青葉の部屋に辿り着き、青年がノックすると青葉が中から現れた。青葉は青年と瑞鶴が一緒に来たために何事かと思ったみたいだが、青年が事情を説明するとすぐに納得し、部屋へと入れてくれた。
青葉「そうですか~。潮さんと浜風さんが……」
瑞鶴「何か心当たり、ないかしら?」
青葉「そうですね……。強いて言うなら、おそらく青年さんのお◯ぱい発言が原因かと」
青年「えっ」
青葉「だから、大宴会の時とか戻ってきたときの、お◯ぱい発言のせいだと思いますね。……あのお二人、他の駆逐艦と比べると、その……大きいですから」
瑞鶴「……そ、それも一理あるけどそれだけで青年を避ける理由になるかしら?」
青葉「いやいや、わかりませんよ。大宴会以来、青年さんは一部の艦娘の間では胸が大きい方が好きのような認識があるみたいですし」
青年「えっ、初耳なんですけど……」
青葉「そうでしたか~。でも、潮さんや浜風さんにもそこまでの悪意があるわけじゃないと思います。やっぱり、胸が大きいっていうのは、小さい人からすれば憧れになる時もありますが、大きい人でもその大きさにコンプレックスを持っている人がいたり……と。あのお二人は、コンプレックスを持っている可能性があるかもしれませんね……あ、ちなみに青年さん大きい方が好きですか?」
青年「だ、だから何でそんな話になるんですか……」
瑞鶴「っていうか何さっきから胸の話題で盛り上がってるのよ、私達……なんか変態みたいだけど……?」
瑞鶴のツッコミにより、三人はなぜか自己嫌悪に浸るのであった……。
それから、三人は、青年が潮、浜風と関係を少し修繕できるようにどうすればいいかを話し合った。
青年「う~ん……いまさら許してくれるんでしょうか……」
瑞鶴「許すって、そこまで悪いことはしてないでしょ?」
青年「そ、そうですけど……」
青葉「いや~、まあ、ここはおそらく、青年さんが、潮さんと浜風さんと関係が修復するまでに頑張って話しかけまくるという作戦でいくしかなさそうですね……。少し時間はかかりますが」
青年「でも、それって今度大本営に呼び出されるまでに間に合いますかね?」
青葉「おそらく……間に合わないですね」
青年「う~ん……仕方ありません。青葉さんが言った通りの作戦で、何とか頑張ってみます。ありがとうございます……」
そう言い切り、青年は立ち上がって青葉の部屋から出ていこうとした。それに続いて瑞鶴も青年についていく形で出て行く。青葉はそれを見送ってから一つため息をついた。
青葉「やれやれ……ここは私の腕の見せどころですね」
青年が、少し気落ちした状態で、もとの掃除を続行しようと瑞鶴の部屋の前まで戻ってきた。青年は、瑞鶴に「それではこれで」と言ってから次の掃除場所へと向かおうとする。すると、瑞鶴は青年の袖を掴んで離そうとしなかった。
青年「あ、あの……瑞鶴さん?」
瑞鶴「まぁ……その、元気出しなさいよ」
青年「は、はい。大丈夫ですよ……」
瑞鶴「あ、あと今日、相談してくれて嬉しかった……」
青年「……」
瑞鶴「そ、それだけだから。じゃあ、仕事、頑張って」
青年「はい、瑞鶴さん。ありがとうございます」
瑞鶴がスッと手を離すと、青年は少し笑顔が戻り、掃除を続けるのであった……。
そして、次の日、青年が掃除をしていると、潮と浜風が青年のところへと現れた。
青年「あ、二人とも、おはよ――「すいませんでした!」
青年「へ?」
潮「あ、あのっ……青年さんのこと、傷つけてしまって……ごめんなさい!」
浜風「私も、謝ります……」
青年「い、いや、急にどうしたの……?」
潮「青葉さんから青年さんが傷ついていたって言う話を聞いて……私達、昨日青年さんにすごく冷たい対応をしてしまっていたみたいで……」
青年「あ、大丈夫だよ……それに、俺も何て言うか……今思えばあのネタもちょっと女の子がいる前ではどうなんだろうと思ってたし……うん……」
謝罪の言葉を述べていく潮と浜風をフォローしていこうと青年があたふたする様子をこっそり見ながら、青葉は安心したような表情を浮かべていた。そして、青年と潮、浜風が喋っているところへ提督が姿を現した。
提督「やぁ、青年君、潮に浜風」
青年「あ、提督……おはようございます!」
潮「おはようございます!」
浜風「おはようございます」
提督「うん、おはよう。青年君、少し君に相談なんだが……執務室の掃除を頼まれてくれはしないか?」
青年「えっ……」
これまで青年は執務室だけは掃除しなかった。なぜなら重要な資料を間違って捨ててしまったりしてはいけないからという理由で提督に形の上では禁止されていたのだ。青年はそれを守って執務室には、提督に呼び出されない限りは入らないようにしていたのだが、今日はどういうわけか、提督の表情がいつになく真面目である。
提督「実は、大本営から連絡が来てな。色々君と話もしたい」
青年「なるほど……ですが、本当に執務室を掃除しても大丈夫なのでしょうか?」
提督「ああ、その辺なら大丈夫だ……実は、君のことで報告書が山積みになっていてな。普段なら私が整理するんだが……どうも手が足りない。だから、頼む」
青年「そういうことでしたら喜んで掃除します。え~っと……いつにお伺いすればよろしいでしょうか?」
提督「昼ごろに頼む」
青年「了解です」
こうして、青年は執務室に初めての掃除をしに行くこととなった。
そして、昼ごろになり、青年は昼食を取った後、歯を磨いて執務室へと向かった。ノックして、許可が出たので入ると中は以前見た時よりも明らかに散らかっていた。提督は青年の姿を見ると、ソファに座るように促す。青年は「失礼します」と言ってから、ソファへと座った。
提督「さて……とりあえず、掃除の前に、大本営からの連絡を君に伝えなければならない。……メモすることがあったらこれに書いてくれていいぞ」
青年「ありがとうございます」
青年は提督からメモ用紙とペンを受け取り、情報を聞き漏らさないように耳をすませる。
提督「まず、君が大本営へと向かうのは4日後に決まった。……で、それまでの間、君は仕事をしなくていい」
青年「えっ……いいんですか?」
提督「大丈夫だ。それに、向こうにはしばらく滞在することになるだろうから、そのための準備をこの間にしておくのがいいな。むしろそのための休日と言っていい」
青年「はい……わかりました」
提督「あと、その期間中、君に『付き添ってくれる艦娘』を一人選んでもらうことになる。つまり、この鎮守府からは私のお付きと君のお付きで、二人の艦娘が出ることになるな。まぁ、これは頭に入れておくだけでいい」
青年「は、はい……」
青年はふと頭の中で、付き添いの艦娘を誰にすればいいか決めなければならないとなると、また、少し面倒なことになりそうな予感がしたが、特に何も言わずにいることにした。
提督「まぁ、大本営についてはそのくらいだ……ああ、ホテルについては向こうが手続きを済ませてくれるみたいだ」
青年「そうですか……」
提督「さてと……まぁ、真面目な話はこれで終わりだな。これ以上は何もいうことはない。強いていうなら、大勢の提督の前で自分の身に起こったことをしっかり説明する練習をするくらい……か」
青年「……」
頭の中で、そのイメージをするだけで冷や汗が出てくる。静かな会議場に一人立たされ、そして説明。もし何かあればそこを質問され、慌て……。「やめよう」、そう必死に心の中で呟き、マイナスなイメージを持たないようにする青年。提督はそんな青年の姿を見て、気を遣ったのか立ち上がり、「ゆっくり考えたまえ」と言ってくれた。
提督「さて……すまないが、ちょっとだけ、執務室の外に用がある。青年君、悪いが先に掃除を始めておいてくれないか? 書類には手を付けず、床にある明らかにゴミと思われるものだけでいいから」
青年「あ、はい。わかりました」
提督「……あ、後、もし電話がかかってきたら受けてもらって構わない。その代わり、しっかりと『提督はただ今席を外しております』とだけ言ってくれれば問題はないからな」
青年「わかりました」
提督「うむ、では頼んだ」
そう言って提督は、執務室から一度出て行った。提督が出て行った理由は、大本営に連れて行くお付きの艦娘を決めるためである。それと、青年にこの
休日の間に何をするかをゆっくり考えさせるためでもあった。
青年「……う~ん、付き添いの艦娘か……。いや、その前に色々準備しておかないと……。あ~……瑞鶴さんと遊びに行く約束もしてたし、大変だな……」
そんなことを呟きながら掃除をしていると、ここで、まさかの電話が鳴った。青年は、おそるおそる受話器を取り、耳に当ててから「もしもし」と言う。
司書『え~っと、こちら◯◯鎮守府『図書館司書』の青年と言う者ですが、提督さんでしょうか?』
青年「えっ……あ~。提督は今席を外しております」
司書『そうですか~。あ、そこまで急な用事ではないんですけど、頼まれていた資料がこちらで見つかったのでお送りしたいと言う話でして……秘書艦の人ですか?』
青年「あ、いえ、僕、ただの清掃員なんです……けど」
司書『え? も、もしかしてついこの間、深海棲艦にさらわれていたあの清掃員の人?』
青年「ええっ……何で知ってるんですか……」
司書『いや、有名ですよ~。うわ~嬉しいな……。だって他の提督さん達より先に深海棲艦についての話が聞けるってことでしょ? 僕……」
青年「え……でも今勤務中なので、ご遠慮願いたいんですけど……」
司書『う~ん……そこを何とかお願いしたい! というより、実際深海棲艦ってどんな感じなんですか?』
青年「え、え~っと……まぁ、感情は人間と同様持ってますし、ハッキリ言って僕達と変わらない部分もあるかと……」
青年がそう言うと、司書が電話の向こう側でかなり考えているような声を出した。電話から「ああでもないこうでもない」と言ったつぶやき声が聞こえてくる。こちらの司書は青年と比べるとかなり口数が多いように青年は感じ取った。
青年「えっと……もういいでしょうか……掃除があるんで……」
司書『あ、ごめんなさいね! それでは提督さんによろしく伝えておいてください! ではでは!』
そう言って、電話は切れた。青年は安堵のため大きく息をはく。すると、提督がちょうど執務室の中へ入ってきた。提督は青年に何事かを尋ねたので青年は司書に言われたことをそのまま提督に伝えた。
提督「そうかそうか……。よし、その話はよしとして……青年君、それでは掃除の続きを始めるか」
青年「はい」
それから提督と青年は執務室の掃除を始めた。資料の整理、書いている途中で失敗した報告書の処分など、青年が行うのは初めての作業があったが、提督は青年にしっかりと教えてくれた。話を聞く限り、今後も執務室の掃除を行ってもらうつもりではあるらしい。
しばらくして、ある程度片付けが終わると、提督はお茶を入れてくれた。そして、青年をまたソファに座るように促す。青年は、座って、そのお茶を少しだけ飲んだ。
提督「さてと、まぁ……一段落したところで、青年君に少し相談があるんだが……」
青年「えっと……何でしょうか?」
提督「実はそろそろ私もケッコンカッコカリをしようと思うんだが……」
ケッコンカッコカリとは、提督と艦娘が一応の形で結婚を行うことである。実は、艦娘たちは人間と同じ姿をしているものの、まだ正式には人間としては見られておらず、きちんとした結婚にはならない。だからこそ、このケッコンカッコカリという鎮守府内でのみ認められている制度があるのだが……。
青年「あぁ……別にいいんじゃないでしょうか?」
提督「いやな。君も一人の日本男子……。どういった女性を人生の伴侶にしたいかと言うかそういう考えはあるだろうと思って……少しだけ参考にしたい」
青年「そうですね……。難しい話ですが、やはり信頼できる艦娘とされるのが一番なのでは……。えっと……提督は一応、候補とかは考えていらっしゃるんですか?」
提督「いや……私はかなり優柔不断だからな。まったくわからん……だってみんな可愛いじゃないか」
青年「あ、そ、そうですか……」
提督「ちなみに青年君は、もし提督なら誰とケッコンカッコカリしてみたいと思う?」
青年「あ、いや……。そんなこと、わからないですよ……」
提督に迫られ、少し困惑してしまう青年。どうもこの鎮守府のみんなは人の恋愛に興味を持っている人物が多いようだ。これと言って、恋愛について本気であまり考えたことがない青年にはなかなか理解し難いものであった。
青年「う~ん……候補の中でも、特に印象が強いと言いますか……筆頭に上がりそうなのは誰ですか?」
提督「そうだな……。まずは加賀だな。仕事もできるし、何よりも我が艦隊の主力艦隊の空母として活躍してきてくれたからな……」
青年「そうですか……。確かに加賀さんはぴったりと言うか、そんな感じはありますね」
提督「ああ。……純粋に嫁として迎えるなら、榛名でもいいんだが……う~ん……」
青年「榛名さんですか……あの人は大和撫子と言いますか、良いお嫁さんになる気はします」
提督「うむ……。実は、候補としてはまだいるんだがな……」
青年「例えば?」
提督「――――瑞鶴だな」
青年「……」
提督が少し意地の悪い顔をしながら青年にそう言い放った。青年は、無意識的に、瑞鶴の名前に反応してしまい、体をぴくりと動かしてしまった。提督は青年のその反応を見て、何やら面白いものを見るかのような顔をしている。
提督「ほう……。今少し、瑞鶴にだけは反応したな……」
青年「え、あ……し、してない……です」
慌てふためく青年の姿を見て、提督は本当におかしそうに笑い出した。
提督「いや~、何というか初々しい感じが……」
青年「で、ですから、僕と瑞鶴さんはそう言った関係……と言いますか。僕は瑞鶴さんのことはそこまで……」
提督「……では、瑞鶴のことは嫌いか?」
青年「え、き、嫌いじゃないです……。あ、あの人は確かに、喋り方が少しハキハキしてて最初は苦手だと思いましたけど、何だかんだ言って僕のこと、心配してくれたり……体調を崩した時だって、一番最初に気づいてくれましたし……それに看病してくれたり、相談に乗ってくれたり……優しいところもあります。あ、でもただ優しいだけじゃなくて、時折見せる、しおらしい態度とかは確かに女性っぽいと言いますか惹かれてしまうところはありますし……えっと……」
提督「……」
青年「……え?」
青年はここへ来て、ようやく自分が瑞鶴についてかなりのことを言ってしまったことに気づいた。提督はその青年の様子を見てかなりニヤニヤとした表情を浮かべている。もうここまで来たら嘘はつけないだろう。青年は、自分の気持ちにそろそろ正直になってもいいのではないかと感じ始める。
青年「……だから……その……」
提督「……」
青年「……あー……えっと……僕は瑞鶴さんのことが……好きなんだと思います。女性として……」
提督「……そうか。ならいいんだが……その言葉は瑞鶴に伝えてあげる方がいいと思うぞ?」
青年「……ですが、まだ気持ちの整理がついていなくて……」
提督「まぁ、その辺はゆっくり考えたらいいと思うんだが……どうなんだ? 彼女と出かける用事とかは……」
青年「……あ。そう言えば、瑞鶴さんと休日が貰えたら出かける約束はしていますが……」
提督「……」
青年「え、ど、どうしたんですか? 急に黙って……」
提督「いや、なんでもないな……」
青年「と、とりあえず、今日はこれでいいですか?」
提督「あ、ああ……」
青年「では、失礼します……」
そう言って、青年が提督に一礼をして執務室を出る。すると、どこから湧いてきたのか、たくさんの駆逐艦が青年に近づいてきた。何やら全員目が怖い感じなってしまっている。
青年「え、えっと……みんな、どうしたの?」
卯月「青年さん、とりあえずこっちに来るぴょん」
執務室から離れた場所に連れられ、青年は駆逐艦達に取り囲まれてしまった。青年は何が何だかわからず、困惑の表情を浮かべるばかりである。
浜風「青年さん……悪いことは言いません。私達が聞きたいのはただひとつ。提督が誰とケッコンカッコカリをするかということです」
青年「え?! き、聞いてたの?」
暁「執務室からケッコンカッコカリって言う単語が出てきたら気になるに決まってるじゃない! 色恋沙汰を知っておくのもレディのつとめだし」
電「あまり関係がない気もするのです……」
青年「え、ええっと……みんな、俺の好きな人とかも聞いて……た?」
時雨「それよりも気になることがあってわからなかった」
青年「そ、そう……」
何となく安心していいのか、それとも自分にあまり興味を持たれていないことに落ち込めばいいのかわからない青年。仕方なく、うまくこの場を切り抜ける方法を考えてみる。青年は、少なくとも提督は、駆逐艦の名前は出さなかったし、ケッコンカッコカリで嫁として迎えるよりは、娘のような感じなんだろうと勝手に解釈をしておくことにした。
だが、下手な発言をしてしまえば、提督の名誉を傷つけしまうことには違いない。そこで、青年は柄にもないようなセリフを言うしかなかった。
青年「え、えっと……それは、個人のプライバシーの話だから俺からは何も言えないというか……」
卯月「もう! プライバシーとかそんなのは関係ないぴょん! 司令官が誰とケッコンカッコカリをするかによって、色々変わっちゃうんだから!」
青年「とは言っても、本当に俺が言えることは……そもそも、提督もまだ決めてないみたいだから……」
不知火「すごく出来過ぎた嘘のように思えます」
響「青年は何かを隠してる」
ここへ来て、以前青年を嵌めたことのある不知火と響が発言をしてきた。青年は、頭の中で「こいつら……」と少しだけ思いつつ、仕事を理由にその場から離れようとする。だが、他の駆逐艦達もそれが気になって仕方がないようで、青年は文字通り駆逐艦達にもみくちゃにされてしまう。
で、彼のちょっとした不幸体質が発揮されたために、ここで、また事故が起きるのであった。
誰が引っ張ったかはわからないが、青年はバランスを崩し、その場にこけかける。その際に、目の前にいた村雨を押し倒す形になってしまった。
そして―――――
ふにっ
柔らかい感触が手の先から伝わってくる。しかも起こった偶然は非常に質の悪いもので、傍から見れば青年が村雨の服の下に手を突っ込み、胸を触っているという構図にしか見えない状況であった。
青年「……えっ……」
村雨「……」
卯月「せ、青年さんが……」
潮「や、やっぱり、胸が好きというか……」
浜風「……」
周囲から視線が集まる。青年が状況に気づき、慌てて離れようとすると村雨はいきなり青年の首元に手を回してきて、顔を青年に近づけた。
村雨「あら、青年さんって結構大胆なのね……ふふっ……。でも、今はみんなの目がありますし……ねっ?」
青年「は、はいっ!? ちょ、村雨……そ、それはふざけすぎと言うか……」
雷「えっ……この状況何……」
村雨「慌てちゃだ~め……。だから……あ・と・で……ね?」
青年「……」
青年はここで、おそらく村雨が動揺で明らかに変なテンションになっていることに気づき、これ以上村雨が意味のわからないことを言う前に離れてしまった方がいいと思った。青年は、村雨の手を少し強引に振り払って、すぐさま立ち上がって、別の場所へと逃げていく。
卯月「あー!! 青年さんが逃げるぴょん!!」
響「ハラショー。見事な走りだね……」
青年が逃げ延びた先は、誰もおらず、静かな空気が流れていた。青年は、今までにないくらいに速く走ったので、息が切れてしまっている。青年は、一度呼吸を整えるために大きく深呼吸をした。
青年「また変なことになってしまった……とりあえず、青葉さんに見られてないだけマシなんだろうけど……」
瑞鶴「青葉がどうかした?」
青年「え!? あ、瑞鶴さん……」
瑞鶴は、青年が急に驚いた声を上げたので、瑞鶴自身も少し驚いたようで、何やらちょっと警戒しているような顔つきになっている。青年が、「なんでもないですよ」と言うと、いつものような、青年にとってかなり魅力的に感じる柔らかい笑顔になる。
瑞鶴「で、どうしたのよ。いきなりドタバタ変な音がしたから気になって来てみたら、青年が息切らしてるなんて……。もしかして、体力トレーニング?」
青年「あ、いや、まあ、違います……」
瑞鶴「ふぅん……」
青年「……あ、瑞鶴さん。そう言えば……さっき、提督から話があってですね―――
それから青年は、瑞鶴に休日を貰えることを話した。すると、瑞鶴の顔はたちまち笑顔になる。青年は、その様子を見ているとやはり、目が離せないほどには瑞鶴のことが好きになりつつあるのだと自覚した。
青年「―――というわけなんですけど、瑞鶴さん、どこか行きたいところとか……あります?」
瑞鶴「え、ええっと……ゆ、遊園地……かな」
青年「遊園地ですか……瑞鶴さんがいいなら……」
瑞鶴「うん。遊園地でいい……。えっと、青年、いつに行くの?」
青年「そうですね……四日後ですから……。明々後日とか、その辺でいいでしょうか?」
瑞鶴「うん。私も色々準備したいし……。そうしましょ」
青年「では、いったん失礼します」
瑞鶴「……青年」
青年「はい?」
瑞鶴「……約束、今度はちゃんと守ってよね」
青年「……はい」
そう言い残して、瑞鶴はちょっとだけ足早に去って行った。青年も、何とか瑞鶴との約束を破らずに済むだろうと思い、安心しきって歩き始める。そして、先ほど勢い良く駆逐艦達から逃げたために掃除道具が放置されたままだということに気づいて取りに戻ろうかと考えた。
青年「行かなきゃ……」
蒼龍「青年く~ん、さっき誰かと仲良くお話してたよね?」
青年「……」
飛龍「もしかして~、デートのお誘いって感じかな?」
青年「……蒼龍さんに飛龍さん、ど、どうしたんですか?」
蒼龍「確か、明々後日だったわよね?」
飛龍「ということは……明日か明後日の間に青年を一人前にしてあげようと思ってね~」
青年「え~っと、つまり?」
蒼龍「青年君にデート慣れして、ちゃ~んとエスコートできるように特訓するってこと!」
飛龍「というわけで、明日か明後日に私達と出かけるよ~」
青年「そ、そんな勝手に……」
結局、青年には修行の時が訪れるのであった……。
次の日、青年は起きてから朝ごはんを食べ、服を着替えてから蒼龍と飛龍に決められた鎮守府の入り口付近へと向かった。しばらくして、待っていると蒼龍と飛龍が遅れてやってくる。
蒼龍「ごめんね~、待った?」
青年「あ、いや……全然」
飛龍「青年! そこは『うぅん、今来たところです』でしょ?」
青年「え、そんな教科書をなぞるような返事でいいんですか……?」
蒼龍「とりあえず、相手に待たせてしまったっていう気持ちを持たせちゃダメ。たぶん、青年君が気になってる『あの子』だって、服は気合入れてくるだろうし」
蒼龍は、名前こそ出さなかったものの青年の気持ちには気づいているようだった。青年は、自分の好きになりつつある人を知られ、青年ではなく、少年のように顔を赤くする。
青年「そ、そうです……か」
飛龍「まぁまぁ、今から慣れていけば大丈夫だし、ね?」
青年「は、はぁ……」
先ほどは、いきなり注意されたので気にしなかったが、蒼龍と飛龍も今日は出かける服装をしていた。そして、青年がそれを見ていると蒼龍と飛龍がジロジロと青年の反応を伺っている。
青年「え、えっと……服、似合ってますよ」
蒼龍「うん! ありがとね~」
飛龍「うんうん、青年、そんな感じでいいと思うよ~」
青年「……」
既にこの段階からリタイアしかかっている青年。だが、蒼龍と飛龍はそんな青年の反応を楽しみながらも、「じゃあ、行きましょ」と声をかける。青年は、昨日打ち合わせしたとおり、買い物に行くというデート修行を開始するのであった。
青年「で、では、改めて、蒼龍さん、飛龍さん、行きましょう」
飛龍「うん!」
蒼龍「楽しみね~♪」
そして、青年が鎮守府の入り口を抜けようとした矢先だった―――。
蒼龍「ストオオオオップ!!」
青年「!?」
蒼龍「青年君、こういう時は、こうでしょ?」
飛龍「あっ、私も私も!」
青年「え、ちょ……」
二人は、青年の手を握って一緒に歩き出した。いかにも両手に花という状況ではあるが、青年は周囲の視線が気になって仕方がなかった。青年が恥ずかしそうに下を向いていると、飛龍が顔をあげるように注意する。
飛龍「青年~、こういう時は男の人が恥ずかしがっちゃダメ! 堂々としてないと!」
青年「と、とは言っても、この状況は……」
蒼龍「……あ! こういう時は飛龍、アレよ」
飛龍「アレ?」
蒼龍「ほら、一度かなりレベルの高いことを経験すれば、それよりレベルの低いことは何とも思わなくなるってやつ」
飛龍「ああ~!」
青年「……」
この瞬間、青年は嫌な予感がしたために二人から離れようとしたが手を握られているため離れることはできなかった。時既に遅し、青年はあっという間に二人に腕を組まれてしまった。
青年「あっ……」
蒼龍「どう? これを一回経験しちゃえば、手を繋ぐなんて恥ずかしくないわよ?」
青年「と、とは言っても……これはさすがに……」
青年の二本の腕には、それはもう柔らかな感触のするものが当たっている。ここまでくれば、恥ずかしい恥ずかしくないという問題ではなく一人の男として理性が保てるかという問題になってくるのは言うまでもない。
青年「……」
蒼龍「ほら、青年君、黙ってないで、何か話題をふる!」
青年「え、ええっと……ほ、ほほ、本日はお日柄もよく……」
飛龍「緊張しすぎだって~。もう、そんなんじゃ、エスコートなんてできないよ?」
青年「……はい。え、えっと……今日は何を見に行くんですか?」
蒼龍「服がいいかな~。青年君に似合う服選んでもらおっと♪」
飛龍「そうだね~」
それから青年はニ航戦の二人にサンド(物理)されたまま、デパートへと入店。もちろん、周囲の視線が青年に集まる。両手には、かわいい女の子。これを見て羨ましがらない者がいるだろうか……。
店員「いらっしゃいま……せ~。どういった服をお探しでしょうか?」
挙句、服売り場の店員にまで間が空いた挨拶をされる始末。青年は、ここまで来てしまえば「もうどうにでもなれ」という心持ちで行くしかないと思い、開き直ることにした。
蒼龍「ねぇ~、青年君、どんな服がいいと思う?」
青年「お、お好きに見てください……」
飛龍「あ、これいいかも~! ねえねえ、どうかなぁ?」
青年「試着して見ればいいんじゃないでしょうか……」
若干、返事が投げやりな青年の様子を見て、蒼龍と飛龍は何となく満足そうな顔をしているが、このまま修行は終わらなかった。飛龍と蒼龍は服を決めると、試着室の中へと入っていってしまった。青年は、外で待ちながら試着室の中からシュルシュルっと言う音が聞こえてくるのを、我慢していた。
そして、しばらくして、二人から「準備できたよ~」と声がかかったので、青年は開けても大丈夫なことを答えた。そして、二人は試着室のカーテンを開け、それぞれの選んだ服を着た姿で出てきた。
蒼龍「えへへ、青年君、どうかなぁ?」
青年「……はい、とても似合ってますよ」
飛龍「私は?」
青年「飛龍さんも、似合ってます」
青年がそう言うと、蒼龍と飛龍は「ありがとう」とお礼を言った後に、ただ「似合ってる」というだけではセンスが無いと説教を始めてしまった。青年は、瑞鶴と出かけるのは遊園地であるのを考えつつ、本当にこの修行が必要なのかどうか考える他なかった。
飛龍「―――青年、聞いてる?」
青年「え?! あ、はい、聞いてますよ……」
蒼龍「そうね……服はこの辺にして、次は、食事の時の特訓ね!」
店員「いらっしゃいませ、何名様ですか?」
青年「えっと、三人です」
店員「わかりました。ご案内しますので、こちらへどうぞ!」
それから三人が案内された席に座る。青年はメニューを手にとって、二人が見やすいように向きを変えて「どれにしますか?」と尋ねた。
蒼龍「あれ、これには結構慣れてるのね……」
青年「え!? ま、まぁ……」
青年は、以前に弥生、卯月とともにパフェを食べに行った経験が生きたと思いつつ、内心ホッとした。二人は少し不満気な顔をしたが、すぐに食べるセットを決めて青年に伝えた。青年は店員を呼んで、注文を伝えると水を飲んでいったん落ち着くことにする。
飛龍「でも、青年がやっと自分の好きな人を見つけるなんてね~」
蒼龍「そうね~。五航戦のあの子は幸せよね」
青年「や、やめてくださいよ……まだ、本格的に好きってわけじゃ……」
飛龍「でも向こうも向こうで案外青年には惹かれてると思うけど……」
青年「え?」
蒼龍「だって、大宴会の時だって一緒に呑んでたじゃない。しかも、向こうから誘ってきたんでしょ?」
青年「え、ま、まぁ……」
飛龍「絶対、青年のこと好きだって!」
青年「そ、そんなことは……僕、こんな感じでハッキリしないですし……。なよなよしてて……」
蒼龍「そんなことないと思うけどね~。青年君はやる時はちゃんとやる人だと思うし」
青年「そ、そうですか……」
飛龍「ところで、青年、何か瑞鶴のためにプレゼントは準備してるの?」
『プレゼント』と聞かれ、青年はハッとする。よくよく考えてみれば、瑞鶴にはこれまで何度も助けられたのにもかかわらず、青年はまだそのお礼を言葉で言っただけで、形にしたことは一度もない。
青年「……いや、まだ考えてないです」
蒼龍「あ、でも、プレゼントはここはいっそのこと、『告白』っていうのが最高なのかもね!」
飛龍「ああ~、ロマンチック! いいじゃんいいじゃん!」
青年「ちょ、ちょ、ちょっと待ってください! 告白はまだダメです……。ま、まだお互い知り合って1ヶ月ですし、もう少し期間を置いてからも……」
飛龍「えぇ~。でも、このまま放ったらかしにしちゃうとひょっとしたら提督に取られちゃうかもよ?」
青年「っ……」
蒼龍「う~ん、ここはアクセサリーなんてどうかしら? やっぱり、女の子って、素敵なアクセサリーに弱いだろうし……」
青年「え、えっとじゃあ―――――
――――――指輪、とか?」
蒼龍「……」
飛龍「……」
青年「……あ」
ニ航戦「「気が早い!!」」
店員「お、お客様~。もう少し静かに願います」
三人「「「はい、すいませんでした!」」」
それから三人はさすがに反省し、恋話ではなく何のとりとめのない話をして、昼食が運ばれてくるのを待つ。そして、運ばれてきた昼食を、これまたとりとめのない会話をしながら食べ終え、支払いを済ませて店を出た。
蒼龍「いや~、美味しかった~」
飛龍「また来たいね~」
青年「今度はちゃんとお金、持ってきてくださいよ……」
蒼龍「ごめんね~。でも、まあこれは今日の修行のお礼の代金ってことで」
青年「ならいいですけど……。えっと次はどうします?」
飛龍「もっちろん、青年がプレゼントするアクセサリーを決めに行くよ~」
三人は、デパート内のアクセサリー店に向かい、色々なアクセサリーを見る。ブレスレット、ネックレス……その額を見ると青年の今持っているお金では買えないようなものばかりだった。
蒼龍「ここのは少し高すぎるわね……他にもアクセサリー店はあるし、そこを探しましょう」
青年「そうですね」
それから三人はたくさんの店を回ったが、なかなか安いアクセサリーは見つからず、青年は少しだけ背伸びして少し高めのイヤリングを買うことにした。店員には「どちらの彼女さんにプレゼントされるんですか?」と少しいじられるような言葉をかけられたが、その時だけ青年は堂々と、「いえ、あの二人は、友人です」とだけ答えた。
青年「……う~ん、遊園地行かないといけないのに、結構痛い出費が……」
蒼龍「まぁまぁ、行った時にちゃんと渡さなきゃダメよ?」
飛龍「やっぱり、夕日を二人で眺めながら、観覧車が一番高いところに来た時に渡すのが一番だね! 青年、ちゃんとそうなるように頑張って!」
青年「え、え~……」
今のままでは、明らかに瑞鶴に振り回される……というより、瑞鶴に全てを委ねかねない青年は自信がなかった。その後も、青年は蒼龍と飛龍にお金は使わなかったものの、色々な場所へと連れまわされてしまった。
そして、気づけば、そろそろ鎮守府に戻らないとマズイ時間帯になった。蒼龍と飛龍は少し残念そうにしながら帰り道を歩く。
鎮守府にたどり着いた頃には、既に晩ご飯が始まってるであろう時間だった。青年は一度、買ったイヤリングを部屋に置いてくることを二人に伝え、港近くを歩き出した。
青年「はぁ……今日は色々疲れた……。あの二人といるのは楽しいんだけど……ん?」
青年が港を見た瞬間、彼の中で何かが切れる音がした。
一方、こちらは晩ご飯の食堂。それぞれ各々の席に座って会話をしながら食事を楽しんでいる。料理の豪華さがグレードダウンしただけで、その賑やかさは大宴会の時とさほど変わらない。
蒼龍「いや~、今日は楽しかったね」
飛龍「まぁ、青年には頑張ってほしいね。さてさて、お酒お酒~♪」
そう言って飛龍がお酒を自分の持っているとっくりに注ごうとした瞬間だった。
バン!! と大きな音がしたと同時に、食堂の扉が勢い良く開かれた。
青年「……」
そこに立っているのは青年だった。だが、様子がいつもと何かが違う。先ほどの音が、原因でみんな会話をやめ、視線を青年に集中させる。青年はズンズンと前の方に歩いて行って、食堂で一番目立つ場所へと立ち、そしてまず一言。
青年「……港を汚したのは誰ですか?」
その声のトーンに、その場にいた艦娘たちは耳を疑った。いつものような温厚な青年の優しい声ではなく、明らかに怒っている声だ。
青年「……もう一度、聞きます。港を汚したのは誰ですか?」
青年がそう言うと、艦娘たちの視線が千歳や隼鷹と言った酒飲みな艦娘たちに集中する。
そう、青年が先ほど見た光景は、港にたくさんの空の酒瓶が転がっている光景であった。
青年「そうですか……やはり、あなた達でしたか……」
隼鷹「あ、あはは~、い、いや~。今日天気がよかったものだから、せっかくだし、外でのお酒もオイシイかな~って……」
青年「楽しかったようで何よりですね」
そう言って、青年はニコッと、隼鷹に笑いかける。明らかにその笑顔の裏には黒い感情が入っている。艦娘たちは、恐怖で震え上がった。
青年「せっかく提督から貰えた休日ですが、今日掃除してなくてちょっとウズウズしてたんですよ……わざわざ掃除する手間を作ってくれるなんて嬉しいですよ?」
千歳「あ、後でやるつもりだったの……」
青年「いえいえ、千歳さん達は何もしなくていいんですよ? 僕がやりますから」
青年は笑顔でそう答えるが、完全に目が笑っていなかった。その様子を見ていた他の艦娘たちから隼鷹や千歳に青年に謝った方がいいのではとこそこそ話が聞こえ始める。
隼鷹「え、えっと……青年、ごめん! 後でちゃんと片付けるからぁ!」
千歳「本当にごめんなさい!」
青年「……」
隼鷹「……」
千歳「……」
青年「まったく……いつもいつもお酒ばっかり呑んで……。いつか体を壊しても知りませんよ?」
隼鷹「へ?」
青年「お酒が好きなことに文句は言いませんが、やっぱり、僕は心配ですよ……。もし、出撃前とかに呑んでちゃって酔っ払って上手く動けなかったりしたらどうするんですか……。僕は、いつもそれが心配で、我慢できません……。お酒を呑んだからって強くなるわけじゃないでしょ? 昔の映画じゃあるまいし……」
隼鷹「……」
千歳「……」
そう、青年が訴えかける言葉には先ほどのような覇気はこもってなかった。どちらかと言えば、完全に二人を気遣っての優しい言葉だった。つまり、青年は、酒を呑むことで、二人の身に危険なことが出撃の際に起こってしまうのではないかと心配なのだ。その気持が届いたのか隼鷹と千歳はかなり反省したような顔になっている。
青年「……今回のことで反省していただけたら、お酒は少しだけ控えてください」
二人「「はい……」」
青年「……え、えっと……みなさん、お食事中にすいませんでした……。し、失礼します」
みんなの前で礼をした後、青年は気恥ずかしそうに去って行った。
港近くで、空いた酒瓶を片付けながら青年は大きなため息を一つついた。あのような説教を自分でも始めるだなんて思ってもいなかったようだ。青年は、もしかしたら、他の艦娘たちに怖がられたのではないかと少し心配になる。
青年「う~ん……どうしよう……」
弥生「青年さん……大丈夫ですか?」
青年「……や、弥生か……どうしたの?」
弥生「……青年さんこそ、どうしたんですか……? 今日は少し疲れてそうに見えました……」
青年「あ、うん……。まあ、色々あってね……」
青年が片付けを終え、ゴミ袋の口を閉じた。そして、港に座り、風を浴びながら遠くを眺め始める。その隣に弥生もちょこんと座って、青年と一緒に静かに遠くを見た。
弥生「……」
青年「……怖かった?」
弥生「いえ……。何だかんだで、やっぱり青年さんは優しいんだなと思いました」
青年「……そう」
弥生「……」
青年「……」
青年と弥生の間に沈黙が走りかけたその時、口を開けたのは弥生の方だった。
弥生「そう言えば……この前は、料理食べてくれてありがとうございました……」
青年「ん? あ、そうだな……美味しかったよ。鳳翔さんからも聞いてるでしょ?」
弥生「……はい。えっと……弥生、これからも料理、色々覚えたいです……ですから……」
青年「?」
弥生「……青年さん、また、食べてくれますか?」
そう言って、上目遣いで尋ねる弥生。青年は、この顔を見た瞬間に、断れなくなり、目を逸らしながら「うん」と返事をしてしまった。その言葉を聞くと弥生は、微笑み、下を向く。そして、また二人に訪れる沈黙。
青年「……」
弥生「……」
青年「あ、えっと……何だかんだで俺、まだ食事取ってないから、食堂に戻るよ。弥生も風邪引かないようにな」
青年は、ほぼ無意識的に弥生の頭を撫でながらそう言った。もう一度言う。『弥生の頭を撫でながら』。
青年「……」
今自分がやっている行動に気づいたのか、青年は焦って手を引っ込める。弥生も弥生で、顔を少し赤くしながら俯いた。先程よりも明らかに空気が重い。青年は、このまま逃げ出したいと思いつつ、弥生に謝罪を入れる。弥生は、「気にしてないです……」と答えるばかり。
青年は、「そう……」とだけ呟いてから、その場から立ち去った。青年がいなくなった後、弥生は一人で、こっそりと呟いてみる。
弥生「……青年さんは好きな人……いるんでしょうか……」
次の日、青年は起きて朝食を取った後、自室へと戻ってまずは、大本営に行く時の荷物を詰めてしまうことにした。何日向こうに滞在するかはわからないので、出来る限り多くの荷物を詰める。
青年「う~ん……。あ、そう言えば、一緒に付き添いしてくれる人、決めてなかったなぁ……どうしようかな……」
そんなことを呟きながら、青年は荷物を一通り、まとめた。
青年「……ホテルの料理とか足らなかったりした時のためにお菓子とか持っていった方がいいのかな……だとすると、また買いに行かなくちゃ……いや、でも明日は瑞鶴さんと出かけるし……」
実は、鎮守府の外には何度か行ったことのある青年だが、数日間離れるようなことは一度もしてこなかったために、今回の大本営からの呼び出しは青年にとってはちょっとした旅行感覚になっていた。本来なら、あまりそう言う気分で行くようなことではないのだが、こうでも考えないとやっていけないと青年は思っている。
青年「……まあ、難しいことは考えないでいいな。ちょっとだけ鎮守府散歩しよう……」
そう言いながら、部屋から出ようとした時、部屋の扉の入り口がノックされる音が聞こえた。
青年「ん? 誰だろ……」
青年が扉を開けると、普段青年とはあまり話したことがない艦娘が一名立っていた。
球磨「青年、おはようクマー」
青年「……えっと、球磨さん?」
球磨「ちょっとついてきてほしいクマー」
言われるがままにして、球磨について行く青年。そして連れて来られたのは球磨型の部屋だった。この部屋ももちろん、以前行った美化週間にてチェックを行ったことがある。ちなみに整理整頓が出来ていたのは、北上と大井の二人だけだったのだが……。
大井「あら、青年さん、こんにちは。どうかしましたか?」
青年「え? あ、いや、球磨さんに呼び出されて……」
北上「えー。何か色々めんどくさそうなことがありそーだけど……?」
球磨「クマー。今から模様替えをするクマー」
木曾「おいおい。本当に急だな……」
多摩「多摩は別に気にしないにゃ」
そう言って、青年は球磨型の部屋の掃除及び模様替えを手伝わされた。模様替えは主にカーテンを変えたり、家具の配置を変えたりと本当に色々手伝わされた。
青年「こんな感じですか?」
球磨「おおっ、我ながらいい感じクマ!」
北上「あ、青年さーん、ちょっとだけ頼みがあるんだけど~」
青年「どうしたんですか?」
北上「ちょーっとだけでいいからさ。私疲れてるから『肩揉んでくれない』?」
大井「き、北上さん?! それなら私がやりますよ!!」
青年「……」
そう言って、慌てて大井が北上の後ろに回り込み、肩を揉み始める。青年がその様子を見ていると肩を揉みながら、大井がこちらを少しだけ鋭い目つきで見ているのに気づき、思わず目線を外してしまった。
北上「あぁ~、大井っちさすがだねぇ~……」
大井「ふふっ。私、北上さんが気持ちいいと感じるところは全部知ってますから……」
木曾「どうでもいいが、明らかに誤解されそうな言葉だよな、今の……」
多摩「気にしない方が賢明だにゃん」
青年「い、いいんでしょうかね……」
そんな二人の様子を見守っていると、北上は青年の方をじっと見ながら首を傾げ、何やら考えているようだった。しばらく大井が肩を揉んでいると、北上は何か思いついたような顔つきになり、黒い微笑みを浮かべた。
北上「大井っち、もう大丈夫だよ~。休憩してて~。青年さーん、ちょっとだけお茶入れてくれない?」
青年「え? あ、まあ、別にいいですけど……」
そう言って、青年は北上に言われるがままにしてお茶を入れた。しっかりと北上の分だけでなく、大井や球磨達の分も全てきっちり入れるところが妙に青年らしい。青年は、北上にお茶を渡し、他のみんなにもお茶を差し出した。
木曾「お、ありがとな」
青年「いえいえ」
球磨「本当なら私達が入れないとダメなんだクマー」
青年「……で、ですね……」
それから一同は、とりとめのない話をやり始める。しかし、段々と方向性がずれていき、結局は恋愛話になっていく一同。提督がケッコンカッコカリをするかもしれないという話はもう艦娘たちの間ではもちっきりの話題になっているらしい。
北上「え~。提督結局誰とケッコンカッコカリするんだろ」
大井「せ、青年さん、北上さんの名前は出てこなかったんですよね?!」
青年「いや、まぁ……それは僕の口からは何とも……」
木曾「まあ、落ち着こうぜ。提督だって一人の男だ。きっちりと決める時は決めるだろうし、あまり詮索したら青年がかわいそうだろ?」
青年「木曾さん……」
一見落ち着いた雰囲気を保っていそうな木曾だが、青年がよく見ると、やはり木曾も女の子であることには変わりはなかったようだ。心なしかそわそわとしているのがわかった。
青年「……」
球磨「……はっ! 大事なことを思い出したクマ……。青年、もう一つだけ掃除してほしいところがあるクマ」
青年「?」
球磨「ここだクマ」
球磨が押入れを開けると中から大量のゴm……ではなく、使われなくなったものがでてきた。青年が一体これはどうしたんだと聞くとどうやら、美化週間の際に青年が抜き打ちチェックをやっていることを噂に聞いた球磨と多摩が慌てて押入れの中に突っ込んだものだそうだ。つまり、形だけの綺麗な部屋に仕上げたということであった。
青年「……」
球磨「……」
大井「はぁ……。だからちゃんと掃除しておかないとって言ったのに……」
それから、せっかく模様替えをしたのにも関わらず、もう一度整理をし始めるのであった……。
そして、みんなで整理をし終えたのはなんとそこから2時間後のことである。一体どれほどのゴm……いらなくなったものをためこんでおけばこの様になるのか。青年は、昨日の酒飲みの二人に説教したことを思い出しながら少しだけ感じたいらだちを抑えながら掃除をしていた。
青年「はぁ……なんとか終わった……」
多摩「あ、そう言えば今日は多摩達がお風呂掃除の当番にだったはずだにゃん……」
青年「へ?」
北上「あー、いいじゃん。青年さんも手伝ってよ~」
青年「……ま、まぁいいですけど……」
結局、風呂掃除も手伝われた青年。これでは、せっかくの休日がいつもの業務日と変わらないものになっていた。というよりも普段の仕事よりもキツイものがあった。その後も、球磨型のみんなに振り回された青年が開放されたのは夕方近くの頃だった。
青年「……一応、明日瑞鶴さんと出かけるんだよな……俺。こんなことしてていいのかな……」
ふとそんなことを呟いてみる。その呟きが、一部の艦娘に聞かれていたことを青年は気づかない。青年は、そのまま気にせず、一度鎮守府の外へ出て、ホテルで食べるお菓子を少しだけ買って帰った。
そして、部屋に戻って、明日のデー……お出かけの予定を一度だけ確認する青年。とは言っても、青年が明日のうちにやらねばならないことは昨日買ったイヤリングを瑞鶴に渡すだけである。
青年「……受け取ってくれるといいけど……」
翌日、青年はいつもより早く目が覚めた。まだ朝食まで時間はあるので、今のうちに大本営に向かう際の荷物をもう一度確認しておくことにする。青年が確認し終えるとちょうどいい時間になっており、朝食を取りに食堂へと出かけた。
蒼龍「青年君、今日はがんばってね!」
飛龍「応援してるよ~」
青年「あ、あはは……」
蒼龍と飛龍に声をかけられ、恥ずかしいのやら少し勇気が出てきたのやらわからなくなってしまう。ここで、青年がちらりと瑞鶴の方を見ると瑞鶴も瑞鶴でかなりそわそわとしているのがわかった。
それから青年が、朝食を食べ終わり、歯を磨いて服に着替えて髪型を整える。普段、ここまで気を遣ったことはなかったが、やはり青年の中では瑞鶴は特別な存在になりつつあるらしい。青年は、鏡を何度も見直し、おかしなところがないかを確認すると荷物を持って待ち合わせの場所へと向かう。もちろん、しっかりと今日渡すプレゼントも持って……。
青年「……」
約束の時間の大体5分前、青年は瑞鶴が来ないことに若干の不安を感じ始めた。頭の中で今日はどういった会話をすればいいのか、果たして本当に蒼龍と飛龍が特訓してくれた成果はでるのかどうかで頭がいっぱいだった。
青年「……」
瑞鶴「ごめーん!! 待った?」
青年は瑞鶴の息を切らしながら走ってくる声が聞こえたので、振り返って見た。すると、青年は先ほど色々悩んでいたことが全て吹っ飛ぶくらいに瑞鶴の姿に驚くと同時に、見とれてしまった。
青年「髪……下ろしたんですね……」
瑞鶴「……その……艦娘じゃない自分を味わうにはやっぱり見た目から変えないといけないかなって……下ろしてみたんだけど……どうかな?」
当然、青年の答えは決まっていた。
青年「……似合ってますよ。……髪を下ろした瑞鶴さんも綺麗です」
瑞鶴「へっ……い、いきなり何言い出すのよ……恥ずかしいじゃない……」
褒められたことで、顔を一気に赤くする瑞鶴。青年も思わず、そんなことを言ってしまったことに気付き、照れくさそうにする。まだお出かけが始まったわけでもないのに、二人が恥ずかしそうにしている様子を翔鶴が心配そうに見ていた。
翔鶴「瑞鶴ったら大丈夫かしら……。心配だわ……」
青年「で、では行きましょう。アトラクションはそっちの方がいっぱい乗れますし……」
瑞鶴「う、うん……」
二人は並んで、鎮守府の外へ出て歩き出した。青年と瑞鶴の歩調は見事に一致している。青年はここで、蒼龍と飛龍の特訓のことを思い出した。瑞鶴の手元を見ると両手はバッグを持っていて塞がっている。とてもじゃないが、青年には「手、繋ぎましょうか」などとは言えない。
青年「……」
瑞鶴「……」
楽しいお出かけのはずだが、二人の間に沈黙が続く。気づけば青年は時折瑞鶴の顔を何度かちらちらと見ているだけだ。そして、何度か見ていると、瑞鶴もこちらを見ていてたまたま目があった。
青年「っ……」
瑞鶴「っ……」
すぐさま視線を別の場所に移す二人。傍から見れば初々しさ満点のカップルである。その二人の後を少しだけ翔鶴が離れた位置から見守っている。
青年「……ず、瑞鶴さん。え、え~っと、その……」
ここで、青年は話題を振ることにした。だが、頭の中では『手をつなぐ』という行為が離れない。
青年「……て……」
瑞鶴「て?」
青年「……天気がいいですね」
瑞鶴「う、うんっ……そうね……晴れてよかったわ……」
思わず、本来思ったことと別のセリフを言う青年。やはり、自分から「手をつなぎましょう」なんて言えるはずがない。そのまま二人は並んで歩いて行った。そして、電車に乗り、遊園地のある駅まで座って待つ。
瑞鶴「……あ、あのさ、青年」
青年「どうかしましたか?」
瑞鶴「きょ、今日……何乗る?」
青年「瑞鶴さんの好きなところでいいですよ……」
瑞鶴「絶叫マシンとか乗りたいって考えてるけど……青年、大丈夫なの?」
青年「……大丈夫ですよ」
瑞鶴「そ、そう……よかった……」
もし、ここで絶叫マシンが苦手なことを言えば瑞鶴がジェットコースターやフリーフォールと言った絶叫マシンに乗ることを躊躇してしまうかもしれないと思った青年は我慢して、瑞鶴にそう答えた。
瑞鶴は心なしか安心したような表情を浮かべている。今のところ何もできていない青年にとって、その表情を見ることができただけで、幸せだった。
瑞鶴「……じゃあ、今日はいっぱい乗りましょ……ね?」
青年「……はい。瑞鶴さんが満足するまでお付き合いしますよ……。……それに、今日の瑞鶴さんは艦娘じゃなく一人の女の子ですし……」
瑞鶴「う、うん……。ありがとね」
しばらくして、青年と瑞鶴は遊園地にたどり着いた。既に人で賑わっており、鎮守府の空気とはまるで違う感じがした。青年と瑞鶴が入り口をくぐると、瑞鶴は元気が出てきたのか、入り口近くにある大きな広場の中央に向かって走りだす。
瑞鶴「せいねーん! 早く早く~!」
青年「わかってますよ~」
うずうずしている瑞鶴は早速ジェットコースターに向けて足早に歩き出す。青年はそれについていった。
そんな二人を遠くから見守る翔鶴。
翔鶴「……心配になってここまでついてきてしまったわ……」
青葉「何やら面白いことをやってますね。翔鶴さん」
翔鶴「え?! あ、ど、どうも……」
そんな翔鶴の後ろから突如として青葉が現れた。手にはカメラを持っており、何やら撮る気満々である。翔鶴がどうしてこんなところにいるかを尋ねなくても、青葉が来た理由は誰もがお分かりだろう。
青葉「こんな、いいスクープを見逃せるはずないじゃないですか!」
翔鶴「しーっ! 気づかれちゃう……」
蒼龍「あ、青葉じゃんどうしたの?」
青葉「あら、これはニ航戦のお二人……そちらこそどうしたんですか?」
飛龍「そりゃあ、もちろん、青年の特訓の成果を見に来たのよ♪」
青葉「特訓……気になります! ぜひ、そのお話を後でお聞かせ願いたいですね~!」
こちらの四人は四人でなかなか盛り上がりそうである……。
だが、ついてきたのはその四人だけではなかった。
春雨「や、弥生ちゃん本当について行くの?」
弥生「……春雨も気になってるはず……」
春雨「そ、それはそうだけど……。で、でもせっかくの二人の休日を邪魔しちゃ悪いような……」
弥生「春雨……」
春雨「?」
弥生「バレなきゃ大丈夫」
さて、瑞鶴と青年はジェットコースターの待機列に並びながら順番を待つ。時折、聞こえてくるジェットコースターに乗ってる人たちの叫び声が大きくなればなるほど、青年は緊張してしまうのであった。
瑞鶴「青年? もしかして……怖かったりする?」
青年「え? あ、いや、そ、そそ、そんなことはないですよ……」
瑞鶴「……めちゃくちゃ震えてるけど……ほ、本当に大丈夫? 無理しなくていいからね?」
青年「あ、え……えっと……その……」
瑞鶴「……」
青年「瑞鶴さんの喜ぶ顔が見たいので……頑張ります」
瑞鶴「……な、そ、そんな理由で……まったく……。でも、嬉しい……。私なんかに合わせてくれて、ありがと……」
青年「……」
そんな二人の様子を見て、後ろの女性が「若いっていいわねぇ……」と言っているのを聞く二人。恥ずかしくなったのか少しだけ二人の距離が空いた。
それから、しばらくしてまた二人の距離が縮まる。そして、いよいよジェットコースターに乗る手前までやってきた。
青年と瑞鶴は、ジェットコースターに乗り込み、安全バーが降ろされるのを待つ。青年は、小さい声で「大丈夫、大丈夫……」と呟いている。青年の様子を見て、瑞鶴はクスリと笑った。
やがて、安全バーが降ろされ、ジェットコースターは動き出す。最初はゆったりと進んでいったが、急な坂道を上がり始めたあたりで、青年の緊張度が最高潮に達した。
青年「……え、こんなに高いんですか?」
瑞鶴「え? 青年、何も知らなかったの? このジェットコースター……ここの遊園地名物なんだけど……」
青年「……予習しておくんでした……」
瑞鶴「……そ、そう。で、でも、安心して! 私も結構怖くなってきたから!」
青年「そ、そうですか、ってもうそろそろ落ちますよね、これ――――ってえええええええええええええええええええ?!」
こうして、勢い良くジェットコースターは下へと向かって走りだした。スピードは次第に上がっていき、右に揺れたと思えばすぐに左へと揺れる。上へ向かったと思えばすぐ下へ……。青年は、ジェットコースターに揺られながら、大声を上げて怖がっていた。もちろん、それは瑞鶴も同じで瑞鶴は怖さ半分楽しさ半分と言ったような叫び声を上げている。
気づけばあっという間の乗車時間だった。二人は、ジェットコースターを降り、黙ったままアトラクションの出口へと向かう。そして、出口を抜けた後、口を揃えて言うのだった。
二人「「怖かったぁ……」」
瑞鶴「ん?」
青年「へ?」
二人「「……」」
そして、二人のセリフがまったく同じだったことに妙なおかしさを感じたようで、二人とも思わず笑い出してしまった。そんな様子を見ていた弥生と春雨はと言うと……。
春雨「二人とも、あんなに怖そうなアトラクションに乗ったのに、楽しそう……」
弥生「……」
春雨「弥生ちゃん? どうしたの?」
弥生「……ちょっとだけ……瑞鶴さんが羨ましい……」
ジェットコースターの後、二人が向かったのはジェットコースターとは違う、急流すべりである。先ほども絶叫系だったのにまたもや絶叫系なのかと青年は少したじたじとしながら瑞鶴についていく。
瑞鶴「あ、でも、カッパとかがないとダメよね?」
青年「そうですね……さすがにそのまま乗り込んで濡れてしまったら風邪をひくかもしれませんし……」
瑞鶴「風邪……ね」
青年「どうしたんですか?」
瑞鶴「うぅん、ちょっと青年が風邪ひいた時のこと思い出しちゃって……」
青年「ああ、そう言えばちょっと前にありましたね……」
瑞鶴「あの時の青年はいつもより頼りなかった感じよね~」
青年「自分でも結構気にしてるんですよ、あれ……」
そんな会話をしながら急流すべりの列に並んで進んでいく。青年はたまたまスタッフの人がカッパを配っていたのを見つけて瑞鶴の分と合わせて取り、瑞鶴に手渡した。そして、しばらく待っていると順番がやって来て青年と瑞鶴は隣通しに座る。
ところでだが、急流すべりはどちらかと言うとジェットコースターより席の幅が狭い。よって瑞鶴と青年の距離というものはほぼ至近距離、いやもうくっついてしまうくらいに隣同士に座っている。
青年「……」
瑞鶴「せ、青年、ごめん……きつくない?」
青年「え? 大丈夫ですよ……」
瑞鶴「そ、そう……」
瑞鶴がそう呟くと、急流すべりは進みだした。青年は先ほどのジェットコースターと比べたら急流すべりはまだマシな方だと思ったのが案外そうでもなかったらしく終わった後は、妙にグロッキーな気分になっていたらしい。
絶叫系のアトラクションを二つ連続で乗り終わった二人は、ベンチで少しだけ休憩していた。瑞鶴はぐっと体を伸ばし、まだまだ満足できていないことをちょっとだけアピールしている。
瑞鶴「ちょっと次は大人しいアトラクションにする?」
青年「あ、できればお願いします……」
瑞鶴「う~ん、じゃあ、やっぱり……あそこよね」
青年「あそこ?」
瑞鶴が指をさした方向にはおどろおどろしい外見の建物がそびえ立っていた。俗に言わないまでもお化け屋敷である。
瑞鶴「お化け屋敷入ったらそろそろお昼になるだろうし、ちょうどいいんじゃないかしら?」
青年「そうですね……」
瑞鶴「じゃあ、行きましょ」
青年と瑞鶴はお化け屋敷に向かって歩き出した。ちょうどその頃、蒼龍と飛龍、青葉、翔鶴もベンチに座って休んでいた。
蒼龍「いや~、青年君もなかなか頑張ってるわね」
翔鶴「あの……そろそろやめておかないと、気づかれちゃいますよ?」
青葉「何を言ってるんですか、翔鶴さん、面白くなるのはここからですよここから! 初々しいカップルがお化け屋敷に入ったらどうなるかなんて、みなさんが知りたい情報に決まってるじゃないですか!」
翔鶴「で、でも……」
飛龍「大丈夫大丈夫。私達が気になってるのは怖がる瑞鶴に対して青年がどれだけイケメンな対応ができるかどうかだから……」
それから二人は中へと入った。中に入るとかなり暗い通路があり、受付の人もキャラを作っているのか「お気をつけて」とだけ言ってから二人を中へと誘導していった。
瑞鶴「……け、結構静かなのね。もっとバーッとでるものだと思ってたわ」
青年「……」
瑞鶴「ちょ、ちょっと青年。黙らないでよ……心配じゃない」
青年は少しだけ焦る瑞鶴の姿も見てみたいと考え子どものように意地悪をしてみたくなった。
青年「……もしかして、瑞鶴さん怖いんですか?」
瑞鶴「んなっ……こ、怖くなんてないわよ……!」
青年「……では、先に行ってもらえると嬉しいかな……って」
瑞鶴「ま、まっかせなさい……」
そう言って、瑞鶴はずんずんと先に進んでいく。しかし、そこがたまたま最初の脅かしポイントだったようで、大きな音が鳴ったと思うと、ロッカーの中からお化け役の人は出てきた。
瑞鶴「いやあああああああああああ!!!」
瑞鶴の悲鳴が聞こえたのでさすがにやり過ぎたと思い、青年は怖がってブルブルと震えている瑞鶴に手を差し伸べた。
青年「……瑞鶴さん。……『僕も怖いので、一緒に行きましょう』」
瑞鶴「……ん。そうね……」
瑞鶴は青年が差し伸べた手を取り、今度は離さないように青年の手を握りしめた。そして、ゆっくりと二人で暗い通路を進んでいく。青年は、何か脅かしポイントを通過する度に、瑞鶴が手を握る力を強めるのに少しドキドキしながらも進んでいく。
一方、二人より後から入った蒼龍、飛龍、翔鶴、青葉はと言うと……。
翔鶴「う、うう……怖いです……」
蒼龍「こ、こんなの作り物だし、大丈夫よね……」
青葉「そうですね~」
飛龍「青葉よく平気だね……」
青葉「むむっ?! あそこに、何やら人形のようなものが立っていますよ!」
蒼龍「こ、怖い人形?! 嫌よ、見たくないし……」
四人の目の前に見えたのは、小さな女の子の人形らしきものだった。じっとしたままで、動く気配はない。だが、その人形らしきものの周りで蠢く影と、何かを言っている声が聞こえる。
四人は何事かと思い、近づくと―――。
春雨「や、弥生ちゃん! 怖いのはわかるけど、立ったまま気絶しないで~! 先にすすめないよぉ!」
弥生「……」
青葉「こ、これはこれは……ある意味で、お化けよりインパクトがある光景ですね……」
追跡組がそうこうしているうちに青年と瑞鶴はお化け屋敷から出てきた。二人は未だに手をつないだままで、瑞鶴は手を離そうとしなかった。青年は、瑞鶴に「もう大丈夫ですよ?」と言うと、瑞鶴は何かに気づいたようですぐさま手を離す。
瑞鶴「……」
青年「……」
瑞鶴「……え、え~っと……お腹空いたんじゃない? そこのベンチに座って食べましょ」
青年「は、はぁ……でも、お昼ごはんなんて――「作ってきたから大丈夫よ」
青年「……」
瑞鶴「だから、私が……その、作ってきたから……」
青年と瑞鶴がベンチに座ると、瑞鶴はバッグの中から木でできた弁当箱のようなものを取り出した。青年は手渡されそれを開けてみると、中にはサンドイッチがたくさんあった。
瑞鶴「その……普通のお弁当だと、冷めちゃいそうだから……サンドイッチなら、冷めても美味しいだろうし」
青年「……瑞鶴さん、いただきます」
青年はサンドイッチを一つ手に取り、口の中へと入れた。ハムときゅうりの食感が非常によく味付けも抜群によかった。
青年「……美味しいです。……鳳翔さんが作ったんですか?」
瑞鶴「し、失礼ね。私に決まってるじゃない」
青年「冗談ですよ。風邪の時におかゆを作ったのを正直に言ってくれなかったので、ちょっとした意地悪です」
瑞鶴「も、もう……」
そう言った後、瑞鶴は青年に聞こえないくらい小さな声で「そういうところがズルイのよ……」と呟いた。青年は、気付かずに、サンドイッチを食べ続ける。そして、瑞鶴がまだ食べていないことに気づいた青年は、瑞鶴に食べないのかどうかを尋ねる。
瑞鶴「え? あ、そうね……私も食べないとお腹空いちゃうし……じゃあ、食べようかしら」
青年「瑞鶴さんのサンドイッチ、美味しいですよ」
瑞鶴「だ、だからそんなに何回も言わなくてもいいって……ん……美味しいわね。自分で言うのもなんだけど」
仲良くサンドイッチを食べる二人。ちょうど二人が食べている間に追跡組の一同はお化け屋敷から出てきた。
春雨「弥生ちゃん、立ったまま気絶してそれから動かないよ……」
弥生「……」
青葉「何かいい方法はないんですかね……」
飛龍「水、かけたらいいんじゃないかしら?」
翔鶴「そ、それって……」
蒼龍「また、急流すべりに乗れって言うの?!」
青葉「それしかないんだから仕方ないじゃないですか……」
結果、みんなで急流すべりへ……。
さて、サンドイッチを食べ終わった瑞鶴と青年は、ベンチでのんびりと話し合っていた。
瑞鶴「あ、そうだ。青年、お願いがあるんだけど……」
青年「どうしたんですか?」
瑞鶴「ほら、遊園地って、あの食べ物あるじゃない……えっと長い棒状のお菓子みたいな……」
青年「チュロス……ですか?」
瑞鶴「あ、うん。多分それかな。あれ……食べてみたいんだけど……いいかしら?」
青年「え、ええ、言っていただけたら、いつでも買いますけど……。でもここら辺に売り場はなさそうですね。他のアトラクションに乗りに行くついでに探しましょう」
瑞鶴「うん」
そう言ってから二人は色々なアトラクションを楽しんだ。フリーフォールや、バイキングなどを乗り、次のアトラクションへ移動していく道でチュロスの売り場を探した。しばらく探していると、チュロス売り場を見つけたので、青年は一本購入して、瑞鶴に手渡す。
瑞鶴「さーんきゅっ! いっただきま~す」
瑞鶴はチュロスにかぶりついた。あっという間にその顔は笑顔に変わり、幸せそうな顔をしている。
青年「……」
瑞鶴「美味しいわ……こんなに甘いなんて……ん~! 最高っ!」
こういったところで食べるチュロスというのは、万が一不味かったとしても、美味しく感じてしまうものなのではないかと青年は思った。例えるなら海の家で食べる焼きそばのような感じで、遊園地で食べるチュロスは特別な感じがする。
青年は瑞鶴が食べている様子を眺めなら、一度、カバンの中を確認し、本当に渡すはずのイヤリングを持っているかどうかを見た。イヤリングはしっかりとラッピングされていて、カバンの中にある。
青年「……」
瑞鶴「青年、食べてみない? 美味しいわよ!」
青年「えっ……」
チュロスの美味しさのあまり、テンションの上がった瑞鶴は非常にマズイことを口走っている。瑞鶴の持っているチュロスを食べるということがどういう意味かはいくらトロい青年でもわかる。
青年「えっと……いいんですか?」
瑞鶴「へ? 美味しいからシェアしなきゃと思ったんだけど、青年、もしかして甘いの苦手だったりする?」
青年「あ、いえ、甘いのが苦手というわけではないんですが……瑞鶴さんが大丈夫なのかな……と」
瑞鶴「私が……? ……っ~~~!!!!!!」
意味に気づいた瑞鶴が顔を赤くする。
青年「……僕は大丈夫ですから」
瑞鶴「そ、そう……」
青年「さて、これ食べたらどうしましょうか……ん?」
瑞鶴「どうしたの?」
青年が目線をやった先には小さな男の子が一人でその場に立ち尽くしているのが見えた。青年は、男の子がこんなところで一人でいるのに違和感を覚え、近づく。
青年「どうしたの?」
男の子「お母さんとはぐれちゃったの……」
青年「そっか……じゃあ一緒にお母さんさがそっか?」
青年は優しげな笑みを浮かべながら言った。瑞鶴も事に気づいて青年に駆け寄ってきた。青年は、男の子が迷子になっているということを伝えると瑞鶴も当然のように、母親を探す手伝いをしてくれることになった。
だが、男の子からの返事は意外なものであった。
男の子「いいの……お母さん、もう僕の事嫌いなんだもん」
青年「え?」
男の子「いつもいつも怒ってばっかりだから……」
瑞鶴「……」
青年「……」
急な男の子の発言に、戸惑う二人。だが、青年は諦めることはなかった。
青年「お母さんは……君の事嫌いなんかじゃないよ」
男の子「でも……」
青年「多分、お母さんは怒ってるんじゃなくて叱ってるんじゃないかな?」
男の子「違うの? それって」
青年「そうだね。似ているようで大違いだよ。叱るって言うのは、君の為を想って、君を大事にしているって事……俺には、もう、そんな人はいなくなっちゃったけど……」
青年が少し淋しげにそう言ったのを聞いて、瑞鶴は心配そうな顔をした。だが、青年はすぐに明るい表情になり、男の子に優しくこう言った。
青年「だから、お母さんも今頃君の事すっごく心配してると思うよ? だから、一緒に探そう……」
男の子「うん……」
瑞鶴「青年……」
青年「瑞鶴さん、どうしましょうか」
瑞鶴「そうね、迷子センターとかに出向いてるかもしれないし……そっちの方に行ってみる?」
青年「そうしましょうか……行く途中でも、この子の母親がいないか探しましょう」
三人は迷子センターに向かって歩き出した。男の子は、一緒にいてくれる人ができて安心したのか笑顔が戻り、青年と瑞鶴に色々話しかけてくる。
男の子「お兄ちゃんとお姉ちゃんは、『かっぷる』なの?」
瑞鶴「んなっ?! いきなりそんなこと聞かないでよ!」
青年「ず、瑞鶴さん落ち着いてください……。俺とこの人は、そういうのじゃないよ。仲のいいお友達って感じかな……」
男の子「ふ~ん……でもお兄ちゃんとお姉ちゃんって、『らぶらぶ』に見えるよ?」
青年「そ、そうかな……」
瑞鶴「……」
男の子「……あと、お姉ちゃんのお◯ぱい小さい」
瑞鶴「何か言ったかしら?」
男の子の発言に瑞鶴の眉がぴくりと動く。このままだと瑞鶴が男の子に対して怒りをぶつけてしまいそうな勢いだ。
青年「瑞鶴さん……まだ、『小さい』ですし……」
瑞鶴「青年まで『小さい』って言うの!?」
青年「い、いや、この子が『小さい』という意味で……」
瑞鶴「え?! あ、そ、そう……」
一気に落胆する瑞鶴。青年は知らず知らずのうちに瑞鶴の心のキズをえぐってしまったような気がして申し訳なく思った。青年は瑞鶴に、元気を出すように言ってから、男の子の母親がいないかを声を出して探し始める。
青年「いませんね……」
瑞鶴「迷子センターからの放送もかかってないみたいね……う~ん……これは先に言って放送して呼び出す感じになるかな?」
青年「そうですね……今頃母親も、必死に探している……ことを願いたいですが……」
三人がしばらく歩いていると、迷子センターが見えてきた。青年が目を凝らして見ると、何やら焦っているような様子の女性と思われる人物が二人のカップルと思わしき人達に連れられ、入っていくのが見えた。
青年「もしかしたら、今のが……」
瑞鶴「急ぎましょ! 君、走れる?」
男の子「うん!」
青年は男の子の手を取り、急ぎ足で迷子センターへと駆け込んだ。瑞鶴もそれに続いて中へと入る。その大きな音に気づいたスタッフの女性と青年達より先に入った三人が驚きまじりにこちらを振り返った。
母親「……◯◯!!」
男の子「お母さん!!」
母親は男の子の名前を叫び、すぐさま抱きしめに近づいてくる母親。そんな様子を見て、青年は安心した顔を浮かべる。だが、瑞鶴は驚きの表情を隠せないでいた。それは、母親のことを連れて来たカップルも同様なのだが……。
提督「や、やあ、青年君と瑞鶴……ま、まさかこんなところで会うなんて奇遇だね」
青年「て、提督!? 提督こそどうしてここに……ってそこにいるのは……」
瑞鶴「……」
提督の隣に座っていたのは――――
瑞鶴「……加賀さん」
加賀「あら、髪を下ろしていたから気づかなかったわ、五航戦」
瑞鶴「……」
瑞鶴と加賀の間でいつもの喧嘩が勃発しそうな空気が漂い始める。だが、その空気は母親の感謝の言葉で和らげられた。四人は母親に「どういたしまして」と言うと、その親子は去って行った。
加賀「……提督。少しお花を摘みに行ってきます」
瑞鶴「あ、ごめん。青年、私も行ってくるわ」
青年「は、はぁ……」
そう言って、二人は迷子センターから出て行った。青年と提督はとりあえず、迷子センターにあるソファの上に座って休憩を始める。
提督「え、えっと、まさかのデート先がかぶるとは思わなかったよ」
青年「え、ええ……」
提督「この後の予定は?」
青年「決まってはないですが、観覧車は最後に乗ることになりそうです」
提督「……告白、するのか?」
青年「……わかりません。ですが、プレゼントは渡そうと思います。提督はもしかして……」
提督「ああ、加賀とケッコンカッコカリをすることに決めた。今日、観覧車が一番上に来た時に指輪を渡すつもりだ」
青年「そうですか……」
一方、瑞鶴と加賀は外で対峙しあっていた。二人とも互いに警戒していて、何を言い出すかわからない。だが、先に声を出したのは加賀の方であった。
加賀「……応援してるわ」
瑞鶴「……え?」
加賀「……頑張りなさい、五航戦。早く手を打たないと後々面倒なことになるわ」
瑞鶴「……」
二人の間に沈黙が生まれると加賀は先に迷子センターの中へと戻って行った。そして、提督と一緒に出てきてもう一度瑞鶴の方を見る。瑞鶴は加賀の方を見ると、迷子センターの中に入って青年の手を握った。
青年「……瑞鶴さん? どうかしましたか?」
瑞鶴「何でもないわ、早くいきましょ! まだ乗ってないのいっぱいあるし!」
青年「そ、そうですね……」
青年は瑞鶴の急なテンションの上がり方に違和感を覚えつつ、次のアトラクションへと向かって行った。
その頃、追跡組は、青年と瑞鶴を見失ってしまったので、全員で遊園地内の食堂で遅めの昼食を食べていた。全員追跡に疲れてしまったのかなかなかの量を平らげている。
蒼龍「このチキン美味しい!」
飛龍「うんまい!!」
青葉「みなさん、色気より食い気ですね……花より団子とはこのことでしょうか」
そして、いよいよ運命の時は近づいてきた。青年と瑞鶴は観覧車の列に並び始め、順番を待つ。日がちょうど落ちる頃で、おそらく一番上に上がれば最高の景色が見れるだろう。青年達が並んだところでは提督と加賀の姿はない。おそらく自分たちより早く乗ったかそれとも後からやってくるかだ。
だが、青年は今更そんなことは気にしてられなかった。プレゼントを渡す際に瑞鶴にどういった言葉をかけたらいいか考えるだけで精一杯だ。
順番が来て、観覧車に乗り込むと二人分の体重で少しだけ揺れる。そして、二人で景色を眺めながら会話を始めるのだった。
瑞鶴「ん~。今日は楽しかった~!」
青年「楽しんでくれてよかったです……」
瑞鶴「青年、ありがとね……。本当にいい思い出になったわ」
青年「そうですか……。だったら僕も嬉しいです」
瑞鶴「それにしてもジェットコースターとか絶叫マシンに乗ってる時の青年の怖がってる姿はみんなに見せたいくらいに面白かったわ」
青年「ま、まだそれを言うんですか……」
瑞鶴「面白いものは面白いから仕方ないじゃない。あの情けない顔と言ったらもうね……」
青年「はぁ……」
瑞鶴「でも……迷子のあの男の子に優しい対応をしている時の青年はすごく頼もしかったわ」
青年「……」
瑞鶴「……びっくりした。私、あの男の子に何かできるかどうか不安だった。青年が一生懸命になってる姿は……その……かっこよかったわ。珍しくだけど……」
青年「瑞鶴さん……」
ちょうど、その辺りで観覧車は一番上に差し掛かろうとしていた。青年はカバンの中に手を入れ、綺麗に包装されたイヤリングの入っている箱を手で握る。
青年「あの、瑞鶴さん……」
瑞鶴「どしたの? あ! 見てよ! 景色がすっごく綺麗よ!」
瑞鶴は先ほどの発言が恥ずかしくなったのか外の方を見るように青年を促し、ごまかす。その頬はもう、夕日に照らされて赤くなっているのかすらわからない。
青年「瑞鶴さん」
瑞鶴「何よ、何回も呼ばなくても……」
青年「あの、話があるんです」
瑞鶴「え?」
そして、青年はこれまで内に秘めてきた想いを瑞鶴に打ち明けた。
青年「僕は、鎮守府に来て、色々なことを経験させてもらいました。ただの清掃員だけにとどまらず、美化週間での抜き打ちチェック役に選ばれたり、大宴会で一発芸を披露したり、催し物をしたり……挙句は深海棲艦にさらわれたり」
瑞鶴「……」
青年「ですが、これらの思い出は全て、あの日の仲良くなりたいという宣言をしたから成り立っているんだと思います……色々策略を考えてくれたのは陸奥さんと提督ですけど……、僕にとっては瑞鶴さんがあの時、応援してくれたこともかなり大きいんです」
瑞鶴「……」
青年「すれ違いをしてしまったこともありましたが……瑞鶴さんには本当にお世話になってると思います。おそらく、瑞鶴さんがいなければ……今頃……だから……瑞鶴さん、せめて今回だけは、お礼をさせてください」
そう言って、青年は瑞鶴にプレゼントを手渡した。瑞鶴はそれを手に持って何度もプレゼントの箱と青年の顔を見たりしている。
瑞鶴「えっと……開けていいかしら?」
青年「はい」
瑞鶴はプレゼントの箱を開けて中身を見て、イヤリングを手に持ってみる。そして、小さな声で「綺麗……」と呟いた。
青年「瑞鶴さん……本当に今までありがとうございます」
瑞鶴「……うん。どういたしまして。あ、そうだ……青年、夜景が綺麗なスポットがあるの、遊園地出たら行ってみない?」
青年「え、ええ……大丈夫ですけど」
瑞鶴「うん、じゃあ、そうしましょ」
結局、青年は瑞鶴に告白らしいものはしなかった。だが、青年はプレゼントを渡せただけで満足だと思い、今回のお出かけはこれで終わると思われた。だが、問題が生じたのは遊園地を出てからだった……。
瑞鶴「あれ……おかしいな。こっちだったはずなんだけど……」
青年「……」
瑞鶴「ほ、本当にこっちだったんだけど……」
そう、二人はいわゆる夜の大人の街に迷い込んでしまったのだ。辺りを見回すと、ホテルとは書いているが、明らかに宿泊よりも別の用途で使われるホテルであるのは間違いなかった。ネオンの色が二人の不安を煽る。
男「さ、入ろう入ろう」
女「え~。もう、しょうがないなぁ~」
青年と瑞鶴よりも大人なカップルがホテルの中へと入っていく。
青年「……」
瑞鶴「……」
青年「……あの、瑞鶴さん。夜景は諦めて今日は、帰りませんか?」
瑞鶴「……」
青年「……瑞鶴さん?」
瑞鶴「……あのさ。青年」
青年「はい」
瑞鶴「……。青年ってさ……その……え、『えっちなこと』に興味とかはないの?」
青年「……」
いきなり何を言い出したかと思えば瑞鶴はとんでもないことを言い出した。青年は一瞬視界が曲がるような思いで瑞鶴の両肩を両手で掴む。
青年「……瑞鶴さん。どうしたんですか……おかしいですよ」
瑞鶴「だ、だって……青年だって男の子だし……」
青年「……」
確かに、青年にだってそう言った欲望がないとは言い切れない。だが、こうした質問を鎮守府内で聞く場合とこのような場所で聞くのは違った意味を帯びることもある。
青年は瑞鶴の異変に気づき、さらには瑞鶴の肩が震えているのがわかった。瑞鶴もおそらくこれは本心で言っているわけではないのだ。青年は何か原因があると思い、瑞鶴と目線の高さを合わせる。
青年「瑞鶴さん、落ち着いてください……。何かあったんですか?」
瑞鶴「……」
青年「瑞鶴さん……」
瑞鶴「……青年」
青年「はい」
瑞鶴「もしもの話だけど、もし、私と青年がカップルだったとして……こういったところに来たら……青年は私を『どうしたい』と思う?」
青年「……わかりません。その時にならないと……」
瑞鶴「……」
青年「瑞鶴さん……本当に何かあったんですか?」
瑞鶴「今日、加賀さんに言われたの……『早く手を打たないと面倒なことになる』って……」
青年「加賀さんに?」
瑞鶴「……」
それから青年と瑞鶴の間には空気が非常に重い沈黙が走った。道行くカップルは二人の様子を見て、何かあったのではないかと口々に話し合っている。青年は、周りの目も気にしだし、一刻も早くこの場から立ち去りたかったが、肝心の瑞鶴が動こうとしなかった。
青年「瑞鶴さん、とりあえず、どこかでゆっくり話し合える場所に……」
瑞鶴「……私だってわからないわよ……」
青年「え?」
瑞鶴「私だってどうすればいいかわからない……自分が青年とどうなりたいのかなんて……」
瑞鶴が少し悲しそうにつぶやく。瑞鶴の顔を見ると今にも泣き出しそうな顔になっていた。青年は慌てて、静かに話し合える場所を探そうとしたがなかった。本当に、『仕方なく』青年は、近くの『ホテル』に瑞鶴と入る。
青年はとりあえず、瑞鶴をベッドの上に座らせ、『ホテル』に備えられているお茶を入れ、瑞鶴に手渡した。瑞鶴はお茶を少しだけ飲んでから、お茶の入った紙コップをベッド近くのテーブルに置く。
青年「瑞鶴さん、今日はゆっくり話し合いましょう……」
瑞鶴「うん……」
青年「えっと、何があったかは、聞かないほうがいいですか?」
瑞鶴「うぅん、ちゃんと……自分の口から言うわ」
青年「……」
瑞鶴「……」
青年「あ、瑞鶴さんが落ち着いてからでいいですよ。僕、ゆっくり待っておきますので……」
瑞鶴「うん……」
何かを言おうとしたが、どこか躊躇いがある瑞鶴に対して青年は優しい言葉をかける。どうでもいいが、青年は先ほどお茶の葉っぱを探している時に、普段は使うことのない『ゴム』を見つけてしまって、気が気でなかった。そのため、青年も少し落ち着く時間がほしかったのだ。
青年「……」
瑞鶴「……加賀さんに言われた言葉、さっき言ったわよね?」
青年「ええ……」
瑞鶴「……青年はさ……私のこと、どう思ってるの?」
青年「……えっと……いい人だと思います……けど……」
瑞鶴「そう……。……あのさ、こんなところで言うのは、絶対お門違いなんだけど……私、青年のことが……『好き』」
青年「……」
瑞鶴「……」
青年「……そう、なんですか……」
青年は、そんな言葉しか言えない自分を憎らしく思った。本来ならば自分も瑞鶴のことが好きになりつつ、いや、好きに等しい想いを持っているのにもかかわらず、自分から想いを口にしてしまえば、何かが壊れてしまいそうな気がして、怖かった。
青年「……」
瑞鶴「……加賀さんが言ったのは、たぶん、私以外にも青年に想いを寄せてる子が何人かいるって言いたかったんだと思う……」
青年「……そう……ですか」
瑞鶴「うん……。私ったら、その言葉を聞いて焦っちゃって……、自分でも意味がわからないことを言ってた……ごめんなさい」
青年「い、いえ……気にしてないですし、大丈夫ですよ」
瑞鶴「……」
青年「……」
瑞鶴「……ねぇ、青年は今朝私が満足するまで付き合ってくれるって言ったわよね……?」
青年「……え、えぇ……」
瑞鶴「艦娘じゃなくて、一人の女の子として扱ってくれるのよね……?」
青年「……はい」
瑞鶴「……じゃあさ……わがままなこと言うけど―――
瑞鶴「―――私のことを……今日だけでもいいから愛して……」
青年「っ……」
瑞鶴「……」
瑞鶴は青年のことを抱きしめた。その強さはすぐにでも引き離すことができるほど弱々しいものだった。瑞鶴はおそらく、青年が自分のことを拒絶することも考えており、青年が望まないのであれば、きっぱり諦めるつもりでいるのだろう。
青年「……」
瑞鶴「……」
青年は、迷った挙句、ついに瑞鶴をベッドの上に押し倒した。瑞鶴は何も抵抗をしようとしない。
青年「……瑞鶴さん……」
瑞鶴「……」
青年「僕も瑞鶴さんのことが好きです……」
瑞鶴「……ありがとう」
青年「ですが……もっと自分を大切にしてください……。その……こういうことは、えっと……お互いにちゃんと信頼できたときにやると言いますか……」
瑞鶴「……」
青年「……」
瑞鶴「……私は、気にしないから。ね?」
青年「……」
瑞鶴「……と、というより、青年は私のこと押し倒したんだから……ちょっとその気にさせといて今更引くなんてナシだからね」
青年「……本当に、大丈夫ですか?」
瑞鶴「……うん」
青年「……わかりました」
※ここから先は18禁なシーンになります。飛ばしたい人は飛ばしてください……w
そう言って、青年は身体を瑞鶴と密着させる。互いの顔を見つめ合位、そして、次の瞬間、青年は顔を近づけ、瑞鶴の唇にキスをした。春雨との事故でしたキスを数えれば二回目にはなるが、青年にとっては本当に好きな人と初めてキスをしたことになる。
青年「……」
瑞鶴「……」
青年は一度唇を離し、瑞鶴の顔をもう一度見た。その顔は、赤く染まっていたが、瑞鶴は微笑んで青年のことを見つめている。青年はもう一度瑞鶴にキスをする。今度は、長いキスだった。青年がどこかで得た知識である『舌を入れる』という動作を行うと、瑞鶴もそれに応えるようにして舌を絡め合わせる。青年の頭はたちまち真っ白になりそうになったが、それでも理性を抑えた。
二人にとって初めての大人のキスは、長かった。どれだけそうしていただろうか。青年が一度舌を引っ込めれば今後は瑞鶴がしきりに青年の口の中へと舌を入れようとする。まだキスしかしていないのにもかかわらず、二人の理性は飛んでしまいそうになるほどだった。
やがて、青年が唇を離すと、瑞鶴は少し残念そうな顔をした。二人の顔には少し汗が浮かんでいる。青年は、これ以上のことをすれば、自分のことを抑えることは到底無理だとわかった。
瑞鶴「青年……もう一回……」
青年「……はい」
だが、瑞鶴は青年のことを求めてくる。二人はもう一度だけキスをして、青年は瑞鶴の頭を撫でる。二人は一度起き上がり、ベッドの上へと座り直す。瑞鶴は、青年の胸に自分の背中を密着させた。本人曰く、「あまり顔を見られたくない」とのことだった。
青年「……さ、触りますよ?」
瑞鶴「きょ、許可なんていちいちとらなくても……あ、いや、急に触られたらびっくりしちゃうけど……」
青年は、両腕を瑞鶴の前へと持っていった。そして、おそるおそる、瑞鶴の胸を後ろから触ってみた。服ごしにもそれなりに柔らかな感触が伝わってくる。瑞鶴は、「んっ……」と甘い声を出してから身体を強ばらせた。やはり、瑞鶴にもまだ緊張が残っている。青年も緊張はしているのだからお互い様なのだが……。
青年は、今度は服の下から手を入れ、瑞鶴の胸を触る。先ほどよりも感触が、心地よいものに感じられた。青年が触るたびに、瑞鶴から何とも色っぽい声が出る。青年はその声を聞く度に、自分の中での理性が崩壊していくのを感じていながらも、構わず愛撫を続けた。次第に青年もすっかりその気になってしまったみたいで、気づけば瑞鶴の首を舐めながら、胸と瑞鶴の秘部を愛撫していた。瑞鶴は先ほどよりも大きな声で、声を出していた。
瑞鶴「んっ……青…っ年!だめ…っだ…!ってぇ……」
青年「気にしないんじゃなかったんじゃないんですか?」
瑞鶴「そ、そうはいっ……たけど……。い、いきなり、こんなのっ……!」
青年「……」
顔はハッキリと見えないが、瑞鶴が今とても、淫らな表情になっているのは声を聞けばわかる。青年は少しだけ、瑞鶴の顔が見えないというこの状況にある一種の興奮を覚えた。瑞鶴が静止するように呼びかけるが青年はあえて気づかぬフリをして、愛撫を続ける。気づけば、瑞鶴の秘部は甘い蜜でグショグショになっていた。青年の指をもすんなり受け入れるほどに蜜が溢れている。青年は、少し暴走してしまい、指をさらに一本増やして瑞鶴の中へと指を侵入させた。瑞鶴がたまらず大声を上げる。
瑞鶴「はぁっ……はぁっ……青年の……意地悪……」
青年「すいません……ちょっと、やりすぎました」
二本の指を、抜くと瑞鶴は完全に力が抜けたのか、かなりぐったりとしていた。だが、瑞鶴はそのぐったりとしたまま、一度ベッドから降り、しゃがんで、手を青年の下腹部へと持ってきた。顔も青年の下腹部に近い位置にある。
瑞鶴「……」
青年「瑞鶴さん? えっと……無理なさらない方が……」
瑞鶴「……やられっぱなしは嫌よ」
青年「そ、そうですか……」
瑞鶴は、強気な態度ではあったが、たどたどしく青年のズボンをカチャカチャといじり、脱がした。だが、まだ下腹部のモノは姿を見せない。瑞鶴はごくりと唾を飲み込み、覚悟を決めようとする。
瑞鶴「……え、えっと……あ、いや……」
青年「……」
瑞鶴「……」
しばらくして、青年は瑞鶴に脱がされてしまった。瑞鶴は初めて見たそれに、戸惑いを隠せず、直視できずに視線をそらしている。
瑞鶴「……ぐ、グロテスク……」
青年「ま、まあ、そうですけど……」
瑞鶴「……さ、さっきも言ったけど、やられっぱなしは嫌だし……うん」
そう言って、瑞鶴は指をモノへと絡ませた。瑞鶴の手の温度が直に伝わってきて、少しもどかしかった。瑞鶴はそのまま、指を動かして、青年のモノを刺激する。だが、初めて行うその行為は力があまり伴っていなかった。
青年「……」
瑞鶴「う、うそ、き、気持よくないの?」
青年「へ!? あ、いや……その……握る力が……」
瑞鶴「え? もっと握ってもいいの?」
青年「……ま、まぁ…」
瑞鶴「……こ、このくらい?」
そう言って、少しだけ握る力を少し強める瑞鶴。だが、青年にとってはまだ弱いくらいだった。青年はもう少し強く握っても大丈夫だと促すが、瑞鶴は心配そうにこちらを上目づかいで見てくる。
瑞鶴「い、痛くないの?」
青年「……だ、大丈夫です……」
瑞鶴「じゃあ、もうちょっと強めるわね……」
青年「あ、そのくらいで……」
瑞鶴「……そ、そう……」
瑞鶴は、それから黙って、青年のモノを刺激し始めた。やっとそれなりの気持よさを感じ始める青年。だが、まだ気持いいとまではいかなかった。そのためにはこの先の行為が必要なのだが、今の瑞鶴にできるのかどうかが……
瑞鶴「……こ、これ、確か、こうするのよね?」
瑞鶴は、舌で青年のモノを刺激し始めた。急なことに青年は驚きの表情を隠せないでいる。そもそも、戦いの日々に身を投じている瑞鶴が一体どこでこのような情報を手に入れているのかも疑問に思い浮かべたが、青年はここまで来ると、そんなことはどうでもよくなってしまった。完全に瑞鶴に身を預けるようにして、モノを瑞鶴に刺激されるがままにしていた。
瑞鶴「……んっ」
いよいよ、瑞鶴も慣れてきたのか口に咥えて刺激を始める。青年は「うっ……」とたまらず声を上げてしまった。それに気づいた瑞鶴は咥えたまま、こちらを上目づかいで見ながら、顔を前後に動かして青年が気持よくなるように頑張った。
青年「っ……くっ……」
瑞鶴「ぷはっ……どう? 気持いいでしょ?」
青年「あ、ま、まぁ……」
瑞鶴「……」
すると、瑞鶴は先ほどよりも激しく青年のモノを口と手で刺激し始めた。そろそろ動きに慣れはじめたせいで、青年のモノにはかつてない快感が訪れる。青年は必死に耐えるが、すでに限界を迎えつつあった。それでも瑞鶴は止まろうとしないで、青年のモノを刺激する。
青年「くっ……ず、瑞鶴さん……っ!」
瑞鶴「ぷはっ……え?!」
瑞鶴が勢いよく動かしたせいで、青年のモノが口から出た。するとその瞬間、青年はタイミングよく果ててしまった。瑞鶴の顔が青年の淫らな液体によって汚される。瑞鶴は驚きのあまり、その場にへたり込んでしまった。
瑞鶴「……こ、これって……」
青年「……す、すいません……」
瑞鶴「……すごいのね……でも、それでも収まらないって、青年も変態と言うか……」
青年「……」
二人は互いに見つめ合った。そして、もう一度キスをして、青年はへたり込んでいる瑞鶴の身体をベッドの上へと寝かせる。瑞鶴は、服を全て脱いだ後、股を開いた。青年のものを受け入れる準備ができたようだ。青年も、後が引けなくなり、服を脱いだ後、モノを瑞鶴の秘部へとあてがう。ヌルッとした感触、そして、少し動かすと、青年のモノは中の入り口から入っていく。
瑞鶴「んっ……ぜ、全部入った?」
青年「まだ、先だけです……」
瑞鶴「き、気にしないでいいからね……いっそのこと、思い切ってやってくれても……」
青年「……」
青年は、中へとゆっくり、ゆっくり侵入させていく。やがて、最深部まで到達した。もちろん、接合部からは瑞鶴が大人にあった証が流れ出ていた。青年はそれを見て、遠慮して動かないままじっとしている。瑞鶴もやはり痛みによって、先ほどからは嗚咽か、何とも言えない声を上げている。
青年「大丈夫ですか?」
瑞鶴「だ、だいじょうぶ……う、動いていいから……」
青年「……!」
そして、今更になって青年は『ゴム』をつけることを忘れていることに気づく。青年は顔を別の方向に向けたが、その瞬間瑞鶴の腕が青年の首に巻かれ、そのまま引き寄せられる。そして、二人はつながったまま、また大人のキスをした。青年は、そのまま快楽に身を任せるために、慣れない腰を動かす。キスをしながらでも、瑞鶴は小さな声で喘いだ。それからの青年と瑞鶴は本能のままに快楽を求めた。様々な体位で、青年は瑞鶴のことを責める。しかし、時には瑞鶴が青年の上に乗ってから青年のモノを刺激することもあった。
熱い熱い夜だった。
瑞鶴の喘ぎが、静かな二人きりの部屋で響く。それと同時に、ベッドが軋む音も、いやらしい水音も鳴るが、青年にとってはどうでもよかった。今は、好きな人とつながることができている。ただ、それだけに何よりもの嬉しさを覚えていた。
青年「瑞鶴さん……!!」
青年は瑞鶴の腰をもって、ありったけの想いをぶつけるように腰の動きを激しくしていった。瑞鶴も、痛みと快楽に身を任せながら先ほどよりも大きな声を出した。
青年と瑞鶴の快楽が最高潮に達した時、青年は、瑞鶴の中からモノを抜いて、そのまま果てる。瑞鶴の身体がまた、汚された。瑞鶴は、息を切らしながら青年の方をぼんやりと見ている。青年は、とりあえず、深呼吸をして、ホテルにあったティッシュを手にとってから汚れた瑞鶴の顔と身体を拭いてあげた。
瑞鶴「……ごめんなさい」
青年「……」
ふと瑞鶴は弱々しくそう呟いた。
青年「どうして謝るんですか?」
瑞鶴「……こんなわがまま言っちゃったから……青年に迷惑かかっちゃった……」
青年「瑞鶴さん、今更謝らないでください……僕はこれで幸せですから」
瑞鶴「……」
それでも何とも言えない表情を浮かべていた瑞鶴。その瑞鶴に対し、青年は最後にもう一度だけキスをした。瑞鶴もそれを受け入れて、二人でベッドの上に横になる。そして、そのまま一夜を二人きりで過ごした。
―――――
次の日、青年が朝目覚めると瑞鶴はすでに起きていた。そして、髪型はいつものツインテールに戻っており、青年が目覚めるのを確認すると、嬉しそうに微笑む。
青年「おはようございます……」
瑞鶴「おはよう。とりあえず、早くここ出て、鎮守府に戻りましょ」
青年「そうですね……」
―――――
二人が鎮守府に戻ると、いつもの勤務が始まる時間になっていた。二人が戻ってきたことを確認した青葉がすぐさま二人に詰め寄る。
青葉「お二人とも、まさか昨日は……」
青年「何もなかったですよね? 瑞鶴さん」
瑞鶴「そうね」
青年「……何か言いたいことがあるんですか? 青葉さん」
青葉「あ、いえ……何も」
二人のよくわからないオーラに青葉もたじろいでしまい、そのまま一緒に歩いて行く二人を見送った。すると、青葉はため息を一つついた。
青葉「……あの二人、大人になったんですね」
青年「……」
あの後、瑞鶴と別れ青年は港に立ち尽くしていた。どうやら昨日の夜に瑞鶴とつながったことが信じられなく思っているようだ。青年は、何度もため息をついている。嬉しいのは嬉しいのだが、何とも言えない気分になっている。
そして、青年が考えなければならないことは、明日の大本営の出発に際して、誰を付き添いに選ぶかであった。今のままだったら瑞鶴を選ぶことは間違いないのだが、青年はそれなりに冷静に考えていた。万が一ホテルなんかで瑞鶴が自分のことを求めてきた場合、今度はそれに伴う代償がおそらく大きいのは目に見えた。昨日泊まったホテルとは、違う意味のホテルなのだから……。
青年「……どうしよう」
ゆー「あ、青年さん、おかえりなさい」
青年「ん? ゆー。何か久しぶりな感じがするな。ただいま」
ゆー「……青年さん、ちょっと雰囲気が変わった?」
青年「え? そ、そんなことはないよ」
ゆー「そう……」
まるゆ「ゆーちゃん、こんなところにいたんだ! そろそろ演習の時間だけど……あ、青年さん、おかえりなさい」
青年「……ゆー、すっかり他の子と仲良くなったんだな」
ゆー「うん……。青年さんのおかげ」
ゆーはそう言って、ペコリと青年にお辞儀をした。まるゆは『青年さんのおかげ』と言う言葉の意味があまりわからず首を傾げて見せた。まるゆは、実は海軍工廠の出身ではない潜水艦で、他の潜水艦の子たちとはかなり異質な空気がある。だが、服装だけは立派な潜水艦の艦娘らしい服装である。
まるゆ「そう言えば、昨日青年さんは、瑞鶴さんとお出かけだったんですよね? どうでした?」
青年「え、何でまるゆが知ってるの?」
ゆー「青年さん、みんな知ってるよ。青葉さんが嬉しそうに新聞記事を配ってた……」
青年「あー。やっぱりか……」
ゆー「……できれば、ゆーも今度遊園地に連れて行ってほしい」
青年「時間があればね……。明日からまた忙しくなっちゃうから……」
まるゆ「そ、そういえば大本営に行くんですよね? 大変そうですが、頑張ってください!」
青年「うん、頑張るよ。ありがとう」
青年は少し先ほどの妙な気分から立ち直ることに成功した。そして、ふと、ゆーを見た瞬間にあることに気づいた。
青年「……あれ? ゆー、少しだけ『日に焼けてきた』?」
ゆー「え?」
まるゆ「ゆーちゃん、ちょっとだけ日に焼けてきたよね。自分では気づいてないみたいだけど……」
ゆー「そうなの? ……後で鏡で見てみる」
青年「うん。気になるんだったら日焼け止めとか塗っておいたほうがいいよ。あまり焼き過ぎるとよくないみたいだし……」
ゆー「わかった。青年さん、Danke」
まるゆ「……ってわわわ?! もうこんな時間!? ゆーちゃん、そろそろ行かないとダメだよ! で、では青年さんこれにて失礼します!」
青年「あ、うん。またね」
青年は二人を見送った。青年は先ほどの会話である疑問を思い浮かんだ。そもそも、ゆーは潜水艦なのであるから日に当たるのは他の艦娘達よりも少ないはずなのにどうして日焼けしてきているのか……と。体質なのかもしれないが、青年は少しだけ違和感を覚えていたのであった。
そんな疑問を浮かべたまま青年は瑞鶴に明日からの大本営への付き添いを頼みに行った。昨日の夜のことを思い出すことがあったが、翔鶴が出てきた場合の気まずさはとんでもないことになりそうなので心を落ち着かせて対応しようとする。
翔鶴「あら、青年さん、どうかしましたか?」
青年「あ、翔鶴さん……実は、明日から僕、大本営に行くんですけど、提督から付き添いの艦娘を一人連れてくるように言われてまして……」
翔鶴「あらあら。ということは、瑞鶴ですか?」
青年「……ま、まぁ……」
翔鶴「……昨日はどうでしたか?」
青年「へ?! あ、いや……楽しかったです……」
翔鶴「そうですか……。よかったです。その……瑞鶴なんですが、どうやら『風邪』を引いてしまったみたいで……」
青年「……え」
瑞鶴「ん? あ、せーねん……何か風邪引いちゃったみたい……」
中から出てきた瑞鶴は、見るからにして顔色が悪かった。おそらく、昨日の一件のせいで、身体が冷えてしまったのだろう。青年はさすがに風邪の瑞鶴を連れて行くわけにはいかないと思い、ここは素直にひくことにした。
青年が付き添いの艦娘を誰にしようかと迷った挙句、提督に相談しに行くことにした。
提督「ん? そうだな……誰にするべきか……」
青年「……」
二人で悩んでいると、執務室の扉が開いた。そこには色々な書類を持った大井が立っている。
大井「失礼します。資材についての報告が……どうしたんですか?」
提督「大井、少しだけ頼みたいことがあるんだが―――
提督の説明を大井が聞く。大井はその説明を聞く度に何度も、嫌そうな顔をしていたが、提督の『帰ってきたら北上と二人だけの休日』ということを条件に出した途端に了承してくれた。
次の日、青年は朝一番に目が覚めた。そして、顔を洗ってから服を着替え、荷物を持って鎮守府の入り口へと向かう。青年がたどり着くと、そこには提督と加賀、大井が既に待機していた。
提督「青年くん、おはよう」
青年「おはようございます。遅れてしまい、申し訳ありません」
加賀「まだ集合時間の5分前よ。遅れてないわ」
青年「そ、そうですか……それにしても大井さん、昨日のことだったのに、すぐ準備できるなんてすごいですね?」
大井「まぁ、慣れてますので……」
提督「さて、朝ごはんを食べずに出発することになるが、青年君、大丈夫か?」
青年「え? あ、そうですね……」
そう言って、どうしようか迷う青年。提督の話によると、かなり時間がかかるらしく、途中で昼ごはんはみんなで食べる予定らしい。だが、朝ごはんになるものが何一つないというのはなかなかキツイだろう。
悩んでいると、青年の後ろが何かでツンツンと突かれた。振り返ってみると、弥生が立っている。
青年「あ、おはよう弥生……どうしたの?」
弥生「青年さん……朝ごはんがないということですので……弥生がおにぎりを握ってみました。どうぞ……あ、司令官達にもあります」
そう言って、おにぎりの入った小さな箱を青年以外のみんなにも手渡す弥生。どこで朝ごはんがないという情報を得たのかは非常に謎であるし、何よりもタイミングが良すぎる。
弥生「……嫌でしたか?」
青年「あ、いや。弥生、ありがとう! 後でちゃんと食べさせてもらうよ!」
加賀「……」
提督「おや、もう車が来たみたいだ。さぁ、青年君、そろそろ行くぞ」
青年「あ、はい!」
そう言って、弥生にもう一度だけお礼を言ってから車へと歩き出す青年。見ると、明らかに高級そうなリムジンが止まっていた。
青年「え、こんなのに乗るんですか?」
提督「嫌か?」
青年「そもそも大きな移動にこれ、使えるんですか……」
提督「なぁに、今回は特別だ。何しろ、青年君は今回、重要な参考人として呼ばれているんだからな……」
提督の言葉を聞いて荷物を運転手の人に預け、そして車へと乗り込む。後から大井、加賀も乗り込んできて提督は最後に乗ってきた。四人を乗せた車が走りだした。弥生はそれを見送った後、ため息をひとつつく。
弥生「……弥生に声、かけてほしかったな……」
乗車してしばらく走った後、提督から朝ごはんをいただこうとの提案があった。それぞれおにぎりの入った箱を開けて、食べ始める。弥生の作ったおにぎりはサイズもあまり大きくなく食べやすかった。これが弥生の小さな手のひらで作られたおにぎりであることを思うと、青年は何となく微笑ましい気持ちになった。
加賀「なかなか美味しいわね」
大井「具材もしっかりしているし……」
提督「本当だな……。誰か弥生にご飯の作り方でも教えているのか? ……にしても青年君、弥生にはなかなか好かれていそうだな」
青年「えぇ!? そうなんですか?」
大井「確か、以前の休日の時に一緒に遊びに行ったほどだそうですね……」
青年「あ、ま、まぁそうですけど……」
大井「で、それでロリコン疑惑が出たと……」
青年「まったく……あの情報には結構うんざりしているんですからね……」
大井「それにしても……提督……加賀さんとケッコンカッコカリなさったんですね」
提督「え?! あ、ま、まあな……」
加賀「……」
青年がふと加賀の手を見ると、左手の薬指にケッコンの証である指輪がはめてあった。さすがに加賀も恥ずかしかったのか少しだけ顔を赤くする。提督にいたってはかなり恥ずかしがっている。
青年「……おめでとうございます、提督」
提督「ま、まあこのことは大本営から帰って来た時にみんなの前で発表する予定だったんだが……大井には知られてしまったな」
大井「大丈夫ですよ。私は提督がケッコンカッコカリしたところで、何の問題もありません。だって、私は北上さん一筋ですから……ふふふ」
青年「大井さん、少し目が怖いです……」
そんなこんなで長い車の旅は続いて行った……。
そして―――
青年「……ここが泊まるホテルですか?」
提督「ああ」
大井「……」
加賀「……」
青年「何て言うか……デカイですね」
提督「まあな。向こうからもそれなりの待遇をしてくれているみたいだ。さあ、ホテルに入って荷物だけまずは部屋に置いてしまおう。置いてからは一度元帥にご挨拶だ」
青年「は、はい……」
それから四人がホテル内へと入ると、二人組の先客がいた。服装は提督とまったく同じである。
青年「え、提督さん、あれって……」
提督「ん? ……あ、あれは……松崎大将か」
大将「ん? ああ、何だお前か。久しぶりだな」
提督「呉はどうですか?」
大将「んー。ちょっと『どこぞのパイロット』がドイツへ行ってしまったせいで色々騒がしくなっててな……」
提督「ああ、そう言えばそんな話を聞いてましたね……こちらは噂だけしか聞いていませんが」
大将「まぁ、そこは上が判断することだから仕方ないな……。ところで、そっちにいるのが件の清掃員の青年か?」
提督「ええ。青年君、挨拶を」
青年「は、はい! はじめまして……」
大将「はじめまして。話は色々聞いてるよ……ところでだな……お前、元帥の秘書艦が加賀なんだから加賀でかぶせるのはマズイって知ってるだろ……」
提督「え?! あ、忘れてた……」
大将「色々変わってないな……訓練兵時代から……」
提督「……ど、どうすればいいでしょうか」
大将「まあ、今回は各地から提督が集まるから多少秘書艦が被ったところで問題はないだろう……ほら、瑞鶴、挨拶をしろ」
瑞鶴「はいはい……」
青年「……」
瑞鶴「え? 私の顔に何かついてる?」
青年「あ、いえ……別に」
大井「青年さん、向こうの瑞鶴さんはあなたのことは知らないのは当たり前ですから、自然に接するのが一番ですよ」
突如として現れた瑞鶴に青年が驚いてしまったが、大井がこっそりと耳打ちフォローを入れてくれた。青年は呉の瑞鶴に挨拶をし、向こうも青年に挨拶をした。
大将「どんな話を聞けるか楽しみだが……。それよりも今度青年君をうちの鎮守府に出張させてやってくれないか? 妙に散らかっているんだ」
提督「松崎大将の頼みなら断れないですが……青年君、どうだ?」
大将「給料ははずむぞ」
青年「あ、それなら……ぜひとも一度、伺わせていただきたいです」
大将「そうか。楽しみにしてるぞ。じゃあ、また会おう。瑞鶴、行くぞ……とと、一つだけ確認させてもらっていいか?」
提督「?」
大将「何号室を借りるつもりだ?」
提督「えっと……大井と青年君は『401号室』だったな?」
大井「確か、先ほど聞いた説明ではそうでしたけど……」
大将「……そうか。青年君、くれぐれも気をつけろよ」
青年「?」
そして、青年はこの数分後、松崎大将の警告の意味を知ることになる……。
青年「じゃあ、大井さん入りましょうか」
大井「そうですね」
提督「私と加賀は君たちの隣の部屋だから何かあればいつでも言うんだぞ」
青年「はい、ありがとうございます」
そう言ってから青年と大井は鍵を開けて部屋の中へと入った。青年が見たこともないくらい豪華な部屋で、広さも申し分ない。しかし、二人の目に見えてきたものが一番の問題だった。
大井はすぐさま、隣の部屋へと向かっていった。青年はこのままではマズイと思い、大井を追っていく。隣の部屋に入ると、大井が提督の胸ぐらを掴んでいた。
提督「お、大井!! すまなかった! 許せ!」
大井「なんで、『ダブルベッド』なんですか! 私が北上さん以外の人と、ましてや男の人と寝るなんてありえないでしょ!」
青年「お、大井さん落ち着いてください!!」
心の底では、怒りが提督に向かっただけマシに思えた青年だった。青年は、大井の八つ当たりが自分にでも飛んできたらと思うとゾッとする。大井は提督の胸ぐらを掴んだまま、ガンガンと提督を揺さぶっている。青年と加賀は大井の怒りがおさまるまでじっとしている他はなかった。やがて、大井から解放された提督はベッドの上でぐったりとしていた。
大井「はぁ……仕方ないですね……青年さん、部屋に一度戻って対策を考えましょう」
青年「そ、そうですね……というわけで加賀さん、提督のことをよろしくお願いします」
加賀「ええ」
青年と大井は部屋に戻り、提督が回復するまでの間、ミニ会議を始めた。
青年「で、どうしますか?」
大井「そうですね……青年さんはどうですか?」
青年「あ、僕、そこにある椅子で寝ますから大丈夫ですよ。大井さんはせっかく忙しい中ついて来てくれたんですから、ベッド、使っちゃってください」
大井「……」
青年「大井さん?」
大井「いえ、そういうことでしたら、使わせていただきますけど……あ、夜に襲ってきたりしないですよね?」
青年「え?! し、しませんよ……」
大井「もちろん冗談ですよ。万が一、襲ってくることがあれば……この魚雷で沈めますからね?」
青年「わ、わかりました。わかりましたので、早くそれおろしてください」
大井は魚雷をおろしてから、ため息を一つついた。そして、荷物を整理し始める。青年も同じようにして整理を始めた。
しばらくすると、ドアがノックされ、開けると回復した提督と加賀が立っていた。提督の服は大井のせいで少しだけやつれた感じになっている。提督の話によると今から大本営の元帥に挨拶に向かうようだ。
提督「では、行くか……」
そして、青年はまず鎮守府の入り口の大きさに圧倒された。中へ入ってからもその大きさに言葉を失ってしまう。何もかもが自分が普段いたあの鎮守府の倍くらいはあるのではないかと思われるほどに広かった。
青年「……」
大井「青年さん、行きますよ」
青年「あ、すいません……」
青年は大井に言われて先に歩いて行く提督と加賀の後について行く。
そして、建物の中へと入っていき、長い廊下を渡っていくうちに何度か他の鎮守府の提督とすれ違った。提督はすれ違った提督達に軽く会釈をしている。青年は、あまり目に入らないよう廊下の端っこの方をずっと歩いていた。
提督「さ、青年君。ここが、元帥の部屋だ」
青年「……」
提督「緊張は?」
青年「もちろん、してます」
提督「そうか……加賀。君はここで待っていてくれ。元帥の秘書艦も加賀だから少しややこしい」
加賀「わかりました」
大井「提督、私はどうすれば?」
提督「一応ついて来てくれ」
大井「わかりました」
そして、提督は二度ノックをした―――
続く!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
どうでもいいですが、作者のツイッター垢です。
@parudo63
作者より
―――ワッフルさんへ
多分丸とのコラボ前にまずは世界観を統一するということで……松崎提督、お借りしますw
作中の『どこぞのパイロット』が活躍するワッフルさんの作品はこちら!!!!!
これを読めば『401号室』の謎もわかりますw
<<リクまとめ>>
※順番の前後があることをお許しください
※色々なリクで、「これとこれは繋ぎあわせたら面白そう」と判断したものは勝手ながらに合体したリクになることがありますw
<戻ってきた日常編>
48の名無しさんより
春雨との気まずい感じ
わー50さんより
飛行場姫、再び
ビール野郎さんより
ワッフルさん作、『とある猫の艦娘観察日記』の多分丸とのコラボ(←頭の中ではどうするかは決まりました……)
駆逐艦最高さんより
阿賀野型
74の名無しさんより
深海棲艦たちの逆襲
ワッフルさんより
不幸な目に遭う大鳳さん
<合体リクにできそうな組み合わせ>
64の名無しさんより
執務室にあるお酒を飲んだ駆逐艦に色々される青年。
みいにゃんさんより
春雨に襲われる
他の深海組の登場予定ってありますか?
ポテトチップスさん
はい、ありますよ~。ちょいとしばらくの間、青年君にはここで暮らしてもらうことになりそうですのでw
待ってました!!
さて、青年はどの深海凄艦にフラグを立てるのやら(期待)
ヲ級はちゃんと出ますよね.....?瑞鶴ポジみたいな感じで。
ワッフルさん
たぶんフラグはたてますw
ヲ級も出しますよ~。
北方にお持ち帰りされた青年ここでもフラグをたてるのか....
新章だァー!
深海棲艦との共同生活ですか
どうなることやら
ほっぽ駆逐棲姫とフラグ立てた場合それこそロリコンカッコガチなんじゃ...(小声)
続き期待してます!
どうも、駆逐艦最高です。
ついに始まりましたね〜、青年拉致事件編。自分は他には、駆逐艦とあと、二航戦が楽しみです。このSSは基本的になんでもアリみたいですからね。面白い展開に期待です^ ^
…不躾ですいませんが、あげられたリクを片っぱしから詰め込んでいくと、不自然なのでは?
やばい、一発目からリクありです!
みいにゃんです、こんなフレンドリーなら争いは起こらなかったのかも知れないですね・・・
そして、駆逐棲姫ちゃん・・・おもちかえりしたいんじゃ~!
よし、深海に拉致られたから、今度は深海の方を拉致って弄ろうではありませんか!
というか出来たら出良いのでお願いします><
何度もすいませんみいにゃんです・・・
モーニングコーヒー飲みながら思いついたのが、拉致ったほっぽちゃんか駆逐棲姫ちゃんが鎮守府散策して辿り着いた図書館で図書青年とクロスと言うのはどうでしょうか・・・
5の名無しさん
おそらくちょっとだけたてると思われますw
山椒さん
はい、新章でございます。
ろ、ロリコンカッコガチにはならないように……
駆逐艦最高さん
確かに、何でもありですね、これ……。
その場でできそうにないと思ったものは後回しにさせていただくことがあります……。
みいにゃんさん
結構フレンドリーでした……w
深海の拉致ですか~……あまり考えてなかったですw
できたら、やってみます。ちなみに図書青年とのクロスは少しだけ考えていたので、ちょっと考えさせてくださいw
レ級が凄くフレンドリーでびっくりしました
これからも頑張って下さいな!
最近まともに着任できていない、駆逐艦最高ですぜ。
はい、まあいろいろ考えながら作ってくださいな。なんか偉そうですいませんでした(~_~;)
しっかし深海棲艦礼儀正しいなぁ。
11の名無しさん
たぶん、レ級は仲良くなればかなりフレンドリーな深海棲艦だと信じたいですw
駆逐艦最高さん
おうふ……
頑張って考えますw(リクとってるんだから、それくらいはしないと…)
思いの外礼儀正しくなってしまった…w
青年君、知ってるかい?君の残念な称号の半分はわー50ってヤツの悪ノリが原因なんだぜ?
という訳で、新章おめでとうございます。悪ノリ大好き、わー50です。
北方棲姫に「オニイチャン」と呼ばれたら次は飛行場姫に「ジャア、ワタシハ、オネエチャン? ソレトモ、イモウトチャン?」と迫られる番ですね。
……どんだけフラグ立てるんだか、ちと楽しみになってきたw
イ級の口の中か・・・・
そういえばイ級ってどんな味するんでしょうね?
リクエストで上の方の飛行場姫で思いついたのですが港湾凄姫お願いします。
勿論フラグを立てる方向で(ニタァ
どもども!十米の奴です
2スレ目いきましたね〜、これからどうなるのか…
深海棲艦らに囚われても鎮守府のみんなを心配する青年君は清掃員の鑑
みんなから慕われすぎんよー。はてさて艦娘とテートクはどう動くんですかねぇ、ほっぽちゃんに「お兄ちゃん」とか鼻血モンですわ
ライン氏、これからも応援しつつ楽しく読ませてもらいます!
わー50さん
残念な称号がどんどん増えていきますがどうなんでしょう……
まぁ、フラグは立てまくっても……最後のヒロインは決まってますよw
ワッフルさん
想像するだけでイヤですねw
イ級、たぶんオイシクナイ
了解です~
十米名無しさん
2スレ目、来ました。
青年君はたぶんすっごいいい人な気がしてきましたw
提督と艦娘たちには頑張ってほしいところです。
応援ありがとうございます~。
11の名無しです
前のも読んできました、このまま行くと青年さんの取り合いが起こりそうですねw
これからも頑張って下さい!
リクエストが良いのなら、軽巡
棲鬼お願いします!
霧闇です
青年君はついてないなぁー。
リクエストOKなら球磨型にやたら頼まれごとされる一日をお願いします
11(または18)の名無しさん
ありがとうございます~。
青年、本当にどうなるんだろ、自分でもわからなくなってきました…
リク、了解です。
霧闇さん
はい、前作からこんな感じですw
リク、了解です。反映するまではしばらくかかるかもしれませんが、ご了承ください…
どうも。最近、深海棲艦という存在がよくわからなくなってきた、駆逐艦最高です。
なんだか、青年より鎮守府の様子の方が気になるようなw
もしかして、ここの深海棲艦達は、艦娘に似せて作ったものなのかな?性格とか…
しかしみなさんリクエストで多いのはやはり艦娘になってるあたり、人気ですね。
駆逐艦最高さん
公式でも結局何かわからずじまいですからね……w
鎮守府のみんなも気になりますね(←作者)
まぁ、やはり艦娘たちが最高ですぜ!!
警戒心バリバリの港湾棲姫……フラグ立てたらシスコンカッコカリの称号を手に入れてしまうであろう青年君。彼を中心に修羅場が発生するのも時間の問題か……。
イ級誤って撃沈したら青年君の黒焼きが出来ちゃうなと想像して自分でも引いた、わー50です。
飛行場姫に抱きしめて貰えるとは羨ましいぞ青年君! でも代わってとか言わないよ。嫁艦の飛龍さんが怖いからね……ホントダヨ?
湾港はコミュ障…ふむ、ひらめいた
果たして、深海にお出掛け中の青年君は一体幾つのフラグを建造(艦これ的言い回し)していくのか…乞うご期待!
そして青年シリーズ第2弾おめでとうございます、しれぇ!
これからも頑張って下さい!
わー50さん
警戒心バリバリですが、青年はどう崩していくのでしょうか(無意識で崩すんですけど……)
おお……青年がそうならないようにだけは注意しないとw
E8a7da3さん
憲兵さん、こっちです。
さぁ、どうなるんでしょうね……もはやフラグ立てまくりの無意識な女たらしみたいになってきてますw
これからも頑張ります!
戦艦(ダイソン)の出演を・・・
26の名無しさん
了解です!
みいにゃんです・・・
あれ?これ青年次第では人間側と深海側の戦争が終わるんじゃない?
そして、新たに生まれた国家、青年国・・・その実体は陸は人間が、海は艦娘と深海側で掃除をするという・・・
そして青年を巡り新たな火種が!
しかし、駆逐棲姫とレ級がフレンドリーなら連れていってほしいな!
みいにゃんさん
青年はどう動くのか……
青年国は恐ろしい……ww
どうも、11(18)の名無し...です
ヤッホーイ‼︎軽巡棲鬼キター!主さんありがとう!
いや、このスレのおかげ?で深海棲艦好きになりましたわー
このまま、深海棲艦でもハーレム作ってしまえば良いんじゃないでしょうかw
これからも頑張って下さい!
11の名無しさん
どうも~!
いえいえ、こちらこそリク、ありがとうございました。書いてて楽しかったですw
深海棲艦も好きになってあげてくださいw
こっちでのハーレム形成はさすがに…w
もう深海棲艦カタコトじゃなくて、普通に喋った方がいいんじゃないですか。
飛龍が中々揃わなくって疲れてきた、駆逐艦最高ですあれどこでドロップしますかね?
やっぱり深海棲艦と艦娘って似てますよね?もう戦争やめろよお前ら…
あ、でも艦これという作品上悪は必要ですよね。というわけでリクですが、最終的に深海どもと艦娘達が戦って艦娘大勝利みたいな展開できます?
駆逐艦最高さん
そうですね……次からはちゃんと喋らせましょうか……(自分でも読みづらい……www)
さぁ……どこでドロップするんでしょうか……。
リク、了解です~。戦わせます。
え、えらいこっちゃ!
戦争や!戦争が起きとるで!
リクエスト曲げる訳にはいかないけど引き分けであってほしい...
ワッフルさん
えらいこっちゃで~(人事のように言う)
引き分け……になるのかなぁ……
青年は知る。戦いの意味を。
青年は知らなければいけない。戦いの悲痛を。
誰がための砲音か。誰がための叫びか。
欲しがる明日はどこへにもない。
己が手に鍵はあるはずなのだから。
次回「ただいま」
願わくば笑顔と共に……
さすがに悪ノリ出来なかったわー50でした
わー50さん
おお、何かそれっぽい次回予告が……
果たして笑顔になるのは誰なのか……
期待していてください
はーい、11の名無しでーす!
いやー青年さんが深海棲艦との戦いの鍵になってますねw
最初はただの清掃員さんだったのに......どうしてこうなったんだw
ではこれからも頑張って下さい!
リクエストは、もういっそ執務室の掃除とかはどうでしょうか?
11の名無しさん(もはや定着しつつ…)
本当に、どうしてこうなっちゃったんでしょうね……w
リク、承りました!(やっと艦娘たちとの日常が久しぶりに書ける…!)
青年くんヲ級が攻撃されてる時、棒立ちしてちゃダメでしょww
ふむ、友人のあのネタはウケが良かったんですかね?
取り敢えず引き分けじゃないにしろみんな生き残りましたね(安心
エンドはハッピーになるのかバッドになるのか......
続き楽しみです!
(あなたの文才がほしい)
SKさん
それについては、この後で色々ありますよ~w
ワッフルさん
ウケ?ぜんぜんよくなかったですよwwww
一応全員生き残りましたw
エンドはどうなるかはまだ考えていません(え、僕の文才……?)
青年君は本当に優しいなぁ……。ドSで悪ノリ大好きな自分には眩しいよ。
空母は軽込みでほぼコンプ。でも大和型どころか長門型すら持ってない、わー50です。ビスマルクもなけりゃ、金剛も揃ってない。でも航戦は揃ってる……。艦載機の神様に悪ノリされてるとしか思えんわ、コレw
まるゆとゆーちゃんとで「ゆーゆー癒しコンビ」結成ってできます?
ちょっと見ない間にすごい進んでて驚いている、駆逐艦最高がやってきましたよ〜^ ^
いや〜、海戦すごかったですね。何気に加賀さんがカッコよかったw そしてやっと戻ってきた鎮守府!読んでて懐かしい気分になってきましたよ^ ^
あと、アニメのシーンも導入してましたね。おもしろかったです。
ありがとうございました!これか らも頑張ってください!
飛龍が手にはいらないよ〜(T_T)
わー50さん
え、ドSだったんですか……?w
空母は瑞鶴だけ来ないよー!なラインです。
まるゆとゆーちゃんのゆーゆーコンビ、了解です。
駆逐艦最高さん
結構進みましたw
海戦のところはなかなか、考えました……w
いや~、自分でも書いてて懐かしく……w
どうもー
11の名無しでーす!
瑞鶴のイタズラw
とても読んでて楽しかったです!
これからも頑張ってぐださい!
あと、これからは銃壱(安易すぎww)と名乗りますので今後ともよろしくお願いします!
ブーナ・セアラ どうも十米の奴です
この様子じゃ鎮守府周辺の深海棲艦はあらかた手篭めにしたようだな。流石青年君やで(錯乱
てか、このままだと青年君が原因での戦いが起こりそうなんですがそれは
あと、私事ですが先週にアメリカに行きましてねミズーリに乗ってまいりました!40.6㌢の3連装砲はかなりデカかったですよ…
大井北上ペアとの絡み、春雨との気まずい感じも見てみたいです。
銃壱さん(早速w)
瑞鶴の恋愛(仮)は、うまくいくのでしょうか……。
これからも頑張ります!!
十米名無しさん
どうも!
さすが、青年君です。このままハーレム形成……いや、なんでもないですw
確かに戦いは起きそう……。
おおっ!ミズーリですか!羨ましいです
48の名無しさん
大井北上ペア、春雨、了解です!!
うぉぉぉ…ついに、ついに来たぜ…!ここまで長かった…。なるほどおかずとはさすがに思いつきませんでした。流石ですね。楽しみですね〜^ ^
せっかくなので、もし余裕があればでいいですが、参加者もリクで決めてはどうですかね?あくまで、余裕があればでいいので (大事なことなので2回ry)
第六第六〜♪
50の名無しさん
いや~、長くなってしまい申し訳ございませんw
扶桑と山城の回を書いている時にふと思いつきましたw
参加者は……リクで、決めれますかね。とりあえず、一名は確定しているので……w
春雨のサポートに意外と料理上手そうな時雨とかどうだろうか、そして、弥生には睦月が、そして睦月型と、白露型のゴングが・・・
あ、みいにゃんです・・・
ベッドの上からこんにちは。自分にもドSだった結果、入院するはめになった、わー50です。癒しがいるのは青年君だけじゃなかったwww
六駆→身近で料理のできそうな人→龍田
春雨→料理の得意そうな人→大鯨
弥生→お弁当の定番→卵焼き→瑞鳳
料理のアシスタントを選ぶとしたらこんな感じですかね?
みいにゃんさん
時雨と、睦月、了解です!
わー50さん
リク、了解です。みいにゃんさんのものと組み合わせて考えます!
すいません、50の名無しは駆逐艦最高です(汗)
この対決の時間軸ってどうなってるんですか?始まった時は青年帰還1日前と書いてましたが…
あ、あと自分で言っておいてアレですが、サポートリクとして足柄を希望します。
駆逐艦最高さん
うわっ!書き間違えてましたw正しくは、「青年が帰ってきた日の夜」ですwすいませんw修正しておきますねw
足柄ですね、了解です!
たびたびすいません、駆逐艦最高です。リクありがとうございます^ ^ あと、青年の考えがまとまる一歩手前ってとこまではこの回想で全て話してくれますよね…? 一々途切れるのは変だと思いまして。
銃壱です!
更新お疲れ様です!
......さぁ青年は誰の料理を選ぶのだろうか....誰のを選んでも、おかしくありませんねw
これからも頑張って下さい!
駆逐艦最高さん
いえいえ、どういたしまして~。
おそらくそうなると思います!
銃壱さん
ありがとうございます~。
誰のになるのかな……
頑張ります~
人間に変装した飛行場姫が「来ちゃった♪」と休日に街に出た青年君に鉢合わせるって展開はありですか?
青年君は誰の料理を選ぶのか楽しみです。
病院のベッドの上でも仕事中、わー50でした。休ませてくれよ……( ;∀;)
どっかの酒飲みです、多分丸×清掃員のコラボが見たいかなーなんて···(チラチラッ) 迷惑だったらスマソ
(※多分丸はワッフル様のssキャラです、勝手に名前を使ってすみませぬ)
バカが日本酒飲んだ結果
わー50さん
その展開は……どうでしょうかねw案外いけるかもしれませんねwww
果たして誰の料理を選ぶのか……。
どっかの酒飲みさん(でいいのかな……)
多分丸ですか……うぬぬ……それはワッフルさんの許可を得ないとなかなか出来ないですねw
やっと扶桑姉妹がやってきた!
ヒャッホオオオオオオゥ(AA略
あ、ラインさんラインさん、別に多分丸使ってもいいですよw多分丸は喜ぶ(?)でしょうし。それにクロスしてもらうのは大歓迎です!
(ついでに図書館青年の方もお願いします(心の声)
執務室にあるお酒を間違えて飲んだ駆逐艦にいろいろな事をされる青年。 というのもありでは?
あぁ~^〆切前の荒んだ心が癒されるんじゃ~^
(いつか青年シリーズが完結したら内容を絵にしようかな…)
どうも、E8a7da3こと「だーさん」
(一々名前を書かせるのが申し訳なくなったのでもうこの名前で)です
怒涛のリク消化ラッシュ、頑張って下さい(←原因の1人
と、余談ですが…いつも本当にありがとうございます(唐突)
本業のお絵描きでプロットが浮かばない時や、思い悩んだ時に見ていつも元気とやる気を貰ってます
(コメントしてる他SS作者様方にも同様にお礼申し上げます、感謝です)
春先は天気や気温が安定せず、体調を崩しやすいですが…皆様どうかお体にお気を付けてお過ごし下さいませ
以上、二徹で頭がおかしくなった野郎の駄文でした
主様リク調整お疲れ様&ありです!
みいにゃんです・・・
春雨と気まずくなった後で春雨に襲われるのは如何でしょう?もちエロ無しで構いませんが、そして、はるさめだとおもったら、駆逐棲姫だったっておちも・・・
やっぱりもう一度拉致られるか!
ワッフルさん
扶桑姉妹、安定の不幸度でした(←
え、マジですか……で、では考えておきます(緊張)
図書館司書との方はある程度頭のなかではできましたw
64の名無しさん
なるほど……それもアリですねw考えておきます
だーさん
お、お絵かきの仕事なさってたんですね!
内容……絵にしてくれたらすごい嬉しいですw(一枚絵だけでもかなり嬉しいです)
こういった感じのゆるゆるなSSですがこれからもよろしくオネガイします。
みいにゃんさん
どもです。
春雨に襲われる……いいシチュですねw
もう一度拉致は少し検討中ですw
この作品の絵ができるのなら僕も見てみたいですね。あ、リクありがとうございました^ ^ 中々面白かったです。ある程度落ち着いたら、次は、暁達がメインの話が見てみたいかな。
しっかし、すごい数のリクですね〜。消化するの大変でしょうが、無理して話の内容がおかしくならない程度に頑張ってください。
SS書くの楽しそうだなぁ…。
また名前残し忘れそうになった、駆逐艦最高でございました。
駆逐艦最高さん
はいwできれば本当にみたいもので……w(書いてくれたら超幸せ……)
そうですね……ある程度、落ち着いたらやってみますw
改めてみたら確かにすごい数でした……。
変にならない具合には頑張ります!
おはようございます
記念すべき三徹目を乗り越えた私です
完結して仕事が一段落したらゆっくりと絵にしていく予定です
地味に青年君のイメージはもう決まってて、後は形にするだけだったりします
(美形にするか、普通で優しそうな感じにするかで悩んでますが)
そこは追々主様の考えを聞いて描く事にします
一枚絵に関しては登場キャラ全員を描きたいので、これまた追々となりますね
だーさん
お、おお……大変ですね……。
青年シリーズは完結するのかな……わからないや……w
ま、マジですか……全員絵となると……考えるだけで楽しみになってきますが、今はお仕事、頑張ってください!!
これは中々、楽しげな展開ですね。
加賀→青年君へのフラグが立ってるのなら、瑞鶴とリアクションが違うことに拗ねる。立って無いのなら「応援してるわ」と意味深なエールを瑞鶴に送る感じの加賀でどうでしょう?
今日、漸く退院できて退屈な、わー50でした。
いやー、提督さんも男性ですなw
リクエストを叶えてくださりありがとうございました!
これからも、頑張って下さい!
...凄いリクエストの数ですね、当分はリクエストは控えた方が良さそうですね
では、長々と失礼しました。銃壱でした!
リクです。 深海棲艦の逆襲(北方棲姫)がメインでお願いします。
ラインさんの作品は面白い
はっきりわかんだね。
それにしてもこの物語は20%の優しさと30%のコメディと10%のシリアスと40%のロリコンとリクエストでできてると思うんだ。異論は認める、というか異論しかない。
更新頑張ってください!楽しみにしてますよ!!
わー50さん
退院おめでとうございます!!
さぁ、果たして加賀さんはどうでるのか……お楽しみですね!w
銃壱さん
提督だって男ですよwww
いえいえ、こちらこそリクありがとうございます!
74の名無しさん
深海棲艦の逆襲ですね……了解です(次のシリアス回かなぁ…)
ワッフルさん
いつもありがとうございます~。
みなさまのリクで出来上がった感がすごいですけど……w
でも、楽しいですね~w
更新頑張ります!
忙しくて中々来れない…(´・_・`)
またかなり進んでることに驚きの、駆逐艦最高です。自分もリク控えたほうがいいかな?
加賀さんまで出てくるとは、空母三昧ですね。飛龍出てこねぇチクショー!二航戦楽しみだー!
あと、駆逐艦に囲まれてましたね。うらやまズルい
逆襲のほうはどっちが勝つとか考えてたりします?
リクエストありがとうございました
村雨嬢が可愛かったです(小並感)
ロリコンじゃないけど白露型と陽炎型の子達はお持ち帰りしたい
そして涼風と初風が後1Lvで(仮)、これで漸く白露型と陽炎型(仮)完了…長かった…
因みにどうでも良い事なんですが村雨嬢へのラッキースケベの様子をフルカラーで書こうかな、と思うんですが需要ありますかね?(ゲス顔)
駆逐艦最高さん
結構進みましたね^^;
リクについては控えてくださってもしてくれても大丈夫です
次回は二航戦サンドな回ですね
だーさん
若干希望通りにできたか不安でした~_~;
お持ち帰り願望わかります!
ラッキースケベな絵?需要大アリじゃないですか(^ω^)
あ、駆逐艦最高さんに言い忘れてました
連コメ失礼します。
逆襲回はどちらが勝つかはまだ全然考えてないですね~_~;
よし、仕事終わったから暫くは休みだワッショイ
村雨絵は最高に色っぽくする為に知り合い数名(プロ)に協力要請を出したので、もう少しお待ち下さい
それまではSSの続き書いたり、今更ながらAC4買ったのでそっち消化して過ごしますかねぇ
だーさん
お仕事お疲れ様です^_^
お、おお...そこまでしてくださるとは....感激です!
楽しみにしてます^_^
青年くゥん!羨ましいじゃないか(建前)俺と代わってくれよォ(本音)
つーことでss書きながら見てるワッフルです。
青年くんはモテますねえ...
良い意味でも悪い意味でも。
リクエスト...とかはまだいいかな。
更新待ってます!
ワッフルさん
いや~、自分でも書いてて羨ましく……w
そう言えば、清掃員青年君、いつのまにかモッテモテですなw
頑張りま~す!
野郎、うらやまゲフンゲフン。
二航戦の2人もうあれですね、付き合ってるとみせかけて、金にしか目がないような女の子によくあるやつじゃないですか〜やだ〜~_~;
でもうらやましゲフンゲフン。
SS楽しそうですね。頑張って下さい。駆逐艦最高でお送りしました!
フジャムボ どうも十米の奴です
なんだかんだで瑞鶴がヒロインやっててワイ歓喜
…もしかして提督よりも青年君の方が慕われてるんじゃないかと考える今日この頃
提督もケッコンか、陽炎としたら黒潮以下妹全員にお義兄ちゃんって呼ばれるよね(名案
駆逐艦最高さん
いや~さすが青年君ですわ←
に、ニ航戦のお二人はそんな子じゃない……と思いますね(←
書いてて楽しいですw
十米名無しさん
やはり、ここは瑞鶴さんメインで……。
て、提督さんは青年がいないところでは慕われてますから……
提督さんとケッコンするのは誰かはお楽しみに~。
リク立て込んでるのにすいません 青年が仕事で失敗するというのはどうでしょうか
88の名無しさん
いえいえ~、別に構いませんよ!リクありがとうございます!
青年が仕事で失敗ですか……ふむ……考えておきますね
あぁああああ…ああ…あっあっー!あぁああああああ!!!木曾おぉぉぉぉ!ぅううぁわぁ(ry
最近仕事と駆逐艦のレベリングばっかで構ってあげられなくてごめんね
陽炎型と白露型、弥生に卯月と(仮)した半ロリコンだけど一番最初に好きになったのは木曾だからね
木曾本ばっか描くくらいには好きだからね木曾(ry
…失礼、取り乱しました
どうも、正妻をほっぽって駆逐艦ばっか構ってるクソ提督な私です
だーさん
お、落ち着いてください!^^;
最近艦これできてない放置提督の僕と比べるとおそらくマシかと....~_~;
面白い、ジュースを奢ってやろう(誰おま
最近は面白いSSがたくさんあって楽しいです。このSSもたくさんのリクあってすごいですねぇ、尊敬します(*´ω`*)え?お前もさっさと続き書けって?さぁ何のことだか(震え声
横須賀鎮守府の提督だけど改二艦は夕立と時雨しかいない模様、今までやってなかったから仕方ないね(´・ω・`)
長々とゴメンナサイ、これからも応援してます!
いやぁ...つくづくすっごい面白いですよねぇ...どうやったらこんな良作ができるのやら...
俺なんtあれ、おかしいな、なんか目の前がぼやける...
なんというかすみません。
リクエストで、大鳳さんお願いします。
扶桑姉妹と同じような感じで、不幸にみまわれるっていう風に。
よくわからない言い方ですみません
コルベニクさん
ありがとうございます~!
リク、なんかすごいですね(←
そちらのSSも更新楽しみにしてますよ~。
頑張ります!
ワッフルさん
いつもいつもありがとうございます!
大鳳さん、了解です!
ふむ……不幸な大鳳さん……どうしましょうかねえ(ゲス顔)
深海棲艦との一波乱ってあるんですかね?笑
SKさん
どうですかね……色々考え中ですw
おはようございます(今起きた)
どうやっても青年君の絵がコレジャナイ感満載でどうもなー…って感じの私です
普段はエフェクトや背景、女の子の絵ばっかだから野郎を描くのが難しい…気付いたら肩幅や足の開き方が女の子になってて焦る
寝落ち寸前に描いてた立ち絵が、顔はイケメンなのに脚がo脚で思わず吹き出してしまった
だーさん
おはようございます~!
青年君の絵……気になります……
なるほど……。
青年君はイケメンですか……おお~……(自分では絵を描かないのでよくわからないことだらけ……)
青年と瑞鶴.....なんつーか、その、惚気っすね完全に
だがそれがいい(キリッ
さてまぁ、黒い影とは誰なのか凄く気になりますな。
更新待ってます(b´・ω・`)b
何もしてないのにいきなり爆撃してくるウチの瑞鶴とはえらい違いですねぇ…って、げぇ!瑞鶴ぅ!?何で怒ってるの!?俺何にもしてない…ちょ、よせぇ!今の執務室はお気に入りだから爆撃だけはアッー!?(彗星一二甲ガン積み
完全に悪ノリです。まぁ青年くんのとこの瑞鶴が可愛いっていうことですね、羨ましい(この後また爆撃された模様
黒い影かぁ、弥生とか春雨とかがデートと聞きつけて尾行してるとか?この後の展開が楽しみですね、乙彼です!
ワッフルさん
今回は完全な惚気な二人ですw(結構長いお話になると思いますw)
黒い影……楽しみにしていてください!
コルベニクさん
コルベニクさん……お通夜はちゃんと伺いますw
はい、こちらの瑞鶴はとっても可愛いですねw
弥生と春雨……ふふ、誰になるのやら…
100米さん
え?弥生と春雨なのか、てっきり青年を好いてる娘が皆でつけてるのかと!
尾行というよりも、行った先に居てもそれはそれで有りかも?
まあ、弥生と春雨には賛成であります!
あ・・・みいにゃんだったりします
みいにゃんさん
これから、色々わかってくると思います~w
ソレも有りですね……う~んw
もう、ありきたりでもいいから、くっついちまえよ(投げやり
見ててニヤニヤが止まらなさすぎる。
それにしても青年殿は愛されすぎであります(あきつ丸口調
こんなリア充見たら吹っ飛ばしそうな気がします
以上、悪ふざけが過ぎるワッフルでした。
更新待ってます。
ワッフルさん
うん、もうくっつくかもしんないですwwww
自分でも書いててニヤニヤが……
僕だってぶっ飛ばしますね(おい、作者
乙彼です!
弥生と春雨当たったか、やりました(コロンビア
その他にも翔鶴さんとか青葉とかも来るだろうと思ってたけど、やっぱ二航戦の二人も付いてきてたのねwww
それにしても若い!若いねぇ二人とも!もっと青春してもいいのよ?俺は…うん…若くても青春なんてないから…orz
それにしてもまだ黒い影いるのか、そういえば例のあの人もまだ出てませんね…
では、これからも更新頑張ってください!
青年君、ウチに良いお茶があるんだけど…寄ってかない?(暗黒微笑)
――さて、青年君のイメージを固める為にアニメイト行き
3万円分同人誌を買って男性の書き方を猛勉強中の私です、ご機嫌よう
男らしさを出すのがこんな難しいとは思わなかった…
そして現在の村雨絵の進捗状況:6%
Skypeで野郎3人が最高のエロスを導き出そうと熱い議論をしていました
――やっぱり知り合い(自分含め)には変態しか居ないじゃないか!(歓喜)
おう、青年君。ジェットコースターよりお化け屋敷より怖い話があるんだが、聞きにこないか?(ノ`△´)ノ
どうも、仕事に復帰したら昇格してるわ、資格取得に忙殺されるわのわー50です。ちくせう、SSの設定とかがようやく固まったとこなのに。
ちょっと見なかった間にすごい進んでましたね。とりあえず青年君、羨ましいから爆発しろwww
大本営に付いてくる人の人選間違えてゲッソリしてもいいんやで?(ゲス顔)
コルベニクさん
どうもです!見事に当てられましたねぇ……
果たしてその黒い影が現れるのかどうか……
だーさん
青年君、気をつけてー
お、おお……そこまで本格的に……すごい(・_・;)
6%もすすんでるんですか!?(6%がどれくらいかわからない…)
最高ですね……w
わー50さん
青年君、気をつけてー(二回目)
昇格おめでとうございます!資格取得ですか……大変そうですね……
かなり進みましたw爆発はするかどうかわかりません…w
人選はどうなるかお楽しみに~…(まだ考えてないw
なんか久しぶりにきたら結構進んでますねぇ^ ^はぁ〜このごろ忙しさ増しまして全然見に来れなかったのでね。大井は表面はしっかり者ですよね。北上がからむとおかしくなりますがwそしてデートである。もう…リア充爆撃不可避、追跡組多いなw青葉はやはりオバケとか怖がるタマじゃなかったかー。(因みに追跡組がきた時、暁たちも来るかも!?とか思っていたのは秘密である)
しゃべりたいことが多い…
あ、リクお願いします。さいしんえーけーじゅん以下3名を出してください。
長々と失礼しました、駆逐艦最高でした。
チッ、間接キスしちまえよぉ!
提督さん来てたのね、それに誰かと一緒に来てて瑞鶴が黙ったってことは…?いや、これ以上は憶測だから言うのはやめよう。でも確率的にはあの人なのよねぇ…
更新頑張ってください、予想当たるかどうか結構楽しみにしてる自分がいます(*´ω`*)
サェン・バェ・ノー どうも十米の奴です
青年君と瑞鶴のデートは上手くいってるようだな。2828しまくりだぞコンチクショウ( *`ω´)
デート後は瑞鶴、春雨、弥生の3人が修羅場なんですねわかります
青年君を好いてる艦娘は駆逐艦2人と空母1人ってところですかね。裏山だぞチクソウ(′;ω;`)
駆逐艦最高さん
そうなんです。大井は(北上さんと一緒二いる時を除けば)かなりきっちりしてる人だと思いますw
青年よ、読者の皆様から逃げなければ……
リク了解です~。(暁達が出せなかったのは自分の力量不足っすw)
コルベニクさん
残念ながらそうはいきませんでしたw
おそらく提督といる人はみんなが予想できてますw
頑張りますw
十米名無しさん
どうもです~。
上手くいってますよ。ええ、書いている作者自身が爆破させたいくらいに……
修羅場演出、頑張らないと…
リクです。 青年が付き人に大井を選んで,それから青年を意識する大井お願いします。 これからも頑張ってください。
....まさか!青年は瑞鶴とy(憲兵の靴音
自重します。
いやまぁ.....イチャラブには耐性が無い物でしてどうしても顔がフニャリとしますねw
さて”事後”にはどんな修羅場が待っているのやら......(暗黒微笑
それではアディオス!更新楽しみです!!!
114の名無しさん
了解です~。応援ありがとうございます!
ワッフルさん
ど、どうなるかなぁ……結構勢いで書いちゃったけど自分でもどうなるか予想できなく……
じ、事後って……www
そんなバカな…!?いや、予想が加賀さんなのは当たってたけど、まさか提督と加賀さんがケッコンカッコカリするだって…?じゃ、じゃあ、あの青年に対する加賀さんの思わせ振りな態度は一体何だったんですか…!?
瑞鶴ぅ…いくら青年と夜戦がしたかったからってその言い訳は見苦しい…ん?こんな夜中に物音が…って、この音はまさk(音声はここで途切れている
そんなこんなで更新乙彼です!R-18タグ付けて続き書いてもいいのよ?(/ω・\)チラッ
青年「うわ~んビール野郎~~!」 ビール野郎「どうしたんだい青年君?」 青年「吹っ切れてギシギシアンアンしたいよ~!」 ビール野郎「しょうがないなぁ青年君は···」 ビール野郎「そんな時は···これ!」⊃ワイン って茶番を考えてニヤニヤしてるビール野郎です。 本当にギシギシアンアンしてくれても、いいですよ?(願望)
ハンモックが欲しいと思う、ビール野郎でした。
あっ(察し)
これは私の腕が鳴りますわぁ(歓喜)
いつ濡れ場に発展しても良いように、PCは起動したままにしておきますね←
そして青年君、もげろ(直球)
コルベニクさん
加賀さんの思わせぶりな態度はそのうちわかるかも……?
さて、今後の展開をお楽しみに……(あと、コルベニクさんはしょっちゅう瑞鶴に爆撃されてる気が…)
ビール野郎さん
R-18になるんですかねぇ……w
僕のテンション次第で決まりますw
だーさん
どうなるかはまだわかりませんが、過度な期待は…w
青年君、みんなに嫌われちゃったかな(ゲス顔
加賀が提督側についたということは、つまりあの思わせ振りな態度は……。なるほど、わー50は見抜いちゃったよー。
青年君、大人の階段を昇る日が来たのか?ヘタレんなよ? 怖じ気ずいても彼女に恥かかすなよ?
なんて言ってみたわー50でした。
私はアレです、某主任だとでも思っていただければ構わんですw
???「ハハハ!見てたよ青年!中々やるじゃない?ここまで仲を進めるのに、ちょっと時間掛かっちゃったけどね。まぁ、いいんじゃないかな?まな板の相手には、さ。ギャハハハハハハ!」
こんなんじゃあ爆撃されますよね?つまりそういうことでs(爆撃
あ、更新乙でした
艦これとACVのクロス作品でも書こうかな…需要なんてないだろうけどね(;´∀`)
>コベルニク様
需要ならここにありますよ(ニッコリ)
???「ふむ…青年君、君の活躍は聞いている。
老兵は気にせず、好きにヤりたまえ」
と、コベルニク様の主任セリフを見て
ふと頭の中でカメラを構えた某リンクスがこう言っている場面が思い浮かんだ私です、ご機嫌よう
わー50さん
さぁ、加賀さんは、どうしてあのような態度だったのか……一応まだ秘密ですw
大人の階段のーぼる……♪
コルベニクさん
いつも爆撃ご苦労さまです(瑞鶴に対して)
主任だと思っておきますねw
だーさん
どうもです。
自分でも青年君がどう動いていくかわからなくなってきてますw
ハハハ!見てたよ青年!更新お疲れぇ!
いやー、遂にやっちゃったね。まぁやるんなら本気でやろうかぁ?そのほうが楽しいだろ!ギャハハハハハハ!(褒めてます
それはそうとイベント艦でリットリオですか…なんとか乙のほうで頑張ってみようかな。甲?司令部レベル足りませんし足りても戦えません、札制限とか無理ぽ\(^o^)/
わーおww
遂にやっちゃったんですね(苦笑)
クソォッ!やりやがったか!!(歓喜
いいぞ青年!そのまま瑞鶴に既成事実でも作ってもrおや?こんな夜分にだれっ!?しょ(ピー........
おふざけが過ぎました。反省してます
それはそうとして、鯖が猫爆撃によってほぼプレイできない状態なので凄く禿げかけてます。ラインさんも気を付けてくださいね......(虚ろな目
それじゃあアディオス!
あーあーもう滅茶苦茶だよ(歓喜)
青年君も大人になりましたねぇ…
瑞鶴おめでとう、とだけ言っておきましょうか
そしてイベント全ステージ甲クリア達成しレア艦掘りの真っ最中な私です、ご機嫌よう
案外簡単に終わった(資源から目を背けながら)ので、ストレスも無く
ただ個人的にE-2道中が最も大破撤退が多く、イベント全体での大破撤退率の82.3%がE-2という
コルベニクさん
やっちゃいましたねぇ……。本気でやっちゃいましたwww
イベントですか……すっかり出遅れましたw
SKさん
やっちゃいましたw
ワッフルさん
もう自分でも何を書いているかわからなくw
青年君、よく頑張ったよw
だーさん
めちゃくちゃですね(黒笑
大人になっちゃいましたw
瑞鶴にはおめでとうと言ってあげてください……w
うおおおおイベント出遅れた…
出張先からこんにちは。土日祝日関係ないわー50です。イベントやれねぇぇぇ!!!(`□´)
ついに一線を越えたんだね、青年君。さあ、修羅場戦線へ行ってこい! 後ろで笑っててやるから!
こんな展開のあとに「春雨に襲われる」ってみたら期待してs、あ、ちょ、なにをすr、ギャー!
わー50さん
出張お疲れ様です!
一線、超えちゃいました!!w
修羅場じゃ修羅場じゃー
う、うわー、うわー青年やっちゃったか〜。まぁ最終的に那珂で果てなくてよかったよ。おっとっと、よけいなことをいうのはマズイな。しっかし子どもたちの教育にわるいな
今度は大井と大本営ですか。なんだかそっちの方が気になるような…。大井はわからない奴だからねぇ。
それはそうと阿賀野型忘れてます?リク欄に追加されないので一応。
あと、できるだけエロは控えた方がよいかと。駆逐艦最高でした^ ^
更新お疲れです!青年君、大人になったんだね…(しみじみ
大井と大本営か…まぁ、何も問題はないよね…ね?(心配
だーさん、イベント甲クリアおめでとですってか早すぎぃ!まだE-1すら終わってないよ(´・ω・`)
今回欲しい艦娘…?時津風・天津風・磯風・清霜とかがドロップしてくれたらいいかなって…正直、E-6までクリア出来る気がしないんです、艦隊弱いから仕方ないけど(つД`)
頑張ってリットリオ辺りまでは手に入れたいです、長コメ失礼しました
E-2で大破撤退を繰り返すワッフルです(´・ω・`)
”事後”は修羅場にならなくて内心ほっとしてます(期待してた奴が何を(ry
それにしても青年君は一体どれだけフラグを立てるんでしょうね(褒め言葉
.....大井っちも青年君の餌食となるのか(歓喜
司令Lv28のせいで E-1 すらクリア出来なくてやけ酒するビール野郎です。
瑞鶴の中はさぞ気持ち良かったんでしょうねぇ(血涙)
退職すると艦これ出来なくなる···退職しなくても艦これはできない······さて、ビール飲もう!
駆逐艦最高さん
いや~……やっちゃいました(・_・;)
大井と大本営をお楽しみに~
阿賀野型、追加するの忘れてました。すいません……
コルベニク主任(今日からこの名前でw)
大人になっちゃいました……w
問題は特にないと思いますw
イベントみなさん苦戦中ですね……
ワッフルさん
勤務お疲れ様ですw
修羅場修羅場~……w
大井とフラグ、どうしようかなぁ……
ビール野郎さん
ここにもイベントに迷える子羊が……
ええ、それは青年君に聞いてくださいw
>>コベルニク様
お祝いありがとうございます
体感難易度はE-2>E-4>E-5>E-6>E-3>E-1でしたね
E-2道中のヲ級改orル級改でのワンパン大破率が…
因みに秋津洲はストレートだったので、割と楽でしたよー
>>135様
丙なら各艦平均30Lv~40LvあればE-2E-3はクリア可能らしいです
丙でもある程度の泥で戦力を整える事は可能なので、イベント期間中にLv上げをして決戦に望むのがオススメです
(短期決戦は廃人か高Lv提督向けなので、余程備蓄や自信が無い限りは…)
もう、なんも言えねえ(号泣
まさか自分のssのキャラ使ってもらえるとか脇役にしても本当に嬉しい。
もうお礼は言いましたけど、改めてありがとうございます!
そして、ビール野郎さんも本当にありがとうございます(号泣
更新楽しみです!!
いい加減ss好きの名無しさんでリクするのが嫌に成ってきたました。ていうかこのssの名無しの5割が自分なのでは?と思えるくらいリクしています。 アカウント欲しいです、、、、、、、長々とすいません(_ _ )/ハンセイ リクは青年が 元帥にキレる(キレかたはお任せします)
いつの間にか青年と瑞鶴がとんでもない事に
いいゾ~
青年は難関、大井っちを落とせるのか(ぁ
E-1攻略で瑞鳳と天津風出て他海域がどうでもよくなってる山椒です
練度も資材もバケツも足りない(血眼)
弥生は何も知らないでいて欲しいなぁ...
続き期待です
リクありがとうございます^ ^
飛龍欲しくて建造しまくったら代わりに瑞鳳2隻でてきて、少し複雑な駆逐艦最高です。(誰か交換してくれ…)
SS楽しそうだなもう自分も書きたくてたまらないんですが…
>>駆逐艦最高 様
うちで牧場してる飛龍で良ければ…←おい
ずほと(仮)して食べりゅうぅぅぅぅぅ!したいのに一向に出てこない私です、ご機嫌よう。
あぁ~^ロリコンになるんzうわ木曾さんやめアッー!(ry
……と、話は変わりますが幾ら潜っても天津風が泥しないので禿げ掛けてます
あれ?いつ宿毛湾から少毛湾に転属になったっけ私…
艦娘のトレード機能はよ(血涙)
求:天津風 瑞鶴 出:武蔵 飛龍 蒼龍 大鳳 阿賀野
高Lv提督の方で持っている人はトレードお願いします(乞食並感)
垢作ろうと思っても作れない、いや、作りたくない、何故かって?そりゃSkypeの垢乗っ取られてるもの、しかたないでしょ。 ヘンリートンプソンとか言うのに乗っ取られてる、泣きたい。まぁこれはどうでもいいとして、この展開は大井に襲われるんじゃと思ってますww 30lvを超えてる娘が電ちゃんしか居ない、ビール野郎でした。
いつも長文すみませんねぇ···
ビール野郎さん、それ大丈夫なんですか?w
だーさん、瑞鶴なら二体目とか三体目が建造で出てくるんです。でも大鳳が出ないんですよ…大型建造するには資材が足りなさすぎる、トレード機能はよ。
駆逐艦最高さん、づほにゃん一人くだしあ…
「玉子焼き、たべりゅ?」
たべりゅううううう!(やりたい
大鯨と龍鳳とWケッコンしたぜひゃっふぅぅぅぅぅ!!
産まれたままの姿(意味深)で育てたよ大鯨ぇぇぇぇ!!
いつまでも側に居るよ龍鳳ぅぅぅぅ!!
あぁ~^脳が蕩けるんじゃ~^
祝 ケッコン24人目(重婚&ロリコンクソ提督)
さ~て、大鯨本でも描いてこよ…あ、木曾?大丈夫大丈夫木曾が一番だからアッー!(ry
その内艦娘達に夢で刺されそうだな私
ワッフルさん
いえいえ、こちらこそ急に使ってしまい、色々申し訳なかったです……。
楽しく書かせていただきますので、多分丸とのコラボも楽しみにしていてください!
ビール野郎さんには最大限の感謝を……
139の名無しさん
いつもありがとうございます!
リクくださるだけでありがたいです……
元帥にキレる展開は実は当初から考えていたので、ありがたいリクですねw
山椒さん
はい、とんでもないことになってました…
さぁ、大井っちをどのように落とすのか……(←
弥生が若干不憫に感じたラインでしたw
駆逐艦最高さん
飛龍ぇ……w
SS楽しいですよ~……この際やっちゃいます?w
ビール野郎さん
垢乗っ取りって……大丈夫っすか……
大井に襲われる……(魚雷)ですねw
コルベニク主任
トレード機能ほしいですよね~w
たべりゅうううううううううう!!
だーさん
まずはケッコン、おめでとうございます!!
24人目って……ハーレムじゃないですか~!w(ある意味青年君よりひどいかもw)
大井っちは本当は純情な乙女だと思う私です、ご機嫌よう(異論は認める)
久々に真面目にSS描いたら滅茶苦茶疲れてグロッキーな私…
絵だと頭空っぽで描いてもある程度は情景が伝わるけど、文字だと難しい…
細かく伝えようとすると冗長になるし、簡略化すると上手く伝わらないし…
話は変わりますが、SS描こうかなと言っていた方がいらっしゃったような…
【はよ、SSはよ】←おい
あ~^描くより読むのが楽しいんじゃ~^
以上、無い頭をフル回転させた結果おかしくなったSS描きの戯れ言でした
良かった、松崎大将みたいに提督は吊るされなかったか。(いや、そっちの方が面白(パシュッ ?「頭にきました」
....青年君は元帥にどうキレるのかなぁ?そしてうちの多分丸とはどういうやり取りを繰り広げるのやら。
更新待っとります。(あ、大井さんはレズな所がなかったら美人で家事のできるハイパーな方だと思います)そういえばリクエスト載ってませんでしたけど不幸に見舞われる大鳳お願いします
大井の行動は問題だと思うんですが…w
飛龍でない…orz
だーさん、コルベニクさん
艦娘トレード機能欲しいですね〜
瑞鳳と飛龍交換してくれ〜
あああああああああああああ資材がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
すいません上のコメント駆逐艦最高です…orz
だーさん
大井さんは乙女。異論は……なんでもねっす
後でそちらのSSも読ませてもらいますね!
僕も見てみたいですねぇ(期待
ワッフルさん
はい、この提督は無事でした(え
青年君のキレ方は今考え中でございます。そしてキレるのはおそらく、次スレですw
ひえぇぇぇぇ、忘れてました……
駆逐艦最高さん
大丈夫だ、問題ない。
飛龍に飢えてますね……w
どーも、銃壱でーす。
ついに、大本営っすね!更新頑張って下さい!応援してます!
あぁ〜この青年は大変だw
アロハ・カカヒアカ どうも十米の奴です
遂に青年君と瑞鶴が結ばれたのか。死ぬがよい(直球)
個人的にはR-18展開の云々はどうでもよかったりして…。とりあえず弥生ちゃんはもらっときますね
さてさて大本営に呼ばれた青年君は瑞鶴とのベッドウェー海戦について根掘り葉掘り聞かれるんですね分かります。
銃壱さん
ありがとうございます!
頑張ります!
十米名無しさん
結ばれちゃいましたw
青年君にげてー
次スレも頑張ります!
E-2始めようと思ったら、デイリー建造で雪風出てきたからそっちのレべリングを優先中のコルベニクです。
通常建造で出てくるレア艦、残るのは長門と瑞鳳…大型建造は含まないよ?(震え声
ゴールデンウィークが始まりますねぇ、イベント頑張らなきゃ((((;゜ω゜)))
ではでは、更新頑張ってくださいね!
???「ねぇ…もうやめようよ…!」
???「えぇ、もう(SSを書くことから)逃げるのはヤメにしますよ。」
???「そうだ!それでいい!」
※GW中にACV×艦これクロス多分書きます、ACVDも入るかも?